1on1とは_HRreview

1on1は「完璧」よりも「継続」が大切。目的、進め方、導入企業の事例を紹介

1on1(1on1ミーティング)という対話の手法が、組織の活性化や人事施策として注目されています。複雑・多様化する社会のなかで、組織内のコミュニケーション施策・人事施策は、重要度が増しているでしょう。1on1を意味のあるものにするためには、どのように取り組むとよいのでしょうか。

今回は、1on1が注目されている社会的な背景や、実際に取り組む際の事前準備・進め方、導入事例などをお伝えします。


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1on1とは

1on1とは

1on1(1on1ミーティング)とは、上司と部下が1対1で定期的な対話を行うことを指します。評価面談とは異なり、1on1の目的は部下の成長や、上司・部下の相互理解による信頼関係構築。1on1は「週1回30分」などと習慣化し、定期的に行っている企業も多いです。

1on1が注目される背景

1on1はもともと、人材獲得競争が激しいシリコンバレー発祥といわれています。他社に人材を流出させずいかに育成するか、その一つの手段として用いられるようになりました。

日本ではヤフー株式会社(以下、ヤフー)の1on1が先進的で、「ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法(本間浩輔著、ダイヤモンド社)」などの書籍にもなっています。

1on1とは

1on1が日本で注目されるようになった背景の一つとして、大手インターネット企業ヤフーが2012年に導入したことがあります。

ヤフーのコーポレートブログによると「1on1ミーティングとは、組織運営の向上を目指し、最大限の潜在力を引き出す目的で部下のために行う面談のこと」。1on1は上司が部下の話を聴く時間であり、ヤフーでは実施のためのガイドラインが用意されています。ガイドラインには上司が部下の話を聴くために必要な「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」の3つが要点として整理されています。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズと共同で「1on1サポートプログラム」の開発も行いました。

VUCA時代の到来

1on1が注目される社会的背景として「VUCA時代の到来」も挙げられるでしょう。VUCAとは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の4つのキーワードの頭文字からなる言葉。企業や個人を取り巻く、混沌とした現代社会の状況を表す言葉です。

VUCA時代の今、これまでの常識が通用しなかったり、正解がなかったりする状況が続いているでしょう。

企業組織においては、上司であっても確固たる正攻法や正解を持っておらず、曖昧で複雑な状況になっています。たとえば、ITリテラシーは部下の方が高く、ビジネス環境の変化に対しては若い世代の方が柔軟に対応できるなど、上司が部下に一方的に教える構造では成り立たなくなりました。つまり、従来の「上司が部下に対して命令をする」マネジメントでは、変化に対応することが難しくなったのです。

VUCA時代の組織においては「多様性」を発揮することがカギ。上司と部下の1on1や相互コミュニケーションによって、それぞれの社員が持つ多様性が顕在化され、組織の力になっていくと考えられます。

「働く価値観」の多様化

VUCA時代のカギである「多様性」。働くことに対する価値観も多様になってきています。たとえば、自分の好き・得意なことを仕事にしたい、仕事は続けたいが昇進はしたくない、仕事よりもプライベートを優先したい、などがあるでしょう。

「働く価値観」が多様化するなか、自社に優秀な人材を引き留めておくには、部下の短所ではなく長所を伸ばしたり、部下の意思を尊重したりしながら組織を作っていくことが重要。そのためにも、1on1の適切な実施が有用策の一つなのです。

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1on1を有意義な場にするために大切な事前準備

1on1を有意義な場にするために大切な事前準備

ここからは、実際に1on1の取り組みを実施するための「事前準備」についてご説明します。1on1を有意義な場にするためにはどのような点を意識すればいいか、考えていきましょう。

目的意識の共有

冒頭で紹介したように1on1の目的は「部下の成長」。そして単に成長するだけでなく「自発的な」成長の場であることがポイントです。この点をしっかりと部下に伝えましょう。

また、ミーティングの主役は部下だという点もポイントです。部下には、人事評価には直接影響しないことも伝えましょう。1on1は上司からの指導や評価の場ではありません。上司は部下の自発的な発言を促し、しっかりと聴く姿勢が求められます。

日程を決める

1on1の日程を決めるのも事前準備の一つ。落ち着いて話せる時間帯・曜日に1on1の予定を定期的に設定すると、習慣化し定着しやすくなります。

テーマを用意する

1on1で話すテーマは、業務について、今後のキャリア、心身の健康、プライベートなどが例として挙げられます。具体的なテーマは部下が話したいもの、聴いてほしいことにするとよいです。部下がテーマを用意したら、上司は1on1ミーティング前に共有しましょう。

1on1の進め方

1on1の進め方はさまざまで、正解はありません。ここでは1on1の進め方の一例をご紹介します。

チェックイン(気分や体調などについて共有)

冒頭ではアイスブレイクも兼ねて、以下のような話題が考えられます。

  • 気分や体調について
  • 今気になっている事柄・ニュース

1on1では業務・組織のことだけでなく、プライベートな話をするのもよいです。「仕事以外でのその人」を知ることで、相互理解につながるでしょう。

前回の振り返りと今回のテーマ確認

前回話したことの振り返りをし、前回決めたアクションがあればそのアクションの実行具合について確認したりしましょう。アクションがうまく行っていなかった場合は、なぜうまくいかなかったと思うか、内省を促すのがポイントです。

テーマについて対話 

事前にテーマを共有していることもありますが、上司から「このテーマについて話すんだったよね」と舵取りをするのではなく、部下から話し出せるよう促すとよいでしょう。

上司は「聞き役」に徹するのがコツです。聞き役に徹するには、途中で話をさえぎることがないよう、最後まで聴く意識を持つことが大切です。話が途切れた際は、「それでどう思った?」「なぜそうしたの?」など投げかけ、話をつないでいきましょう。

また、部下がすぐに適切な解決策にたどりつけるとは限りません。解決策をすぐに提案したり、部下の考えに対して良いか悪いかの判断を下したりしないよう、注意が必要です。

今後のアクションプラン・解決策を考える(アシスト)

1on1を部下自身の自発的な成長の場とするため、課題の解決策は部下自身が考えるようにします。

上司は、課題の解決策や今後のアクションについて「あなたはどうしたい?」「どうすればそれを実現できると思う?」などの問いかけをすることで、部下の思考をアシストします。

記録をする

1on1ミーティングが終わったら、部下自身に記録を残させるようにしましょう。毎回の1on1で何を話しどう考えたのかを記録しておくことで、振り返りに活用したり、自身の成長度合いを確認したりできます。


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1on1のテーマ・質問例

心身の状態について

1on1で話すテーマは、部下が話したいもの・聴いてほしいものにするとよいと先述しました。それは部下自身が自分の頭で考え、上司に「受け入れられた」という経験ができることが大切だからです。そうすることで、上司と部下の信頼関係構築にもつながるでしょう。

ここからは1on1で扱うテーマの例を、いくつかご紹介します。

心身の状態について

心身の状態をテーマについて話すことで、働くうえでの大前提となる健康状態を確認することができます。以下のような観点で対話をしてみるとよいでしょう。

  • 体調の不具合はないか
  • よく眠れているか
  • 家に仕事を持ち帰っていないか

心身の健康は基本的なことなので、冒頭のアイスブレイクとして毎回確認するのもよいです。

業務の困りごとについて

業務に取り組むなかでの困りごとについて話す場合は「緊急度はそこまでではないが重要なこと」について対話するとよいです。

緊急度が高く、上司の意見・判断が必要なものに関しては1on1ではなく、別途ミーティングを設けます。1on1が「業務ミーティングの場」にならないよう注意しましょう。

部下自身の能力開発・キャリアアップ

部下自身のスキルアップ・キャリアアップについてのテーマも設けましょう。以下のような観点で聴いてみるとよいでしょう。

  • 部下自身の強みや弱み
  • 部下の強みを生かせる業務とは
  • 将来的に挑戦したい仕事
  • 「今の仕事で大切にしていること」についての話題から、今後のキャリアを考える

プライベートや価値観について

プライベートやその人の価値観をテーマにする場合は、以下のような話題が考えられます。

  • 週末の過ごし方
  • プライベートで大切にしていること
  • 最近気になったニュース

信頼関係が築けていない段階でプライベートな話題を持ち出すと、部下が警戒・委縮してしまう可能性があるため、関係性や状況によって判断することが大切です。

組織について気になっていること

1on1だからこそ、普段の業務のなかではなかなか言い出しづらいテーマも話しやすくなると考えられます。以下のような観点で、組織や人間関係に関して気になっていることを話しましょう。

  • 人間関係における課題・トラブル
  • 組織に対する課題
  • 会社やチームの目標について、その納得感について

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1on1を無駄にしない4つのポイント

ここまで実際に1on1を取り組むための準備や手順、テーマ例をご紹介してきましたが、1on1に既に取り組んでいる方もいるでしょう。1on1に対して無駄だ、意味がないと感じているのなら、その実践には何か課題がある可能性があります。

ここからは、1on1を意味のある取り組みにするためのポイントを紹介。現在取り組んでいる1on1のやり方を振り返り、課題がないか考えてみましょう。

定期的な実施

1on1は、頻度が重要です。1回あたりの時間は15分でもよいので、定期的に行うことを心がけましょう。できれば週1回、時間と曜日を決めて実施するとよいです。最低でも月1回を目安にしましょう。

心理的安全性の確保をする

1on1の場は、部下が本音で自分の悩みや考えと向き合う機会でもあります。そのため、1on1の場に心理的安全性があることが、1on1の質に大きく関わるでしょう。心理的安全性とは、気兼ねなく発言ができたり、本来の自分を安心してさらけ出したりできる場の状態や雰囲気を指します。

1on1において発言する割合は「部下が8割、上司が2割」を心がけ、上司は傾聴・コーチングを意識します。部下の本音を引き出すには、まずは上司から自己開示をするのも有効です。

解決策を、部下自身が自主的に考えられるように

1on1では、部下が解決策や解決の糸口を見つけられなくても、すぐに「〇〇したら?」と提案することは控えましょう。

部下が自分なりに解決策を考えられるよう、質問・問いかけによってアシストする意識を持つことが大切です。

完璧な1on1を求めない

そもそも1on1に、確固たる正解はありません。1on1がうまくいかない場合、すべての要因が上司自身のスキル不足ではないし、またすべて部下のせいというわけでもないでしょう。

完璧な1on1を目指す必要はなく、うまくいかなかった場合は「うまくいかなかった」とだけ認識し、完璧よりも「継続」を大切にするとよいです。

1on1を導入している企業の事例

最後に、1on1を導入している企業の例をご紹介します。

楽天株式会社

楽天株式会社では、2017年から1on1を全社的に実施しています。管理職が直属の部下に対して毎週または隔週の頻度で30分の1on1を実施。下記のインタビューによると、1on1は「相手の成長のみを考えてするプレゼント」だといいます。

1on1は人事考課には結び付けず、上司から部下への指導の場にならないようにしています。1on1は「部下の価値観を深く知る機会」と捉えているようです。

【参考】
【楽天株式会社様】1on1は、上司が何かを言う場ではなく、「質問して、部下に考えさせる場」 – 事例紹介 – ビジネスコーチ株式会社 : https://www.businesscoach.co.jp/case/rakuten.html

株式会社キャナル

広告代理店の株式会社キャナルは、社員の増加に伴い、月1回の1on1を導入しました。「普段から一人一人が抱いている成長実感や課題感についての話をよりタイムリーに拾い上げる場」として運用しています。

1on1の記録に関しては、「他の社員がこうしてくれないから…」などという書き方ではなく、「できる限りメンバー自身が自分に向けた書き方」をするよう伝えているといいます。自分自身の行動に目を向け、部下自身がテーマについて前向きに捉えられるようにしたいためだといいます。

【参考】
1on1ミーティングでのメンター経験が、ミドル人材を成長させる | TeamUp MAGAZINE : https://www.teamup.jp/column/interview/canal/

テモナ株式会社

ソフトウェアの企画・開発などを行うテモナ株式会社では、カスタマーサポートチームで1on1を導入しました。業務過多の状況が続いたことなどが要因で、離職率が高まってしまったカスタマーサポートチームにおいて、以下のようなテーマを用意したうえで1on1ミーティングを行ったといいます。

  • チームの良い点
  • チームの課題
  • 課題はどうやったら改善できるか

その結果、浮き彫りになったコミュニケーション課題などの改善施策を展開し、離職率を低下させることに成功しました。

【参考】
1年で離職率が20%⇒0%に!CSチームの組織力を高めたヒミツを大公開|ferret : https://ferret-plus.com/6436

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。