企業の成長を支えるためには、自社の経営戦略に合った人材は欠かせない存在です。そのため、企業は新卒採用や中途採用などさまざまな方法で人材採用を行っています。企業における採用活動は「リクルーティング」ともよばれ、人事部にとって重要な業務のひとつです。
リクルーティングといっても、その手法にはさまざまな種類があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。本記事では、リクルーティングの種類と特徴を紹介するとともに、仕事内容やリクルーティングの担当者に求められるスキルも解説します。
あなたの面接にあてはまる「ダメ習慣」はありませんか?
ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
リクルーティングとは

はじめに、リクルーティングとは何か、言葉の意味を紹介します。
さらに、人事業務におけるリクルーティングの仕事内容と、企業においてリクルーティングが重要視される理由について解説しましょう。
リクルーティングの意味
リクルーティング(recruiting)とは、日本語で「募集」や「集める」といった意味を指す言葉です。ビジネス業界では、採用活動という意味で使われることが多く、リクルーティングは人事部門が担う大きな役割のひとつといえます。
リクルーティングという名のつく主な採用方法は、「リクルーティング活動の6つの種類とメリット・デメリット」の項目で詳しく解説します。
リクルーティングの業務内容
上記でも紹介したとおり、人事部門の業務であるリクルーティングは、人材募集、すなわち採用活動ととらえられます。
リクルーティングでは、ターゲットとなる人材に対して自社の求人情報を知ってもらえるよう、さまざまな手法を用いて公表します。
なお、どのような人材を採用するのかによってもリクルーティングの方法は異なります。代表的な採用方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 新卒採用……学校の卒業予定者が対象
- 中途採用……すでに社会人経験を積み即戦力として期待される人材が対象
- 派遣社員の採用……繁忙期や一時的な欠員に対応するための方法
また、リクルーティングの代表的な業務内容は以下のとおりで、多岐にわたります。
- 採用戦略の立案(どのような人材をどの程度採用するのかを計画する)
- 採用プロセス(募集から選考、面接、内定)の運用
- 内定者フォロー
- 入社受け入れの準備
新卒採用など一度に多くの人材を採用しなければならない時期には、人事部門の担当者だけでは人手が回らないため、実務部門の管理職などがリクルーティングに従事する企業もあります。
また、採用のミスマッチを防ぐためにも、2次面接などの段階で実務部門の管理職が面接を担当する企業も少なくありません。自社でどうしても人手が足りない場合には、採用業務の一部、もしくは業務全般を企業に代わって行うサービス「採用代行(RPO)」を利用する企業もあります。
人事業務においてリクルーティングが重要視される理由
企業が事業を継続していくうえで人材の採用は不可欠であり、採用できないことは事業の継続が難しくなることを意味します。そのため、企業経営の核ともいえる人材を採用するリクルーティングは、人事部門が果たすべき重要な業務です。
しかし、労働者人口の減少が深刻化するなか、求人募集をかけても自社が求める人材が見つからないケースや、そもそも応募が集まらないケースも少なくありません。2022年11月に厚生労働省が公表した「令和4年版 労働経済の分析」では、「おおむね全ての産業で人手不足感が強まる動きとなっている」との調査結果も出ています。
また、近年ではインターネットユーザーの増加にともない、リクルーティング活動のオンライン化が進んでいます。従来のような紙媒体や対面でのリクルーティングに比べて、オンラインでのリクルーティング活動は多くのターゲット人材にアプローチできる強みがあります。
このように、求める人材を自社で採用するためにも、さまざまな手法を駆使したリクルーティングは企業にとって重要といえます。
▼自社にとって適切な採用手法を選定するためには、採用課題を明確化させることも重要です。課題ごとの解決策については、こちらの資料で詳しく解説しております▼
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
リクルーティング業務に求められるスキル

リクルーティング業務に従事する人事担当者には、以下のようなスキルが求められます。
- コミュニケーション能力
- プレゼンテーション能力
- 各種法制度の理解
- 人事業務の実務経験や知識
ここでは、代表的な4つのスキルを紹介します。
コミュニケーション能力
リクルーティングでは、多くの候補者のなかから自社にマッチした人材を選ばなくてはなりません。履歴書やエントリーシート、職務経歴書などで候補者の経歴・スキルなどは確認できますが、人となりや価値観、仕事に対する意欲など、内面に関することは書面だけで判断するのは難しいものです。
そこで、人事担当者は対面またはオンラインの面接でさまざまな質問を投げかけ、コミュニケーションを図りながら候補者のことを知る必要があります。
選考過程で候補者の本音を見極めるためにも、コミュニケーション能力はリクルーティングに従事する担当者にとって不可欠なスキルといえます。高めるためには以下のような方法が考えられます。
- コミュニケーション研修の実施
- 結論から先に話すPREP法を活用する
- 声のトーン・大きさや会話のスピードを相手に合わせる
- あいさつやお礼を欠かさず行う
コミュニケーションを取る際には自分のペースではなく、相手に合わせることも大切です。日常生活から意識して、コミュニケーション能力を高めていきましょう。
プレゼンテーション能力
リクルーティングは候補者を選考するだけでなく、候補者に自社を選んでもらうためのプロセスともいえます。
候補者のなかには、複数の企業から内定をもらっているケースも少なくありません。せっかく内定を出したにもかかわらず、自社の魅力が候補者に十分伝わっていないと他社の内定を承諾してしまうなど、内定辞退にいたることもあります。
そのため、リクルーティングを行う人事担当者には、自社の魅力を分かりやすく簡潔に伝えるプレゼンテーション能力が備わっていることが求められます。プレゼンテーション能力を向上させるための主な方法は以下のとおりです。
- プレゼンテーションスキル向上研修を受ける
- 模擬プレゼンテーションを行う
- プレゼンテーションが上手い人を真似る
- 自分の話す姿を録画して客観視する
各種法制度の理解
リクルーティングでは職業安定法や労働基準法など、さまざまな法律が関わってくることがあります。リクルーティング業務の担当者は、以下のような採用に関する主な法律への理解を深めておくことが大切です。
- 労働基準法
企業と従業員が結ぶ雇用契約のほか、賃金、労働時間、休日など、労働条件に関する最低基準を定めた法律
- 職業安定法
労働者の募集や職業紹介、労働者供給に関することを定めた法律
- 男女雇用機会均等法
職場において、性別を理由とする差別を禁止し、男女の平等な扱いを定めた法律
また、厚生労働省では、応募者の基本的人権を尊重した採用選考を実施するようよびかけています。
就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例なども「公正な採用選考の基本」で公表しているように、これらの知識がないままリクルーティング活動を行ってしまうと、候補者と企業との間でさまざまなトラブルに発展することも予想されるでしょう。
そのため、リクルーティングに従事する担当者は各種法制度についても正しく理解しておかなければなりません。
人事業務の実務経験や知識
リクルーティングでは、候補者から自社の働き方や労働環境、人事制度などに対して質問されることがあります。
たとえば、キャリアアップのためにどのような支援があるのか、育児休業制度や時短勤務制度、テレワークなどはどの程度浸透しているか、といった内容は、働きやすい企業であるかを見極めるうえで重要なポイントであると多くの候補者が認識しているでしょう。
そのため、リクルーティングを行う担当者は、採用に関わる業務だけでなく人事業務全般に関する経験や知識も求められます。
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
リクルーティング活動の6つの種類とメリット・デメリット

リクルーティングには新卒採用や中途採用などさまざまな種類があり、それに応じて最適な採用方法も異なります。今回は代表的な6つの方法をピックアップしました。種類と概要は下図のとおりです。

ここからは、メリット・デメリットを含めて、それぞれについて詳しく解説します。
メンバーシップ型採用
メンバーシップ型採用とは、新卒採用で用いられることの多い手法です。
スキルや能力ではなく、人間性やポテンシャルを重視し、まとまった人数の人材を一括採用します。入社後の研修を経たあとに配属先や職種を決定するのが特徴であり、長年にわたって多くの日本企業で浸透しているリクルーティングの方法といえます。
求人情報は、企業のホームページや自社採用サイト、求人サイトなどに載せるのが一般的です。
■メリット
日本における新卒採用の場合、一般的には4月のタイミングで入社し、研修などを共にします。「同期入社」という概念があるように、同じタイミングで入社した社員同士の連帯感が生まれやすいというメリットがあります。
研修後に配属される部署がそれぞれ異なっていても、同期入社の社員間の横のつながりを生かすことで、社内の部門を超えた交流が生まれやすくなるでしょう。
■デメリット
メンバーシップ型採用は、候補者を採用したあとに社内で研修などを通して人材育成を行い、戦力化していくことが前提となります。そのため、中途採用などで即戦力を求めるリクルーティングには向かないことがデメリットといえるでしょう。
また、ジョブローテーションや転勤によってさまざまな業務を経験させることが多いのも、特徴のひとつ。職務を定義して雇用するジョブ型雇用と比べて、特定の分野において極めて高い専門性をもつスペシャリストが育ちにくいこともデメリットです。
転職サイト・自社採用サイトでの採用
インターネットサイトを活用したリクルーティングの方法として定番なのが、転職サイトや自社採用サイトでの募集です。
転職サイトは、複数の企業が公開している求人情報とあわせて自社の情報も掲載するもので、転職サイトを運営している企業に対して求人情報の掲載料金を支払います。
これに対し自社採用サイトは、自社独自で立ち上げるサイトのため掲載料金はかかりません。転職サイトと並行して自社採用サイトも立ち上げ、自社の魅力をより詳しく発信している企業もあります。
■メリット
転職サイトや自社採用サイトのメリットは、一度に多くの人の目に触れられるため、候補者からのエントリーを集めやすい点が挙げられます。
また、転職サイトや自社採用サイトを閲覧する候補者は、もともと転職を検討している層が中心のため、候補者が求める条件や労働環境がマッチすれば採用に結びつきやすいというメリットもあります。
■デメリット
デメリットとしては、転職サイトの場合は求人情報を掲載するためのコストがかかる点が挙げられます。求人情報を掲載した時点で料金がかかる「掲載課金型」を利用する場合、採用にいたらなかった場合はかけたコストがそのまま損失となってしまうでしょう。
一方、自社採用サイトの場合は求人情報の掲載料金はかかりませんが、サイトの構築や維持管理を自社で行わなくてはならないため、一定のコストがかかります。
ダイレクトリクルーティング
企業側が「欲しい」人材を獲得するために、企業自身が採れる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用活動をダイレクトリクルーティングとよびます。
通常のリクルーティングは、転職の意思がある候補者がエントリーすることが前提となりますが、ダイレクトリクルーティングでは転職を検討していない候補者に対しても企業側からアプローチできるのが特徴です。
■メリット
専門的な高いスキルをもった候補者や、特殊なスキル、実務経験をもった候補者は希少であり、転職サイトなどで求人情報を公開しても応募が集まるとは限りません。
ダイレクトリクルーティングでは、そのような候補者に対しても企業側から直接アプローチでき、交渉次第で採用に結びつけられる可能性があります。
また、自社が求める理想の候補者にピンポイントでアプローチするため、書類選考などの労力が削減できることもダイレクトリクルーティングのメリットといえるでしょう。
■デメリット
ダイレクトリクルーティングでは、候補者へアプローチしたからといってすぐに採用に結びつくとは限りません。特に、転職の意思がない候補者の場合、交渉に時間を要することが多く、条件の折り合いがつかないと採用にいたらないケースも考えられます。
また、条件にマッチする候補者を探して企業側から個別にアプローチをするため、ダイレクトリクルーティングは一度に多くの人材を採用したい場合には向かない方法ともいえます。
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを活用したリクルーティング活動のことです。
ダイレクトリクルーティングの手法のひとつとしても活用されることがありますが、それ以外にもSNSで求人情報を発信し、エントリー数アップにつなげるといった方法もソーシャルリクルーティングにあたります。
■メリット
ソーシャルリクルーティングのメリットは、SNSを通して自社の魅力や強みを候補者に理解してもらいやすいことが挙げられます。SNSという身近な媒体で自社のことを知ってもらい、興味をもった候補者に転職サイトや自社採用サイトに訪問してもらうといった戦略も立てやすくなるでしょう。
また、候補者が日頃から発信している内容を確認することで、人となりや価値観、考え方を理解でき、自社の社風にマッチする人材であるかを判断する際の参考にすることもできます。SNSは、基本的に誰でも無料で利用・運用ができるため、コストが抑えられるという特徴もあります。
■デメリット
ソーシャルリクルーティングでは、日頃からSNSを活用したこまめな情報発信が必要です。リクルーティング担当者の労力が増大し、複数のSNSを運用するとなると管理も煩雑になってしまいやすいでしょう。
オウンドメディアリクルーティング
企業や組織が保有・運営する情報媒体「オウンドメディア」を活用して採用につなげる手法です。オウンドメディアのなかでも、自社の採用に特化したものを「採用オウンドメディア」とよびます。
採用オウンドメディアには、自社の事業内容や企業文化のほか、社員インタビューや働く環境を掲載するなどして、企業の魅力を発信します。採用に関する自社メディアという位置づけにおいては、自社採用サイトと同じといえます。しかし、自社採用サイトの目的が求人募集に限定される一方、採用オウンドメディアは、求める人材の採用を実現するため常にコンテンツを制作し、定期的に発信していくのが特徴です。
オウンドメディアの媒体は主にWebサイトやブログですが、それに加えて、Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSアカウントも含むという考え方もあります。
■メリット
転職サイトなどの求人媒体を利用した場合、情報掲載のスペースが限られているケースが多いです。一方、オウンドメディアを活用すれば制限がなく、自由にコンテンツを制作できます。より多くの情報を発信できるため、自社の魅力を伝えやすいといえるでしょう。
また、情報を発信するなかで、自社の理念や価値観、社風なども知ってもらえます。求職者にとっても自身にマッチする企業かどうかの判断しやすくなり、採用のミスマッチを減らす効果も期待できます。
■デメリット
オウンドメディアは、継続して運用し資産となるコンテンツが蓄積されていくことで効果が生まれるのが一般的です。開設後、すぐに成果が出るわけではないという点に注意する必要があります。
サイト運営には、アクセス数分析のほか、どのようなコンテンツを発信していくかなど、マーケティングや記事制作に対する知見が重要です。人事労務とは別の専門性が必要となるため、専任の担当者を採用する企業もあり、コストがかかる可能性も。一からオウンドメディアを立ち上げる場合も、サイト構築費用が発生します。
リファーラルリクルーティング
社員の知人や友人、家族などを紹介してもらう方法をリファーラルリクルーティング(リファーラル採用)とよびます。
採用を前提とした縁故採用とは異なり、リファーラルリクルーティングの場合は社員からの紹介を受けたあと、通常の採用プロセスを経て合否を決定するのが特徴です。
■メリット
リファーラルリクルーティングでは、自社の魅力や働きがいについて十分理解した社員を通して直接候補者にアピールできるため、採用のミスマッチが起こりにくい点がメリットです。
また、もともと社員と候補者との間に信頼関係があるため、面接などをスムーズに進めやすいこともリファーラルリクルーティングの強みといえるでしょう。
■デメリット
リファーラルリクルーティングの実施にあたっては、紹介者である社員に報酬を支払うケースがあります。そのため、社員からの紹介とはいえ一定の採用コストはかかるものと考えたほうがよいでしょう。
また、どの程度の社員が候補者を紹介してくれるのかは予測が難しく、採用人数の見込みが立てづらいこともデメリットのひとつです。
ダメな面接官に共通する特徴をピックアップし、面接の質を向上させませんか?
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
リクルーティングは企業の成長を支える重要な業務

既存事業の拡大や新規事業への着手、退職や休職した社員に代わる補充など、人材採用に踏み切る理由や目的は企業によってそれぞれ異なります。
しかし、どのような理由であっても、自社で働く人材を採用することは事業の継続的な成長に欠かないため、リクルーティングは企業にとって重要な業務となります。
募集する人材によっても最適なリクルーティングの方法は異なり、それぞれにメリット・デメリットがあります。今回紹介した内容を参考に、自社にとってどのようなリクルーティングが適しているのかを検討してはいかがでしょう。
ダイレクトリクルーティングを始める、第一歩

優秀な人材への積極的なアプローチのために、「攻め」の採用活動を始めてみませんか。
ダイレクトリクルーティングにご興味をお持ちの方へ、まず取り組むべきことを6つ、ご紹介します。