長期的な事業成長のために、現場主導の採用への投資が大きなリターンを生む

自動車関連事業、産業車両・物流ソリューション事業、繊維機械事業を展開する豊田自動織機。専門技術を持った人材リソースを確保するため、部門が主体となり採用活動を進めています。求める人材にアプローチするための工夫や選考で意識していること、採用を重要なミッションだと考える理由について、部門採用の責任者を務めていた鴻村氏、岡西氏にお話を伺いました。

 鴻村 哲志氏

取材対象者プロフィール 鴻村 哲志氏

コンプレッサー事業部 プロセス改善室 室長

1992年に新卒として株式会社豊田自動織機製作所に入社し、コンプレッサー技術部に配属となる。以降、コンプレッサーの新製品開発、技術営業(海外駐在)、技術管理、製品企画などを担当。リソース確保の一環としてキャリア採用業務にも従事した。2025年4月からはプロセス改善室の室長として、事業部横串での業務改善を推進している。
岡西 岳太氏

取材対象者プロフィール岡西 岳太氏

革新材料開発部 部長

電機メーカーのエンジニアとして9年半、その後大学の助教として2年半の経験を積み、主に燃料電池の材料開発に従事。2016年に株式会社豊田自動織機へ中途入社後、HEV(ハイブリッド自動車)向けニッケル水素電池の開発を担当し、2021年にその量産化を実現した。現在は、革新材料開発部長として、電池材料の開発に加え、新規事業化を目指した水電解用電極の開発を推進している。

「個の力」が事業を前に進めてきた。採用への投資が豊田自動織機の未来を作る

──はじめに、豊田自動織機の企業概要と、お二人の所属部門や役割について教えてください。

鴻村:豊田自動織機は、自動車関連事業、産業車両・物流ソリューション事業、繊維機械事業を展開しており、自動車関連事業では自動車の組み立てやコンプレッサー、カーエレクトロニクス、エンジン機器などを手掛けています。私は1992年に新卒で入社して以降、コンプレッサーの技術部門でコンプレッサーの新製品開発、技術営業、技術管理、製品企画を担当してきました。当社のコンプレッサーは世界トップシェア(自社調べ)で、世界中のお客様からの多様なニーズに応える役割を担っています。

岡西:私は2016年に中途で入社し、電池事業部の技術者として電池開発と量産化を進めてきました。直近では、2025年3月まで材料開発室でハイブリッド自動車向けのニッケル水素電池の材料開発を担当していました。4月からは革新材料開発部という新しい組織になり、引き続き電池開発領域にも携わっています。

──豊田自動織機ではここ数年でキャリア採用を強化されています。キャリア採用に対するお考えや、これまでどう進めてきたのかを教えてください。

鴻村:私は2018年頃にキャリア採用に携わった経験から、必要な人材をよく理解している採用部門が主体的に活動することが、キャリア採用において重要だと感じるようになりました。昨今の自動車業界は100年に1度の変革期にあり、電動化へと大きくかじを切っています。コンプレッサーの電動化も急速に進んでおり、技術者不足は私たちにとって深刻な課題でした。技術者を採用できなければ、事業が停滞してしまう。常日頃からそうした危機感を持っていたので、「自分たちで探しに行く」という部門採用の考え方が自然と根付いていました。

岡西:材料開発室では、2024年度にキャリア採用を本格化させました。電池にも多くの種類があり用途も広がっていますが、新たな業務として水電解用電極(水素を作る電極)の開発に力をいれることになり、人材リソースが必要になることから募集を開始しました。
部門採用を強化するということは、通常業務に加えて採用業務に時間やパワーを割くということで、物理的に大変になるのは明らかでした。ですが、これまでの当社の歴史をたどると、さまざまなアイデアやブレイクスルーを生み出してきたのは、人材の「個の力」でした。そのため会社の発展を考えれば、技術者の採用こそが最優先すべき課題だと考えていました。

複数の検索条件でターゲット層を広げ、求める人材にアプローチしていった

──2024年度にはビズリーチを活用し、コンプレッサー技術部で5名、材料開発室で7名の採用に成功されました。キャリア採用強化において、ビズリーチの活用を決めた理由は何でしたか。

鴻村:先ほどお話しした通り、私は2018年にもビズリーチを利用して採用活動を行っていました。当時は、新技術の開発を検討しており、スキルを持った外部人材を必要としていました。しかし、求人に細かな情報を入れてしまうと、競合企業に当社がやろうとしていることが伝わってしまいます。かといって、肝心なところを曖昧な表現に変えてしまうと、人材紹介会社から候補者を紹介してもらえません。そんなジレンマを抱えていたときに、人事に教えてもらったのがビズリーチでした。
ビズリーチを使えば候補者に直接アプローチできるので、情報をどこまで詳細に伝えるべきかのさじ加減を調整できます。競合企業やその周辺分野に勤めている方であればあまり詳しいことには触れず、まったく違う業種であれば詳細を盛り込んで、と濃淡をつけて情報を伝えられました。登録されている職務経歴書を読んで、この人のスキルは合っている・合っていないと判断してお声がけできることも画期的だと思いました。最終的に、求めていた専門人材をピンポイントに採用できたので、ビズリーチには良い印象を持っていました。なので、今回の採用ニーズにおいても、ごく自然にビズリーチに注力しようと決められました。

岡西:材料開発室でも、同じような理由で採用を強化すると決まったときに、人事からビズリーチの案内を受けました。私は元々当社に転職する前にビズリーチを使ったことがあり、システムの使い勝手の良さを感じていたので、すんなりと導入を決められましたね。

──ビズリーチの活用において、母集団形成や選考で工夫した点、こだわったポイントや取り組みについてお聞かせください。

岡西:まずはできるだけ広く母集団を形成してみようと思い、キーワードを複数入力して候補者検索を行いました。電池のみではなく、電気化学や触媒化学などの学問まで広げていったほか、扱ってきた材料などもキーワードに落とし込み、600~700人までヒットする人数を増やしていきました。そこから一人ひとりの職務経歴書を確認し、専門性がマッチしそうな方、当社にジョインすることがご自身の成長にもつながりそうな方…といった観点で絞り込む、地道な作業を行いました。求める人材に合ったキーワードや検索条件が定まってきてからは、毎週新着会員を確認していました。
適切な検索条件が見つかるまでは、まとまった時間を採用業務に使わなければなかなか前に進みません。スカウト返信率がどれくらいになるのかも分からない中でスタートしましたが、「まずは一通りのサイクルが回せるようになるまで頑張ってみよう」と覚悟を持って採用活動に向き合いました。

鴻村:まさに、検索条件をうまく設定するところが重要ですよね。私たちの部門ではコンプレッサー開発の技術や経験をピンポイントで持っている人を採用したかったので、初めは技術的なキーワードや在籍企業名で絞りました。ただ、その条件だけではデータベース上の対象人数が限られてしまうので、機械設計や自動車部品、自動車関連のキーワードも使い、勤務希望地を愛知県に絞った検索条件を作るなど、複数の条件を作成したうえで、新着会員の方や、職務経歴書を最近更新された方にスカウトを送信していく形で進めていました。

──人事やビズリーチの担当者とはどのように連携していきましたか。

鴻村:候補者の書類選考、面談、面接は部門で行い、選考の手配などオペレーション部分は人事に担ってもらいました。ビズリーチの担当者には、検索条件の内容に関して相談したりアドバイスをもらったりしましたね。ビズリーチのシステム自体は操作性が良く、使い方が分かれば自分たちで進めていけるので、自走しやすいサービスだと思っています。ある程度自分たちで労力をかけていかなければ、部門内に採用ノウハウが蓄積されていかないとも考えていました。

岡西:選考プロセスが進み候補者から条件面で要望があったときには、人事によく相談に乗ってもらいました。ほかにも、候補者からの質問にすぐに返信ができないときに人事から返してもらうなど、情報連携もスムーズで一体感がありました。ビズリーチの担当者には統計的な話をよくしてもらいました。スカウトへの返信が少ないと「自分たちがやっていることは正しいのだろうか」と不安になっていたのですが、同業界と比較したデータを示してもらうことで、安心して採用活動を進められました。

転職意向ゼロからの入社も。面談でのオープンな対話が採用成功につながった

──採用にいたったポジションや記憶に残っている採用事例など、取り組みの成果についてお聞かせください。

鴻村:一番印象に残っているのはビズリーチで初めて採用できた候補者です。現住所は関東だったのですが、北陸地方の大学を卒業していたため、「愛知への転勤も可能性があるかもしれない」とスカウトしたところ、実は愛知県出身だったことが判明したのです。面談で私たちがやりたいことを伝えてからは、とんとん拍子に話が進みました。職務経歴書に書かれていなくても愛知に縁のある人は多いので、本当に気になる方には積極的に声をかけることが大切だと感じました。

岡西:2024年度に採用できた7名のうち、自動車メーカーから転職を決めてくださった方はとくに印象に残っています。スカウトに返信をいただき面談したときは、「今すぐの転職は考えていない」とおっしゃっていましたが、お互いに専門領域が近かったこともあり、技術的な話をし始めたら意気投合し、転職を前向きにご検討いただけることになりました。関東在住の方だったので、転職となれば家族とともに愛知への転居が必要になります。配偶者の方も転職する必要があり、非常に大きな決断だったはずです。人事と連携しながら、候補者の懸念がないようにフォローし続け、内定承諾をいただいたときは非常にうれしかったですね。面談という場がなければ、この方とは接点を持てなかったと思うので、ビズリーチならではの成果だったと考えています。

──候補者とのコミュニケーションにおいて、意識していること、心がけていることがあればお聞かせください。

鴻村:できるだけ率直に、自分たちの状況を話すことです。ポジティブなアピールポイントはもちろん、ネガティブなことや現状の課題、リアルな残業時間など候補者が知りたいであろうことを可能な範囲でお話ししています。採用はマッチングなので、お互いに何か隠した状態で進めてもいい結果にはつながりません。ネガティブなことを伝えた結果、選考を辞退された方もいましたが、もし伝えずにご入社いただけていたとしても、どこかですれ違いが起こっていたでしょう。お互いにオープンに対話し、しっかりと当社への理解を深めたうえで入社を決めていただくことが、その後のパフォーマンスにつながると考えています。

岡西:技術系の方は、専門的な話をすると盛り上がることが多いなと、選考に携わるようになって気が付きました。私も技術職なのでよく分かるのですが、その部門やポジションが何をやっているのかを知れば知るほど興味が湧いてきて、自分の専門分野についても語りたくなるんです。なので、お互いの領域について話し、候補者の方がどんな業務に喜びを感じているのかを知ったうえで、「当社に来ていただけたら、こんな技術に触れられます」「こんな開発を手掛けられます」と話を広げていくよう意識していました。

鴻村:確かに、面談した候補者から「部門のことや業務の詳細が分かっている方と話せて良かったです!」と言われることがあります。どこもそうなのでは…と思っていたのですが、人事が面談・面接する会社では、なかなか詳細まで話せないケースもあるようです。現場にいる自分たちが選考の早い段階で出ていくことは、候補者にとって大きな価値があるのだな、という気づきがありました。
私は2025年4月からプロセス改善室に異動したのですが、コンプレッサー技術部の後任に採用業務を引き継げるように、コツコツとまとめてきたノウハウ資料を共有しました。そこではとくに初回の面談の内容に触れており、「社内にいれば当たり前でも、外部から見れば魅力的に感じるポイント」を面談で話せるように、資料に細かく記しています。選考を通じて、候補者から驚かれたこと、興味を持っていただけたことを、今後も当社で働く魅力として伝え続けてほしいと思っています。

──お二人の話から、採用を自分たちの仕事として捉え、強く推進していく姿勢を感じました。そのマインドはどのように形成されてきたとお考えですか。

鴻村:採用活動をしなければ事業が前に進まない、と追い込まれているからだと思います。主務が忙しいと言っていても、今の時代はどこかから求める人材が来てくれるわけでもありません。「自分一人だとしても、やらなければいけない」という危機感が、採用にかけるモチベーションになっています。

岡西:短期的には大変でも、組織にとっていい人材を採用することは中長期的にプラスになり、自分にも返ってくるものだと思っています。「3年後、5年後に組織が得をするのはどちらか」と考えれば、採用活動に力を入れる重要性も自然と分かるのではないでしょうか。これからの事業成長の要になるのは「個の力」です。新卒採用でも、部門の人間が大学に行ってリクルート活動をしていますし、会社全体が持つ「人材が大事」という考えに、私も影響を受けているのだと思います。

──最後に、この記事を読んでいる人事・採用業務にかかわる読者の皆さまへ、メッセージをいただけますか。

鴻村:せっかく転職するのなら、企業も個人も幸せになってほしい、と思っています。包み隠さずオープンに対話し、双方がマッチングを図ることが、入社後も長く「入ってくれてよかった」「入ってよかった」と思える関係性を築いていくはずです。

岡西:昨今、新卒採用もキャリア採用も相当難度が高くなっているという実感がありますが、やはり事業を前に進めるためには人材が一番大事です。採用活動に対して、「将来のために時間を投資すべき」という覚悟のもと、目の前の業務と同じくらいの熱量で採用に向き合うという意志を会社として持ち、浸透させていくことが大切だと考えています。

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。