応募者を集めるための取り組みである母集団形成。どんな母集団を形成するかで、採用活動の結果は大きく変わってきます。
採用活動を効率よく行うためには、人員を選ぶのに必要な人数を集める「量」の観点だけでなく、入社後の適性を見据えた「質」も重視し、母集団形成を行うことがポイントです。
本記事では、母集団形成のメリットや成功させるポイント、母集団形成の手法13種類とそれぞれの特徴などを解説します。
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母集団形成とは

「母集団」という言葉は、日常生活ではあまり耳慣れない言葉かもしれません。元は統計学の用語で、調査対象となるデータ全体のことを指します。
まずは、採用活動において「母集団形成」という言葉が持つ意味や、注目を集める背景から解説します。
母集団形成の意味
採用活動において、母集団は「採用候補者の集団」のことを意味します。自社の求人に興味を持ち今後、選考に参加する可能性が潜在的な人材も母集団に含まれます。母集団形成はこの集団を形成すること、つまり、応募者を集める取り組みのことを指します。
採用活動では、書類選考、筆記試験、面接などの選考活動を経て少しずつ候補者が絞られていきます。選考を辞退する候補者や、内定を辞退する候補者がいることも念頭に置かなければなりません。
例えば下の図のように入社人数を15人と想定した場合、母集団形成ができていない場合は最終的な入社人数が8人となるケースも想定されます。計画していた人数を採用することもままならなくなってしまうため、母集団形成は採用活動において重要なのです。

ただし、人数を多く集めればよいというわけではなく、自社の人材要件に合致する人材を集めることが大切です。人材要件に合致しない人材を多く集めて母集団形成をしても、選考通過に至らず、採用に結びつかない可能性があるためです。
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母集団形成が注目される背景
近年、採用活動では母集団形成が重要視されていますが、その背景にあるのは15歳から64歳までの生産年齢人口の減少による売り手市場です。
総務省が発表した資料によれば、生産年齢人口は、2020年の7,341万人と比べて2025年には7,085万人と256万人減少、2060年には4,418万人と、2,923万人減少する見込みです。

この働き手不足により、優秀な人材を採用することが難しい売り手市場の状況が今後も続くものと考えられます。
採用市場が売り手市場か買い手市場かを見る「有効求人倍率」(求職者1人に対する求人件数)を見ると、下図のとおり2014年以降は1以上で推移し一貫して売り手市場に。2023(令和5)年4月に厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況」によると、2023年3月の有効求人倍率は1.32倍でした。

こうしたことから、企業間の採用競争が激化し、従来のように求職者からの応募を「待つ」という姿勢では優秀な人材が集まらない状況になっています。そのため、企業は母集団形成を意識する必要性が増しているのです。
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母集団形成を行うメリット

母集団形成を行うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。三つの項目に分けて解説していきます。
計画的に採用活動を進められる
一つ目のメリットは、計画的に採用活動を進められることです。
「なんとなく」の採用活動では思うような成果が得られません。目標採用人数に届かなかった、採用したものの意図していたターゲットとは異なる人材だったなどといった結果を招いてしまいます。
成果を得るためには自社の求める人材の要件や、目標採用人数などを設定したふまえたうえで母集団形成を行う必要があります。求める人材要件の定義などを行い母集団形成することで、計画的な採用につながります。
採用コストの適正化を図れる
二つ目のメリットは、採用コストの適正化を図れることです。
母集団形成を意識して採用活動を行わない場合、「応募者が全然集まらなかった」、逆に「応募者が集まりすぎた」といった事態になり、採用コストが当初の予定よりもかかることがあります。
求人広告の掲載延長による追加費用や、本来は不必要なはずの従量課金、あるいは新しく募集を行うための金銭的・人的コストなどが発生してしまうのです。
どのような人材を何名集めるための採用なのかを明らかにして母集団形成を行うことで、採用コストの適正化を図れます。
採用のミスマッチを防げる
三つ目のメリットは、採用のミスマッチを防げることです。
意識的に母集団形成を行えば、どのような人材を採用するのかを洗い出したうえで採用計画が進みます。それに伴い適切な母集団形成の手法を選択でき、求める人材の要件に合致する応募者を集められる可能性が高くなります。
一方、なんとなくの求人によって母集団形成を行った場合、求める人材の要件からかけ離れた応募者が母集団に含まれることがあります。最初から人材要件に合致した応募者を中心として母集団形成を行うことで、採用のミスマッチの防止が可能となるのです。
また、カルチャーフィットした人材を中心として母集団形成ができれば、採用後も定着や活躍が期待できます。
ここまで解説してきた3つのメリットは、安定的かつ継続的な事業の成長に寄与するでしょう。特に採用コストの適正化は、財務の面でも貢献度が高いといえます。
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母集団形成を行う際のポイント

ここからは母集団形成を行う際に注意すべき点を、新卒採用と中途採用に分けて紹介します。
新卒採用の場合
新卒採用における母集団形成で意識すべきポイントの一つは、自社を認知してもらうことです。
就業経験のない学生は、企業に対する知識がないケースがほとんどです。そもそも、「知らない」企業に応募する学生は少ないと考えられるため、自社を知ってもらうことが重要となります。SNSや採用オウンドメディアを活用して自社の情報を積極的に発信するほか、合同会社説明会やミートアップで候補者に直接、自社をアピールしていきましょう。
また、学生の採用スケジュールを踏まえて採用計画を立てることも求められます。新卒者の採用スケジュールは一定のルールのもとで組まれるのが慣例です。いわゆる「就活ルール」は従来、日本経済団体連合会(経団連)が決めていましたが、2021年卒からは政府が主導となって定めています。
2023年4月に、政府から最新のスケジュールが公表され、2024年度卒業・修了予定者の就職・採用活動の日程は下記のとおりになりました。
- 広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
年度によって日程が変更される可能性もあるため、母集団を形成する際に、しっかりスケジュールを把握しておく必要があります。期限から逆算して、内定、面接、書類選考、募集と、各プロセスでの母集団の人数を想定しておきましょう。
参考:内閣官房「2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」
中途採用の場合
中途採用では、即戦力人材が求められることもあり、候補者のスキルや経験が重要視されます。そのため、母集団形成の時点でマッチ度の高い候補者を集める必要があります。
「母集団形成の時点ではとにかく数を集める」というやり方ではなく、候補者の質を意識することが大切。新卒採用よりも細かく採用要件を設定し、求める人物像に合わせて母集団の形成手法を選択することで、マッチ度の高い人材を集めやすくなります。
複数の採用手法を組み合わせることも効果的です。例えば大多数にアプローチできる求人サイトとじっくり自社の魅力をアピールできる採用オウンドメディアなど、互いに補完しあえる方法を同時並行で実施して確実性を高めましょう。
新卒・中途、どちらにおいても「自社が求める人材にとって魅力ある情報は何か」を考え、興味を持ってもらいやすいメッセージを作成して届けましょう。そうすることで、自社のビジョンに共感する人材で母集団を形成でき、入社後のミスマッチ防止につなげられます。
母集団形成の13手法とそれぞれの特徴

母集団を形成する際は、採用したい人材の特性に合わせて、その手法をよく検討し選択する必要があります。以下の13種類の手法について、それぞれの内容や特徴を解説します。
1.求人サイト
2.求人情報誌
3.ハローワーク
4.人材紹介
5.ダイレクトリクルーティング
6.採用Webサイト
7.採用オウンドメディア
8.SNS
9. リファラル採用
10.アルムナイ採用
11.ミートアップ
12.会社説明会、合同説明会
13.インターンシップ
求人サイト(新卒、中途)

求人サイトは、さまざまな企業の求人が集まるWebサイトです。地域の制限は原則としてなく、掲載できる情報は求人情報誌などと比較すると多めです。一般的な採用手法で利用する求職者も多く、幅広く募集をかけられる点がメリット。新卒採用、中途採用のどちらにも向きます。
ただし、求人情報を掲載した時点で料金を支払う「掲載課金型」が一般的なため、採用につながらなくてもコストが発生する点や、求人の件数が多いため、見てもらえない可能性がある点には留意する必要があります。
また、特定の業界の求人に特化した特化型求人サイトもあります。自社が属する業界で働く意向のある人を集めやすいことがメリットの一方、全く興味のない人にはアプローチできず、応募者数が伸び悩む可能性もあります。
求人情報誌(中途)

求人情報誌はさまざまな企業の求人情報が掲載された雑誌媒体です。有料のものと、無料のものがあり、基本的にどちらもエリアごとに発行されているため、地元での求人に強いといえます。中途採用の場で多く活用されています。
紙媒体であることから、インターネットを利用しない層にアプローチできるほか、じっくりと検討してもらえるというメリットがあります。しかし、手にしなければ読めないので、不特定多数にリーチすることは難しいといえます。
また、掲載できる情報量が限られる点や、応募者や内定者がいてもいなくても、掲載料が必要になる点にも留意する必要があります。
ハローワーク(新卒、中途)

ハローワークは厚生労働省が全国500カ所以上に設置する公共職業安定所で、求人情報の掲載にあたって費用がかかることはありません。メジャーな求人の募集方法であり、広い範囲に告知できることがメリットです。
一般的には中途採用に向きますが、新卒者のための「新卒応援ハローワーク」が各都道府県に1カ所以上、全国では56カ所に設置されているため、これらを活用することも可能です。
ただし、新卒採用・中途採用ともに手続きが煩雑で情報修正にも時間がかかることや、面接などのスケジュール調整はハローワークを通じて行わなければならないことなど、他の手法に比べ自由度が低い点に留意する必要があります。
人材紹介(中途)

人材紹介会社に希望する人材の要件を伝え、その会社に登録している転職希望者を候補者として紹介してもらう手法です。人材要件にある程度マッチする候補者のみで母集団形成できる点がメリットです。
また、人材紹介会社のキャリアアドバイザーなどが候補者にアプローチし、自社の魅力を交えて説明をしてくれることで、入社の意向がより高まる場合もあります。さらに、非公開で採用活動を進められるため、新規事業のための人材獲得など、一般に公開したくない求人にも活用できます。
人材紹介会社は採用が決まった後に報酬を支払う成果報酬型が多いですが、成果報酬は理論年収の30〜35%程度と高額です。大量に人員を採用する場合は、コストがかさむ可能性がある点に留意する必要があるでしょう。
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ダイレクトリクルーティング(中途)

ダイレクトリクルーティングは、企業側が「欲しい」人材を採用するために、企業自身が採れる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用手法のことです。
求職者が登録するデータベースを用いて、企業から直接スカウト文を送りアプローチするなどの方法があり、魅力的な人材に直接自社の魅力を訴求できます。アプローチする人材を企業が選べるため、人材要件に合致した母集団を形成しやすいことがメリットで、中途採用に向きます。人材紹介と同様、非公開求人も可能です。
データベースからの検索、スカウト文の作成、応募対応など工数は多くかかりますが、採用代行サービスなどを利用すれば、これらの業務を社外に委託でき、採用担当者の負担を減らせます。
採用Webサイト(新卒・中途)

自社の公式Webサイトとは別に、採用に特化した自社Webサイトを作成して母集団形成を行う手法です。
求人の要項だけでなく、自社の事業内容や制度・待遇に、社員の働く姿などを、情報量の制限なく自由に掲載できる点がメリットです。採用Webサイトを読み込み、自社のありように共感を抱いた応募者が集まれば、マッチ度の高い母集団形成が可能になります。サイト上から直接エントリー可能なケースが一般的で、新卒採用・中途採用のどちらにも向く手法といえます。
応募者は求人サイトを経由して採用Webサイトにたどり着くケースが多いため、不特定多数へのアプローチには不向きです。採用Webサイト単独での募集は難しいでしょう。サイトの制作費用や、効果が出るまでにある程度の時間を要することなどを考慮しておくほか、サイトへの流入をどのように設計するかが焦点となります。
採用オウンドメディア(新卒・中途)

近年注目されている採用オウンドメディアは、数年で内容がリニューアルされる採用Webサイトとは異なり、基本的にコンテンツを刷新するのではなく積み上げていく形で運営されます。
ブログのような形式でイベントレポート、社員インタビューなどを通して自社の理念を伝えられる点がメリット。自社の社風や業務内容に共感した候補者による母集団形成が可能です。魅力的なコンテンを発信することで自社のファンをつくれ、すぐに転職活動を行う予定のない潜在的な候補者にもアプローチできます。新卒採用・中途採用のどちらにも向く手法といえます。
一方、開設してから成果が出るまでに時間がかかるほか、サイト運営やマーケティング、記事制作に関する知識も求められるため、運用するには人事労務とは別の専門性が必要となります。
SNS(新卒・中途)

Facebook、Twitter、Instagram、LINEなどのSNSを活用した採用手法で、ソーシャルリクルーティングとも呼ばれます。
SNSには拡散力があるため、幅広い層にアプローチ可能です。アカウント開設は基本的には無料で、コストをかけずにリアルタイムで情報を発信できることがメリット。新卒採用・中途採用のどちらにも向きます。SNSの種類ごとに年代別の利用率が異なるため、採用したい層がよく利用するSNSを選びましょう。
また、SNSを用いた採用活動は、利用者の目にとまるよう、定期的な発信が必要です。不用意な発信が炎上のリスクにつながる可能性があることにも留意する必要があるでしょう。
リファラル採用(中途)

リファラル(リファーラル)採用は、自社に在籍している社員の友人や知人などを紹介してもらい採用につなげる手法です。
候補者は自社を理解している社員のフィルターを通過していることから、求める人材に近いケースが多く、マッチ度の高い母集団を形成できることが強み。求人広告や企業説明会を開催する費用もかからず、採用コストを削減できる点もメリットです。
一方、人は自身と同じタイプに好意を抱く傾向があるとされ、リファラル採用が社内の人材の同質化を招く可能性もあります。また、候補者の就業状況や転職の意思にも成果が左右されます。急な採用や大量採用には不向きな手法といえるでしょう。
アルムナイ採用(中途)

アルムナイ採用は、自社を退職した人材を再び雇用する手法です。
企業から直接アプローチをかけたり、退職した人材の交流の場である「アルムナイネットワーク」を活用したりするケースが多いため、採用コストがほとんどかかりません。さらに、候補者は自社での勤務経験があることから、教育コストの削減、採用のミスマッチの低減にもつながります。
しかし、対象が自社での勤務経験がある人材に限られるため、大量採用には不向きな手法といえます。さらに、候補者の他社での勤務状況などから、必ずしも採用につながるとは限らない点にも留意する必要があります。
ミートアップ(新卒・中途)

ミートアップとは共通の目的を持った人たちが集まる交流会を意味する言葉で、近年は採用手法の一つとしても活用されています。
求職者の興味をひくようなイベントを自社や貸し会議室で行い、集まった人たちとの交流を通じて採用担当者や社員が企業の魅力を直接伝えます。フランクな雰囲気で実施され、求職者が気軽に質問できることが特徴の一つです。
選考の要素よりも、自社に対する興味や志望度を高めてもらう手法で、自社のファンを増やせる、マッチング精度の高い母集団を形成できる、などのメリットがあります。一方、コンテンツの企画や開催準備などがあるため、労力がかかるほか、集客の工夫が必要な点はデメリットといえるでしょう。
会社説明会、合同説明会(新卒、中途)

企業が開催する会社説明会や、複数の企業で開催する合同説明会では、求職者と対面で(あるいはオンラインでの対面で)、自社をアピールできることがメリットです。多くの転職希望者が集まるため、知名度向上も期待できるでしょう。
「IT」「広告」などの特化型合同説明会であれば、属性を絞り込んだうえでアピールでき、マッチ度の高い母集団を形成しやすいと考えられます。
新卒採用において開催されるのが一般的ですが、採用予定数が多い場合は中途採用でも開催されます。ともに、応募や採用につながらなくても出展や開催のコストが発生する点には留意しておきましょう。
インターンシップ(新卒)

インターンシップは希望者に仕事を体験してもらう手法のことで、「就業体験」や「就労体験」ともいわれています。
短期ならば1日、長期ならば年単位で行われていて、基本的に自社で働くことに強い興味がある人材のみで母集団を形成できる点がメリットです。また、長期であれば、候補者が自社の業務に向くか、求める人材要件を満たしているかどうかを、業務を通して判断できます。
しかし、インターン生の能力次第では現場の業務負担が大幅に増えてしまう可能性があるほか、受け入れ部署の調整などの手間がかかる点には、留意が必要です。
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母集団形成のステップ

母集団形成は段階をふんで行うことが大切です。1ステップずつ確認していきましょう。

まずは今回の採用は何のために行うのかを把握し、採用の目的を明らかにしましょう。
その際、ただ「欠員補充」や「増員」というだけではなく、「業界シェア50%を達成するため、あと10%シェアを伸ばすために増員する」といったように、具体的な採用目的が必要です。
目的を明確にすることで、どのような人材がいつまでに何名必要か、採用計画が見えてきます。
次に、どのような人材を採用するか、人材要件を定義します。
採用の目的を達成するためには、どのようなスキルや経験、特性を持つ人材を何人採用すれば目標を達成できるかを検討します。 前述した「業界シェア50%を達成する」という例で考えると、1人当たり何%シェアを伸ばさないといけないのか、そのためにはどのようなスキルや経験が必要か、と一つ一つ検討していきましょう。
採用したい具体的な人物像を詳細に示した「採用ペルソナ」を設定すると効果的です。
人材要件を定義した後は採用スケジュールを策定します。まずは、採用の目的を達成するためにはいつまでに入社してもらう必要があるかを確認し、その期限から逆算して、内定、面接、書類選考、募集とスケジュールを立てていきます。
各プロセスでの母集団の人数をあわせて想定しておくと、最終的な採用予定人数に近づけやすくなります。
採用スケジュールが決まったら、今回採用したい人材の要件をふまえて、最適な採用手法は何かを検討し、決定します。
どのような人材をターゲットとするかによって適切な採用手法は異なります。一つの手法にこだわらず、柔軟に組み合わせて採用活動を行うことも大切です。詳しくは「母集団形成の13手法とそれぞれの特徴」の項目を参照してください。
実際に募集を開始します。策定した人材要件やスケジュール、採用手法に従って採用活動を進め、母集団を形成していきます。
募集の際には、ターゲットを見据えたメッセージを考え、伝えることが大切です。応募を待っているだけでは十分な母集団を形成できないこともあるため、「採用広報」を実践しましょう。
公式サイトやSNSを用いて採用に関する情報を積極的に発信し、広報活動を行うことで、自社が求める人材、自社に定着して活躍してくれる可能性の高い人材からの応募が期待できます。
採用活動を始めたら、定期的に進捗の確認や振り返り、改善を実施します。数的・質的に十分な母集団形成ができたか、スケジュールや採用手法に関しても計画通り進められたかを検討しましょう。
採用活動終了後は、採用の成果についても振り返ります。改善すべき点を洗い出し、次回の採用活動につなげることが重要です。
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母集団形成がうまくいかない原因と対策

採用活動では、母集団形成がうまくいかないこともあります。主な原因と、それぞれの対策を解説します。
求める人材の要件が適切に定義されていない
応募のための条件が厳しすぎると、対象者が採用市場に少ししかいないという状態になり、母集団形成が数的に厳しくなることもあるでしょう。一方で、条件を緩めすぎると、母集団の質に問題が生じる可能性があります。
どちらにしても、求める人材の要件を適切に定義せずに母集団を形成すると、採用のミスマッチが生じてしまいます。
対処法は、求める人材の要件のバランスを考慮し具体的に定めることです。必ず満たしてほしい必須条件と、できれば満たしてほしい希望条件、できれば避けたい条件や、絶対に避けたい条件についても考えておくことで人材要件がより具体的になり、選考の際も迷いが生じにくくなります。
求める人材の要件は、採用市場のトレンドや競合の動きなども考慮したうえで、無理のないものにすることが大切です。
企業の認知度が高くない
企業の認知度は、母集団形成に影響を及ぼすことがあります。
転職活動をしている人が応募できる企業の数には限りがあります。応募者自身がもともと知っている企業からエントリーするのは当然といえるでしょう。認知度が高くない企業は、検索条件ではじかれてしまったり、応募者の目にとまらなかったりして、求人情報が求職者に届いていないこともあります。
一般的に大企業よりも中小企業のほうが認知度は低いものですが、「事業規模が小さいほど人手不足である」というデータもあります。
日本銀行が発表する「全国企業短期経済観測調査」(短観)の雇用人員判断 D.I.の推移を見ると、大企業は-14、中堅企業は-23、中小企業は-28。中小企業が一番人手不足となっており、事業規模が小さくなればなるほど認知度も低く人手不足であるという状況が見て取れます。

対処法は、採用広報や採用ブランディングにより、企業の認知度を高めていくことです。採用オウンドメディアやSNSによる発信も、企業の認知度や理解度を高めるために効果的です。地方の場合は、地元の情報誌やラジオなどで露出を増やすことも有効でしょう。
条件面で競合に劣っている
同じような求人内容であれば条件面で勝る企業に応募したいと考えるのが自然です。そのため、条件面で競合に劣っている場合は、母集団形成が困難になりがちです。
一般的に大企業のほうが条件面で優れていることが多いため、前述した事業規模による人手不足感の違いは、認知度だけでなく条件面にも原因があるといえるかもしれません。
対処法は、制度や労働条件の見直しです。具体的には下記のような項目が考えられます。
- 給与
- 労働時間
- 休暇
- 勤務場所
競合と比較した際に応募者にとって魅力的なものであるか検討し、改善できる部分については改善していきます。しかし、制度や労働条件の見直しや組織の改革は簡単にできることではないため、現実的には難しいという企業も多いでしょう。
条件面で競合に劣っている部分があっても、それを打ち消すほどのメリットを別途打ち出せれば、自社を選んでもらえる可能性は高くなります。
例えば自社で働くことによって得られるスキルや経験、他にはない研修制度をアピールすることも有効です。企業が従業員に提供できる価値を指す「EVP」を策定し、「自社らしさ」を求職者に訴求することが重要となります。
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