面接では面接官が候補者に聞いてはいけない「タブー(NG)質問」があることをご存じでしょうか。
知らなかったがために「聞いてはいけない」もしくは「聞くべきではない」質問をしてしまい、候補者に不快な思いをさせたり、会社の印象を悪くしてしまったりすることは絶対に避けたいところです。
今回の記事では、面接で聞いてはいけない「タブー(NG)質問」の具体例を紹介するとともに、「候補者を遠ざけてしまう」ような面接官に共通する特徴や、うっかりタブーな質問をしてしまった際の対応方法などを紹介します。
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面接官が覚えておきたい、採用選考の基本的な考え方

面接時にしてはいけない、不適切な質問(タブーな質問)を確認する前に、まずは面接官が候補者と接する際の、基本的な考え方と取るべき姿勢を理解しましょう。
採用選考は「公正であること」「採否は候補者の適性、能力のみで判断すること」の2点が大前提にあります。この考え方をしっかりと理解しておくことで、「何を聞いてはならないのか」を判断しやすくなり、タブーな質問をしてしまうことを避けられます。
公正な採用選考であること
企業は「自社が定めた雇用条件、採用基準に合う人」であるかどうかを客観的に確認し、合致する候補者に対しては、次の選考ステップに進めるよう対応する必要があります。
マインドや志向性などは面接官の主観的な評価がつい入りやすいものですが「この候補者は、○○出身なら、性格は○○そうだ……」といった、個人の思い込みやただの印象なども含め、選考基準に関係のない要素や情報を基に判断するのは、当然のことながら許されません。
特に面接時の質問内容については、それを聞くことで、候補者の自由権や社会権といった基本的人権を侵害しないように注意しなければなりません。

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採否は候補者の適性、能力のみで判断すること
日本国憲法は、全ての人に職業選択の自由を保障しています。また一方で、企業側にも、採用方針・採用基準・採否の決定など、「採用の自由」が認められています。
しかし、この「採用の自由」とは、企業が採用選考時に、候補者に何を聞いてもいいということではありません。候補者の基本的人権を侵害するほどの、「採用の自由」が認められているわけではありません。
採用選考にあたっては、下記の2点を基本的な考え方とすることが大切です。
- 候補者の基本的人権を尊重する
- 候補者の適性と能力のみを判断基準とする
「緊張をほぐすための雑談(アイスブレイク)として」「人間的な魅力や本音を引き出すため」など、候補者を評価するためではなかったとしても、誤解を招くような質問は避けましょう。
質問内容によっては就職差別につながることもあり得ます。例えば、令和元年度に行われたハローワークの「不適切な採用選考の実態」についての調査では、「本人の適性・能力以外の事項を把握された」との指摘があった選考のうち、41.3%もの候補者が「家族に関することを聞かれた」と回答しています。

社会的差別の原因になる可能性がある個人情報の把握は、個人情報保護の観点からも認められないことに十分留意してください。
参考:公正な採用選考の基本(厚生労働省)
参考:自社の採用選考における質問事項をチェックしてみましょう!(厚生労働省)

資料では、「候補者を遠ざけてしまう」ような面接官がついやってしまう「10のダメ習慣」を紹介。思い当たる習慣はないでしょうか?
ダメ習慣1. 明確な評価ポイントがない人を不合格にする
ダメ習慣2. 候補者に一貫性を求めすぎる
ダメ習慣3. 賢そうに振る舞う
ダメ習慣4. 自分と似たタイプを評価する
ダメ習慣5. 人材紹介会社を業者扱いする
ダメ習慣6. あっさりしすぎている
ダメ習慣7. 最初に自己PRと志望動機を聞く
ダメ習慣8. 人と会うことを面倒くさがる
ダメ習慣9. 短時間で人を見抜こうとする
ダメ習慣10. 派手な成果ばかり求める
- なぜ候補者に「一貫性を求め過ぎてはいけない」のか?
- 「デキる面接官ほど知らないふりをして聞く」その理由とは?
―――これらを説明するカギは「人の心理・行動のクセ」にあります。
これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った株式会社人材研究所の代表取締役社長 曽和 利光 氏が解説します。
面接官が候補者に聞いてはいけないタブー(NG)な質問例

厚生労働省では、採用選考時に配慮すべき事項として「本人に責任のない事項の把握」「本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握」を挙げており、これらに該当する質問を、応募用紙などに記載したり面接で質問したりすることはタブーと言えます。
今回ご紹介する「質問例」は全て法律によって禁止されている、というわけではありません。業務内容や話の流れから、合理的であると判断されるケースもあり得ます。しかし、候補者本人の適性や能力には関係ないため、採用選考の基準にはなりません。配慮が必要な質問事項であると、面接官側がきちんと理解しておくことが重要です。
本人に責任のない事項
本籍や家族に関することなど、本人の努力では解決できない事項は、選考の際に偏見を持ってしまう可能性があります。前述した通り、「家族に関することを聞かれた」という候補者の割合は多く、面接の雰囲気を和らげるために質問してしまうケースがあるので注意が必要です。具体的な「タブー(NG)質問」の例を見ていきましょう。
本籍や出生地に関する質問
- あなたの出生地はどこですか
- あなたの本籍はどこですか
質問をして把握する以外にも、「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることもタブーです。出身や出生をもとに採用選考を行うことは、基本的人権の侵害をする行為となります。
家族に関する質問
- あなたのご両親の健康状態について教えてください
- ご両親が離婚しているようですが、お母さんお1人で育てられたのですか
- あなたの配偶者の職業、職種は何ですか
その他、家族の仕事の有無・勤務先を質問することや、続柄、病歴、地位、学歴、収入、資産、家族構成の質問も含まれます。家族の離婚歴や結婚の有無など、候補者本人の努力では解決できないことは質問しないようにしましょう。
住宅状況に関する質問
- あなたの家は賃貸ですか、持ち家ですか
- あなたの家はマンションですか、一軒家ですか
- あなたの住んでいる地域の魅力は何ですか
住宅状況や地域は、候補者の能力や適性とは無関係です。住宅環境をもとに採用選考してしまいかねない質問であることを把握しましょう。
生活環境や家庭環境に関する質問
- ○○にお住まいとのことですが、国道○○号線のどちら側ですか
- あなたは長男ですか
- 家業を継ぐ可能性はありますか
生活環境や家庭環境に偏見を持ち、採用選考の判断をしてしまう可能性があります。母子・父子家庭、転校の有無などの質問もタブーです。
本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)
宗教や人生観などの思想・信条は、憲法で保障されている個人の自由権に属する事柄です。そのため、これらを採用選考の基準に用いることは基本的人権の侵害となり、就職差別につながります。
また、直接的な質問ではなくても、「将来どんな人になりたいか」など、候補者の思想・信条が把握できるような質問をすることも避けるべきです。具体的な質問例を見ていきましょう。
宗教に関する質問
- あなたの信仰している宗教は何ですか
- あなたは神や仏を信じますか
信仰の有無や宗派は、候補者が自由に選ぶことができる権利です。それらを基準に採用選考することは適切ではありません。
支持政党に関する質問
- あなたが支持している政党はどこですか
- ○○選挙で投票した政党を教えてください
政治に関する考え方や思想も、候補者の自由な権利です。「自分が支持する政党とは違うから、考えも合わないだろう」など、偏見につながる可能性があります。公平な採用選考をするためにも、質問しないようにしましょう。
人生観や生活信条に関する質問
- 信条としている言葉を教えてください
- あなたの人生観について教えてください
候補者のことを知るために聞いてしまいそうな質問ですが、人生観や信条も憲法で保障されている個人の自由権に属する事柄です。採用選考の基準にはならないので、質問することは控えましょう。
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尊敬する人物に関する質問
- 尊敬する人物がいれば、理由も含めて教えてください
- あなたには目標とする人がいますか
尊敬する人物や目標とする人物は、候補者の思想や信条を反映します。これらを把握するような質問は避けるべきです。
思想に関する質問
- あなたは自分の生き方についてどう考えていますか
- 「多様性」に対するあなたの考えについて教えてください
候補者の思想につながる質問をすることはタブーです。思想の違いによって、候補者の能力と適性に基づかない採用選考を行うことは、基本的人権の侵害にあたります。
労働組合や社会運動に関する質問
- これまで社会運動に参加したことがありますか
- あなたはデモに対してどんな考えを持っていますか
これらも、憲法で保障されている個人の自由権に属する事項です。プライバシーの侵害にもなり得る内容のため、タブーな質問に該当します。
購買新聞や雑誌、愛読書に関する質問
- よく読む本はどのような内容のものですか
- 趣味は読書と書いてありますが、どのようなジャンルでどの作家が好きですか
応募書類に記載があったり、場の空気を変えたりしたいときに質問してしまいがちな内容ですが、これらもタブーな質問です。愛読書について質問することは、候補者の人生観や信条、思想などにつながるため質問しないようにしましょう。

男女雇用機会均等法に抵触する可能性のある事項
男女雇用機会均等法とは、結婚や妊娠・出産を理由に採用や昇進、職種の変更などについて、男女で異なる取り扱いをすることを禁止する法律です。具体的にどのような質問がタブーとされるか、見ていきましょう。
男女雇用機会均等法に抵触する可能性のある質問
- 出産後も仕事を続ける予定ですか
- 結婚の予定はありますか
恋愛・交際の有無や結婚観、出産などを理由に採用選考することは、労働差別と言えます。特に候補者が女性の場合には、企業側からすれば「結婚や出産を機に退職してしまうのではないか」という懸念のもと質問するケースが考えられますが、「女性差別のある会社だ」という認識を与えてしまいます。また、セクシャルハラスメントと捉えられることもあるので、面接ですべき質問ではありません。
上記のタブーな質問例のなかには、「採用活動では一般的な質問ではないか」「志望動機に関連するのではないか」と感じる質問もあったのではないでしょうか。
面接のアイスブレイクのつもりでした質問が、候補者の能力と適性に基づかない不合理な採用選考を招いてしまった場合、基本的人権を侵害する行為とされます。面接時は、言葉遣いや話し方などはもちろんのこと、質問内容については細心の注意を払って、常に誠実な対応を心掛けましょう。

面接官がやってはいけないNG行動の例

候補者にとって面接官は、その企業のイメージを作る「顔」とも言える存在です。面接時にタブーな質問をすることのほか、面接官の行動や対応次第では、候補者の入社意欲を下げてしまうことも。ここでは、面接官がやってはいけないNG行動の例について紹介します。
面接の準備不足を候補者に見抜かれる
- 応募書類に記載していることを質問する
- 面接開始後に応募書類を読む
候補者は、「書類審査を通過=企業にある程度評価されている」という期待のもと面接を受けています。例えば、すでに応募書類に記載のある、資格の有無などを質問してしまうと、「事前に応募書類を読んでいないのではないか」「自分に関心がないのだ」と候補者に捉えられてしまいます。
会話のキャッチボールができていない
- 一問一答式の機械的な質問が多い
- 質問への回答に反応しない
- 企業側の一方的な質問のみで面接を終了する
面接は、応募書類だけでは判断できない部分を掘り下げられるチャンスです。アンケートのような一問一答式や、Yes・Noで答えられる簡単な質問ばかりでは、候補者自身の意見を引き出せません。質問へ対する答えを受け止めたうえで、「どうしてそう考えるのか?」「どのような経験から、そのような考えに至ったのか?」など、答えを取り巻く背景や過程を細かく聞き出し、その人の根幹にある感性や価値観などに近づいていきましょう。
また、企業だけでなく候補者にとっても、面接は疑問解消の場です。面接官から一方的に質問することは、候補者側の疑問が解消されないだけでなく、場合によっては「圧迫面接」のようなマイナスの印象にもつながりかねません。候補者からの質問や不安に答えられるよう、適宜問いかけるとともに、質問しやすい雰囲気作りを心掛けてください。
面接官からの自己開示や募集背景の説明がない
- 面接官からの自己紹介がない
- 募集背景やスカウトをした理由などが不明確
- 面接開始早々に、自社への入社意欲や他社の選考状況などを聞く
面接官自身や募集背景について説明することで、候補者は入社後のイメージを持ちやすくなります。面接官はまず自分自身の自己紹介から面接を始めるよう心掛けましょう。その際「なぜ自分はこの会社に入社したのか」という入社動機も話してみると、より会社や組織のイメージが候補者にも伝わりやすくなるでしょう。Webサイトにも掲載されているような「会社説明」は、既に候補者側も読んでいるケースが少なくありません。
「なぜ私はそのビジョンに共感したのか」「自社が大切にしているカルチャーを、日々の業務のなかで、どのように体現しているか」を、自分の言葉で話していきましょう。ポイントは「WHAT」ではなく「WHY」で語ること。自身の価値観の理由を、生い立ちや経験をベースに、自然なかたちで自己開示をしながら語ることで、候補者にも安心感を与えることができるでしょう。
候補者が「面接官の質問をうまく返さなくてはいけない」などと「対戦相手」のように感じてしまっている面接では、お互いの本音をすり合わせることができません。大切なのは「協調的な関係」、つまり「私と面接官は仲間なんだ」と感じてもらう関係づくりを心掛けましょう。
入社後のイメージを伝えられない
- 具体的な業務内容の説明がない
- 中長期のビジョン・方向性を伝えられない
募集時の求人に書かれている業務内容だけでなく、具体的な現場の情報を詳しく伝えることによって「入社したらどのように働くのか」というイメージを候補者に持たせられます。そこで初めて候補者は、「自分にとって魅力的な企業・業務なのかどうか」を判断します。
そのため、面接時の対話から「この候補者にはどのようなことが魅力に映るのか」を探ることも面接官の重要な役割です。候補者の志向がわかれば、それに沿った自社ならではの魅力を伝えて入社意欲を上げることも可能でしょう。
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面接を成功させるポイント
面接官は採否の判定を担うとともに、候補者の入社意欲を高め、入社後のミスマッチを回避できるよう、業務や会社のカルチャーなどについて、丁寧に説明する役割も担っています。
その役割を十分に果たすことができなければ、面接を成功させることは難しいでしょう。
事前に質問と評価基準を用意する
候補者が自社の求める人物像に合致するか判断するための、質問と評価基準を事前に用意しましょう。企業によっては、面接官全員に共通した質問を用意するケースもあります。
候補者の適性と能力を判断するための質問になっているか、公正な評価をするための質問になっているか、客観的に確認することが大切です。
話しやすい雰囲気を作る
候補者が緊張せず、落ち着いて面接に臨むことができるように、和やかな雰囲気を作るため、面接官は相手を思いやった言動を心掛けましょう。「圧迫面接」と言われるような、威圧的な振る舞いは候補者を萎縮させる恐れがあります。
冒頭で面接官自身の自己紹介や短時間の雑談を交えたり、集団面接の場合は候補者全員に対して平等に時間を配分したりと、候補者に寄り添った配慮が必要でしょう。
自分の振る舞いが「企業イメージにつながる」ことを意識する
面接官は会社の「顔」として候補者と対面します。採用・不採用にかかわらず、良い印象を持ってもらえるように心掛けましょう。採用活動での出会いは必ずしも「その場だけの関係性」とは限りません。将来的に、採用に至らなかった候補者が自社の顧客や取引先になる可能性もあるのです。
人権を侵害するタブーな質問をしたり、身だしなみや言動で悪い印象を与えたりしないことは最低限注意すべき事柄ですが、加えて、自社の選考に時間を取ってくれた候補者に対して敬意を持ってやりとりすることを心掛けましょう。
また、面談・面接の際の応対だけでなく、その後の結果の連絡のスピーディーさや丁寧さでも「誠実さ」が伝わるものです。採用者への連絡を優先するケースは多いですが、不採用者への連絡が後回しになり過ぎたり、忘れてしまったりすることのないよう、コミュニケーションはしっかり管理しましょう。
うっかり、タブーな質問をしてしまった場合

面接官としてきちんとした対応を心掛けていることを伝えるためにも、できるだけ不適切な質問は避けることが重要ですが、どんなに事前に意識していても「ついうっかり質問してしまう」ケースもあるでしょう。
面接の最中に、候補者から「私は御社の創業者を大変尊敬しております」と言われたので、つい「創業者の本を読みましたか。もし、印象に残った言葉やシーンがあれば、教えてください」と聞いてしまった。愛読書や尊敬する人は聞いてはいけないのに……。
話の流れでつい適切でない質問をしてしまった場合は、すぐに「こちらの質問は不適切でした」と訂正し、答える必要がない旨を明確に伝えるようにしましょう。
タブーな質問を避け、適切に質問するためには、面接官自身が「何のためにその質問をするのか」という目的を明確にし、事前に準備することが重要です。
面接の質問のサンプル集などはWeb記事や本といったものでいくつもあります。また、自分自身の経験から「面接といえばこの質問」というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。
これらの情報をインプットしたうえで、再度「この質問で何を知ろうとしているのか?」「それを知るうえで最も適切な聞き方であるか?」など一つ一つ丁寧に見直してみるのもいいでしょう。限られた時間のなかで、自社へのマッチ度合いを見極めるには、面接官の事前準備と質問力が不可欠でしょう。
「ダメ面接官」にならないために

「ダメ面接官」が陥りがちな「NG行為」「思い込み」とは――。ダメ面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウを、人事コンサルタントの曽和利光氏が解説します。