近年、「ミートアップ」を採用手法として導入する企業が増えており、その言葉を耳にしたことがある人も多くいるでしょう。しかし、「ミートアップ」とはどんな意味なのか、しっかりと理解していない人も多いかもしれません。
本記事では、ミートアップの意味から採用に導入するメリット・デメリット、開催までの流れなどを解説します。
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ミートアップとは

まずはミートアップについての基礎知識を見ていきましょう。言葉の意味や目的、採用手法としてのミートアップについて詳しく解説します。
ミートアップの意味と目的
「ミートアップ」(meetup)とは、共通の目的を持った人たちが集まる交流会を意味する言葉です。もともと2002年にアメリカのミートアップがつくった造語で、当時はミートアップが提供するプラットフォームのことを指していました。
しかし現在では、こうした交流の場自体を「ミートアップ」と呼ぶようになっています。主催者がイベントのテーマや日程をSNSなどで告知し、興味を持った人たちが集まる形式が一般的です。
ミートアップを開催する主な目的は、「共通のテーマや興味がある人との出会い、情報共有」です。勉強会形式で行われることもありますが、講習会などとは違いカジュアルな雰囲気で行われるため、参加者同士で親睦を深められることが特徴です。
採用手法としてのミートアップ
2015年ごろから、採用手法の1つとしてミートアップが、日本の企業にも取り入れられました。ミートアップでは、集まった人たちとの交流を通じて自社の魅力を直接伝えられるため、「採用ブランディングが低コストかつ手軽にできる」と注目されています。
ミートアップを採用手法として活用する場合、開催方法はいくつかの種類にわけられます(詳しくは「ミートアップの形式」の項目参照)。職種や人材像などによって使いわけると、ミートアップをより効果的に採用というフィールドで活用できるでしょう。
ミートアップ採用が増えている背景
ミートアップ採用が増えている背景には、人材の採用が難しくなっている現状があります。
少子高齢化による生産年齢人口(15~64歳)の減少に伴い、人手不足が深刻化しています。厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、2023年4月の有効求人倍率は1.32倍。求人数よりも求職者の方が少ない「売り手市場」が続いています。
企業間の採用競争も激しさを増しており、求職者に「この会社で働くことは魅力的だ」と思ってもらえるよう自社をブランド化する「採用ブランディング」を意識した採用活動が求められます。
企業の魅力を能動的に発信し、積極的に求める人材にアプローチしていく必要性が高まっている状況において、自社の魅力を直接求職者に伝えられ、転職潜在層にも働きかけられるミートアップを導入する企業が増加しました。
若手人材やミレニアム世代は、キャリアに対する価値観が多様化し、労働条件と同時に、企業のカルチャーや働きがいを重視する傾向があります。ミートアップを通じて、ホームページや募集要項では伝わらない、企業のカルチャーや雰囲気を感じてもらうことが採用を成功させる重要な要素になっているのです。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年4月分)について」
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ミートアップの形式

ミートアップの形式には大きくわけて3種類あります。また、開催の方法も「オフライン」「オンライン」にわけられます。
オフライン開催の場合、実際に企業の従業員と参加者が対面で話ができることから、「どんな人材が働いているか」など、自社について深く知ってもらえる側面があります。
一方、オフラインの場合、全国どこからでも参加できるため、地方在住の転職潜在層にもアプローチできるのが大きなメリットです。対面と異なり、ミートアップに参加する心理的なハードルは低くなりますが、画面越しのコミュニケーションでもリラックスした雰囲気をつくるためには、冒頭でアイスブレイクを入れるなどの工夫が必要です。
ここからは、「交流会型」「勉強会型」「説明会型」の3つの形式について詳しく紹介します。どんな形式で開催するのが企業にとってよいか検討するためにそれぞれの特徴を把握しておきましょう。

交流会型
「交流会型」のミートアップとは、参加者同士が交流できる場を提供する形式のことです。
参加者と従業員が一緒に軽食をとったりしながら、ざっくばらんに話をすることができます。リラックスした雰囲気のなかで質問を受け付けたり、自社の社風を伝えたりするなど、自社について、より気軽に理解を深めてもらう目的で行います。
そのため、参加者を絞り込まずに行われるケースが多いという特徴があります。採用につながることが理想的ですが、まずは認知度を上げたいといった企業に向いているスタイルといえるでしょう。
勉強会型
「勉強会型」のミートアップとは、定めたテーマについて参加者と知識を深めあう形式で行われるミートアップです。
定期的に開催することで、参加者が後に転職活動を行う際に「この企業を受けようかな」と感じてもらえるように、テーマや内容をしっかりと考えたうえで開催します。
交流会型よりも、ある程度参加者のスキルや職種を絞って開催したい場合に向いた形式で、エンジニア採用などに多く活用されます。
説明会型
「説明会型」のミートアップは、企業の説明を行う場として活用されています。面談や面接で個別に企業説明する機会を省く目的があります。
一般的な企業説明会や面接よりも和やかな雰囲気で行われることが特徴。企業の担当者が自社のビジョンや事業内容、社風などを説明し、働いている社員の声も伝えます。説明会型のミートアップは比較的、企業に関心を抱いてくれている参加者が多いため、その後の選考にもつなげやすいのが特徴です。
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ミートアップ採用のメリット・デメリット

採用にミートアップの導入を検討するためには、そのメリットとデメリットを把握しておく必要があります。それぞれについて理解を深めておきましょう。
【メリット1】自社のファンを増やせる
ミートアップのメリットの1つは、自社のファンを増やせる点です。
ミートアップには自社の従業員と参加者が交流するプログラムがあります。直接、コミュニケーションを取って、相互理解を深めることで、参加者が自社のファンになる可能性が高まります。
参加者が満足できるような魅力的なプロラムを提供できれば、採用活動において他社との差別化を図れ、結果として自社をブランド化して魅力を高める「採用ブランディング」にもつながるでしょう。
また、これまで自社に興味を持っていなかった転職潜在層にもアプローチできるのもメリットの1つ。1回ごとの規模をあまり大きくしなければ、一人一人と丁寧に交流を持つ機会になります。
企業に興味を持ってくれるファンが増えれば、知人の紹介などを通じて、さらにファンが増えていくサイクルを生み出せます。
【メリット2】マッチング精度の向上
2つ目のメリットは、企業と参加者のマッチング精度を向上させられる点です。
自社のホームページやSNSなどを利用すれば、気軽に企業の情報を発信できますが、一方的な発信になることが多いので、それだけでは企業の魅力が十分に伝わりません。
ミートアップを用いることで、従業員が参加者の質問に直接答えるなど、相互コミュニケーションを取れます。企業での働き方、現場の声などをダイレクトに伝えられることに加え、面接よりリラックスした雰囲気でやり取りするため、自社のカルチャーについてもより理解を深めてもらえます。
参加者に企業の魅力を十分に伝えておけば、マッチング精度が向上し、結果として採用におけるミスマッチも起こりづらくなります。
【メリット3】低コストで開催できる
「交流会」と聞くと、イベント会場をレンタルするなど、コストがかかるイメージを抱く人も多いかもしれません。しかしミートアップは、開催場所や開催方法次第でコストを抑えられます。
大規模にしない限り、ミートアップは自社内でも開催できますし、オンラインで実施する場合も場所代は不要です。「交流」を目的としているため、カジュアルなレンタルスペースでの開催も可能で、低コストで開催できます。
少ない予算で企業ブランディングの構築を期待できるミートアップは、効率よく企業イメージを発信できる戦略の1つとして考えられています。
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【デメリット1】労力がかかる
ミートアップは自社で企画して開催することから、ある程度の労力が必要です。
継続して開催することでさらなる効果を見込めるのがミートアップの特徴の1つ。そのため、毎回異なる企画を考え、参加者の興味を集める必要があり、人員や工数はそれなりにかかることを把握しておきましょう。
また、採用担当者だけでなく、経営陣や現役の従業員に協力を依頼するケースもあります。たとえば、エンジニアを希望する人材向けのミートアップを開催する場合、現場のエンジニア従業員にリアルな声を届けてもらうほうが自社の情報を伝えられます。開催ごとに適した従業員に参加してもらうなど、人手が必要になり、その分、予定の調整にも手間がかかります。
さらに、ミートアップの開催を告知しても必ずしも参加者が集まるとは限らず、集客の工夫が必要になる点も意識しておくべきです。自社のSNSやホームページを使用して、積極的に情報発信を行うと同時に、従来の求人媒体や広告を活用し、興味を持つ参加者を増やす工夫も求められます。
【デメリット2】すぐに効果が出るとは限らない
ミートアップは従業員と参加者がコミュニケーションを取り、相互理解を深める場です。
自社の認知度向上に役立つ一方、ミートアップで初めて自社と接触した人材がすぐに応募するとは限りません。採用に活用する場合、すぐに効果が出るとは限らず、短期的な結果ばかりを狙うことは適していないといえます。
そのため、中長期的な視点で行っていくことが大切です。定期的に開催することで参加者が友人・知人に紹介するなど、自社についてのコミュニティーが広がるでしょう。
ミートアップ開催までの流れ

ここからは、ミートアップを開催する際の流れや、準備しておくべきことを解説します。
下図のような流れで実行すれば、ミートアップの成果もより効果的になるでしょう。また、準備不足による当日のトラブルも防ぐことができます。

まずは参加してほしい人材の条件を設定して開催する目的、テーマを決めます。
開催する目的がただ「自社に応募してほしい」では効果的なミートアップとはいえないでしょう。そのため、職種や関心のある領域ごとに開催する必要があるほか、どんな人材に参加してほしいか、参加者にどうなってほしいかを検討します。
続けて、定めた目的を達成するために、どんなコンテンツを用意したらよいかを考えましょう。たとえば、冒頭に「IT業界の現状と将来」など、主催者が自社にかかわる話題を5分程度で話すライトニングテーマを設ける、親睦を深めるためボードゲームを実施するなどのプログラムが挙げられます。
目的とコンテンツにギャップがあると、参加者の満足度は低下する恐れがあるため、事前にしっかり検討しましょう。
開催の目的やテーマを決めた後は集客について考えます。
自社の公式サイトやSNSにミートアップの詳細を掲載し、情報を発信するのが一般的です。その情報を従業員に拡散してもらったり、求人情報を採用媒体に掲載する際にミートアップの開催日程を合わせて伝えたりする方法もあります。
また、参加者に当日の参加方法などの情報を迅速に送れるよう、メールのテンプレートを準備しておくとよいでしょう。
集客と並行して、開催当日のための準備も行っていきます。
ミートアップの形式が説明会型や勉強会型の場合、スライドに投影する資料や企業説明の資料が必要になります。コンテンツ内容と目的に相違がない資料かどうか、登壇者一人ではなく、複数人の視点で確認するようにしましょう。
集まった人たちとの交流を通じて自社の魅力を直接、伝えることがミートアップの目的の1つ。参加者に伝えたいことをしっかりとまとめておくとともに、当日の流れ、どの項目にどの程度の時間を割くか、おおまかなスケジュールも用意しておくと、当日のトラブルが防げます。
準備を終えてミートアップの開催日を迎えたら、事前に設定した目的を達成できるようにプログラムを進めます。
ミートアップに参加することでしか得られない情報があると、参加者の満足度は高まる傾向にあります。公式サイトに掲載されていない情報を伝えたり、目的に応じて、経営層や現場の従業員に参加してもらったりすると効果的です。あわせて、参加者が気になることを気軽に聞けるような雰囲気をつくるとよいでしょう。
ミートアップ実施後はアンケートをとるようにします。どこがよかったか、より知りたかった情報があったかなど、次回にいかせる質問を用意しておきます。
アンケートの結果を、次回以降に実施する企画の参考にします。
定期的に開催することも重要であるため、最初の数回は参加者の満足度ばかりを優先する必要はありません。定期的に開催する過程で、ブラッシュアップし、新たなコンテンツを用意するなどしていくことが重要です。
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ミートアップを開催するうえでのポイント

さまざまなメリットがあるミートアップですが、やみくもに開催しても効果を十分に発揮できません。以下に挙げるポイントを理解したうえで、開催するとよいでしょう。
- さまざまな媒体を使って集客する
- 小規模で開催する
- 定期的に開催する
さまざまな媒体を使って集客する
参加者が集まらなくては開催する意味がないので、幅広く集客することが重要です。ミートアップの様子が分かる写真や、楽しそうな雰囲気が伝わる内容を準備して、SNSや自社サイトなどのオウンドメディアを活用して発信します。
また、ミートアップ専用のツール、プラットフォームもあります。プラットフォームごとに利用層が異なるので、それぞれの特徴を見極めることも大切です。自社がミートアップを行っていることを知ってもらうため、さまざまな媒体を活用して集客しましょう。
小規模・定期的に開催する
ミートアップはカジュアルな交流が目的の1つため、少人数のアットホームな雰囲気で開催することが重要です。
より多くの人に向けてと考えて、大規模なイベントにすると、労力やコストがかかります。また、参加者一人一人と交流する時間も減って一方的な説明会のようになってしまい、参加者の満足度も低下する懸念もあります。参加人数は多くても20人程度がよいでしょう。少規模での開催を通じて、少しずつコミュニティーを広げていくほうが効果的です。
また、少人数での開催に向いていることから、採用の母集団を形成するには一度きりでは不十分でしょう。さらに、コミュニティーを拡大して自社のファンをつくっていくためには、定期的な開催が不可欠といえます。ミートアップを行う際は、長期的な目線に立って継続していくことが求められます。
アフターフォローを欠かさず行う
ミートアップを採用につなげるためには、参加者へのアフターフォローが欠かせません。
終了後に「より深く知りたいことはないですか?」などと尋ね、参加者の疑問を解消することが大切です。継続してつながりを持てるよう、会社説明会やカジュアルな面談への参加を呼びかけるのも1つの方法です。
ミートアップは採用にかかわるイベントの中でもカジュアルな雰囲気で行われ、気軽に参加できるのが特徴。次のステップとなる選考に進んでもらえるよう、きめ細やかな対応やフォローを心がけましょう。
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採用にミートアップを取り入れている企業事例

すでに日本企業にも導入されはじめているミートアップ。採用に取り入れ効果的に活用している企業を紹介します。
株式会社メルカリ
フリマアプリが人気のメルカリは、2016年から採用活動にミートアップを導入しています。
エントリーの際に、「聞きたいこと」や「職種」をヒアリングし、それをもとにテーマを設定しているのが特徴です。参加者同士の交流も深まり、質の高いイベント内容でミートアップを成功させています。
開催10カ月で700人以上が参加し、参加者を通じて採用につながったケースもあります。また、ファンを増やすためのミートアップイベントも開催するなど、企業側から積極的なコミュニケーションを図っています。
参考:メルカリ好きな人が200人集結!「Mercari FANS MEETUP」を開催しました|メルカリびより
キャディ株式会社
製造業向けの受発注プラットフォームを提供するキャディは、2018年からミートアップに力を入れています。
キャディのミートアップは、プレゼンよりも座談会形式が多く、「参加者に話せる場を提供すること」を重視しています。
また、企業のホームページでミートアップの開催情報を積極的に発信するなど、ハードルを低く設定して開催の回数を重ねることを意識しているといいます。中長期的な目線を持ち、定期的に実施していった結果、参加者からの評価も高まり、1年で90人を採用した実績があります。
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