人事評価は従業員のモチベーションを左右し、個人の成長のみならず会社の業績にも大きく影響を与えるものです。そのため、公平かつ、効率よく実施されなければなりません。
従来は「Excel」や紙のシートに目標や評価を入力するといったアナログ的な運用が多かったですが、近年では業務を自動化できるさまざまなタイプの人事評価システムが登場しています。人事評価業務の効率化に加え、運用のしやすさ、公平性の担保ができるといった理由から、大企業だけでなく中小企業でも導入が進んでいます。
今回の記事では、人事評価システム導入のメリットや種類、導入時のポイントなどを詳しく解説します。
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人事評価システムとは?

まずは、人事評価システムとはどのようなものかという説明とともに、企業が導入を進めている背景を解説します。
人事評価を一元管理できるシステム
人事評価システムとは、従業員の情報を一元管理し、人事評価を効率的かつ公正に行うためのシステムです。「人事考課システム」と呼ばれることもあります。
入力や集計の作業を簡略化でき、従業員のデータを管理することで業務の効率化につながるほか、公正な評価が可能になるなどのメリットがあります。また、蓄積した個人データや会社全体の平均データの分析も可能で、客観的な数字で従業員のモチベーションや従業員満足度などを把握できます(詳しくは「人事評価システムを導入するメリット」の項目参照)。
導入が進む背景
人事評価を実施するにあたって、これまではExcelや紙の人事考課シートなどを使って行うケースが多くありました。しかし、配布や記入、回収の手間がかかる、全体像を把握しにくいといった課題があることに加えて、評価をする担当者の主観が入りやすく、評価の公平性が担保できないといった課題もみられました。
こうしたなかで、人事評価業務の効率化、公平性という観点から、近年は人事評価システムを導入する企業が増えています。ほかにも、リモートワークが進んだことで人事評価が難しくなっている側面があり、客観的に評価できるシステムが必要とされているという事情があります。
また、近年は企業のニーズにあわせたさまざまな人事評価システムが登場してきたことも、企業規模や業種を問わず人事評価システムの導入が進んでいる背景に挙げられます。
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人事評価システムの主な機能

人事評価システムを導入するとどのようなことが実現できるのでしょうか。ここからは人事評価システムの主な機能を紹介します。
従業員情報の管理
従業員の経歴や実績、スキル、保有資格、研修の受講履歴、住所、社会保険などの情報をシステム上で一元管理することができます。
バラバラに管理されてしまいがちな従業員情報を1カ所に集約できるので、すばやく必要な情報にアクセスできる環境がつくれます。配属先の検討や人材開発を検討する際にも役立ちます。
目標の管理
従業員ごとに目標や達成度、最終的な評価などを登録し、管理することができます。目標の達成度をリアルタイムに可視化できるため、目標達成に向けたモチベーションの維持、アドバイスがしやすくなります。
また、面談の内容やフィードバックの内容などを登録しておくことで、定期的に振り返ることが可能で、次の目標設定にもいかせます。
評価の管理
人事評価システムにはさまざまな評価機能があります。自社の人事評価方法にあったものを選んで評価シートを作成し、管理することができます。これによって評価基準を明確にできるため、客観的な視点で評価でき、公平性の担保も可能となります。
主な人事評価の種類は下記のとおりです。
- MBO(目標管理制度)評価
従業員が目標を決め、その進捗や達成度合いをもとに評価する方法
- 360度評価
上司だけではなく、関係する複数の従業員が1人の従業員を評価する方法
- コンピテンシー評価
仕事で優れた成果をあげる人の行動特性を基準にして従業員を評価する方法
加えて、人事評価システムを活用することで、これまでのデータの振り返りや分析がしやすくなります。評価する上司や担当者が変わった場合もデータの引き継ぎを円滑に進められ、システム上で内容を共有したり、フィードバックをしたりすることも簡単にできるため、評価の管理がしやすくなります。
人事評価フローの管理
人事評価の一連の流れをシステム上で管理することができます。個人の目標設定や自己評価、上司や周囲による評価、フィードバックなどを登録し、面談の実施状況やスケジュール管理など一連の流れをシステム上で管理します。人事評価フローの一例は下図のとおりです。

また、入力や面談の締め切りなどを自動でリマインドする機能もあり、評価者や人事担当者の負担が削減できて業務効率化につながります。
外部連携
Excelで管理しているデータをCSVファイルにまとめて出力できたり、他の業務システムとの連携が簡単にできたりするシステムもあります。自社ですでに使っている給与管理システム、労務管理システム、コミュニケーションツールなどと連携することで、業務効率がアップします。
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人事評価システムの種類

人事評価システムには、大きく分けてクラウド型、パッケージソフト型、オンプレミス型の3つのタイプがあります。それぞれのメリットとデメリット、費用の目安を紹介します。会社の規模や予算、目的にあわせて、自社にどのタイプのシステムがふさわしいかを検討しましょう。
クラウド型
インターネット経由でサービスを利用するタイプです。ユーザー数に応じて月額料金が発生します。一定のユーザー数までであれば固定料金で利用できるタイプもあります。
■メリット
- 場所を問わず、インターネットにアクセスできればどこからでも利用できる
- 環境構築のコストや時間を比較的抑えることができ、利用開始や停止がしやすい
- 常に最新バージョンを使うことができる
■デメリット
- インターネット接続が前提となるため、ネット回線が悪い場所では使いにくい
- 自社向けのカスタマイズがしにくい
■費用
- 初期費用:0円〜30万円程度
- 月額利用料:利用するユーザーの数に応じて料金が変わる。5,000円ほどの安価な金額で使えるシンプルなサービスから、機能が充実して大人数に対応するサービスまで多岐にわたる。導入時に見積もり依頼が必要なケースも多い
パッケージソフト型
パッケージソフトを購入し、パソコンにインストールして使うタイプです。
■メリット
- パッケージソフトの初回購入費はかかるものの、継続利用するための費用が発生しない
■デメリット
- バージョンアップやメンテナンス、セキュリティ対策は自社で行う必要がある
- 自社向けのカスタマイズがしにくい
■費用
- 最初にパッケージソフトの購入費がかかり、クラウド型に比べて導入費用がかかる
- 月額の運用費はかからないが、セキュリティ対策やメンテナンスの費用が定期的に発生する
オンプレミス型
自社にサーバーを構築し、専用のソフトウエアなどをインストールして運用するタイプです。
■メリット
- 自社の人事評価制度やニーズにあわせてカスタマイズすることができる
- 自社のセキュリティ基準にあわせることができる
■デメリット
- 初期費用が高く、運用開始までに時間がかかる
- バージョンアップやメンテナンスは自社で行う必要がある
■費用
- 導入時の初期費用は100万円前後が目安
- メンテナンス費用がかかるほか、システム運用・保守の担当者が必要となる
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人事評価システムを導入するメリット

では、従来はExcelや紙のシートを使っていた企業が人事評価システムを導入した場合、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは5つのメリットを紹介します。
人事評価業務の効率化
人事評価システムを導入することで、従業員ごとの目標管理、進捗、評価、フィードバックなどを1つのシステムで管理できるようになります。Excelなどを用いて人事評価を行う場合、評価シートの配布・回収、データファイルの管理に多くの労力がかかります。人事評価システムの導入により、入力や集計の作業が1つのシステムで完結でき、業務の効率化につながります。
さらに、面談の実施状況を把握しやすくなることに加え、1カ所にデータを集約できることから、すばやく必要なデータにアクセスができ、運用や管理の手間の削減もできます。
評価の公正化
人事評価システムではさまざまな評価基準のテンプレートが用意されており、評価項目を自社で細かく設定できます。そのため、客観的な指標にもとづいた人事評価を実施できます。
社内共通の評価基準を設け、その基準やプロセスを従業員に公開することで、評価者の主観・イメージで評価が左右されることがなくなります。また、評価者が変わっても同じ基準で評価をすることが可能になります。
従業員満足度の向上
人事評価システムによって評価が公正かつ適切に行われることで、従業員満足度の向上につながります。目標や達成度合いなども可視化できるようになるため、従業員は高いモチベーションを保って仕事に取り組むことができます。従業員満足度が高ければ長く働いてくれる従業員が増え、会社の業績にもよい影響をもたらすでしょう。
また、モチベーションが低くなっている従業員についても早期に状況を把握しやすく、周囲が的確なタイミングでフォローやアドバイスをすることができます。
人材配置の最適化
従業員の人事情報や経歴、目標や評価などを一元管理できるようになることで、客観的なデータにもとづき、本人の志向やこれまでのキャリアや保有するスキルをふまえた適切な人材配置につなげることができます。
どの部門にどの人材を配置すれば業績向上につなげることができるかが人事評価システムによって明確になり、戦略的な人材配置ができるようになります。
データ分析ができる
従業員のデータが蓄積されて一元管理できるため、分析がしやすくなり、従業員への適切なフィードバックに役立てることができます。
また、全従業員のデータを集約して分析するツールもあります。従業員の目標や評価を客観的なデータで分析でき、自社が現状抱えている課題の発見につながります。これにより、自社の人材育成やマネジメントが適切に行われているかを定期的に見直すことが可能になります。
人事評価システムを導入するデメリット

人事評価システムの導入によって大きなメリットを得られる一方で、導入にあたってデメリットもあります。主なデメリット3つを解説します。
コストがかかる
人事評価システムを導入・運用するためには当然ながらコストがかかります。無駄なコストを発生させないためにも、導入の目的を明確にしたうえで必要な機能を選定し、適切なシステムを選ぶ必要があります。
使える機能やユーザー数によってシステム導入の初期費用やランニングコストが変わってくるため、事前にしっかりと検討してコストパフォーマンスを見極めることが大切です。
導入したにもかかわらず適切に運用することができなければ、コストだけが負担になってしまいます。導入後の活用方法についても、事前にしっかりと想定しておくとよいでしょう。
人事評価制度の再構築が必要
人事評価システムを導入するにあたって、既存の人事評価制度を見直して、ルールやフローを再構築する必要があります。
人事評価の考え方や仕組みは時代の変化、従業員のニーズの変化とともに変わっていくものです。従業員を適切に評価し、モチベーションが高い状態で働いてもらうためにも、評価業務の担当者は人事評価に関する知識をアップデートし、評価に反映するようにしましょう。システム導入を機に自社の人事制度を見直すとともに、必要に応じて新しい仕組み、ルールを取り入れることが大切です。
新しい制度やシステムに慣れるまでは大変
新しいシステムを導入すると、ルールや操作方法を覚えなければならないため、従業員が慣れるまでは人事評価業務の負担が一時的に高まってしまう可能性があります。
変更による混乱などから従業員から不満が出ることも考えられるため、事前に従業員に対して丁寧に導入の狙いや変更点、新しい運用ルールを説明し、導入後は適切なフォロー体制を整えておくとよいでしょう。
従業員から不満が出た場合の対応についても事前に検討しておきます。
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人事評価システム導入のステップ

次に、人事評価システムを導入するまでの流れを解説します。以下の流れで導入を進めていきます。

まず、現状の人事評価制度やマネジメント、人材育成の課題を洗い出し、人事評価システムを導入する目的を整理します。人事評価業務の効率化、従業員のモチベーション管理、人材育成にいかすなど、実現したいことをピックアップしましょう。課題と目的を明確にすることが、自社に最適な人事評価システム導入の第一歩となります。
自社の目的や課題をふまえたうえで、導入にあたってどんな機能が必要かを検討します。すでに社内で使っている労務管理システムやコミュニケーションツールなどとの業務のすみ分けを整理するとともに、システムの連携が可能かどうかも検討しましょう。
自社にとって必要な機能だけでなく、必要のない機能も明確にしておくと、実際にシステムを選定する際に判断しやすくなります。
このタイミングで、人事評価システムにかける予算や導入に向けた体制づくり、フローも整理しておきます。
目的や予算、必要な機能と照らし合わせて、自社のニーズにあう人事評価システムをリサーチします。
必要に応じて各社から資料や見積もりを取り寄せて比較検討するとともに、各部の人事評価担当者や、システム担当者などにも意見を聞くとよいでしょう。
導入する人事評価システムが決定したら、運用ルールを策定します。アクセス権限を誰に与えるかも確認しておきましょう。実際の運用に向けて、従業員の意見もヒアリングします。
人事評価システムの導入や評価制度、運用ルールについて、従業員向けに説明会を開催したり、マニュアルを配布したりして周知を行います。事前に質問が寄せられた場合は丁寧に対応します。
システム導入によってこれまでと人事評価制度や運用ルールが大きく変わる場合は、従業員が不安にならないようにしっかりと説明をして、納得してもらうことが大切です。
人事評価システムを実際に導入します。導入後、しばらくは従業員が新しいシステムに慣れず、混乱が起こる可能性があるため、システムが浸透するまでは手厚いサポート体制があったほうがよいでしょう。
導入後も定期的に運用フローやルール、評価方法などを見直し、課題が見つかったら適宜改善していくことが必要です。
人事評価システムを選ぶ際のポイント

導入する人事評価システムを選ぶ際は、次の5つのポイントを意識して検討して自社にあうものを選びましょう。
目的にあった機能があるか
人事評価システムにはさまざまな機能があり、人事評価業務に特化したもの、人材育成を含めた幅広い人材管理業務に対応できるもの、労務管理システムなどと連携したものなど、システムごとに強みとなる部分が異なります。適切なシステムを選ぶためにも、自社の目的や用途にあわせてどんな機能が必要か、あるいは必要ないかを事前に検討しておくことが大切です。
自社の評価制度に対応しているシステムを選ぶほか、システム導入のタイミングで、必要に応じて評価制度の見直しも行うとよいでしょう。
規模や組織体制にあっているか
人事評価システムには少人数から、数百人、数千人規模の従業員が利用できるものまでさまざまなタイプがあります。システムごとに使える機能や対象人数が異なるため、自社の従業員規模や組織体制に適したシステムを導入することが大切です。
クラウド型タイプは導入費用を安く抑えられるため、中小規模の企業でも導入しやすいことが特徴ですが、一方で人数や機能が増えれば利用料金が高くなります。
利用する従業員が多い場合や自社の用途にあわせたい場合は、既存のクラウド型やパッケージソフト型では求める機能が足りないことがあります。その場合は、カスタマイズがしやすいオンプレミス型を検討するとよいでしょう。
セキュリティ基準をクリアするか
人事評価システムには従業員の人事情報を含むあらゆるデータが集約されます。万が一、閲覧権限のない人が見てしまったり、情報が漏洩してしまったりしてトラブルが起きてしまうと、事業に大きなダメージを与えかねません。
こうした事態を避けるためにも、自社のセキュリティ基準に沿った強固なセキュリティ対策ができるかを事前にしっかりと検討しておきましょう。特にクラウド型の場合はベンダー側にセキュリティを委ねることになるため、導入前に確認しておくことが大切です。ほかに、アクセス権限の設定や、データの保管方法なども決めておく必要があります。
使っているシステムと連携できるか
人事評価システムには外部のシステムと連携ができるものがあります。自社で使っている給与管理システム、労務管理システムなどのほか、コミュニケーションツールと連携ができれば、業務効率がアップします。
導入検討段階でどの業務をどのシステムで行い、どのように連携するかを検討して効果的な運用につなげます。人事評価と労務管理などが1つのシステムでできるものもあるため、自社に最適なものを選びましょう。
サポート体制は十分必要か
導入や運用にあたって不具合が出たり、うまく使いこなせなかったりするケースが出てくる可能性もあります。こうした場合に備えて、人事評価システム提供業者のサポート体制が充実しているかどうかも事前に知っておいたほうがよいでしょう。
電話やメール、チャットでの対応のほか、担当者が訪問してくれる場合もあります。また、サポートが有料か無料かも含め、事前に確認しておきましょう。
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人事評価システムを導入する際の注意点

最後に、人事評価システムを導入する際の注意点を紹介します。
運用ルールを決めておく
システム運用の管理者や権限、フローなどのルールなどが不明瞭だと、導入後に現場が混乱してしまうことが考えられます。人事担当者を中心に、現場の意見も聞きながら運用ルールづくりを進めることが大切です。
実際に運用開始してから「ここが使いにくい」「この部分がよくわからない」という疑問の声があがることも考えられます。導入後も定期的に運用ルールを見直し、改善していきましょう。
従業員への周知を徹底する
人事評価は従業員のモチベーションに大きな影響を与えるため、人事評価システムを導入する目的やメリットなどを事前にしっかりと伝え、納得してもらうことが重要です。
また、評価の方法や基準を従業員に公開することで透明性を担保することも大切です。適切に評価されていると従業員が実感できるような仕組み、風土をつくることを意識しましょう。
まとめ

人事評価システムを導入することで、従業員に対して客観的で公平な評価が可能になり、適材適所の人材配置や人材育成につなげることができます。人事評価業務の効率化も図れるでしょう。その結果として、従業員満足度の向上や業績向上も期待できます。
導入する際は、さまざまな人事評価システムのなかから自社の目的や規模にあったものを選ぶことが大切です。本記事で紹介した、人事評価システムの主な機能や選ぶ際のポイントを参考に検討してみてください。
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