人材の採用にはさまざまな手法がありますが、企業と求職者の仲立ちをするのが人材紹介会社です。人材バンクとも呼ばれ、求人依頼を受けた企業、登録している求職者らをマッチングし、採用・入社につなげる役割を果たします。
この記事では、人材紹介会社の仕組みや料金体系のほか、利用するメリットや流れ、効果的な活用方法について解説していきます。
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人材紹介会社とは

人材紹介会社とは、人材を募集している企業に対して求職者を紹介する会社のことを指します。企業と求職者の間に立ち、双方の魅力を伝え合いマッチングするという役割を担います。
企業が求める条件に合致する候補者を選定し、面接や内定手続きのサポートも行う人材紹介会社。まずは、その仕組みを正しく理解するとともに、人材派遣会社との違いや手数料の相場を見ていきましょう。
人材紹介会社の仕組み
人材紹介会社とは、民間で運営されている有料の職業紹介業です。職業安定法は、職業紹介を「求人及び求職の申し込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいう」と定義しています。
人材紹介会社として事業を行うためには、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。求人を行う企業は人材紹介会社と契約を締結し、人材を仲介してもらうのが基本的な仕組みです。

企業側に対応するリクルーティングアドバイザー、人材エージェントと呼ばれる担当者は、人材要件のヒアリングや求人票の作成、人材紹介などを担います。一方、求職者側を受け持つキャリアアドバイザーは、面談、履歴書や職務経歴書の添削、面接のアドバイス、条件交渉などを行います。
厚生労働省の統計によると、人材紹介会社は令和2年度時点で全国に約3万1,000社(※)あります。日本でも雇用の流動化が進んで転職が一般化してきたことや、企業のニーズの増加や細分化もあって、人材紹介会社は増加傾向にあります。
(※)有料職業紹介事業所が27,569事業所、無料職業紹介事業所が1,107事業所、特別の法人無料職業紹介事業所数が1,856事業所、特定地方公共団体無料職業紹介事業所数が711事業所
参考:令和3年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)│厚生労働省
人材派遣会社・転職サイトとの違い
人材紹介会社と混同されがちなのが、「人材派遣会社」です。両者の大きな違いには、雇用元が異なる点が挙げられます。
人材紹介会社の場合、労働者の雇用元は紹介先の企業であり、給与も紹介先企業から支払われます。これに対して人材派遣会社の場合は、労働者が雇用契約を結ぶのは派遣先企業ではなく人材派遣会社であり、給与も人材派遣会社から支払われます。
人材派遣会社は派遣先企業に対して労働を提供するという仕組みであり、実務における指揮命令権は派遣先企業にありますが、雇用しているのはあくまでも人材派遣会社。根本的に仕組みが異なります。

企業に対して人材を紹介するという意味では、「転職サイト」も似たような存在といえますが最も大きな違いは、転職支援があるかどうかです。人材紹介会社の場合、担当者が条件にマッチする求人を紹介し、企業と求職者の間に立ってさまざまなサポートを行います。
これに対し転職サイト求人情報を公開することで応募者を集めるのが、主な役割。企業及び求職者に対して個別にサポートを行うことは基本的にありません。
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人材紹介会社の料金体系
人材紹介会社の多くは、実際に採用につながった場合にのみ企業から人材紹介会社へ「紹介手数料」として報酬を支払う成功報酬型の料金体系を採用しています。たとえば、人材紹介会社に求職者を紹介してもらったとしても、書類選考や面接の結果、採用につながらなかった場合は手数料が発生しません。
なお、求職者から手数料を取ることは職業安定法によって禁止されているため、人材紹介会社は企業からのみ報酬を受け取ります。
企業が人材紹介会社に支払う紹介手数料は、採用決定者の理論年収(毎月の給与に賞与を加算したもの)の30~35%が相場とされています。たとえば、理論年収が600万円の場合、手数料は「180万円~210万円」という計算になります。入社のタイミングで手数料を支払うケースが一般的ですが、異なることもあるので事前に確認しておくことが重要です。
人材紹介会社によって紹介手数料率は異なり、実績のある人材や役員クラスの人材を紹介しているところでは理論年収の40%以上に設定されているケースもあります。採用予定者のスキルやキャリアに合わせて、手数料率が適切であるかを判断しましょう。
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人材紹介会社の種類と特徴

人材紹介会社は、企業や求職者への対応の仕方、扱う求人の種類などによって以下の3つに分類できます。
- 一般紹介・登録型
- サーチ型(エグゼクティブサーチ、ヘッドハンティング)
- アウトプレースメント型
一般紹介・登録型は人材紹介会社として、最も一般的な形態です。担当のアドバイザーが企業の求人依頼を受け、人材紹介会社のデータベースに登録された求職者のなかから、要件に合致した人材を選定・紹介し、選考が進んでいきます。
サーチ型は、エグゼクティブサーチ、ヘッドハンティングとも呼ばれ、現在ほかの企業で活躍している人材をスカウトし、紹介先の企業とマッチングさせます。転職を考えていない転職潜在層にアプローチできることが特徴です。役員クラスの人材や専門性が高い職種に用いられることが多く、成功報酬とは別に業務を開始する際に着手金が必要なケースもあります。
アウトプレースメント型は、雇用することが難しくなった社員がグループ企業や系列企業に再就職できるよう、支援やコンサルティングを行うスタイルです。
また、人材紹介会社は担当する案件の範囲で「総合型」と「専門(特化)型」、ビジネススタイルで「分業制」と「一気通貫制」に分けられます。それぞれの特徴は下記のとおりです。
- 総合型:幅広い職種、業種を扱う人材紹介会社。多くの人材紹介会社はこの形態で、さまざまな求人を扱っているため、その分求職者を多く集められるのが特徴です。
- 分業型:特定の職種、業種に絞ったり、力を入れたりと、扱う求人に特徴を持たせています。医師専門、外資系に強い、サービス業に特化など、ミドル・ハイクラスに絞ったり、人材不足の業界に力を入れたりしています。
- 分業型:企業側の担当者と求職者側の担当者が分かれている点が特徴です。一気通貫型より紹介してもらえる人数に期待できる一方、担当者同士が意思疎通できていない場合、ニーズに合わない求職者を紹介されるリスクもあります。
- 一気通貫型:分業制とは対照的に一人の担当者が企業と求職者の間に入って対応するのでスピーディーな対応を実現できるでしょう。担当者がお互いの話をじっくり聞くため精度が高いマッチングを期待できます。
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人材紹介会社を利用するメリット

採用のために人材紹介会社を利用するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。4つの項目に分けて解説します。
希望に合致した人材を紹介してもらえる
人材紹介会社は、人材ベースなどに登録されている求職者のなかから、依頼を受けた企業が求めるスキルや経歴、人柄などの希望や条件に合う人材をスクリーニングしたうえで、候補者を紹介してくれます。
転職サイトや自社採用サイトに求人情報を公開した場合、自社が求めるスキルや経験を満たさない求職者から応募がくるケースもあります。人材紹介会社を利用することにより、企業が指定した要件にマッチする候補者を紹介してくれるため、求める人材を採用しやすくなります。
また、優秀なエンジニアや役員クラスの人材はすでに他社で活躍しているケースが多く、求人を出しても応募者が集まらないケースがあります。
そこで、サーチ型の人材紹介会社へ依頼することにより、自社に採用のノウハウがなくても求める専門人材や高度人材の採用を実現できるでしょう。スタートアップなど採用実績が少ない企業にとっても、人材紹介会社の採用ノウハウは魅力的といえます。
採用工数を省略できる
本来、人材を採用するにあたっては、企業が求人を作成・公開し、候補者の書類選考や面接などを自社で行う必要があります。しかし、人材紹介会社はこれらを代行してくれるため、企業側は採用に関する工数を省略できるというメリットがあります。
■人材紹介会社に依頼できる主な業務
- 求人の作成
- 候補者の人選・推薦
- 面接日程の調整
- 求職者への合否連絡
- 給与などの条件交渉
以上のような業務を人材紹介会社に依頼することで、採用担当者の負担軽減につながります。
すぐに募集を出せる
企業が独自で採用活動をスタートさせるとなると、求人の作成から始めなければなりません。採用ノウハウが少ない企業の場合、求人の作成段階で多くの時間を要してしまい、なかなか募集に至らないこともあります。
しかし、人材紹介会社は、求人作成の代行も可能です。募集要件を担当者に伝えれば候補者の選定にスムーズに入ってもらえ、募集までのリードタイムが短いのが特徴です。人材採用に関する豊富なノウハウを有しているため、求人要件を整理したうえですぐに募集をスタートできます。
非公開求人として募集できる
転職サイトや求人サイトに求人情報を掲載した場合、募集内容から自社の事業戦略が他社に知られてしまうリスクがあります。
たとえば、今後新規事業をスタートするにあたって専門的なスキルを持った人材を募集する場合、転職サイトに求人を掲載することにより、他社が新規事業の内容を推察できてしまうかもしれません。
しかし、人材紹介会社を利用すれば求人を公開することなく、要件に合った候補者を人材紹介会社がピックアップして紹介してくれます。その結果、ライバル企業などに自社の戦略を知られることなく、非公開で採用活動を進められます。
人材紹介会社を利用する際の注意点

人材紹介会社の利用にはさまざまなメリットが期待できますが、一方で注意しておきたい点もあります。以下の3つのポイントに注意して、人材紹介会社を活用しましょう。
- 紹介数のコントロールが困難
- 採用コストが比較的高い
- 採用に関するノウハウが蓄積されない
紹介数のコントロールが困難
どのような人材要件や条件を出すのかにもよりますが、紹介してもらえる候補者の数を採用企業側でコントロールすることは困難です。
条件を厳しくした場合、該当する候補者の数も少なくなることも考えられ、5名採用したくても2名しか紹介してもらえない、といったことが起こる可能性もあります。
採用コストが比較的高い
人材紹介会社は採用が決まった場合の成功報酬となるケースが一般的です。手数料率の、相場は30~35%のところが多く、決して安い金額とはいえないでしょう。求人広告や自社媒体など、他の採用チャネルと比べると採用コストは比較的高くつきます。
人材紹介会社からの採用者が増えれば増えるほど、企業は高額な手数料を支払うことになるため、大量採用には不向きな手法といえます。採用予定人数が多い場合には、人材紹介会社以外にも複数の採用チャネルを活用することを検討するとよいでしょう。
採用に関するノウハウが蓄積されない
採用に関する業務の一部を人材紹介会社が行うということは、採用業務の負担軽減につながる一方で、採用に関するノウハウは社内に蓄積されません。
今後の人事戦略を検討する意味でも、自社での採用活動も並行して進め、人材紹介会社に採用活動を任せきりにするのではなく、依頼している業務のノウハウを得られるよう、担当者と積極的にコミュニケーションを取ることが重要といえます。
人材紹介会社を利用する際の流れ

ここからは、人材紹介会社を利用する際の流れを6つのステップに分けて紹介します。
はじめて人材紹介会社を利用する際は、契約を締結する必要があります。
手数料率はもちろん、採用して短期間で退職した人材がいた場合、「返金規定」を設けている人材紹介会社もあるので、トラブルに発展しないためにも、これらの条件は必ず確認しておきましょう。
一度契約を締結しておけば、次回以降、求人を出す際の契約手続きは不要となるケースが多く、すぐに募集を開始できます。
人材紹介会社に求人を依頼します。マッチングの精度を高めるために、この段階で求める人材のスキルや経験などの要件を細かく定め、伝えておくことがポイントです。
求人を依頼した後は、人材紹介会社が条件にマッチする候補者をピックアップします。
依頼した求人の内容をもとに、人材紹介会社がデータベースなどから候補者を選定し、企業側が紹介を受けます。候補者のなかから、面接をする求職者を選び、人材紹介会社の担当者へ伝えます。面接のスケジュール調整を依頼することも可能です。
候補者本人が作成した履歴書や職務経歴書はもちろんですが、人材紹介会社の担当者から見た候補者の特徴や推薦理由なども参考にできます。
次のステップは候補者との面接です。紹介を受けた人材に対しても、通常の選考通りに面接を進めることが一般的です。
一般紹介・登録型の人材紹介会社の場合、面接に担当者が立ち会うことは、基本的にありません。
ただし、サーチ型の場合、人材紹介会社の担当者も含めた三者で、面接よりもカジュアルな形式の面談が行われることもあります。その後、候補者が前向きに転職を考えるようであれば、正式に採用面接が行われるケースもあります。
面接が終わったら、結果を求職者に対して伝えます。
ただし、結果通知も人材紹介会社の担当者が間に入るため、原則として企業から候補者側に直接連絡を取る必要はありません。
また、入社までのさまざまな手続き、スケジュールの連絡なども人材紹介会社に代行できます。
人材紹介会社によっては、入社日に求職者が出社しているかの確認を取ったり、入社後のフォローを目的としてアンケートを行ったりするケースもあります。
入社のタイミングで、企業に対しては人材紹介会社から請求書が発行されるため、手数料を支払い、一連の採用プロセスは完了となります。
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人材紹介会社を選ぶ際のポイント

さまざまな人材紹介会社があるなかで、企業はどのような基準で選べばよいのでしょうか。特に押さえておきたい3つのポイントを解説します。
専門領域に特化しているか
どのようなスキル・経験を持った人材を採用したいのかを明確にしたうえで、人材紹介会社を選ぶことが重要です。先述のとおり、人材紹介会社には、さまざまな人材を広く紹介できるところもあれば、IT分野など専門領域に特化したところも存在します。
ターゲット層が集まる会社を選び、採用ポジションごとに、どのような人材を何名採用したいかを検討します。そのうえで人材要件に合わせて活用する人材紹介会社を判断するとよいでしょう。
また、役員クラスなどのエグゼクティブを専門とした人材紹介会社もあるため、領域ごとに人材紹介会社を使い分けるのも一つの方法です。
紹介実績
紹介実績が豊富な会社とそうでない会社では、業務の質が異なります。公式サイトで実績を公開しているケースもあるので、これまでの取引数や紹介人数などをチェックして信頼性を検討することが重要です。公開されていない場合は、直接問い合わせをしてリサーチしましょう。
人材の登録者数や紹介人数が少ないといった、比較的小規模の人材紹介会社のなかには、丁寧なコンサルティングをウリにしているところもあります。実績の数字だけを見るのではなく、採用につながった事例や利用者の満足度など、複数の観点から見極める必要があります。
対応エリア
地域を問わず日本全国の求職者が登録している人材紹介会社もあれば、地域密着型で特定エリアのみの求職者が登録している人材紹介会社もあります。
地元採用の人材が多く活躍している企業にとっては、地域密着型の人材紹介会社がよいでしょう。たとえば、首都圏の大学を卒業した後、地元で就職したいと考える新卒者や第二新卒者の採用にもつながると期待できます。
全国に拠点があり、地域を問わず採用したい企業は大手の人材紹介会社もおすすめです。
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人材紹介会社を活用するコツ

人材紹介会社の活用の仕方によって、採用の成否は変わってきます。ここからは、求める人材を採用するための人材紹介会社の選び方、活用ポイントを紹介します。
採用の背景や求める人物像を十分に理解してもらう
紹介してもらう候補者とのミスマッチを防ぐためには、自社の事情や経営・採用課題、求める人物像などを人材紹介会社の担当者に理解してもらうことが大切です。
そのために欠かせないのは、密なコミュニケーションです。担当者に採用活動の業務を任せきりにするのではなく、日頃から連絡を取って進捗の確認をするなど、連携を深めておきます。
そのなかで、自社の魅力や具体的な人材要件について、より詳しく理解してもらえれば、担当者にとって「紹介しやすい会社」になるでしょう。コミュニケーションを取り、相互理解を深めることによって、自社の求める人材と紹介される人材のミスマッチが起こりにくくなることが期待できます。
候補者の本音を教えてもらう
候補者がなかなか集まらなかったり、内定を出しても辞退されたりする場合、企業側から直接その理由を聞くのは難しいでしょう。一方で、人材紹介会社の担当者は、求職者からさまざまなことをヒアリングしていることが多いです。
人材紹介会社の担当者と良好な人間関係を築けていれば、担当者がヒアリングした求職者の本音や意見について伺いやすくなるでしょう。それをフィードバックして採用条件や人材要件を変更したり、採用プロセスを工夫したりすることが、よりニーズに合う人材を集めるカギになります。
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