採用内定時に必要な「労働条件通知書」には、必ず明示しなければならないと定められている事項があることをご存じでしょうか。
本記事では労働条件通知書の概要や明示事項、その記載例などについて解説。また、リモートワークやフレックスタイム制、副業・兼業など、昨今注目されている働き方を労働条件通知書に盛り込む方法についてもポイントをおさえながら紹介します。
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労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、使用者(企業)が労働者と労働契約を結ぶ際に、労働条件を通知するための書類です。
民法上、雇用契約は「諾成契約(だくせいけいやく)」にあたり、双方の合意があれば口頭でも成立します。そのため、雇用契約書の交付は法律で義務づけられているわけではありません。
ただし、口頭の契約のみでトラブルが発生することを防ぐため、いくつかの労働条件についてはそれを明示する書面、すなわち「労働条件通知書」で労働者に通知する法的義務があります。
参考書籍:富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.12
労働条件通知書を明示する対象者
労働条件通知書を明示する対象者は、新卒採用や中途採用の正社員、契約社員、パートやアルバイトなど、雇用契約を結ぶすべての労働者です。労働者1名ごとに、労働条件通知書1通を作成します。
労働条件通知書と雇用契約書の違い

労働条件通知書に似たものとして、雇用契約書があります。それぞれどのように異なるか、確認していきましょう。
目的と法的義務に違いがある
労働条件通知書 | 雇用契約書 | |
---|---|---|
目的 | 労働条件を労働者に明示する | 雇用契約の内容に合意したことを証明する |
書面の交付 | 法的義務がある | 法的義務がない |
労働条件通知書と雇用契約書は、どちらも書かれている内容はほとんど同じです。しかし、それぞれ別の目的をもって作成されています。
【労働条件通知書】
労働条件通知書は、使用者(企業)が労働者を採用し、労働者と労働契約を結ぶ際に、労働条件を明示するための書類です。
労働条件には書面で通知する法的義務がある事項が含まれており、これを明示するために労働条件通知書は交付されます。したがって、労働条件通知書の交付には法的義務があるということになります。
【雇用契約書】
雇用契約書は、使用者(企業)と労働者との間で、雇用契約の内容について合意がなされたことを証明するもので、これは民法第623条に基づいています。
ただし労働契約は民法上では「諾成契約」にあたり、これは合意があれば口頭でも成立するため、交付に法的義務はありません。
雇用契約書を交付する重要性
雇用契約書の交付に法的義務はありませんが、それでも口約束ではなく、書面で雇用契約を交わすことは重要だと考えられています。それは、雇用契約書を交わすことで契約内容の行き違いや思い違いによるトラブルを未然に防げるからです。
労働条件通知書は使用者が労働者に対して労働条件を一方的に明示するものであり、労働者がその労働条件を理解し、承諾したのかといったことは確認されません。しかし、雇用契約書は、契約内容について双方が合意したことを署名や押印をもって表します。
つまり、雇用契約書は労働条件も含めた雇用の契約内容に双方が合意し、契約が成立した、ということの証拠となるのです。
後になってから「そんな契約書は書いていない」と労働者に言われてしまうなどのトラブルを避けるために、雇用契約書の住所や氏名の欄は手書きにしておきましょう。手書きにすることで、万が一の際に筆跡鑑定が可能です。
参考書籍:寺林 顕(著), 米澤 章吾(監修)「労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」p.71-72
二つを合わせて、「労働条件通知書兼雇用契約書」とするケースも
このように似た内容でも違う目的をもつ労働条件通知書と雇用契約書ですが、二つをまとめて「労働条件通知書兼雇用契約書」とする企業も多く見られます。一つの書類にまとめることに関しては、法的に問題はありません。
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労働条件通知書を交付するタイミング

労働条件を明示するタイミングは、労働基準法で「労働契約の締結に際し」と定められています。では労働契約はいつ締結するものなのかというと、一般的に採用内定時に労働契約を締結するものとされています。したがって、労働条件通知書は採用内定の時点で交付することが望ましいといえます。
有期労働契約の更新、転籍、事業譲渡先での再雇用、定年後の再雇用などに関しても、内定時に交付すると解釈されています。
出向する場合は、出向によって新たな雇用関係が生まれるため、出向内定時に、出向先での労働条件を出向先か出向元のいずれかが明示します。
合併または会社分割の場合は、労働条件が包括的に承継されると解釈されるため、明示は必要ないとされています。労働条件が変わる場合は、修正および再交付が必要です。
参考書籍:富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.13
内定時に交付できない場合の対応方法
採用内定時に就業場所や賃金などが、すべて決まっているわけではないことも珍しくありません。このようなときは、以下のような対応をとることが一般的です。
- 内定時の交付が難しい事情を説明し、入社日までに交付する
- 内定時に確定している条件を記載したものを仮交付し、入社日までに正式なものを交付する
内定時に労働条件通知書を交付できないと、内定者に不安を与えてしまう可能性があります。十分な説明を行い、いつ交付できるかもあわせて伝えましょう。
労働条件通知書の違反は罰金対象となる

労働条件の通知に違反があった場合は、罰金の対象となります。違反とは、たとえば以下のような場合を指します。
- 労働条件が書面にて明示されていない
- 通知した労働条件の内容が、労働基準法で定められたルールを満たしていない
など
違反を避けるために、あらかじめ労働条件通知書の書式を作成しておき、その書式に記入していくことで漏れを防ぎましょう。あわせて、必ず労働基準法の知識を有する人が確認を行うよう、仕組みを作っておきます。
明示条件が事実と異なっていた場合、労働者は即時に雇用契約を解除できます。もし労働者がその企業で就業するために引っ越しをしていて、契約解除から14日以内にその居住地から帰郷する場合、企業は必要な旅費を負担しなければなりません。
参考書籍:
富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.13-14
寺林 顕(著), 米澤 章吾(監修)「労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」p.75
労働条件通知書の絶対的明示事項とその記載例

労働条件通知書には、労働基準法15条で書面交付による明示が義務づけられている「絶対的明示事項」があります。以下の1〜5の事項が絶対的明示事項です。
【絶対的明示事項】
- 労働契約の期間に関する事項
- 就業の場所および従業すべき業務に関する事項
- 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
- 賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払いの時期ならびに昇給に関する事項(※)
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(※)賃金のうち昇給に関する事項は絶対的明示事項から除く
出典:よくある質問|厚生労働省
参考書籍:
寺林 顕(著), 米澤 章吾(監修)「労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」p.72, 74
富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.68-69
五十嵐 芳樹(著)「実務に直結! 人事労務の手続と書式」p.53-54
次に、絶対的明示事項を労働条件通知書でどのように記載すればよいか、その記載例を見ていきましょう。絶対的明示事項の1〜5までを項目ごとに分けて紹介していきます。
労働契約の期間に関する事項の記載例
記載例1(正社員等、無期雇用の場合)
雇用期間 2022年4月1日から 期間の定めなし
記載例2(有期雇用の場合)
雇用期間 2022年4月1日から2023年3月31日まで
新卒採用、中途採用にかかわらず、正社員の場合は入社年月日と「期間の定めなし」を記入します。有期雇用の場合は、入社年月日に加えて雇用が終了する日付も入れましょう。
就業の場所および従業すべき業務に関する事項の記載例
記載例1(地域限定ではない旨記載する場合)
就業場所 ○○支店(○○県○○市○○町〇丁目〇番地〇号)※地域限定ではない
業務内容 事務一般及びそれに付随する業務 ※職種限定ではない
記載例2(異動の可能性を記載する場合)
就業場所 ○○県○○市○○町〇丁目〇番地〇号 本社 ※転勤等の異動あり
業務内容 事務一般及びそれに付随する業務 ※職種限定ではない
記載例3(テレワークを認める場合)
就業場所 甲の本社、○○事業所、乙の自宅、および甲が指定または許可した場所
業務内容 事務一般及びそれに付随する業務 ※職種限定ではない
就業場所は入社してすぐの就業場所を明示すればよいのですが、今後異動や転勤の可能性がある場合は「地域限定ではない」「転勤等の異動あり」といった文言を入れることで後の変更に対応しやすくなります。業務内容についても異動の可能性がある場合は「※職種限定ではない」のただし書きを入れておきましょう。
また、テレワークを認める場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示するとよいでしょう。定まっていない場合は「甲が指定または許可した場所」という文言を入れておきます。
また、以下は絶対的明示事項ではありませんが、テレワークについては特記事項の欄に作業環境についての定め(作業スペースの確保、適切な机、椅子、照明、空調設備、会社と通信できる機器の準備など)を記しておくとよいでしょう。
参考書籍:富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.141
始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
記載例1(就業時間が決まっている場合)
就業時間9時00分〜18時00分
休憩時間12時00分〜13時00分(1時間)
所定時間外労働の有無(有・無)
記載例2(フレックスタイム制の場合)
毎月、清算期間を1日から末日までの1カ月とするフレックスタイム制とする
始業時間帯 5時00分〜10時00分
就業時間帯 15時00分〜22時00分
コアタイム 10時00分〜15時00分
標準となる1日の労働時間 8時間
休憩時間 12時00分〜13時00分
記載例3(裁量労働制の場合)
就業時間 8時30分〜17時30分を基本とし、労働者の決定に委ねる
休憩時間 12時00分〜13時00分を基本とし、労働者の決定に委ねる
記載例4(シフト制の場合)
1カ月単位の変形労働時間制を適用するものとして、次のいずれかを原則としてあらかじめ指定する。ただし、事前に通知する勤務シフト表に応じて、他の勤務時間帯を指定することがある。
イ)早番:5時00分〜14時00分(休憩時間9時00分〜10時00分)
ロ)中番:9時00分〜18時00分(休憩時間13時00分〜14時00分)
ハ)遅番:13時00分〜22時00分(休憩時間17時00分〜18時00分)
記載例1のように就業時間が決まっている場合は、始業・就業時刻および休憩時間を記載します。
また、記載例2のようにフレックスタイム制の場合は、清算期間、フレキシブルタイム、コアタイム、標準となる1日の労働時間、休憩時間を記載します。
記載例3にある裁量労働制の場合は就業時間、休憩時間ともに基本時間を示し、「労働者の決定に委ねる」と記載しましょう。
記載例4のシフト制の場合はシフト時間のパターンを入れて明示しますが、シフト時間の変更の可能性を考慮して「他の勤務時間帯を指定することがある」の文言も入れておきます。
参考書籍:
富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.109, 124, 335–336
賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払いの時期ならびに昇給に関する事項の記載例
記載例
<金額>
基本給 22万円/月
通勤手当 実費支給(上限5万円)
資格手当 1万円/月
<割増賃金率>
所定時間外 法定内:25%/法定超:30%
休日 法定休日:35%/法定外休日:40%
深夜 25%
<締め日・支払日>
毎月末締め 翌月10日払い
<賞与>
有(6月、12月)
業績・個人の評価による。業績により支給しない場合がある
<賃金改定>
毎年4月
評価により昇給、変更なし、降給
<退職金>
有
詳細は退職金規定による
賃金のうち、昇給に関する事項は絶対的明示事項ではありませんが、記載しておくことが一般的です。昇給に関しては、降給や変更なしということもあり得る場合はその旨を記載しておきましょう。
賃金に関する規定は同じ内容を就業規則にも記載し、労働条件通知書との齟齬がないようにしておくと後のトラブル防止につながります。
退職に関する事項の記載例
記載例
<退職および解雇に関する事項>
- 定年制(有 60歳)
- 継続雇用制度(有 65歳まで)
- 自己都合退職の手続き(退職する30日以上前に届け出ること)
- 解雇の事由および手続き(詳細は就業規則第〇条を参照)
退職に関する事項は、定年制の有無とその年齢、継続雇用制度の有無とその年齢、自己都合退職手続きの届け出期限、解雇の事由および手続きを記載します。
解雇の事由および手続きについては、「詳細は就業規則第〇条を参照」とするだけでもかまいません。
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労働条件通知書の相対的明示事項

会社に定めがある場合は明示すべき、以下の6〜13項目を相対的明示事項といいます。相対的明示事項は書面の交付による明示が義務づけられていないため、口頭のみで明示することも可能です。
ただし、詳細は省略して「就業規則第〇条を参照」とするだけでもよいので、トラブル防止の観点から労働条件通知書で明示しておくことが推奨されます。
【相対的明示事項】
6.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
7.臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与およびこれらに準ずる賃金ならびに最低賃金額に関する事項
8.労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
9.安全および衛生に関する事項
10.職業訓練に関する事項
11.災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
12.表彰および制裁に関する事項
13.休職に関する事項
出典:よくある質問|厚生労働省
参考書籍:富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.68-69
短時間労働者(パート、アルバイト)、有期労働契約(契約社員等)の絶対的明示事項

パートやアルバイト、契約社員等などを雇用するときは、このページで説明した1〜13の明示事項に加え、以下の項目についても絶対的明示事項として書面(または電子)で明示しなければなりません。口頭での明示は認められないため、注意しましょう。
■短時間労働者(パート、アルバイト)の絶対的明示事項
6.昇給の有無
7.退職手当の有無
8.賞与の有無
9.雇用管理の改善に関する相談窓口
■有期労働契約者(契約社員等)の絶対的明示事項
- 契約期間
- 契約更新の有無
- 契約更新がある場合の契約更新基準
契約を更新する場合は、契約期間を新しく定めた新たな労働条件通知書および雇用契約書が必要になります。
参考書籍:五十嵐 芳樹(著)「実務に直結! 人事労務の手続と書式」p.52
労働条件通知書のサンプル

労働条件通知書に決まった書式はありませんが、サンプルは厚生労働省 Webサイトの「主要様式ダウンロードコーナー」でダウンロードできます。
- 【一般労働者用】 常用、有期雇用型/日雇型
- 【短時間労働者用】 常用、有期雇用型/日雇型
- 【派遣労働者用】 常用、有期雇用型/日雇型
上記のようにいくつもの様式に分かれているので、契約内容に合うものを選び、適宜アレンジしながら書式を作成しましょう。作成および交付に際しては法的知識を有する人に確認を依頼することが推奨されます。
【一般労働者用】 常用、有期雇用型の労働条件通知書のサンプル
以下は厚生労働省が配布している、一般労働者向けの常用、有期雇用型の労働条件通知書のサンプルです。
出典:一般労働者用モデル労働条件通知書(常用、有期雇用型)|厚生労働省
【短時間労働者用】 常用、有期雇用型の労働条件通知書のサンプル
以下は厚生労働省が配布している短時間労働者向けで常用、有期雇用型の労働条件通知書のサンプルです。
出典:短時間労働者用モデル労働条件通知書(常用、有期雇用型)|厚生労働省
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労働条件通知書の電子化

労働条件通知書は書面で明示することが原則ですが、2019年4月からは電子上で配布することも可能になりました。電子化する際の三つの条件と注意点について解説します。
参考:労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~ |厚生労働省
電子化における三つの条件
労働条件通知書の電子化を行うには、以下の三つの条件を満たす必要があります。
- 労働者側が電子化を希望したこと
- 書面に印刷できる形であること
- 受信を特定のものに限る、電気通信による送付であること
1に関しては、労働者側が電子化を希望したという記録が残るように書面を用意するか、メール等の文面を保存しておくとよいでしょう。労働者が希望していないにもかかわらず、電子のみで明示することは労働基準関係法令の違反となります。
2、3に関しては、FAX、EメールやWebメールサービス、LINEやメッセンジャーなどのSNSメッセージ機能等が望ましいとされています。メールやSNSで送付する場合は印刷や保存がしやすいよう、添付ファイルで送付することが推奨されています。
ブログやWebサイトへの書き込みによる明示は、それらが不特定多数の第三者に公開されているという性質から、3の「受信を特定のものに限る」に当てはまらないため、認められません。
電子化における注意点
電子化の際は、FAXやメール、SNSのメッセージを労働者が受け取ったかどうかを確認しましょう。メールの受信拒否設定等の問題で、労働者が労働条件を確認できていない場合もあります。
さらに、明示した労働条件はなるべく出力して保存するように、労働者に伝えましょう。一部のSNSサービス等では、メッセージや添付ファイルの保存期間が限られているケースがあるためです。
明示する際は、送信した担当者の氏名、事業所名、法人名、労働者の氏名を記入するとトラブルの防止に役立ちます。
労働条件通知書兼雇用契約書の電子化
労働条件通知書の電子化と同様、労働条件通知書兼雇用契約書についても電子化の流れがあります。これはクラウドサービスを用いて電子化するものです。電子化により、印刷・製本・押印・郵送・管理といった煩雑な作業を要する雇用契約書にかかる、ヒトとモノのコストの削減が期待できます。
万が一の訴訟に備え、電子署名が付与されているサービスを選びましょう。データの保存に関しては、電子帳簿保存法第10条および財務省令の要件を満たす形式で保存する義務があるので、これらに対応しているサービスを選ぶことがポイントです。
こんなときどうする? 労働条件通知書Q&A

労働条件にまつわるQ&Aをまとめました。近年注目されている副業や兼業についても取り上げているので、確認していきましょう。
副業、兼業を新たに許可することになったので、労働条件通知書を更新したい
副業、兼業については特記事項に以下のような内容を盛り込みます。
記載例
<特記事項>
1 副業、兼業を行う場合は以下の資料を当社に提出する
イ) 他の勤務先の事業内容、業務内容、役職、所定労働時間、所定労働日、就業時間等を当社所定の書式に記載したもの
ロ) 他の勤務先での労働契約書の写し
ハ) 他の勤務先における労働時間の実績(毎月10日までに提出)
ニ) 主たる勤務先において副業・兼業を行うための手続きを適正に履行していることを証明できる書類の写し
2 副業、兼業を行う場合、当社で知り得た企業秘密を漏えいしない
3 副業、兼業先で知り得た企業秘密を当社に持ち込まない
あわせて、社会保険等の扱いについても明記しておきましょう。
参考書籍:富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」p.181-183
昇格や異動によって労働条件に変更が生じた
通常は就業規則によって労働条件の変更に関する規定がされているため、労働条件通知書を更新して再交付する必要はありません。
ただし、労働条件が変更になった旨は何らかの形で労働者に通知し、その履歴を残しておくことが望ましいでしょう。
労働者が退職した、死亡した
労働条件通知書は、労働者が退職または死亡した日から3年間保管しなければならないと労働基準法で定められています。契約開始日や入社日から起算して3年間ではないため、注意しましょう。
トラブル対応や労働基準監督署の調査などで必要となるケースもあるため、雇用契約書などとあわせて保管しておくと安心です。
交付に際しては専門知識を有する人が確認を

本記事では労働条件通知書の概要や明示事項、記載例などについて解説しました。労働条件通知書には決まった書式はありませんが、厚生労働省のWebサイトでダウンロードが可能です。それらをもとに、企業独自の条件や、内定者独自の条件を書き加えてカスタマイズしていきましょう。
また、交付に際しては、法令の専門知識を有する人が内容を改め、法令が順守されているか今一度確かめることを推奨します。
■記事全体の参考資料
富田 直由(著), 山本 喜一(著)「働き方の多様化に備える 労働条件通知書兼労働契約書の書式例と実務」日本法令刊
寺林 顕(著), 米澤 章吾(監修)「労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版]」秀和システム刊
五十嵐 芳樹(著)「実務に直結! 人事労務の手続きと書式」清文社刊
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