「こんなはずではなかった……」と、企業と従業員の双方が困惑してしまう採用のミスマッチ。早期離職につながり新しい人員の補充が必要になるなど、大きな損失を生んでしまうため、採用活動の段階からこれを防止するための施策を打つ必要があります。
本記事では採用におけるミスマッチの種類や起こる原因、入社前・入社後にミスマッチを防ぐ施策に加え、実際に起こってしまった場合の対処法などを解説します。
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採用のミスマッチとは?

採用のミスマッチとは、従業員が企業に求めるものと、企業が従業員に提供できるものや期待するものに、ズレが生じている状態のことです。
企業にとっての採用のミスマッチとは、例えば「〇〇の分野で活躍してもらえると思っていたが、そうではなかった」とか、「〇〇のような特性をいかした働き方を期待していたが、実際は違った」といったことを指します。
候補者や従業員にとっての採用のミスマッチとは、例えば「自分の想定しているような働き方がこの企業でできないことが分かった」とか、「この企業は自分の想定しているような環境ではなかった」といったことを指します。
違和感から企業へのロイヤルティーが下がったり、仕事のパフォーマンスが下がったり、最終的に退職してしまうこともあるため、採用のミスマッチはできるだけ避けなければならない事象です。
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採用のミスマッチの種類

採用のミスマッチには大きく分けて3つの種類があります。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
労働条件に関わるミスマッチ
労働条件に関わるミスマッチは、基本的に、従業員が感じるミスマッチです。「試用期間は3カ月だと聞いていたのに、実際は6カ月だった」「昇給が検討されていない」「残業代についての規定が、面接時に聞いていた内容と異なる」などがその例です。
労働条件については、労働基準法でその明示が義務付けられており、企業は労働条件を順守する必要があります。しかし、採用時にこれらをうやむやにしていた結果、後でミスマッチが起こることがあります。
また、労働条件として規定されていないことでも「月の平均残業時間は10時間ほどと聞いていたのに、実際は毎月30時間を超えている」「宿泊を伴う出張は月に1度程度と聞いていたのに、実際は毎週のようにある」など、事前に聞いていた労働環境と異なるといったミスマッチもあります。
社風やカルチャーに関わるミスマッチ
社風やカルチャーに関わるミスマッチは、企業と従業員の双方が感じうるミスマッチです。
企業側が感じるミスマッチの例としては、「選考を通じて自社の社風やカルチャーにフィットするであろうと判断し、迎え入れたものの、実際はフィットできていない様子だ」などが挙げられます。
従業員側が感じるミスマッチの例としては、「選考を通じて社風やカルチャーになじめそうだと判断して入社したものの、実際はなじめなかった」、あるいは「選考で聞いていた社風やカルチャーと実態が異なるように感じた」などが挙げられます。
スキルや能力に関わるミスマッチ
スキルや能力に関わるミスマッチは、企業と従業員の双方が感じうるミスマッチです。
企業側が感じるミスマッチの例としては、「選考を通じて今回募集しているポストにふさわしいスキルや能力を備えていると判断し、採用したが、実際に働き始めてみるとスキルや能力が不足していた」などが挙げられます。
従業員側が感じるミスマッチの例としては、「選考を通じて今回募集されているポストで自分のスキルや能力をいかせそうだと感じ入社したものの、実際はスキルや能力をいかすことのできないポストだった」、あるいは「選考で聞いていたスキルや能力とは別のスキルや能力が求められている」などが挙げられます。
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採用のミスマッチが注目される理由

採用のミスマッチは昔から根強い問題であり、多くの企業が注目しています。具体的にどのような理由で「採用のミスマッチ」が注目されているのか、見ていきましょう。
早期離職への影響
採用のミスマッチが注目される理由として、まず1つめに早期離職への影響が挙げられます。
特に新卒採用において、早期離職の多さは問題視されてきました。令和3年(2021年)に厚生労働省が発表した新卒者の離職状況によると、平成30年(2018年)3月卒の新規大卒就職者において就職後3年以内の離職率は31.2%となっています。3人に1人は、3年以内に離職しているというわけです。平成7年(1995年)から現在に至るまで、30%を割り込んだのは平成21年(2009年)のみで、長く続く傾向であることが分かります。

また、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、初めて正社員となった人(新卒者に限定しない)が離職した主な理由としては以下のような点が挙げられていました。
- 肉体的・精神的に健康を損ねたため
- 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため
- 人間関係がよくなかったため
- 自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため
- 賃金の条件がよくなかったため
「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」などは採用のミスマッチが起こっていたのではないかと推察されますが、それ以外の項目に関しても、事前に防げたミスマッチが影響している可能性もあります。早期離職には採用のミスマッチが影響しているケースが少なくないといえるでしょう。
参考: 独立行政法人労働政策研究・研修機構|若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ
起きた場合のコストが大きい
採用のミスマッチが注目される理由として、ミスマッチが起こった場合は企業側にも従業員側にも大きなコストが発生するということも見逃せません。
企業側のコストとしては、金銭的なコストが挙げられます。採用のミスマッチが起こり、従業員が早期に退職してしまった場合、採用や教育にかかった費用、在籍時にかかった費用が損失となることに加えて、新たに人員を補充するためにかかる費用が発生します。加えて、それらに関わる人事や採用担当者の業務負担も考慮しなければなりません。
また、もしその従業員にミスマッチが起こらず、自社で活躍していたら……と仮定すると、その従業員が生み出したであろう利益についても、その機会を損失していることになります。
採用のミスマッチが起こると従業員のストレスが増加することが懸念されます。ミスマッチにより退職した従業員に採用面接や新人の教育等で深く関わったメンバーは、徒労感を覚えますし、モチベーション低下にもつながりかねません。
また、新たな人員を補充し、業務をスムーズにこなせるようになるまで教育する間、もともと在籍していた従業員の業務負担が大きくなることも考えられます。
上記は採用のミスマッチが起こった結果、従業員が退職する場合に予想されるコストです。しかし現実には、採用のミスマッチが起こりつつも、従業員が勤務を続ける場合もあります。そのような場合、人事担当や現場の従業員には「支援」するためのコストが発生します。社風やカルチャーへの理解を深められるよう働きかけたり、精神的に落ち込んだ従業員をはげましたりといった行動が求められるでしょう。
従業員側も、ミスマッチが解消されるよう業務において人一倍の努力をしたり、価値観をすり合わせたりするなどの行動が必要になります。これらは採用のミスマッチがなければ発生しなかったものであり、企業としても未然に防ぎたいところです。
新卒採用でミスマッチが起こる原因

採用のミスマッチはどのようにして起こるのでしょうか。ここでは、新卒採用時に考えられるミスマッチの原因を、企業側、新卒者側に分けて解説します。
【企業側1】よい情報だけを伝える
新卒採用は他社と足並みをそろえて行うことが多く、優秀な人材の取り合いという要素もあります。選考時、候補者に自社へのよいイメージを持ってもらうために、つい好印象を与えるようなプラス面ばかりを強調し、マイナス面を伝えずに選考を進めてしまうことで、候補者が入社後にギャップを感じてしまう可能性があります。
【企業側2】適性や能力を正確に判断できない
新卒採用は、企業によっては大量のエントリーの中から選考を始める必要があります。集団面接を行うことも多く、一人一人をじっくりと選考する時間が不足しがちです。そのため、結論を急いでしまい、仕事への適性や能力を正確に判断できないことがあります。
また、新卒者には社会人としてのスキルがないため、学歴やインターン経験などの経歴に着目しすぎてしまい、自社の社風に合っているか、ポテンシャルがあるかなどのポイントを見落としてしまうこともあります。
【企業側3】内定者フォローやオンボーディングに不備がある
特に新卒採用では、内定から入社までに何カ月も、場合によっては半年以上も期間があくことがあります。その間内定者フォローを怠ると、内定者の心境の変化を見逃し、気がついたら内定辞退…ということも起こり得ます。内定者面談などを行い、内定者の疑問点・不安点を解消するとよいでしょう。
さらに、新卒者は社会人としての経験がない状態で入社してくるため、企業の一員として定着させ、戦力化させるまでのプロセスであるオンボーディングが非常に重要となります。また、新卒者の適性に合わない配属やOJT(オンザジョブトレーニング)によりミスマッチが起こり、早期退職につながるケースも散見されます。
【新卒者側1】働くことや自分に適した働き方がイメージできない
新卒者は一度も会社員として働いたことがないため、「働く」ということがどういうことなのか、実体験を伴った理解ができません。このことにより、自分に適した働き方がどのようなものか、イメージすることが難しいという側面があります。そのため会社選びや職種選びで間違った選択をしてしまうことがあるのです。
加えて、誤った自己分析をしている、という場合もあります。多くの新卒者は就職活動時に自己分析を行いますが、それは「学生として過ごしてきた自分」の自己分析です。「社会人として働く」自分を分析できているわけではないため、結果として自己分析のピントがずれてしまうことがあります。
【新卒者側2】情報が不足している
新卒者は社会人ではないこともあり、企業についても、業界についても、職種についても、得られる情報が限られているため、基本的に情報不足であるといえます。
輪郭がぼんやりとしたまま、イメージや企業からの説明だけで企業選び・職種選びを行ってしまうこともしばしばであるため、入社後に「こんなはずではなかった」などと感じるミスマッチが起こりやすいといえます。
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中途採用でミスマッチが起こる原因

次に、中途採用時に考えられるミスマッチの原因を見ていきましょう。企業側、中途採用者側に分けて解説します。
【企業側1】必要な人材の要件を正確に定義できていない
どのような人材が必要かという人材要件の定義ができていなければ、自社にマッチした人材を採用することはできません。
「優秀な人」など、漠然とした定義しか用意していない場合や、実際に必要な要件と全く別の要件を定義してしまっている場合は、採用してもミスマッチとなってしまう可能性が高くなります。自社が採用したい人物像を明確化させる「採用ペルソナ」を設計すると効果的でしょう。
【企業側2】選考でスキルや適性を正しく判断できていない
特に面談や面接といった会話をする形式の選考では、面接官の主観的な判断によって評価がブレたり、面接官の認知バイアスのゆがみによって間違った評価をするというリスクがあります。
適性検査などを実施して客観的なデータを活用するとともに、面接では候補者の思いや考えではなく、経験や実績、エピソードから得られる事実をベースにして評価を行いましょう。
【企業側3】情報量の不足とフォロー体制
新卒採用と同様、選考を通してよい情報をメインに伝え、自社にとってデメリットとなるような情報を開示しないことで、候補者の理解が浅いまま選考が進み、そのまま入社してしまうことがあります。その結果、候補者は入社後に「こんなはずではなかった」などのギャップを感じてしまいます。
また、内定者のフォローや入社後の受け入れ体制もミスマッチが起こりやすい部分です。内定後の不安や困りごとを放置したり、配属後に現場の社員に任せきりになって人事担当者の目が届かなくなってしまうことで不安を感じさせたりして、ミスマッチが発生してしまうことがあります。
【中途採用者側】自分の能力を正確に分析できていない
自身の能力やスキルを正確に分析できていないまま転職活動を進めると、自分が本当に持つ能力と異なるものを求められ、入社後に苦労することがあります。また、自らの能力を高く見積もりすぎる、あるいは低く見積もりすぎることから起こるミスマッチもあります。
入社前に行いたい、採用のミスマッチを防ぐ施策

採用のミスマッチを防ぐには、採用を始める時点からさまざまな施策を行う必要があります。入社後にミスマッチが分かり、早期離職となってしまうと大きな損失を生んでしまうため、入社前に対策をしておくことが最も重要です。
- 自社に必要な人材の要件を正確に定義する
- 構造化面接を取り入れる
- 候補者に対して期待していることを具体的に伝える
- 自社の悪い面も伝えるRJPを行う
- 候補者の苦手なことや懸念点を把握する
- 内定後、現場の従業員と交流する機会を設ける
- 日頃から自社の情報を発信する
- リファーラル採用を行う
自社に必要な人材の要件を正確に定義する
「優秀な人材が欲しい」「コミュニケーション能力が高い人が欲しい」といった漠然とした要件ではなく、「どのような業務をしてどのような成果を出してもらいたいから、どんな特性を持った人が必要」などと細かく定義しましょう。社内で活躍している従業員の特性をリストアップすると、要件の洗い出しがしやすくなります。
また、人材の要件を定義するときは、必ず満たしておいてほしい要件とあると望ましい要件、避けたい要件、今回は不問とする要件に分類しておくと、選考する際に判断がしやすくなります。
構造化面接を取り入れる
構造化面接とは、あらかじめ設定した評価基準と質問項目をベースにして、決まった手順の通りに進める面接のことです。同じ質問項目を決めておいた順番通りに質問するため、客観的な評価がしやすく、面接官による評価のブレの軽減が期待できます。
候補者に対して期待していることを具体的に伝える
候補者が想定していた業務内容や業務量、業務レベルなどと、自社が期待しているパフォーマンスの質に大きなかい離がある場合、ミスマッチとなり、離職の原因になってしまいます。
もし入社してもらえた場合、どのような業務をどのくらいの量、どのくらいのクオリティーで遂行してほしいか、毎月のノルマや到達目標はあるのかなどを、事前にできる限り具体的に伝えましょう。
ジョブディスクリプション(職務記述書)にまとめ、文書で伝えることも、認識のズレを防ぐ効果的な方法の1つです。ジョブディスクリプションを用意する場合はその内容を口頭で詳しく説明する機会を必ず設け、お互いの認識をすり合わせるようにしましょう。
自社の悪い面も伝えるRJPを行う
RJP(Realistic Job Preview)とは、現実的な仕事情報の事前開示という意味です。よい面も悪い面も含め、自社のリアルな情報を事前に通知することを指します。
RJPは採用のミスマッチを防ぐだけではなく、ネガティブな情報までも提示する企業の姿勢に対して「オープンな会社だ」「情報を開示してくれている」「誠実な対応だ」と候補者が魅力を感じてくれるという効果も期待できます。
実施にあたっては選考の段階から行うことが大切です。悪い面も把握したうえで、「それでも入社したい」と思ってくれる候補者を採用したほうが、長く自社で活躍してくれる可能性が高いためです。
ネガティブな情報を開示する際は、「残業が多い時期もあるが、それは事業の特性が〇〇だから。特定の繁忙期が発生する代わりに、落ち着いている時期はまとまった休暇を取る従業員も多い」というように、ネガティブな面に対する合理的な理由と、それをカバーする情報があると理想的です。
候補者の苦手なことや懸念点を把握する
成果を出しやすい環境や、得意な業務を聞くという形をベースにして、候補者の苦手なことについてもできる限り把握しておきましょう。
候補者は自分のマイナスな情報や、選考でマイナスに働くかもしれない情報を開示することに抵抗があるものです。企業側も自社の悪い面を伝え「お互いがマイナスな情報も開示することによって、採用のミスマッチを防ぐというメリットがある」ということをあらかじめ伝えておくとよいでしょう。さらに、今後のキャリアプランや譲れない条件なども聞いておくと、採用のミスマッチを軽減できます。
内定後、現場の従業員と交流をする機会を設ける
交流会といった形で、内定者が現場の従業員とコミュニケーションを取れるようにするとよいでしょう。「残業時間はどのくらいか」「連休は取りやすいか」など、選考の際は合否を気にして聞けなかった質問なども聞きやすいというメリットがあります。
この交流会をきっかけに内定辞退が起こる可能性もありますが、従業員が話す内容は隠しておけるようなことではなく、入社後には自然と伝わってしまうことです。入社後に初めて実態を知り、採用のミスマッチが起こって早期離職につながるよりは、入社前に開示できる情報は開示しておき、内定者に判断してもらったほうがよいでしょう。
内定者としても、「実際のところ、業務ではどの程度のレベルのスキルを求められるのだろうか」「業務量はどのくらいなのだろうか」「ワークライフバランスはどうなるのだろうか」と、入社後の生活に不安を抱えているものです。不安を抱えたまま入社するよりも、現状を正直に伝え、安心・納得して入社してもらうことが大切です。
日頃から自社の情報を発信する
「私たちの会社はこんな会社です」「こんなカルチャーがあります」「こんな考え方で事業に取り組んでいます」「こんな従業員が働いています」など、会社を理解してもらうための情報を日頃から発信しておきましょう。候補者側が自社への理解を深めたうえで応募してくれるため、採用のミスマッチを防ぐことができます。
こうしたことを伝える媒体として、近年は採用オウンドメディアが注目されています。数年に1度リニューアルされる採用サイトとは異なり、採用オウンドメディアは基本的に開設してからずっとコンテンツを積み上げていくものです。立ち上げに時間とコストはかかりますが、積み上げたコンテンツが自社の財産となり、広告塔になってくれます。TwitterやFacebook等のSNSを使って発信するのもよいでしょう。
リファーラル採用を行う
「リファーラル採用」は、自社の従業員から人材を紹介してもらう採用手法です。自社とマッチ度の高い人材の確保や採用効率の向上、コストの削減など、さまざまなメリットがあります。
リファーラル採用によって紹介された候補者は、知人である自社の従業員から聞いた情報により、すでに社内の雰囲気や業務内容などを、マイナス面も含めある程度把握しています。そのため、大きなミスマッチが起こる可能性が低いといえます。
また、従業員が、一緒に仕事をしたことがある人を候補者として紹介する場合、すでに現場での働きぶりを知った状態で紹介することになります。通常の選考では見ることができない、現場でのスキルや特性を把握したうえで採用できるため、ミスマッチの防止になるでしょう。
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入社後に行いたい、採用のミスマッチを防ぐ施策

入社前に採用のミスマッチを防ぐ施策を行っていても、入社後にミスマッチが発生してしまうことはあります。入社後に行うことができる、採用のミスマッチを防ぐための施策を紹介します。
準備期間を設ける
入社してすぐ現場に入り、業務を行わせるのではなく、まずはオリエンテーションや自社についての研修を実施し、業務への準備期間を設けるようにしましょう。会社のビジョンや目指す方向、業務の内容を最初に伝えることで、徐々に帰属意識を育んでもらえます。
また、数年後に経験できそうな業務や、現在取り組んでいる新しい人事制度、働くことで成長した従業員の例など、今後の予定や展望を知らせることで、モチベーションを高めることができるとともに、定着率が高くなる効果が期待できます。
メンターを設定する
上司以外に、気軽に相談しやすい先輩従業員をメンターに指定することも大切です。特に入社してすぐは日々の業務で分からないことや、小さな困りごとが多いものです。そのような場合に気軽に相談や質問ができるメンターを決めておけば、新しく入社した従業員も気兼ねなく質問や相談をすることができ、安心して業務に取り組めます。
近年リモートワークが増えた会社の場合には、ちょっとした相談や質問がしづらいため、メンター制度によって気軽に話せる従業員がいるというのは心強いです。日頃からまめにコミュニケーションを取るほか、定期的に1対1のミーティングを設定し、話す機会をつくるとよいでしょう。
目標を設定してモチベーションを保つ
メンターや上司と相談し、新しく入社した従業員の具体的な目標を設定しましょう。目標を設定することにより、モチベーションを保つことができます。
進捗度合いや達成度は定期的にミーティングで確認し、達成できたら大いに喜んであげることが大切です。特に日々の業務がルーティン化している職種では、仕事の内容に興味を失ってしまうこともしばしば起こります。そのような場合でも、目標の設定により、メリハリをつけてあげることが大切です。また、目標を達成できたときもできなかったときも、なぜその結果に至ったのか、改善点は何かなどを洗い出すようにしましょう。
ただし、目標が厳しいノルマのような形になってしまうと、プレッシャーになってしまうこともあります。スモールステップで達成しやすい目標と、中長期的な成長のための目標のどちらも設定し、大きな目標に向かいつつも、達成感ややりがいをこまめに感じられるようにするとよいでしょう。
異動の希望を取り入れる
ミスマッチを防止するには、従業員本人の異動の希望を取り入れることも有効です。パーソル総合研究所が行った調査によれば、会社主導と個人希望の異動配置経験者別に異動後の職務満足度を見ると、異動後に満足している層は会社主導では38.7%、個人希望では55.5%でした。

また、職務満足度が異動前後で「不満足」から「満足」に変化した層は、会社主導で12.0%、個人希望では23.0%と、約1.9倍の差がついています。

会社主導による異動命令の受け入れ意向を尋ねる質問では、職種の変更を伴う異動については、「会社指示なので従う」43.2%、「希望条件に合えば従う」35.2%、「希望条件に合わなければ拒否する」14.4%、「拒否できないのであれば、退職や転職を検討する」7.2%と、拒否意向がある層は21.6%でした。

ただし、明確な拒否意向がある層だけでなく、「会社指示なので従う」層にも、ミスマッチが起こる可能性があることに留意する必要があるでしょう。
すべての異動を従業員本人の希望に任せることはできませんが、異動に関しては従業員の立候補制度を取り入れることも1つの方法です。ポジションへの適性は、時に本人よりも他者(この場合、会社)のほうが理解している場合があるからです。
また、立候補制では自社が計画する人員配置が実現できない可能性もあります。これらに加え、キャリアの計画を持たずに1つの部門に長期在籍し、就業意欲や学習意欲を持たないままに過ごしてしまう従業員が増えてくるという懸念もあるでしょう。
会社主導で異動配置を行う際には、理由に関する十分な説明を行うことと、異動先のポジションについての情報提供を十分に行うことが大切です。異動前に十分にコミュニケーションを行うことが、異動後の活躍や適合度を高めることが同調査から示唆されています。
ミスマッチが起こった場合の対処法

入社前・入社後と対策を行っても、ミスマッチが起こってしまうことはあり得ます。どのように対処すればよいのか、確認していきましょう。
状況を把握する
まずは配属先の上司やメンター、従業員にそれぞれヒアリングを行い、実際にどのようなミスマッチが起こっているのか、なぜミスマッチが起きたのかを把握します。別々に話を聞き、矛盾点がないかもチェックしましょう。
欠員をフォローする
ミスマッチが起こり、退職や休職等によって欠員が発生した場合は、早急に欠員を補充します。ミスマッチに関する面談やヒアリングなどで現場の業務がさらに滞る可能性もあるため、現場に負担をかけすぎないよう注意しましょう。
採用方法や条件、待遇などを見直す
ヒアリングによってミスマッチの原因を究明した後、再発を防止するために採用方法や条件、待遇などを見直します。ただし条件や待遇などを見直す場合は、すでに在籍している従業員とのバランスも大切です。
ミスマッチが再び起こるとさらに損失は大きくなります。次の採用活動ではミスマッチが起こらないように、原因となり得る要素を1つずつ解消していきましょう。
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まとめ

ひとたび起こってしまうと、大きな損失となってしまう採用のミスマッチ。まず心がけたいのは、ミスマッチを起こした状態で新しい従業員を迎えることがないようにする、ということです。そのため、採用活動から入社前までの段階での施策を重点的に行う必要があります。
入社後の対策についても留意して進めていくことで、早期離職を防ぎ、従業員にとって働きやすい環境をつくることができるでしょう。
ビズリーチ導入から1年で採用コストを80%削減した企業も

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