企業や組織の成長を実現するためには、社員の能力や成果に応じて公正な評価を行い、それに見合った待遇を与えることが重要です。しかし、評価者である上司や人事担当者によって考え方や価値観は異なり、必ずしも公正な評価ができるとは限りません。
そこで重要となるのが、「人事考課」とよばれるものです。この記事では、人事考課とはどういったものか、目的や評価基準、手法の例を紹介するとともに、評価者が注意すべき人事考課のエラーについても詳しく解説します。
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人事考課とは

人事考課とは、一定の基準のもとで社員を公正に評価することを指します。人事考課による評価結果は、給与や賞与、役割の大きさに応じて決められるグレード(等級)、役職の昇進などに反映されるのが一般的で、評価対象となるのは社員の能力や職務内容、業績への貢献度など多岐にわたります。
評価の際は、上司からの評価はもちろん、社員本人も自己評価を行います。人事考課を行う頻度は半年に1度または1年に1度が一般的です。
人事考課と人事評価の違い
人事考課と似た言葉に「人事評価」がありますが、どちらも社員を公正に評価するという意味があり、一般的に両者は同じ意味をもちます。実際に、人事考課と表現する企業もあれば、人事評価と表現する企業もあり、言葉が違うだけで両者を区別せず使用されることがほとんどです。
ただし、厳密にいえば人事考課は人事査定を目的に行われるものであるのに対し、人事評価は目標の達成度合いやプロセスを評価・判断することを指します。
用語 | 目的の違い |
---|---|
人事考課 | 給与や昇進に対する人事査定が目的 |
人事評価 | 業務や目標に対する評価・判断が目的 |
人事考課制度の歴史
人事考課制度は、時代の移り変わりとともにさまざまな形に変化してきました。
1980年代までの日本では、年功序列による人事考課制度が主流でした。しかし、その後1990年代に入るとバブルが崩壊し、経済界は急速にグローバル化へとかじをきり、欧米企業にならって人事考課制度も成果主義の時代へ移行していきます。
2010年代に入ると多様な人材の活躍が求められるようになり、成果主義の原則は維持しつつも適材適所の人事考課制度へと移行するようになりました。
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人事考課の目的

そもそも、なぜ多くの企業で人事考課を行っているのでしょうか。企業における人事考課の主な目的を4つ紹介します。
社員の待遇を決定するため
人事考課のもっとも大きな目的として挙げられるのは、人事考課の結果に基づき、給与や賞与、昇給、グレード(等級)、役職といった社員の待遇を決定することです。
待遇の公平性を担保するためには、能力やスキルが高い、または組織への貢献度が高い社員を適正に評価する必要があります。しかし、評価者によって基準が異なると公平な評価に結びつきません。そこで、一定の基準のもとで評価を行う手段として人事考課が用いられます。
社員の成長を促すため
人事考課によって、社員一人一人の行動について振り返ることができます。業務においてよかった点はさらに伸ばし、改善が必要な部分は今後どのように取り組めばよいかを指導することで社員の成長を促せます。
社員の能力に応じた適材適所を実現するため
人事考課によって公平な評価をすることで、それぞれの社員がどのような業務が得意なのか、反対に不得意なのかが見えてきます。社員の能力が可視化され、適材適所での人材活用が実現できるでしょう。
社員のモチベーションを向上させるため
人事考課によって公正な評価を実現できれば、社員が上げた成果に応じて適正な待遇が決定できます。社員にとっては、日頃の努力が自身の給与や賞与などに反映されるため、モチベーションの向上が期待できるでしょう。
反対に、期待された成果を上げられなかった社員は、具体的にどの部分を改善すべきかがわかります。
人事考課の評価基準

人事考課は一定の基準のもとで公平な評価を行いますが、これを実現するために以下の3つの評価基準があります。
- 業績考課:成果を評価
- 能力考課:能力、知識を評価
- 情意考課:成果を出す過程、姿勢を評価
それぞれについて詳しく解説します。
業績考課
業務の成果やプロセスを評価するのが業績考課です。
たとえば営業職の場合、部署全体の売り上げに対して社員の売り上げがどの程度の割合を占めたのかを数値化することで、組織への貢献度がわかります。また、部署や職種によっては、売り上げだけでなく利益率を算出するケースもあります。
実績や貢献度を数値化するのが難しい業務や部署においては、プロセスそのものを業績考課の対象として評価する場合もあります。
能力考課
社員個人がもっているスキルや能力、知識などを評価するのが能力考課です。
能力考課では「保有能力」「発揮能力」「潜在能力」の3項目に分けて評価します。
- 保有能力:業務において必要な知識や資格、スキルをもっているかを評価
- 発揮能力:保有能力を発揮し、パフォーマンスを高められるかを評価
- 潜在能力:今後伸びる可能性がある能力やスキルを評価
ただし、上記のうち、潜在能力は企業の業績向上に結びつくとは限らないため、能力考課に含めない企業も多いようです。能力考課のベースには、難度が高く、高度なスキルが求められる業務に従事し、目標を達成できた社員は高い評価を受けるべきだといった考え方があります。
情意考課
業績や能力には含まれない、日頃の業務に対する取り組み方や姿勢を評価するのが情意考課です。
具体的には以下の4項目が代表的な情意考課として挙げられます。
- 規律性:社内や部署内で定められたルールにのっとって仕事を進めているか
- 積極性:指示された仕事をこなし、自分ができる業務を積極的に見つけて取り組んでいるか
- 責任性:社員自身の責任範囲を明確に理解し、最後まで自分の業務を諦めることなく完遂する姿勢が見えるか
- 協調性:上司や同僚、後輩の社員など、他者との良好な関係を築けているか
人事考課に用いられる手法の例

実際に人事考課を行う際には、上記で紹介した評価基準に応じて、さまざまな手法を使い分ける必要があります。ここでは、人事考課に用いられる手法のなかから代表的な例を紹介します。
人事考課シート
人事考課で多く用いられるのが人事考課シートです。評価プロセスと最終評価の内容を記載したものが人事考課シートであり、業績考課、能力考課、情意考課を網羅的に評価できるメリットがあります。
人事考課シートのフォーマットは企業によって異なりますが、一般的に記載される項目は以下の3点です。
- 評価対象の項目
- 自己評価欄
- 上司・人事部の評価欄
評価対象の項目となるものには、定量目標(売り上げや利益率など数値化できる目標)・定性目標(顧客対応など数値化できない目標)がありますが、これらは社員本人が立てることが原則となります。
評価対象の項目を記載した後は自己評価を記入し、その後、上司や人事部が評価内容やコメントを記入していく流れとなります。評価者にとって重要なのは、公平な視点で人事考課シートへコメントを記載することです。
人事考課面談
人事考課の結果をフィードバックするのが人事考課面談です。評価結果を伝えるだけでなく、なぜその評価結果になったのか、理由や根拠も明確化したうえで被評価者本人へ伝えるほか、来期に向けてどのような期待をしているのかを伝える場でもあります。
なお、人事考課面談では、被評価者である社員が話しやすい雰囲気をつくることが重要です。上司や人事部の担当者は傾聴の姿勢をもち、下記で説明するような拡大質問や肯定質問なども織り交ぜるようにしましょう。
拡大質問とは、「はい・いいえ」ではなく、意見を語ってもらう質問のことを指します。
たとえば、「成果が上げられた最大の要因は何だと思いますか?」「来期に向けて課題だと認識していることは何ですか?」といった質問が拡大質問にあたります。
肯定質問とは、その名の通り肯定的な言葉を織り交ぜた質問です。
たとえば営業職であれば、「なぜ成約が取れなかったのか?」と原因を問い詰めるような質問をした場合、社員が後ろ向きにとらえ、モチベーションが下がってしまう可能性があります。そこで、「どうすれば成約が取れたと思う?」という肯定的な質問に換えることで、前向きな気持ちにさせられます。
ちなみに、よい評価でなかった場合、被評価者は人事考課の結果に対して不満や疑問を抱くこともあります。そのような姿勢が見られた場合、その場で話を聞くと同時に、なぜそのような評価になったのかを説明し、納得してもらう必要があります。上司や人事部は改善すべき点を具体的に明示し、来期に向けた期待を伝え、社員のモチベーションを向上させることが重要です。
MBO
業績考課に有効な手法としてMBOがあります。MBOとは「Management By Objectives and self-control」の略称で、目標管理制度ともよばれます。
社員が自身の目標を設定し、目標に対する達成度を評価する手法です。目標が明確化されると同時に、社員自身が目標を立てることで自律的に業務に取り組めるようになります。上司や上層部から与えられた目標ではなく、社員自身が目標を設定するため、主体的で自律性のある人材育成につながるほか、社員のモチベーションが向上し、業績考課の結果がよくなることを期待できます。
コンピテンシー評価
主に、能力考課や情意考課に有効なのがコンピテンシー評価です。
コンピテンシーとは、高い成果を出している社員をモデルにスキルや行動特性などを分析し、その社員が結果を出している要因は何なのかを把握する方法です。
コンピテンシー評価では、成果を上げるために必要な行動特性やプロセスに該当しているかを基準に評価します。コンピテンシー評価は業務の結果ではなく、業務プロセスを評価するために用いられることが多いのが特徴です。成果を上げるためにどのような行動が求められるのかが明確化され、評価に対する社員の納得感は高くなります。
360度評価
コンピテンシー評価と同様、能力考課や情意考課に有効なのが360度評価です。
上司だけでなく、同僚や部下、後輩からの評価、自己評価も行い、多面的に評価を受ける方法です。上司からの評価と自己評価以外にも、さまざまな立場の社員から客観的な評価を受けることで納得感が増し、改善すべき部分が新たに見えてくることもあるでしょう。
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人事考課の実施に向けた準備

人事考課の実施にあたっては、公正な評価を運用するためにもさまざまな準備をしなければなりません。ここでは、人事考課を実施する前に必要な準備や、踏まえておきたいポイントを解説します。
導入までの時間を確保する
業種や企業理念、ビジョンなどは企業によっても異なるため、それぞれの企業にマッチした人事考課制度を設計し、導入・運用するのには時間を要します。
たとえば、評価者が適切で公平な評価を行えるよう、事前の研修も必要です。また、被評価者への説明や告知にも時間が要ります。人事考課制度の導入にあたっては十分な時間を確保しておくことが重要です。
社員へ十分な説明を行い、理解を得る
社員にとって人事考課は、業績や能力に応じたランクづけにより、優劣をつけるものとしてとらえられることもあります。
しかし、企業にとって人事考課とは社員の優劣を判断するものではなく、正当な評価に見合った待遇を決定し、人材育成や適材適所、モチベーションを向上させることが目的です。誤解を招かないように社員に説明する必要があるでしょう。
また、下位の評価を受けた社員のモチベーションを下げないよう、評価理由の説明と十分なフォローを実施する体制を構築しておくことも重要です。
人事考課制度の設計方法

人事考課によって公正な評価を実現するためには、評価のルールともいえる人事考課制度そのものが妥当なものでなければなりません。では、人事考課制度を設計する場合、どのような手順で進めていけばよいのでしょうか。ここからは、5つのステップをもとに解説します。
評価の対象を決める(What)
はじめに、何を評価の対象とするのかを決定します。業績考課、能力考課、情意考課の項目のうち、どれを重視するのか、その割合も含めて検討しましょう。
3つの考課項目に応じた評価対象の一例としては、以下の内容が挙げられます。
- 業績考課:半期ごとの売り上げ、利益率 など
- 能力考課:コミュニケーション能力、問題解決力、論理的思考力、クレーム対応能力 など
- 情意考課:規律性、責任感、協調性、積極性 など
評価点の決定方法や集計方法を決める(How)
自己評価や上司からの評価を行う際、どのような基準をどのように点数として評価するのかを決めます。たとえば、5段階評価で算出する際には、
5:期待を大幅に上回る成果
4:期待を上回る成果
3:期待通りの成果
2:期待していた水準にわずかに届かなかった
1:期待していた水準を大幅に下回った
など、具体的に定義するとわかりやすいでしょう。
誰が評価を行うかを決める(Who)
次に、評価者を決定します。具体的には、何人の上司を評価者とするのかを決めます。たとえば課長のみなのか、または部長や経営層も含めるのか、といったことも検討する必要があるでしょう。
また、上司からの評価だけでなく、多面的評価のために360度評価も取り入れるのか、なども決めておきます。
評価期間を決める(When)
評価者が決まったら、いつからいつまでの期間を評価対象期間とするのかを決定します。
たとえば、賞与などに直結する業績考課は半期に1回のペースで実施し、それ以外の能力考課や情意考課は1年に1回実施するなど、評価項目に応じて期間を設定する方法もあります。
評価結果の活用方法を決める(Why)
最後に、人事考課の結果を何に反映させるのか、具体的な活用方法を決めます。
たとえば、給与の決定やグレード(等級)、役職への昇進は能力考課と情意考課の結果をベースに、賞与は業績考課をベースに決定するといった方法も、社員のモチベーションを高めたり企業組織のボトムアップをしたりするためには有効です。
人事考課の手順

人事考課のルールとして人事考課制度を決定した後、実際にどのように運用していけばよいのでしょうか。具体的な手順を4つのステップに分けて解説します。
ステップ1:社員自身の目標設定
はじめに、上司と相談のうえ、社員自身の目標を設定し、人事考課シートへ記載します。
設定する目標は、会社全体のミッションから部門ごとに割り振られたミッションにひもづけることを意識すると同時に、社員本人と上司がお互いに納得できる内容、難度であることも重要です。
ステップ2:自己評価
設定した目標に対する達成度について、社員本人による自己評価を行い、人事考課シートへ記入します。人事考課シートのフォーマットによっても自己評価の記入内容は異なります。たとえば、5段階評価以外にもコメント欄にアピールポイントなどを記入するケースもあります。
ステップ3:上司による評価
業績考課の結果と自己評価、上司からの客観的な評価を踏まえ、上司が最終評価を行い、人事考課シートへ記入します。ここで重要なのは、なぜその評価に結論付けたのか、客観的で明確な理由が必要であることです。
なお、360度評価を実施する場合には、上司による評価と並行して社員本人の同僚や後輩社員などからの評価も加味する必要があります。
ステップ4:上司から社員本人へのフィードバック
人事考課シートへ記入した最終評価を踏まえ、社員本人へ上司がフィードバックを実施し、評価結果とその理由を説明します。評価に対する納得感を得てもらうためにも、評価すべきポイントをわかりやすく具体的に説明することが求められます。また、改善すべきポイントがある場合には、今後期待する点として社員本人に伝えます。
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人事考課の運用ポイント

人事考課を適切に運用し、人材育成効果を高めるためにはどのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。特に重要な6つのポイントを紹介します。
設定する目標の難度
人事考課で設定する目標は、努力次第で達成できる可能性がある難度に設定することが重要です。
設定した目標の難度が低すぎると、社員は努力をしなくてもよい評価を得られるため、社内の業績が伸び悩む可能性があります。反対に、目標の難度が高すぎると、達成の現実性がなく社員のモチベーションが低下する可能性があるのです。
また、設定した目標に対する達成率を客観的に評価できるよう、なるべく数値で判断できる定量的な目標を設定することも重要なポイントです。
評価期間中も定期的な面談でフォロー
設定した目標に向かって業務に取り組んでもらう過程で、適切なプロセスを踏めているか、進捗に遅れが出ていないかを確認するためにも定期的な面談を実施しましょう。1カ月に1回程度のペースでこまめに面談をすることで、早めのフォローができ目標達成に向けた軌道修正も可能となります。
フィードバック面談は必ず実施する
フィードバック面談は評価結果を伝えるだけでなく、社員に対するアドバイスや指導を行い、成長を促す狙いもあります。また、人事考課シートで評価結果そのものは把握できますが、なぜその評価結果になったのか、詳しい説明を聞いて納得感を得てもらうためにもフィードバック面談は必ず実施しましょう。
ネガティブな表現は避ける
人事考課シートやフィードバック面談において、評価結果の理由や根拠を記入する場合、目標が未達に終わった社員に対してはネガティブな表現になってしまうことがあります。
しかし、人事考課では社員のモチベーション向上や成長を促すことも目的であることから、ポジティブな表現を心がけることが重要です。たとえば、前述した「肯定質問」にもあるように、面談のなかで「なぜ目標に達しなかったのか?」と聞くのではなく、「今後何を改善すれば目標を達成できると思うか?」と言い方を換えるのも有効です。
具体的かつ簡潔でわかりやすい表現を心がける
目標設定や自己評価などにおいて、表現が抽象的だと人事考課シートを読んだ上司や人事担当者が内容を把握しづらいこともあります。また、評価理由があいまいだと、評価を受けた社員本人は納得感を得られないこともあるでしょう。
被評価者・評価者がお互いに理解できるよう、できるだけ具体的でわかりやすい表現を心がけることが重要です。
上司は公平でフラットな目線で評価する
評価者である上司は、私的な感情に左右されることなく、公平でフラットな目線で評価をしなければなりません。たとえば、社員に対する好き嫌いや先入観などによって、過大評価・過小評価にならないよう十分注意する必要があります。
評価者がフラットな目線を意識することは重要ですが、企業として評価基準を設定しておくことも重要です。客観的な評価を下すために各項目を細分化し、事実をもとに評価する仕組みや基準を設けておきましょう。
また、評価を受ける側の社員も、評価内容に納得するためにもフラットな目線は不可欠です。たとえば、上司に対して苦手意識があると、「自分自身の評価がゆがめられているのではないか」と疑念を抱き、正常なフィードバックを受けにくくなります。
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注意すべき人事考課エラーの例

ここまで解説してきたように、人事考課において、上司は部下を客観的な視点で公平に評価することが大前提といえます。しかし、人間が評価する以上、無意識のうちに評価に偏りが生じたり、正当ではない評価を下してしまったりすることがあります。このような問題を人事考課エラーとよびます。
人事考課エラーにはどのようなものがあるのか、8つの例を紹介しましょう。
ハロー効果
ハロー効果とは別名「後光効果」ともよばれ、評価対象となる社員の優れた特徴や印象に引きずられ、ほかの項目も高い評価をつけてしまう現象のことを指します。たとえば、「英語が話せる人は仕事の能力も高いだろう」といった思い込みは典型的なハロー効果の一例といえます。
先入観によるエラー
学歴や年齢、性別など、本人の属性に対して先入観をもち、評価結果がゆがめられてしまう現象のことです。たとえば、「◯◯大学の出身だから仕事の能力も高いだろう」といった思い込みが代表的です。
親近感によるエラー
上司と部下との間で業務とは無関係な共通点がある場合、親近感を覚え高い評価をつけてしまう現象のことです。たとえば、「同じ◯◯県の出身だから」「共通の趣味であるゴルフ仲間だから」などが一例として挙げられます。
帰属要因によるエラー
外的な要因を過大または過小にとらえ、評価がゆがめられてしまう現象のことです。たとえば、「景気がよかった(悪かった)から売り上げが伸びた(下がった)のだろう」といった理由づけが典型的な一例として挙げられます。
厳格化傾向
どの部下にも厳しい評価をつけてしまう現象のことです。評価者が完璧主義者や、教育熱心である場合に陥りやすい人事考課エラーといえます。評価基準と目線を合わせることが重要です。
寛大化傾向
厳格化傾向とは対照的に、どの部下にもよい評価をつけてしまう現象のことです。被評価者の業務内容を理解できていない場合や、人間関係の悪化を恐れて被評価者からよく思われたいといった意識がある場合に陥りやすいでしょう。
中心化傾向
どの部下にも平均的な評価をつけてしまう現象のことです。被評価者のスキルや能力について十分に把握できていなかったり、評価者1人に対して被評価者が多すぎたりする場合に陥りやすい傾向があります。
対比誤差
社内で定めた基準ではなく、評価者自身と比較して評価をつけてしまう現象のことです。主観的な評価を防止するためにも、資格の有無などでスキルを評価したり、定量的な評価項目や評価基準を設けたりしましょう。
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人事考課制度に対するサーベイで精度を高める

人事考課制度の運用にあたっては、人事考課シートやフィードバック面談などを行う方法が一般的ですが、人事考課の精度をさらに高めるために、サーベイツールを活用する方法もおすすめです。
そもそもサーベイとは、企業や組織全体の改善を目的としてさまざまな項目を測定することを意味し、そのために用いられるのがサーベイツールです。人事考課制度に有効なサーベイツールの例を2つ紹介します。
人事考課浸透度サーベイ(株式会社日本マンパワー)
日本マンパワーが提供している「人事考課浸透度サーベイ」は、社員が人事考課制度を正しく理解しているかを分析するとともに、人事考課そのものへの納得度などを把握するためのサーベイツールです。
人事考課制度は理解しているものの、実践に移せていない社員やモチベーションが上がらない社員などに対し、どのような人事施策が有効なのかヒントを得られます。
ラフールサーベイ(株式会社ラフール)
ラフールが提供している「ラフールサーベイ」は、現在運用している人事考課制度に対する社員の状況分析や、状況に合わせた人事考課制度の改善策提案に役立つサーベイツールです。
サーベイ調査の質問項目は144項目にもわたり、独自のラフール指数によって人事考課制度の状況を可視化できます。
人事制度の根幹に関わる重要な人事考課

一定の基準のもとで社員を公正に評価する人事考課は、社員のモチベーションを向上させ、人材育成の促進にも重要な役割を果たします。社員の公正な評価は人事制度の根幹にも関わるため、人事考課制度を制定して適正な運用をすることが求められます。
人事考課では上司が部下の最終評価を下すケースが多いですが、評価者である上司は、自分自身が公平な視点で評価していると感じていても、人事考課エラーが起こる可能性はなくなりません。さまざまな先入観や潜在意識によって、人事考課エラーが起こるリスクや可能性があることを十分理解したうえで、客観的な視点を常にもち、評価を行う必要があるでしょう。
また、人事考課制度を適正に運用していくためには、今回紹介した運用手順や運用のポイントを参考にするとともに、サーベイツールを活用するのもおすすめです。社員の適材適所を実現するとともに、人材育成や社員のモチベーションを向上させるためにも、今回紹介した内容を参考にしながら人事考課制度を運用していきましょう。
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