キャリア採用の拡大や入社後の定着・活躍への挑戦

2023年11月28日、株式会社ビズリーチは「関西に拠点を置く独自の人事戦略を実施している企業様」をお招きし、「人材採用」、「定着・活躍」 における成功事例や見えてきた課題をご紹介するイベント「Human Resource Development Forum」を開催いたしました。「人財価値の向上」を重要なテーマとして据えている積水ハウス様より、急拡大したキャリア採用における課題に対する取り組みと、その先に見えてきたオンボーディング課題の整理・方針策定のプロセス、そして今後の挑戦に関してお話いただいた内容をレポートします。

大村 宏明氏

登壇者プロフィール大村 宏明氏

積水ハウス株式会社 人財開発部 人財採用室 室長

積水ハウスは1960年に創業し、高付加価値の住宅を提供するハウスメーカーとしてブランドを確立してきました。事業ポートフォリオは多岐にわたり、戸建住宅や賃貸住宅の設計・施工を行う請負型ビジネス、リフォームやリノベーション、不動産管理などを手掛けるストック型ビジネス、ディベロッパーとしての開発型ビジネス、そして近年成長が著しい国際ビジネスがあります。

積水ハウスの強みの一つに技術力があり、グループ従業員数29,052名(2023年1月末時点)のうち一級建築士が3,090名と、業界内でも随一の人数を誇ります。

今回は、私たちがキャリア採用の急拡大に踏み切った背景や新たに出てきた課題と取り組みについてご紹介します。

キャリア採用拡大の背景

積水ハウスのキャリア採用数は、直近数年で大きく拡大しており、2018年度に100人強だったのが2023年度には400人以上に拡大しました。さらに、建築現場の専任技術者も200~250人ほど採用しています。コロナ禍があけ、国内受注が順調に伸びたほか、幼稚園や高齢者住宅などの大型物件も増えているため、技術者の業務量が増加した結果、即戦力人財のキャリア採用が必須となりました。

安心・安全な住宅の提供はもちろん、住宅内に非接触センサーを設置し、入居者様の体調不良にも即対応できるような付加価値の提供などにも力を入れています。そうした取り組みを進めるためには既存社員と異なる経験・スキルを有する人財が不可欠であり、ESG経営のもとガバナンス機能の強化のために事務系スタッフの採用も急拡大させる必要がありました。

採用拡大における課題

採用拡大においては、組織やシステムの整備から、人的リソースの最適化など課題が山積みでした。

元々はキャリア採用専任者がおらず、新卒採用と兼務をしていました。応募者情報は担当者ごとにExcelで管理され、大量の紙文書に情報がちらばっていました。さらには、新卒採用文化が根強いこともあり、「採用は人事の仕事」という認識が社内で一般的でした。

そこから取り組むテーマとして挙げたのは、キャリア採用拡大に向けたた「キャリア採用専任組織の整備」、業務効率化のための「ATSの導入」、多様な人財採用のための「BPR・ペーパーレス化」、そして現場との協力体制を築くための「人的リソースの最適化」でした。

まず着手したのが採用経験者の採用です。キャリア採用をメイン業務として担うチームを作り、私もその一員として2年前に入社しました。業務効率化に向けてATSの導入にも取り掛かりました。そのために業務プロセスを可視化し、どのシステムがもっとも業務効率化のインパクトにつながるかを検討し、2022年頭にHRMOS採用の導入を進めました。徹底した電子化、入社手続きのWebシステム化を進めてペーパーレスも実現していきました。

人的リソースの最適化においては、客観的なデータに基づいて採用課題を現場と共有し、採用に積極的にかかわってもらうために、選考ツールやマニュアル作りを進めました。

キャリア採用を進めるには部門のハイアリングマネージャーの巻き込みが欠かせません。人事が現場とのやり取りに時間をかけられるように、オペレーション業務はアウトソースしていきました。

施策実行の流れ

HRMOS採用を導入した2022年度は220人の採用予定が決まっていました。HRMOS採用の部門ユーザーになるハイアリングマネージャーは何十人もいたので、まずは日常的に密なコミュニケーションがとりやすい本社部門からテスト運用し、フィードバックをもらいながら運用改善していきました。これにより、全社導入時にも大きなトラブルなく進めることができました。

HRMOS採用の導入によって業務を可視化して分析できたことから、オペレーション業務のアウトソース化のイメージが生まれ、2022年夏ごろから複数のRPOベンダーに手伝ってもらっています。結果として部門連携に労力を割くことができ、HRMOS採用にたまったデータを使った採用課題の分析、解決施策のすり合わせなどができるようになりました。こうした積み重ねがあったからこそ、直近数年で4倍の採用数を実現できたと思っています。

新たな課題:オンボーディング

キャリア採用を急拡大させた結果、入社後の定着や活躍が大きな課題となっていきました。

私自身が2年前に入社した際も、全社一律のオンボーディングの仕組みがなく、社内システムへのアクセス方法や、どの情報がどこにあるのかなど、細かな社内ルールが分からず大変だった記憶があります。

入社後の受け入れ体制は原則的に配属部門任せで、対応にばらつきがある状態でした。全国各地に入社者がいるため、全社一律の入社オリエンテーションの実施が難しく、半年に一度くらいの頻度で企業理念共有のための研修がある程度で、キャリア入社者向けの専門研修もないという状態でした。

そこで、2022年度のキャリア入社者にアンケートをとり、あるべきオンボーディングの状態を設定していくことにしました。配属先にかかわらず、すべての部門で入社者満足度の高い受け入れプロセスを実施できるよう、全社プログラムやキャリア入社者向けの専門研修の実施、また入社後の一定期間は、人事が定期的に情報把握できる体制作りを進めていこうと決めました。

配属先のオンボーディングを標準化して品質を向上するためのマニュアルを作成し、組織に落とし込んで実行されるような取り組みを進めているほか、キャリア入社者の関係構築に向けた交流会の定期開催も行っていきます。入社後半年間、入社者の状態を把握するためのパルスサーベイも、HRMOS採用を活用しながら進めていきます。こうした取り組みを、2024年2月から導入していく予定です。

積水ハウスはこれからも、自律的なキャリア形成を支援し、組織のベクトルを合わせることで、人財価値の最大化を目指していきます。企業戦略に応じた人員確保と適性配置の仕組みを回していくことで、自律した従業員による組織貢献を生み出していきたいと考えています。

積水ハウス×ビズリーチ トークセッション

▼モデレーター
株式会社ビズリーチ HRMOS事業部 エンタープライズセールス部 マネージャー 田部井 聖佳

田部井:
貴重なお話をありがとうございました。この2年間、組織内の変化はかなり大きかったのではないでしょうか。協業してきた部門の意識の変化をどう感じていますか。

大村:
部門によって採用数が違うので意識の差はありますが、キャリア採用が特別なものじゃなくなってきたなと感じています。定例のビジネスプロセスの一つとして年度計画で考えようというマインドが浸透してきています。キャリア採用の面接も回数を重ねることで、見極めのレベルが安定してきました。組織としては、キャリア入社者の数が増え、もはやマイノリティ感はありません。インクルーシブな社風が広がっているのはいい変化だなと思います。

田部井:
2022年度のキャリア入社の方にアンケートを実施したそうですが、その結果を見たときはどう感じましたか。

大村:
積水ハウスには「人間愛」という根本哲学があって、皆さん親切でいい人が多い会社なんです。なのに、オンボーディングとなるとこんなに課題が出るのかという驚きがありました。個々のホスピタリティの問題というよりは、恐らくは組織としてキャリア入社者の受け入れ経験が浅いことから、彼ら、彼女らが何に戸惑っていてどのようなサポートを必要としているのかを現場の上長や総務責任者がイメージすることが難しいんだろうなというのが素直な感想でした。

例えば、受け入れ側の上長は、「すごく活躍していて成長に期待している」と高評価なのに、本人は「貢献できているか分からない。成長実感がなく期待されているか不明確」と言う。上長側は、即戦力採用だから細かく教えなくても大丈夫だろうという感覚でコミュニケーションをとっていて、それが入社者の戸惑いになっていると感じました。

田部井:
定着というテーマは、新卒採用ではどの企業も注力しますが、キャリア採用になると担当者不在というケースも少なくありません。御社が定着に目を向けようとしたきっかけは何でしたか。

大村:
キャリア採用チームに他企業での経験・知見をもった複数のメンバーが入ったことが大きかったでしょう。私は人事だったので社内の情報やルールをなんとかキャッチアップできたものの、他の部門の入社者は大変だろうなと思いました。また、専門研修を含めた豊富な教育・研修体系の中で、キャリア入社者向けのプログラムがぽっかりと空いていたので、これはよくないなと感じていました。

2024年度から各事業所の総務責任者も巻き込んで一人ひとりのキャリア入社者に対する充実したオンボーディングプログラム提供していき、積水ハウスが人財開発のリーディングカンパニーとして注目されるような企業にしていきたいと考えています。

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。