パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントなど、職場におけるさまざまなハラスメントが問題となっています。
そもそも「ハラスメント」とは、どのような行為が該当するのでしょうか。加害者に自覚がないケースも多いため、まずはしっかりと定義を理解しておくことが大切です。
本記事では、ハラスメントとは何か、ハラスメントが及ぼすリスク、企業がとるべき対応策、関連する法律などについて解説します。
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ハラスメントとは

ハラスメント(harassment)とは、「嫌がらせ」を意味する言葉です。
具体的には、身体的な攻撃をしたり、精神的苦痛を与えるような言葉を浴びせたり、わざと無視するなどの行為が挙げられます。本人にそのつもりがなくても、相手が不快な気持ちになったり、苦痛を感じたりすれば、それはハラスメントに該当します。
ハラスメントは個人としての尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為です。社内でハラスメントが発生すると、職場秩序の乱れや生産性の低下、人材の流出など、さまざまな悪影響がもたらされる可能性があります。
ハラスメントにおける「職場」と「労働者」の定義

何か問題が発生したときに、それをハラスメントと判断するかどうかはケース・バイ・ケースですが、基本的な「職場におけるハラスメント」に該当する範囲を理解しておきましょう。
厚生労働省が定義する、「職場」と「労働者」について解説します。
職場について
「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指します。
通常就業しているオフィスや店舗などに加え、新年会や歓迎会などの「懇親の場」や、社員寮、通勤中などのように、勤務時間外であっても、実質上業務の延長上にあると考えられるものは、「職場」に含まれます。
ただし、職場と判断するかどうかは、職務との関連性や、参加が強制だったのか任意だったのか、参加メンバーなどを踏まえて考慮する必要があります。
労働者について
「労働者」には、正規雇用労働者だけでなく、パート・アルバイト等の非正規雇用労働者も含まれます。
派遣労働者に対しては、派遣元事業主はもちろん、派遣の提供を受けている側の事業主も、自社が雇用する労働者と同様の措置を講じなければなりません。
セクシュアルハラスメント

職場で起こりやすいハラスメントの一つが、セクシュアルハラスメント(セクハラ)です。
セクシュアルハラスメントは、厚生労働省によって以下のように定義されています。
「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されること
引用元:パンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!~~セクシャルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします~~」|厚生労働省
「性的な言動」とは、性的な内容の発言および性的な行動を指します。被害を受ける人の性的指向(異性愛・同性愛など)や、性自認(自分の性をどのように感じているか)にかかわらず、性的な言動であればセクシュアルハラスメントとなります。
また、セクシュアルハラスメントの加害者は、自社の従業員とは限りません。取引先などの他社の従業員からハラスメントを受ける、または逆に、自社の従業員が外部の人(他社の従業員やお客様など)に対してハラスメントを行うこともあり得ます。
事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントについて、防止措置を講じたり、適切に対応するために必要な体制の整備をしたりしなければならないことが男女雇用機会均等法第11条に定められています。
セクシュアルハラスメントの類型
職場におけるセクシュアルハラスメントには、「対価型」と「環境型」の2つがあります。
- 対価型セクシュアルハラスメント
性的な言動に対して抵抗・拒否の態度を示したことで、その社員が不利益を受けること。 - 環境型セクシュアルハラスメント
性的な言動により社員の就業環境が不快なものとなり、能力が十分に発揮できなくなるなどの支障が生じること。
セクシュアルハラスメントの例
どのような行為がセクシュアルハラスメントに該当するのか、具体的な例を2つの類型別に紹介します。
- 対価型セクシュアルハラスメントの例
上司から性的な関係を要求されたが、拒否したため降格させられた。
- 環境型セクシュアルハラスメントの例
抗議しているにもかかわらず、会社のパソコンでアダルトサイトを閲覧している社員がおり、不快に感じて業務に専念できない。
パワーハラスメント

厚生労働省が2020年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」では、従業員の約3割もの人が、過去3年以内にパワーハラスメント(パワハラ)を一度以上経験したと回答しています。
参考:職場のハラスメントに関する実態調査について(厚生労働省)
職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素を全て満たすもののことをいいます。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
1の「優越的な関係」とは、上司・部下といった上下関係だけではありません。年齢や立場は下であっても、知識や経験が勝る、または相手が集団である場合など、抵抗・拒絶が困難な関係も含みます。
2の「業務上必要かつ相当な範囲」を超えているかどうかは、ある人の言動が発生した経緯や状況、労働者の属性(業務の経験年数や年齢、障がいの有無、国籍など)など、さまざまな要素を総合的に考慮して判断しなければなりません。
3の「就業環境が害される」とは、ある人の言動により、身体的または精神的に苦痛を感じることで就業環境が不快なものとなり、能力を発揮するうえで見過ごせないほどの重大な支障が生じることです。
事業主は、職場におけるパワーハラスメントについて、防止措置を講じることや、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。これは、労働施策総合推進法 第30条の2に定められています。
パワーハラスメントの類型
職場におけるパワーハラスメントにはさまざまなケースがありますが、代表的な6つの類型を紹介します。
- 身体的な攻撃(殴る・蹴る、ものを投げる など)
- 精神的な攻撃(脅迫する、侮辱する、暴言を浴びせる、必要以上に長時間にわたって繰り返し叱せきする など)
- 人間関係からの切り離し(わざと無視する、別室に隔離する など)
- 過大な要求(明らかに不要な業務や遂行不要な業務を命じる など)
- 過小な要求(業務上の合理性なく、本人の能力に見合わない程度の低い業務を命じる、業務を与えない など)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)
パワーハラスメントの例
前項で紹介したパワーハラスメントの、6つの類型のうち、特に判断が難しいのが、4過大な要求、5過小な要求、6個の侵害です。
客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われている適正な指示・指導に関してはパワーハラスメントには該当しません。事案ごとに総合的に考慮して判断する必要がありますが、参考として、パワーハラスメントに該当すると考えられる例を紹介します。
- 「過大な要求」の例
新入社員に対して必要な指導やアドバイスをしていないにもかかわらず、達成できないことに対して「お前はそんなこともできないのか」などと厳しい言葉を浴びせる。
- 「過小な要求」の例
管理職であるにも関わらず、誰にでも遂行可能な業務を命じられるなど、知識や経験の豊富な社員に対し、嫌がらせのために本人の知識や経験に見合わない仕事しか与えない。
- 「個の侵害」の例
不妊治療をしていることを一人の上司に対してのみ打ち明けたところ、ほかの社員にも暴露された。
マタニティーハラスメント

セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントと併せて、職場の「3大ハラスメント」と呼ばれるのが、マタニティーハラスメント(マタハラ)です。
マタニティーハラスメント(妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント)は、厚生労働省によって以下のように定義されています。
「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されること
引用元:パンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!~~セクシャルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします~~」|厚生労働省
事業主は、職場におけるマタニティーハラスメントについて防止措置を講じるとともに、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。これは、男女雇用機会均等法 第11条の3、および 育児・介護休業法 第25条に定められています。
マタニティーハラスメントの類型
職場におけるマタニティーハラスメントには、「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」の2つの類型があります。
- 制度等の利用への嫌がらせ型
産休・育児休業等の制度の利用を阻害する、または制度の利用を理由に不利益な取り扱いを示唆したり嫌がらせをしたりするなど。 - 状態への嫌がらせ型
妊娠・出産等を理由に、不利益な取り扱いを示唆したり嫌がらせをしたりするなど。
マタニティーハラスメントの例
マタニティーハラスメントは、妊娠・出産を控えた女性社員だけではなく、男性社員も被害者になりやすいといえます。
どのような行為がマタニティーハラスメントに該当するのか、具体的な例を、2つの類型別に紹介します。
- 制度等の利用への嫌がらせ型 の例
男性社員が育児休業の取得を申請したところ、上司に「男が育児休業なんて理解できない。業務に支障が出て迷惑だ」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になった。
- 状態への嫌がらせ型 の例
上司に妊娠したことを報告したところ、「忙しい時期を避けてほしかった」などと繰り返し言われるようになり、業務上看過できない程の支障が生じている。
その他のハラスメント

セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティーハラスメント以外にも、さまざまなハラスメントが問題となっています。例えば、以下のようなものがあります。
アルコールハラスメント | 飲み会で飲酒を強要する、拒否できない状況をつくる、飲めないことをからかう など |
エイジハラスメント | 「最近の若者は〇〇で本当ダメだよな」など、年齢や世代を理由とした差別的な言動や嫌がらせをする |
カラオケハラスメント | 懇親会等で歌うことが苦手な人に歌うことを強要する |
ジェンダー・ハラスメント | 「男性はこうあるべき、女性はこうあるべき」という価値観に基づいた差別的な言動や嫌がらせをする |
このように、ハラスメントには多種多様なものがあります。身近なところにも潜んでいるため、無自覚に加害者となってしまわないように注意しましょう。
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採用活動の際に注意したいハラスメント

近年は、「就活ハラスメント」がニュースで取り上げられることも多くなりました。就活ハラスメントとは、就職活動中の学生に対してのハラスメント行為です。
就活ハラスメントにはさまざまなものがありますが、なかでも特に注意が必要な2つのハラスメント、「就活終われハラスメント(オワハラ)」と「就活セクハラ」について解説します。
就活終われハラスメント(オワハラ)
就活終われハラスメント(オワハラ)とは、企業が就職活動中の学生に対し、自社へ入社するように圧力をかけたり、他社の選考を受けないように要求したりする行為のことです。
例えば、以下のような言動が該当します。
- 内定を出す代わりに、今受けている他企業を全て辞退するよう迫る。
- 他社の選考や就活イベントに参加できないように、過度な頻度で研修等を実施する。
- 「うちを辞退するなら、そちらの大学からはもう採用しない」などと脅迫するような発言をする。
オワハラが起こってしまう背景には、少子高齢化による人材不足、就活・選考解禁時期の後ろ倒しなどで、人材の採用における競争が激化していることが挙げられます。
職業選択の自由は、憲法に定められている全ての労働者の権利であり、企業側がそれを妨害することは許されません。ハラスメントの程度によっては、脅迫罪や強要罪に該当する可能性もありますので絶対に行わないようにしましょう。
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就活セクハラ
就活セクハラとは、就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメントです。
例えば、以下のような言動が該当します。
- 「恋人はいるの?」「どんな異性がタイプ?」などの質問をする。
- 「アドバイスをしてあげる」などの理由をつけて、学生と2人で会おうとする。
- (オンライン面接において)「部屋のなかをもう少し見せてください」「次のWeb面談はスーツじゃなくて部屋着で参加してね」などの要求をする。
このような就活セクハラを、約4人に1人が経験しているという調査結果が、厚生労働省によって報告(※)されています。また、その被害者は女性よりも男性に多いことがわかりました。就活セクハラの内容としては「性的な冗談やからかい」の割合が最も高くなっています。
場を和ませるための冗談のつもりでも、学生側が不快に感じれば、それは就活セクハラになります。不要な発言や質問をしないことを徹底するとともに、面談はオープンな場所で行う、2人きりで会わないなど、就活セクハラを防ぐためのルールを定めておくことが必要です。
(※)令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点

ハラスメントが及ぼすリスク

ハラスメントにより、企業はどのようなダメージを受けるのでしょうか。ハラスメントが及ぼす4つのリスクについて解説します。
法的責任を問われる
ハラスメントが発生した場合、加害者だけでなく、企業も法的責任を問われる可能性があります。ケースにもよりますが、例えば以下のような「使用者責任」「不法行為責任」「債務不履行責任」などが考えられるでしょう。
- 使用者責任(民法715条)
雇用する労働者が第三者に損害を与えた場合に、企業は加害者と連帯して、その損害を賠償しなければなりません。
- 不法行為責任(民法709条)
故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した場合、生じた損害を賠償しなければなりません。
- 債務不履行責任(民法415条)
企業が負うべき職場環境配慮義務を果たさなかったことでハラスメントを発生させた場合、それによって生じた損害を賠償しなければなりません。
セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティーハラスメントについては、防止措置を講ずることが事業主の義務となっています。2022年現在、防止措置を講じないことに対する罰則はありませんが、厚生労働省から勧告を受けたり、従わなかったりした場合はその旨が公表されるリスクが考えられます。
定職率の低下・離職率の増加
ハラスメントの被害者は、加害者が処分を受けたとしても働きづらさを感じ続け、退職を余儀なくされるケースもあります。
また、被害者だけでなく、ハラスメントが身近に起こったことで、他の社員のメンタルヘルスにも影響が出てしまうこともあります。その結果、離職率が増加し、優秀な人材の流出や、採用コストの増加など、企業は大きなダメージを受けることになります。
社員のモチベーションの低下
ハラスメントは、職場の雰囲気の悪化や、秩序の乱れにつながります。このような環境では、社員は働きがいを感じにくくなり、モチベーションを保つことが難しくなるでしょう。その結果、生産性の低下、業績の悪化といった、負のループが生まれてしまう可能性があります。
企業イメージの低下
ハラスメントは、企業のイメージにも影響を及ぼします。訴訟まで発展しなかったとしても、近年はSNSなどでハラスメントが内部告発されるケースも珍しくありません。
「ハラスメントが発生した企業」というイメージがついてしまえば、取引先との関係や採用活動など、さまざまな場面で不利となる可能性があります。
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ハラスメントを防止するための対策

ここからは、ハラスメントを防止するために、企業がとるべき対策について解説します。
方針・規則を周知する
まずは、どのような行為がハラスメントに該当するのか、企業としてそれらを行ってはならない旨の方針を明確にし、社内の全員に周知します。そして、もしもハラスメントが発生してしまった場合は、加害者に対してどのような対処をするのか、方針とともに就業規則等の文書に定めます。
妊娠・出産・育児休業等については、まずはどのような制度が利用できるのかを社員に知ってもらいましょう。積極的な取得を推奨するなど、全ての社員が利用しやすいような環境をつくっていくことが大切です。
また、近年は就職活動中の学生に対する「就活ハラスメント」が大きな問題となっています。面談実施可能な時間の範囲を決める(例午後〇時以降は面談禁止)、1人の就活生に対して男女混合の複数の社員で面談するなど、採用に関する細かいルールを定めておくことも、ハラスメントを予防する一つの方法です。
研修を行い、社員の意識を高める
性別に関する固定観念、「昔はこうだった」などの年代による価値観の違い、無意識の癖などによって、気づかないうちにハラスメントの加害者となっているケースも少なくありません。どのような言動がハラスメントとなる可能性があるのか、研修などを通して、社員に知ってもらいましょう。
ハラスメントを発生させないためには、多様な人材・多様な働き方を受け入れる意識改革が重要なポイントです。
相談窓口を設置する
ハラスメントに実際に対応する相談窓口を設置し、社内の全員に周知しましょう。
ハラスメント被害者の多くが、誰にも相談できず、一人で苦しんでいます。社内の人には相談しづらいと感じる人もいますので、外部の機関への委託を検討したり、労働局の総合労働相談コーナーの窓口を併せて紹介したりなど、被害者が悩みを抱え込まないような体制をつくりましょう。
担当者は、すでに発生しているハラスメントだけでなく、発生する恐れがある、または該当するケースなのか判断に迷う事案に対しても広く対応することが求められます。
ハラスメントが起こってしまったときの対応

実際にハラスメントが起こってしまったときはどうすればよいか、企業がとるべき対応について解説します。
事実関係の確認
まずは、どのようなハラスメント行為があったのか、迅速かつ正確に、事実関係の確認を行います。加害者と被害者だけでなく、必要に応じて第三者からも聴取を行いましょう。
事情聴取にあたるのは、専門委員会や他部署の社員など、中立性をたもてる立場の人物が望ましいです。内容を録音する、複数人で聴取を行うなどして、内容を正確に記録します。
社内だけで判断することが難しい場合は、外部の専門家に相談しましょう。
加害者・被害者に適切な措置とフォロー
事情聴取の結果、ハラスメントの事実が確認できた場合は、加害者と被害者に対して、速やかに措置を講じます。
加害者に対しては、就業規則等に定めたとおりに懲戒などの対処をします。ハラスメントは許されざる行為ですが、場合によっては加害者にやり直しの機会を与えるべきかもしれません。もちろんハラスメントの内容や程度にもよりますので、さまざまな要素を十分に考慮して、総合的に判断しましょう。
被害者に対しては、加害者との関係改善に向けたサポート、加害者と距離を離すための人事異動、加害者による謝罪、不利益の回復など、こちらもハラスメントの内容や程度に応じて、適切な措置を講じます。
再発防止に向けた措置
加害者・被害者それぞれに適切な措置を講じたら、それで「一件落着」ではありません。再び同じことが起こってしまわないように、再発防止のための取り組みを実施しましょう。
再発防止策としては、例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 研修の実施
加害者に、ハラスメントに関する研修を受けてもらいます。社内で実施している研修でも構いませんが、被害者と顔を合わせることになるかもしれませんので、社外のセミナー等を受けさせてもよいでしょう。受講後にレポートを提出させることも、一つの方法です。
- 事例として共有する
全体研修や社報、毎年のトップメッセージなどで「事例」として発信し、再発防止に役立てます。プライバシー保護の観点から、あくまで「一例」とすることが大切です。
- 職場環境の改善
ハラスメントが起こってしまう原因はさまざまですが、職場内のコミュニケーション不足や長時間労働による疲弊などが挙げられるでしょう。生き生きと働ける職場環境をつくることが、ハラスメントの予防にもつながります。
再発防止策は、これまで行っていた予防策をアップデートすることが不可欠です。ハラスメントが発生した後だけでなく、定期的に検証・見直しを行いましょう。
併せて講ずべき措置
ハラスメントの対応にあたる担当者は、加害者・被害者の個人が特定されることのないように、プライバシー保護に関する措置を併せて講じなくてはなりません。
具体的には、プライバシー保護に関するマニュアルを作成する、相談窓口の担当者に対して研修を実施するなどが挙げられます。
社員に安心して相談窓口を利用してもらえるように、プライバシー保護に必要な措置を講じていることを、社員全員に周知しましょう。
ハラスメントに関する法律

パワーハラスメント、マタニティーハラスメント、セクシュアルハラスメントに対して防止措置をとることは事業主の義務です。ここでは、それぞれが定められている法律を紹介します。
パワハラ防止法
正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」ですが、第30条の2に「雇用管理上の措置等」として、パワーハラスメントに関することが定められているので、「パワハラ防止法」と呼ばれています。
2019年の改正(2020年6月1日施行)により、職場におけるパワーハラスメントについて防止措置を講じることが、事業主の義務となりました。中小企業も、2022年4月1日から義務化の対象となっています。
防止措置と併せて、事業主に相談したこと等を理由に不利益な取り扱いをすることも禁止されています。
男女雇用機会均等法
「男女雇用機会均等法」には、職場におけるセクシュアルハラスメント、およびマタニティーハラスメント(妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント)について、防止措置を講じることが義務付けられています。
2019年の法改正により、ハラスメントについて相談したこと等を理由に不利益な取り扱いをすることの禁止、自社の労働者が他社の労働者にハラスメントを行ったときの協力対応などが加わりました。
育児・介護休業法
職場におけるマタニティーハラスメントについて防止措置を講じることは、男女雇用機会均等法だけでなく「育児・介護休業法」にも定められています。
2019年の法改正により、ハラスメントについて相談したこと等を理由に不利益な取り扱いをすることの禁止が追加されています。
また、2022年4月1日より、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備する一環として「産後パパ育休制度」などが加わった改正法が、段階的に施行されます。男女ともに育児と仕事を両立できるような職場環境づくりが、今後はより求められるようになるでしょう。
ハラスメントを防止して誰もが働きやすい職場づくりを

ハラスメントを放置すれば、被害者が苦しむだけでなく、企業にもさまざまなリスクがあります。ハラスメントかどうかの判断が難しいものも多いですが、ハラスメントに対する体制を整え、小さなハラスメントも見落とさないようにしましょう。
事業主の義務としてハラスメントを防止することはもちろんですが、多様な人材が生き生きと働き続けられる職場環境づくりを進めていってください。
中途採用では“うっかり” マナー違反が起こりやすい!

中途採用で思わぬトラブルやマナー違反が起きるケースも少なからずあるようです。
本資料ではそうした事態を未然に防ぐポイントを、採用プロセスに沿って解説していきます。