alumniMV

アルムナイとは? 採用現場で注目される理由や企業の活用事例を解説

昨今、人材採用の現場で聞かれるようになった「アルムナイ」という言葉。アルムナイは、人事領域で使われる場合「企業の離職・退職した人の集まり」を指します。

一度退職した元社員を、再び雇用するアルムナイ採用は、外資系企業などでは採用方法の一つとされています。この考え方は、雇用の流動性が高まってきた日本でも徐々に普及してきました。

今回は、アルムナイ採用について解説するほか、アルムナイネットワークの活用事例や構築のポイント、アルムナイとのつながりを活用するメリット・デメリットなどをお伝えします。


あなたの面接にあてはまる「ダメ習慣」はありませんか?

ダメ面接官の10の習慣
  • 明確な評価ポイントがない人は不合格にしてしまう
  • つい自分に似た人を評価してしまう
  • 短時間で人を見抜こうとしてしまう

ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから

アルムナイとは

アルムナイとは

アルムナイの活用は、企業側にとってさまざまなメリットがあるとして近年、注目を集めています。効果的に活用するためには、人事担当者は言葉の意味を正しく理解しておく必要があります。

まずは、アルムナイが持つ意味と、採用手法の一つとして用いられるアルムナイ採用について解説します。

アルムナイの意味

アルムナイという言葉は、英語でalumniと表記します。alumnusの複数形で、「卒業生、同窓生、校友」という意味です。

人事領域ではそこから転じて「企業を離職・退職した人の集まり」のこと。一般的には定年退職者以外の離職者を指します。OB・OGといわれる場合もありますが、ジェンダーレスの観点からアルムナイを使用するケースも増えています。

退職者を再雇用するアルムナイ採用や、アルムナイと関係性を構築するアルムナイネットワークのほか、アルムナイにまつわる取り組み全体を「アルムナイ制度」と表現する場合もあります。

海外や外資系企業では、アルムナイを人材リソースとしてとらえて再雇用したり、アルムナイネットワークを事業に生かしたりするのが特徴です。

日本では従来、結婚や介護、配偶者の転勤などによる離職者の出戻り・再雇用制度がありました。一方でアルムナイの考え方は、退職理由にかかわらず「転職者(離職者)」の再雇用や、ネットワーク活用を推進することに特徴があります。

アルムナイ採用

アルムナイ採用は、前述のとおり一度、自社を退職した人材を再び雇用することです。在職時の上司や同僚が直接、声をかけて採用につなげることもあれば、再雇用に関してアルムナイネットワークなどを用いて告知し、応募を待つ方法もあります。

求人広告の掲載や、人材紹介会社などを介さず採用活動を行えるため、採用コストを抑えられる点が特徴です。また、自社での業務を経験していることから、教育コストの削減も期待できます。

一方、企業側からアプローチをかけても、他社での勤務状況などを理由に必ずしも、採用にむすびつくとは限りません。退職者に範囲が限定されていることもあり、大量採用には不向きといえます。

自社にとって適切な採用手法を選定するためには、採用における課題を明確化させること重要です。採用課題ごとの解決策については、こちらの資料で詳しく解説しております。

アルムナイが注目される背景

アルムナイが注目される背景

外資系コンサルティングファームなどでは一般的なアルムナイネットワークの活用や制度。アクセンチュア株式会社など日本においても積極的にアルムナイ制度を取り入れている企業があります。

アルムナイが注目される背景として、終身雇用の崩壊と人材不足の慢性化があります。雇用が流動化しつつある現在、転職が一般化し、一つの会社で定年まで勤め上げることが珍しくなっています。少子高齢化などの影響を受け、人材不足に悩む企業も増えました。

ビズリーチが2022年6月に発表したヘッドハンターへのアンケート調査によると、この1年で増加した企業からの相談内容は「応募が集まらない」が83.2%で最多。慢性的な人材不足がより深刻化していることがうかがえます。

1年前と比較して、クライアント企業からの相談はどのような内容が多かったですか

このようななか、企業にとって離職者や退職者も貴重な人的資源であるととらえ、再雇用や新たな採用につなげるための関係性を保つことが大切だと考えられているのです。

参考:ビズリーチ「ヘッドハンターにアンケート」


ダメな面接官に共通する特徴をピックアップし、面接の質を向上させませんか?

ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから


アルムナイ・アルムナイネットワーク活用の企業例

アルムナイ・アルムナイネットワーク活用の企業例

ここからは外資系コンサルティングファームをはじめ、アルムナイネットワークの活用を行っている企業を紹介します。

アクセンチュア

アクセンチュア株式会社では、「“卒業”した社員も大切な家族であり仲間」として、78カ国でアルムナイの活動プログラムを実施。元社員とのつながりを大切にしています。

「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」は、約30万人のアクセンチュアの元社員が在籍しているポータルサイトです。復職を検討する際に利用されたり、アルムナイ同士や社員とのコラボレーションを推進したりする機能があります。

参考:アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク

電通

株式会社電通は、2014年ごろから非公式のアルムナイ・ネットワーク(Ex電通人)が存在しましたが、2019年から公式にアルムナイネットワークづくりが始まりました。

「電通アルムナイ・ネットワーク」には2023年3月現在600人が登録。アルムナイ向けの限定情報の発信や、登録メンバーの近況確認、アルムナイ同士の気軽なメッセージのやりとりなどができるようになっています。

住友商事

住友商事株式会社は、在籍1年以上の退職者を対象に、現役社員や退職者同士、社外の方々とのつながりも生み出すオープンイノベーションプラットフォームとして2019年に「SC Alumni Network」を設立しました。

アルムナイと現役の社員が交流することで、社内外の多様な知見・人的ネットワークが融合し、新たなビジネスチャンスの創出を目指しています。

アルムナイ同士や、アルムナイと社外の人材との交流も含め支援し、よりオープンな企業文化の醸成を図っています。その取り組みが評価され、アルムナイ研究所が実施した「ジャパン・アルムナイ・アワード2021」にて、準グランプリを受賞しました。

参考:住友商事「「ジャパン・アルムナイ・アワード2021」にて準グランプリを受賞」

リクルート

起業家や経営者を多く輩出することで有名なリクルートグループ。リクルートには従来、社員が自主的に集まるアルムナイネットワークが存在します。

「元リクルート」「元リク」などの言葉でつながり、「アルムナイ」という言葉が日本で聞かれるより以前から、それらしい取り組みが自然にされてきたといえます。

サイボウズ

サイボウズ株式会社では「育自分休暇制度」という制度があり、離職する際に制度を利用希望する場合は最長6年間、サイボウズへの復帰が可能というものです。

サイボウズを退職する人に「またチームに戻れる」という安心感を持ってやりたいことに挑戦してもらうことが目的になっており、実際に戻ってきた社員の事例もオウンドメディア「サイボウズ式」にて紹介されています。挑戦の後押しと保証がセットになった、ユニークなアルムナイ制度といえるでしょう。

参考:サイボウズ式「フリーランスから週4会社員×アフリカから出戻り社員、満足ではなく納得しながら働くには 」

データでわかる即戦力人材の転職意識・仕事観をダウンロードする

アルムナイを活用するメリット

アルムナイを活用するメリット

アルムナイやアルムナイのネットワークを活用することで、再雇用につながったり、顧客として関係性継続ができたりなど、さまざまなメリットが存在します。

主なメリットをまとめると、下図のとおりになります。

アルムナイを活動するメリット

それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。

即戦力人材の採用

まず挙げられるのが、「採用」でのメリット。自社を退職した人材は、転職するのが一般的です。他社で新たなスキルや知識を得ている可能性があるため、高いパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。

さらに、自社での勤務経験から事業・業務内容を把握しています。スムーズに仕事を進められ、即戦力としての活躍が期待できます。企業理念を理解しているケースも多く、社風が合わないなど、採用のミスマッチが起きにくいといえるでしょう。

新たな関係性の構築

2つ目に挙げられるのは「新たな関係性」を築くことができるメリットです。アルムナイのネットワークがあることで、新商品などの情報拡散をしてくれたり、アンバサダーをお願いしたりすることもできるでしょう。

「パートナー企業」や「顧客」としてなど、雇用主と労働者という関係ではない新たな関係性を築ける可能性があることもメリットです。

企業ブランディングの強化

アルムナイの活躍や、アルムナイネットワークの活性化は、社会に対して「○○社の元社員」というイメージの可視化につながります。就職・転職を考えている人にとって、その会社で働くイメージもしやすく、入社への後押しになります。

退職した人材が再び同じ企業で働くということは、その企業に魅力がなければ実現しないことです。「戻りたいと思える魅力的な企業」として認知される可能性が高まるほか、退職後も人間関係が良好であるというイメージにもつながりやすく、企業ブランディングの強化に効果があるといえます。

有力な情報網としての役割

3つ目に挙げられるメリットは、有力な情報網になり得る点です。アルムナイは、多様な企業・業界・業種で活躍しており、その世界の情報を持っています。そこから有益な情報やアイデアを得ることができるのではないでしょうか。

また、自社社員でも顧客でもない第三者の視点で、自社商品などについてのアドバイスをもらうことなども考えられ、アルムナイネットワークはビジネス自体を推進するうえでも、メリットがあるでしょう。


ダメな面接官に共通する特徴をピックアップし、面接の質を向上させませんか?

ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから


アルムナイを活用するデメリット

アルムナイを活用するデメリット

一方でアルムナイの再雇用など、アルムナイ活用・アルムナイネットワークの活用が欠点になる場合もあります。どのような点に注意をすべきか、解説していきます。

アルムナイを活用するデメリット

在職中の社員への影響

アルムナイの再雇用をしたり、制度化したりする場合「退職してもいつでも復帰できる」と思われてしまう可能性があります。再雇用の際、アルムナイの役職や給与が優遇されていると、既存の社員が「不公平だ」と感じるケースもあるでしょう。

そうなってしまうと、社員のモチベーションが低下してしまいます。既存の社員が不満を抱かないように評価制度のバランスを取るなど、配慮することが求められます。

情報漏洩のリスクがある

アルムナイは、元社員とはいえ、あくまで外部の人間であることを念頭に入れるべきです。元社員という安心感によるガードのゆるみもあり、社内の機密情報などが漏洩するリスクが高まるでしょう。

アルムナイだからといって油断するのではなく、対外的なリスク管理として、情報をどこまで開示するのか、どのように管理するのか、対策が必要です。

関係維持のためのコストがかかる

最後に紹介するデメリットは、コスト面です。アルムナイとの関係を維持するためには、コストがかかります。専用サイトの管理維持費やイベント開催費用などがその例です。

ただし、採用においては、求人広告の掲載など、自社以外の採用媒体にかかるコストが削減できることは見逃せません。そのほか、顧客・パートナー企業としてビジネスを推進できることを考えると、関係維持費は一概に高いコストとはいえないでしょう。

状況に応じてどの程度コストをかけるべきなのかが、検討ポイントになります。


ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから


アルムナイ活用・アルムナイネットワーク構築のポイント

アルムナイ活用・アルムナイネットワーク構築のポイント

アルムナイの活用・アルムナイネットワークの活用は制度化せずとも可能です。自社を離れた人材と継続的に関係性を持つことで得られるメリットは多くあるでしょう。

最後に、アルムナイ活用・アルムナイネットワーク構築のポイントを解説します。

価値のある社員・企業であること

アルムナイとつながり、よい関係性を保つにはまず、アルムナイ自身がつながり続けたいと思える社員がいたり、企業カルチャーがあったりすることが大切です。

キャリアアップや家庭の都合、学び直しなど、企業を離れる理由は人それぞれです。終身雇用が崩壊し、雇用の流動化が進む今、他社に転職した人材を「裏切り者」とする風潮があっては、アルムナイの活用やアルムナイネットワークの構築は難しいでしょう。

アルムナイについての考え方を社員に対して説明・研修など行うことで、つながり続けるメリットを伝えたり、カルチャーを醸成したりすることが第一歩です。

異なるカルチャーを受け入れる姿勢がある

アルムナイ活用のポイントとして、自社の受け入れ態勢ができていることも重要です。雇用の形に柔軟性を持たせ、場合によっては業務委託などで受け入れることも検討できるでしょう。

また形式上だけではなく、多様な価値観を持った人材や、他社で培ったカルチャーを持った人材を受け入れる姿勢・風土があることでアルムナイ活用は前進すると考えられます。

イグジットマネジメントの強化

アルムナイ制度で退職者を再雇用したり、アルムナイに活躍してもらったりするためには、そもそも円満退職できていることが大切です。そのためには「イグジットマネジメント」に注力するのがポイントです。

イグジットマネジメントとは、雇用の出口に関する計画や管理のこと。雇用関係の解消を戦略的に実施し、組織の新陳代謝が健全に行われるようにする目的があります。

例えば、起業のサポート制度を整えたり、個人個人の状況やキャリアに合わせた離職の提案をしたりすることが考えられます。

アルムナイの活動やアルムナイネットワーク化を支援する取り組み

アルムナイのネットワークは自然にできることもありますが、大抵の場合は企業自体が呼びかけたり、インターネット上にポータルサイトを作ったりするなどしてネットワーク化を図ります。

ポータルサイトはハードルが高い…という場合は、アルムナイ同士やアルムナイと社員が情報交換できるイベントなどを開催してみたり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のグループ機能を活用したりすることで、ネットワーク化を推進できるのではないでしょうか。

困ったときに、「採用課題」から「解決策」を探せる

採用課題解決ガイド_採用計画・母集団形成編

採用計画は立てたけれど「思うように応募がこない」「スカウトしても返信がこない」。そんな課題に直面している方は必見。

採用活動における課題や悩みなどから、その解決策や具体的な取り組み事例を調べられます。

無料 資料をダウンロードする

著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。