少子高齢化、労働力人口の減少、経営環境の変化などにより、人材獲得競争はますます激化しています。人事担当者に求められる能力はより高度に、活動領域はより広範囲になっていく今、企業が人材獲得競争を勝ち抜くための採用プロフェッショナル、「プロ・リクルーター」の存在が注目されています。
本連載では、ダイレクトリクルーティングを積極的に取り入れ、「プロ・リクルーター」として活躍、実績を挙げている企業の経営者や人事担当者を表彰させていただき、人事業務に対するポリシーや取り組みを伺います。
第4回は、「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」のキッズ・ジュニアジャンル賞や、SHOPLISTの「パートナーカンファレンス2018」でKIDSグランプリを受賞するなどの実績を持つ子ども服通販サイト「devirock(デビロック)」を運営するグロウ株式会社の代表取締役であり、採用活動にも中心となってコミットされている宮本智彦様です。

取材対象者プロフィール宮本 智彦氏
グロウ株式会社 代表取締役
【受賞理由】
2008年4月の設立以来、基幹ブランドとなる子ども服通販サイト「devirock(デビロック)」を運営しているグロウ株式会社。生産も内製化を実現させるなどしくみを整備しながら、リーズナブルで品質がよく、お客様に感動を与えられるような子ども服を届けるために事業を行っています。
代表取締役の宮本様は、幹部クラスや部門のマネジメント責任者を採用するためにダイレクトリクルーティングを導入し、採用活動の中心的存在として積極的にコミット。候補者との面接のなかでは、自ら事業に対する思いや今後目指す将来像を語り、候補者の方との価値観マッチングの作業を丁寧に行っています。
掲げる目標は、「子ども服業界で売上高、経常利益、社員の平均年収の3項目で一番を目指す」こと。この高い目標達成に向けて、価値観・志を共有できる「仲間探し」を意識した採用活動は、社員同士が互いに切磋琢磨できる、成長する組織づくりにもつながっています。
代表自ら採用にコミット、経歴やスキルより価値観重視の採用
当社では、メンバーの採用は半年ほど前に設立した人事部主導で行っています。一方で、幹部クラスの方や部門のマネジメントをお任せするような立場の方に関しては、候補者となる方を見つけ出してアプローチするところから書類選考や面接まで、すべての工程を代表の私が担当しています。
「人は財なり」という言葉もある通り、採用は企業活動のなかで一番重要だと思っています。私にとって一番うれしい瞬間であり、自らのモチベーションが上がる瞬間は、社員の成長した姿を見たときです。だからこそ、私が先頭に立って採用に関わりたいという思いを持っています。
面接は「価値観をすり合わせるための場」
書類選考を通過された方との面接では、はじめに価値観のすり合わせを行います。もちろん、候補者の方の経歴やスキルも大事です。
しかし、当社では理念や思いに共感していただけるかどうか、候補者の方が大事にしている価値観と私たちが大事にしている価値観が重なるかどうかが一番大事だと思っています。そのため、面接ではスキル等についての質問はあまり行いません。
私からは、当社がどのような考えで今の事業を行っているのかをお話しさせていただき、候補者の方がどんなモチベーションやマインドで仕事に取り組んでいるのかを聞くことに多くの時間を割いています。

理念は事業の軸となるものだからこそ、採用活動でも重視
こうした考えで採用を行うようになった原点には、会社設立当時のとある出来事があります。毎日夜中の2時や3時まで仕事をしていたのですが、ある日の夜中に、ECサイトに子ども服の注文が入ったのです。
作業に疲れてしまっていたからこそ、その通知がすごくうれしくて、思わず感謝の思いを込めたメールを送ってしまいました。すると、すぐにお客様から「遅い時間までお仕事ご苦労さまです。購入させていただいた服、楽しみに待っていますね」と書かれたメールが届いたのです。
そのときに改めて、「自分のしている仕事が誰かの役に立てている。こうして喜んでいただける方がいる」と思い、より事業を拡大して多くの人に喜んでもらえるサービスを生み出したいという気持ちが生まれました。
そのためには、より社員の気持ちを一つにして、自分自身もぶれない経営をしなければなりません。そのときに軸となるものが欲しいと考え作ったのが、「革新的付加価値を創造し世界のあらゆる人々の物心両面の豊かさを追求する」という理念でした。
「ありそうでなかった商品・サービスを作り、世界のあらゆる人々にさまざまな付加価値を提供することで、物心ともに豊かになっていただく。それを追求し実現させることで全スタッフの人生、暮らしをよりよく豊かにする」 といった意味を込めています。この理念を実現するためにグロウは事業活動をしているからこそ、候補者の方との価値観のすり合わせを重視しているのです。
仕事を通して「物心両面の幸福」を感じてほしい
当社のビジネスは、商品を企画して、デザインを行い、実際にカタチにして販売するものです。すると、社員が休日に街を歩いているときに、自分がデザインを手掛けた服を着た子どもたちに出会うといったこともあります。こうした体験があると、デザインした本人はもちろんうれしいですよね。
それに、一緒にいる家族に「あの服は自分がデザインしたんだよ」と伝えることもできます。その言葉を聞いた旦那さんや奥さん、お子さんなど、その社員の家族みんながうれしく誇らしい気持ちになるはずです。こうした体験こそが、仕事を通して得られる心の豊かさだと思うのです。だからこそ、当社は「物心両面の幸福」という言葉を大事にしています。実際に、理念に共感していただけることを重視した採用を始めてからは、社員の定着率もグンと上がっています。
「この人と働きたい」そう感じた直感を逃さない
採用を行うなかでは、価値観をすり合わせることと同時に、「この人と一緒に働きたいかどうか」という直感を大事にしています。その直感を言語化することは難しいのですが、たとえば、私の話を聞いているときにどんなポイントにうなずいてくれているのか、どの言葉に共感してくれているのかなどを見ています。
私たち採用する側も、候補者の方も、シンプルに好きな人と仕事をしたいですよね。好きな人だと、多少失敗しても許せたりするでしょう。そういった意味で、面接でのフィーリングは互いにとってとても大事だと思います。

候補者に自社ならではの魅力を伝える
もちろん、私たちが「この人と働きたい」と思う候補者の方は優秀なので、多くの場合転職活動のなかで他社を検討されていたり、すでに複数社からの内定を獲得されていたりといった方もいます。誰もが名前を知っている大手企業様との獲得競争に勝たなければならないこともあります。
そんなときは、とにかく真っすぐに「あなたの力が当社に必要だ」と伝えます。そして、当社はベンチャー企業だからこそ、「これから大きな市場を作っていくことも、さまざまなしくみを整備していくことも、あなたの手でかなえることができるのですよ」というメッセージを伝えています。
たとえば、当社の65%は女性社員です。子ども服販売という事業の特性上、彼女たちが結婚しても、産休に入っても、また仕事を続けてもらえるような環境を作っていかなければ、今後よりよい商品は生まれにくいでしょう。女性が安心して働けるようにどのような制度があればいいのかは、社員の声を聞きながら、今後よりよいしくみを作っていければと思っています。これは一例ですが、こうした自分たちが働きやすい環境を作り出せる点も、当社の魅力だと感じて入社してくれる社員は多くいますね。
日々の社員とのコミュニケーションを大切に
少しずつ社員の人数が増えていっており、マネジャーとリーダー、メンバーの3階層で組織が構成されていることによって、普段の仕事のなかでメンバー層と私が会話をする機会はどうしても減ってしまいます。だからこそ、普段はオフィスを歩き回りながら、メンバーに話しかけるようにしています。話す内容はたわいもないことなのですが、ささいなコミュニケーションこそ大事にしたいのです。
志を同じくした仲間たちと高い目標を追いかける
近年、当社の知名度も徐々に高まってきて、大手アパレル企業などでキャリアを積んだ即戦力人材の応募・入社も増えています。彼らが入社することで、社員は刺激を受け、さまざまなことを学び、一方で「負けないように頑張らないと」という気持ちが生まれているようです。似た価値観を持ち、同じ場所をともに目指す仲間と切磋琢磨できる環境があれば、社員一人一人がよりよい仕事をできるように思います。
当社は今、「子ども服業界で売上高、経常利益、社員の平均年収の3項目で一番を目指す」という目標の下、事業を行っています。共働きで忙しいお父さんやお母さんが、スマートフォンで簡単に、安くてかわいい子ども服を買える環境を作りたい。価値を多く生み出して、頑張ってくれた社員へは年収というカタチで還元したい。そうした思いを持っています。今後もこの目標達成に向けて、一緒に事業を成長させていける仲間を見つけていきたいです。

右から グロウ株式会社 代表取締役 宮本 智彦様、株式会社ビズリーチ ビズリーチ キャリアカンパニー リクルーティングプラットフォーム統括本部 副本部長 與島広幸
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