幅広いビジネスシーンで使用される「アセスメント」という言葉。人材領域においては「人材アセスメント」と呼ばれ、その意味や事例を知ることは、人事担当者が業務を進めるうえで、プラスに働くでしょう。
本記事では、人材アセスメントについてその定義や特徴、実施のポイントなどを詳しく解説するとともに、各業界におけるアセスメントの目的やプロセスについても整理しながら解説していきます。
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アセスメントとは何か?

「アセスメント(Assessment)」は、英語が語源であり日本語では「評価」と直訳されます。ある事象を客観的に評価することを意味し、人や物だけでなく、課税や資産に対する評価・査定でも用いられる場合があります。
日本の実社会では多くの場合、人事や組織、事業、サービスに対し、正しい情報と偏りのない判断によって評価・分析をすることを指します。「〇〇アセスメント」というように使われることが多く、会話シーンでは「アセスメントする(客観的に評価する)」というように用いられることもあります。
「アセスメント」の使用例
アセスメントという言葉はさまざまな業界・分野で、以下のように使われます。
- 公平な昇格昇進を実現するために、「人材アセスメント」を導入すべきだ。
- 新卒採用だけでなく、中途採用にも「アセスメントツール」を活用していく。
- 今回の建設事業は、「環境アセスメント」の対象となるため、対応が必要だ。
- 生活リズムや環境を分析し、患者を正しく「アセスメントする」。
- 「アセスメントを実施し」、見つかった課題を解決していく。
このように多義的に使われる言葉ですが、「正確な評価」をイメージすることで、理解しやすくなるでしょう。
ビジネスシーンにかかわるアセスメントの種類

先述のとおり、アセスメントの種類は業界・分野ごとにさまざまです。ビジネスシーンにおける主だったものについては、以下のアセスメントを把握しておくと良いでしょう。
人材アセスメント | 人材を正しく評価することで、適切な採用や人員配置を行うこと |
組織アセスメント | 組織に所属する人材を正しく評価し、組織としての特徴や強みを客観的に把握すること |
環境アセスメント | 大規模な開発事業などを行う際に、事業者の環境配慮を予測・評価すること |
リスクアセスメント | 職場における事故などの危険性を事前に特定し、対策・低減措置を実施すること |
ライフサイクルアセスメント | 製品やサービスの生産や消費について、環境負荷を総合的に評価すること |
ITアセスメント | 社内システムなどの運用環境や利用状況を把握し、再構築や改善のための調査・診断をすること |
上記のなかでも、あらゆる業態の企業に関係する「人材アセスメント」と「組織アセスメント」について、次で詳しく紹介します。
人材アセスメントの特徴
人材領域における、個々の人材に対するアセスメントは、「人材アセスメント」「人事アセスメント」と呼ばれます。客観的に人材の能力を評価することが目的で、結果が数値化される適性検査などがその例であり、採用や昇給、異動などにおける指標として活用されます。
人事評価には一定のルールがないため、各企業にその手法が委ねられています。従来は管理職や上司による主観的な評価が主流であり、適材適所の人員配置を実現するうえでは不十分でした。また主観的な評価方法は公平性にかけるため、従業員(被評価者)の不満感や離職につながる問題もありました。
そこで、外部機関による適性検査などのツールを活用し、客観的データにより評価を適正化しようとするのが、現代における人材アセスメントの特徴となります。個人(評価者)の主観によらない正しい評価方法や基準が前提となるため、アセスメントツールなどを目的に応じて活用すると効果的です。
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組織アセスメントの特徴
人材領域においては、部署やチームに対する「組織アセスメント」もあり、近年注目されてきています。組織アセスメントは人材アセスメントとの組み合わせにより、採用、昇進昇格の考課、リーダー選出などのシーンで活用されています。
組織アセスメントの特徴は、組織を数値的、客観的に把握できることです。組織内にどのような人材が多いかなどを分析することで、社風やモチベーション、ポテンシャルといった、見えづらい要素を可視化できます。
また、その手法は人材アセスメントがベースとなっていることが多いです。詳しい内容は後述しますが、「適性検査」や「360度評価」などのツールを使い、「個人」と「組織」を統合的に評価して人員配置を改善していきます。
アセスメントの手順・進め方

次に、アセスメントを実施する際の手順について紹介します。アセスメントには、基本となる進め方があります。
- 情報を収集する
- 情報をもとに何が起こっているかを分析し、仮説を立てる
- 仮説をもとに計画を策定し、実行する
- 実行した計画を評価・共有し、今後に役立てる
今回は「チームのモチベーションが下がっている場合」を例にして、手順に沿って進め方のポイントを解説していきます。
情報収集
最初に、対象となる人や物事について、アセスメントの判断材料となる正確な情報を集めていきます。客観的な評価を下すためには、漏れのない情報収集が必要です。以下の点に留意するといいでしょう。
- 対象がどのような状況に直面しているか
- 対象が何から影響を受けているか
- 対象の周辺で過去に何が起こったか
対象となるチームのメンバー一人一人に状況をヒアリングするだけでなく、その環境を観察したり、他のチームのメンバーから情報を得たり、過去に起こったことを整理したりすることが必要となります。
分析・推察・仮説立て
次に、集めた情報をもとに、対象に起こっていることの原因を分析します。先の例を当てはめると、以下のようになるでしょう。
- チームの会話が少ない
- 社会的影響によりリモートワークが定着している
- 先月の人事再編で、新しいメンバーが多く加わった
といった情報を集めた場合、次のような仮説が立てられます。
- 仕事に対する士気が低下している
- 対面でのコミュニケーションが減り、メンバーが不安を抱えている可能性がある
- 新人・若手メンバーは、チームの方向性や風土を理解していないかもしれない
計画の策定・実行
こうして立てた仮説に対し、どのようにアプローチするのか、計画を立てて実行します。今回の例では、以下のような計画が考えられるでしょう。
- 定期的なオンライン会議を行う
- 出社が可能な場合はオフィスで対面の集会を行う
- 社内システムなどを利用し、困りごとや業務の進捗を共有できる場を増やす
- 新人・若手メンバーが積極的に発言できる機会を与える
計画の評価・共有
最後は実行した計画に対し、評価と共有を行い今後の対応に生かします。今回の例では、チームのコミュニケーションが活性化しているかを再評価し、洗い出された改善点や問題点をほかのチームにも共有していきます。
このようなステップを繰り返し継続していくことで、アセスメントは効果を発揮するとされます。
アセスメントを実施する際に参考にしたいフレームワーク

アセスメントを実施するにあたり、よく「氷山モデル」というフレームワークが活用されます。氷山モデルとは、目に見える事象をさまざまな因果関係によるものだと捉え、階層的に分析していく考えです。
先の例の「チームのモチベーションが下がっている場合」を氷山モデルに当てはめると、以下のようになります。1は目に見える現象、2~4は直接的には見えてこない要因です。
- 出来事(目に見える部分)…チームの会話が少ない
- 行動パターン(出来事の周辺にある原因)…リモートワークで出社が少ない
- 構造(行動パターンに影響する要因)…過度な効率化推進
- 意識・無意識の前提(構造の根底にある価値観、固定観念)…チームリーダーの多角的視野の不足
このケースでは、社会的に普及するリモートワークを「効率化推進の機会」と捉えたことが、コミュニケーション不足の直接的な原因となりました。そしてその前提には、無意識のうちに目先の業務遂行を優先するあまり、チームマネジメントがおろそかになっているという、リーダーの視野の狭さがあることがわかります。
このように根本的な問題を発見・解消することで、チーム内のほかの問題の解決や、別のチームへの応用に役立てられるのです。
人材アセスメントを実施するメリットとは

では、企業が人材アセスメントを行うことで、どのような効果が得られるのでしょう。ビジネスシーンにおいて、人材アセスメントを実施するメリットについて解説していきます。
適正な人員配置ができる
人材アセスメントの最大のメリットは、適正な人員配置です。個々の能力や経験を数値的に把握し、他の人材とも比較しながら人員配置を行うことで、昇進や昇格、部署再編、異動などの際にミスマッチを防げます。
従来のミスマッチにより強みを発揮していなかった人員を見つけ出すことで、才能の発掘、会社全体のリソース最適化にもつながります。
リーダー候補の育成に活用できる
人材アセスメントでは、事業や業務に対する能力だけでなく、リーダーシップやマネジメント能力も評価できます。将来に向けたリーダーの育成や、育成プログラムの作成などに活用することで、長期的な人材開発が可能になるでしょう。
採用のミスマッチの防止に役立つ
人材アセスメントは、採用活動にも用いられます。これまでも、多くの企業で適性検査などが新卒採用で導入されてきましたが、近年は中途採用での活用も広がっています。
就職・転職希望者の能力や価値観を、客観的な評価によって正確に把握することで、採用のミスマッチ防止に役立てられます。
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人材アセスメントの企業向けツール

人材アセスメントでは、多くのアセスメントツールの活用が可能です。代表的なものについて解説していきます。
適性検査
対象者の基礎的な能力や性格、価値観などの診断に使用される方法です。ミスマッチの防止が目的で、主に採用の場面で用いられます。
その内容は多岐にわたり、知的能力、論理的思考力、情報処理力、一般常識などを測る「能力検査」と、人間性、考え方、価値観、ストレス耐性などを測る「性格検査」に大別されます。
代表例が、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供する「SPI」で、受検者数が多いため、全国のデータと比較できることが利点です。
参考:適性検査「SPI」とは?|リクルートマネジメントソリューションズ
360度評価(多面評価)
「360度評価」は、「多面評価」とも呼ばれる評価方法です。その名の通り、上司だけでなく、部下や同僚、人事担当者、自分自身が評価者となります。トップダウン式ではない評価を行える点が特徴です。
360度評価は、アンケート方式のフォーマットで評価項目を設定して実施します。評価項目一つ一つに対して設問を出す方法が主流ですが、役職や部署など、被評価者によって設問を分けることでより効果的になります。
ただし、評価者によるバラツキ、本音ではない回答の発生など、デメリットもあるので注意しましょう。人間関係の悪化なども起こりうるため、評価者を匿名にするなど工夫も必要になります。
エニアグラム
「エニアグラム」は、個人のパーソナリティーを9つに分類し、自己認識と他者理解に役立てる手法です。人材アセスメントをはじめ、コーチングや研修でも活用されています。
9つの分類とは、「改革する人」「助ける人」「達成する人」「個性を求める人」「調べる人」「信頼を求める人」「熱中する人」「挑戦する人」「平和を好む人」で、診断によって把握できます。
エニアグラムには、思考や習慣に基づいた適正な人員配置を実現できることだけでなく、個々の人材が自分を正しく理解するというメリットもあります。チーム内の相互理解も深まるため、組織アセスメントにも応用できるでしょう。
インバスケット・ゲーム
「インバスケット・ゲーム」とは、架空の主人公になりきり、複数の案件を制限時間内で処理するビジネスシミュレーションゲームです。絶対的な正解のない課題と全案件の処理が不可能な時間制限が特徴で、優先順位や問題発見・分析能力を、迅速性とともに見極められます。
シミュレーションの内容は、顧客からのクレーム、部下からの相談など、処理案件が主流で、外部の問答集などを活用することもできます。昇進試験や採用で用いられますが、アセスメント以外にも、個人の能力開発・発見にも役立てられるため、研修でも用いられています。
アセスメント研修
「アセスメント研修」は、研修のなかでの受講態度や姿勢、発言内容やコミュニケーション方法を観察し、能力や思考を評価する手法です。主に、昇進・昇格の評価で活用されます。
研修では演習やインバスケット・ゲームを行うことが多く、外部機関によるプログラムも利用できます。また、外部機関によって内容は異なりますがアセスメントと育成を両立できる研修も多数あります。
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人材アセスメントを効果的に実施するには

実際に人材アセスメントを行う際には、以下のポイントを押さえると効果的です。
実施目的を明確にする
人材アセスメントを導入するうえでは、実施目的を明確にすることが重要です。まずは、自社の課題や経営戦略を踏まえ、アセスメントを行う目的を考察します。
そして、対象者を事前に整理し、測定すべき能力(性格、特性、知識、意識、スキル、行動など)を検討します。そのうえでニーズに合ったアセスメントツールを選択していきましょう。
また、新たに人材アセスメントのツールや手法を導入する場合は、被評価者に対する配慮も必要です。双方が納得のいく方法で実施するためにも、明確な目的を共有しなければなりません。
フィードバックを行う
人材アセスメントでは、ただ導入・実施するだけでなく、被評価者に結果をフィードバックすることが大切です。
人材アセスメントによる客観的な評価は被評価者に受け入れられやすいことに加え、新たな目標が明確になるため、その後のパフォーマンスの向上を期待できます。
研修・効果測定を継続的に行う
人材アセスメントは一度きりでなく、継続的に実施することで効果が上がります。また、直接的な能力測定にとどまらず、結果に合わせた研修を実施することで、人員配置やミスマッチ防止以上の効果が得られるでしょう。
医療・看護におけるアセスメントとは

ここからは医療・看護分野のアセスメントについて紹介します。「看護アセスメント」とも呼ばれるこの方法について、目的や手順を解説します。
目的
医療・看護におけるアセスメントの目的は、看護の方向性や計画を明確にすることです。患者から発信される痛みや症状などの主観的情報と、バイタルサイン、診断結果などの客観的情報を統合的に収集・評価することで、その正確性を高めていきます。
手順・進め方
実際の看護アセスメントでは多くの場合、以下のような看護理論を用いながら、患者の情報を分析していきます。
SOAP
「SOAP」は、患者の経過を記録する際の方法の一つです。単純な記録だけでなく、患者の問題点を洗い出していくことに特徴があります。
SOAPは、以下4つの項目に沿って記録を行います。
S(Subject)…主観的情報。患者の症状、痛み、病歴など
O(Object)…客観的情報。医療関係者が身体診察・検査から得た情報
A(Assessment)…アセスメント。SとOをもとに分析・評価した内容
P(Plan)…計画。S、O、Aに基づいた治療方針や看護計画
ゴードンの11の機能的健康パターン
患者の情報を収集する際には、有名な看護理論の一つである「ゴードンの11の機能的健康パターン」が役立てられます。情報を身体的、精神的、社会的な側面から網羅的に分析できる点が特徴です。
【ゴードンの11の健康機能パターン】
- 健康知覚-健康管理パターン
- 栄養-代謝パターン
- 排泄パターン
- 活動-運動パターン
- 睡眠-休息パターン
- 認知-知覚パターン
- 自己知覚-自己概念パターン
- 役割-関係パターン
- セクシュアリティ-生殖パターン
- コーピング-ストレス耐性パターン
- 価値-信念パターン
参考:【実習記録の書き方-基礎編】まずはゴードンの機能的健康パターンでアセスメントの視点をマスターしよう! | がんばれ看護学生!【メディックメディア】
ヘンダーソンの14の基本欲求
もう一つ、看護アセスメントでよく利用されるのが「ヘンダーソンの14の欲求」です。人間には基本的欲求があり、必要な体力、意思力、知識があれば、自立して充足できるという看護論のもと、基本的欲求が14点示されています。
【ヘンダーソンの14の基本欲求】
- 正常な呼吸
- 適切な飲食
- 老廃物の排泄
- 望ましい姿勢
- 睡眠と休息
- 適切な衣類選択と着脱
- 体温の維持
- 身体の清潔
- 安全
- コミュニケーション
- 信仰
- 仕事
- 遊びやレクリエーション
- 学習
参考:看護過程のアセスメントの枠組みには何を使ったらいいのか?|がんばれ看護学生!【メディックメディア】
医療・看護のアセスメントのポイント
医療・看護におけるアセスメントのポイントは、現状を判断しながら、原因を特定し、今後の変化を予測することです。これらを論理的に正しく行うために、看護理論の枠組みを用いることが必要になります。
介護や福祉におけるアセスメントとは

介護・福祉分野でもアセスメントが活用されます。現代の介護で重要となる自立支援に向け、質の高い介護計画を策定する際に必要な考えです。
目的
介護・福祉のアセスメントにおける目的は、対象者にどのようなケアを施していくかを明らかにすることです。チームでの動きが必要な介護では、複数名で計画を共有することがかかせないフローになります。
手順・進め方
チームメンバーで計画や方針を共有・作成するうえでは、対象者から情報をヒアリングする「アセスメントシート」が用いられます。アセスメントシートには多くの形式がありますが、厚生労働省が設定する「課題分析標準項目」の23項目が最低限盛り込むべき事項となっています。
厚生労働省の課題分析標準項目(23項目)
【厚生労働省の課題分析標準項目(23項目)】
- 基本情報(受付、利用者等基本情報)
- 生活状況(利用者の現在の生活状況や生活歴)
- 利用者の被保険者情報
- 現在利用しているサービスの状況
- 障害高齢者の日常生活自立度
- 認知症高齢者日常生活自立度
- 主訴(利用者および家族の要望)
- 認定情報(利用者の要介護状態区分などの認定結果)
- 課題分析(アセスメント)理由
- 健康状態
- ADLに関する項目
- IADLに関する項目
- 認知(日常の意思決定を行うための認知能力)
- コミュニケーション能力(意思の伝達、視力、聴力など)
- 社会との関わり
- 排尿・排便
- じょく瘡・皮膚の問題
- 口腔衛生
- 食事摂取
- 問題行動(暴言暴行、徘徊など)
- 介護力(介護者の有無・介護意思など)
- 居住環境
- 特別な状況(虐待、ターミナルケアなど)
参考:課題分析標準項目│一般社団法人 長崎県介護支援専門員協会
介護・福祉のアセスメントのポイント
アセスメントシートは、対象者の立場や意思を尊重しながら作成していくことが必要です。また、アセスメントシートは継続的に改善していくことも求められます。現場との往復を通じて正確性を高めることで、良質な介護が可能になるでしょう。
保育におけるアセスメントとは

次に、保育におけるアセスメントについて解説します。
目的
保育分野のアセスメントは、子どもの発達状況や課題を全体的に把握・共有し、適切な保育支援を行うことが目的です。個別の保育計画、支援方針を作成していく際に活用されます。
手順・進め方
介護のアセスメント同様、保育でもアセスメントシートを利用します。アセスメントに沿って支援を提供した後、「エバリュエーション」という事後評価を行っていきます。
アセスメントシートに記入する内容
アセスメントシートに記入する内容は自治体などによって異なります。各種知能発達検査、日常生活動作、心理検査履歴などが記入されるケースが多いです。
保育のアセスメントのポイント
アセスメントシートの項目に記載がないことでも、子どもの様子で気になる点があれば記入するようにしましょう。家庭や保育所だけでなく、地域全体で子どもを観察することで、適切な保育支援が可能となります。
環境アセスメントとは

次に、建設や土地開発などの事業において重要となる、環境アセスメントについて解説していきます。
目的
環境アセスメントは、ある事業が、環境に及ぼす影響を予測し、公害や自然破壊への対策を事前に検討するために行います。その内容を、住民や関係自治体などの意見を聴きながら、適正な環境配慮がなされるように手続きを進めていきます。
手順・進め方
環境アセスメントは、法令によって5段階の手続きが定められています。
- 配慮書の手続き
- 方法書の手続き
- 準備書の手続き
- 評価書の手続き
- 報告書の手続き
このうち、アセスメントの方法を示すのが「方法書」です。その後、事業者が自ら調査・予測・評価、環境保全措置の検討を行い、公表された結果に対して意見を聞く手続きが「準備書」「評価書」にあたります。最後に、事後調査などを「報告書」で公表します。
参考:環境アセスメントのためのよりよいコミュニケーション優良事例集│環境省
環境アセスメントのポイント
環境アセスメントを実施する際のポイントは、各段階で関係者の意見を取り入れることです。特に現代は企業活動における環境配慮が重要視される時代です。周囲との良好なコミュニケーションにより、事業活動を実現することは、結果として企業価値の向上につながるでしょう。
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは

環境アセスメントに近いものとして、ライフサイクルアセスメント(LCALife Cycle Assessment)があります。どちらも環境配慮のためのアセスメントですが、環境アセスメントは事業、ライフサイクルアセスメントは製品・サービスが対象となります。
目的
ライフサイクルアセスメントの目的は、製品・サービスのライフサイクル全体や、特定の段階における環境負荷を定量的に評価することです。
ここでいうライフサイクルとは、資源採取、原料生産、製品生産、流通・消費、廃棄・リサイクルなど、製品・サービスに関わる全てのプロセスを指します。原料や製造工程だけでなく、流通や消費を含む環境負荷を計測できることから、近年注目が集まっています。
手順・進め方
ライフサイクルアセスメントは、ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントの国際規格が作成されており、この規格は4段階で構成されています。
- 目的および調査範囲の設定
- インベントリ分析
- 影響評価
- 解釈
インベントリ分析とは、ライフサイクルの各段階の原材料、素材、エネルギー、製品、環境負荷を把握し、図表化するプロセスのことをいいます。
参考:ライフサイクルアセスメント(LCA)|環境展望台国立環境研究所
ライフサイクルアセスメントのポイント
世界的に普及するライフサイクルアセスメントは、日本の企業でもCSR報告書などで取り入れるケースが増えています。SDGsやESGの重要性が高まるなか、国際基準に沿って情報を正しく分析することはもちろん、その取り組みを発信していくことも企業や組織にとって大切なアクションになりつつあります。
リスクアセスメントとは

最後に、職場におけるトラブルや危険性を回避するためのリスクアセスメントについて解説していきます。
目的
リスクアセスメントは、職場における潜在的な危険性、有害性を見つけ出し、それらを除去・低減するためのアセスメントです。事故をはじめとした労働災害の防止などに貢献します。
プロセスや手法
リスクアセスメントは、以下のような手順で進めます。
- 危険性や有害性の特定
- 危険性や有害性ごとのリスクの見積もり
- リスク低減のための優先度の設定・リスク低減措置内容の検討
- リスクの低減措置の実施
参考:リスクアセスメントの進め方と効果│中央労働災害防止協会
リスクアセスメントのポイント
リスクを見積もる際は、リスク要素を数値化したり、マトリックスなどで整理したりすることで正確に把握します。そのうえで、優先順位の高いものから対応していくことが、基本的な方法です。一度リスクを網羅したうえで、全体を整理しながら一つ一つの課題に取り組んでいくことが、ポイントといえるでしょう。
近年におけるアセスメントのトレンドに対応するために

多様性、環境配慮が重要となる現代においては、独りよがりな企業活動は不向きです。常に客観的な指標を持つことが重要で、科学的視点を主軸としながら、時には外部機関のアセスメントツールなどを活用し、なるべく主観を取り払う必要があるでしょう。
なかでも多くのビジネスに直結する人材アセスメントは、近年のトレンドに着目する必要があります。人材の個性が重要になりつつある今、個々の力を見いだすためには、知識や技術、経験といった「見える部分(外面)」だけでなく、意識や意欲、価値観といった「見えない部分(内面)」にも焦点をあてることが望ましいからです。
従来の企業では、高い実績を上げる社員の行動特性を基準とした「コンピテンシー」を評価の軸とする考えもありましたが、潜在能力は一人一人異なるため、現代的経営にはそぐわないケースもあるでしょう。
こうしたなかで、アセスメントを活用し客観的な情報に基づいた判断を下すことは、適切な人員配置に直結するだけでなく、人事評価における基準の蓄積や改善にもつながるため、企業における資産となります。
ただし、論文や外部機関によるメソッドを重視しすぎることには注意も必要です。他社における優秀な人材が、自社においても優秀だとは、必ずしもいえません。まずは自社の基準や方向性を持ったうえで、適切な方法を導入していくことが、人材アセスメントのカギとなります。人材アセスメントを導入する際は、自社における目的の明確化を念頭に置きましょう。
人材アセスメントに限らず、人事評価の方法は、人材の成長を加速させ、満足度を高めるうえで重要な役割を果たします。以下の資料では、部下や社員の成長を促す「評価」の仕組みと伝え方を解説しているので、活用してはいかがでしょうか。
参考書籍:大浦久司/岡部泉「人材発掘に向けた具体的手引き—ヒューマン・アセスメント—」鳥影社P26-P69
評価に対して、不満そうな部下・社員は、いませんか?

その原因は、「評価をめぐるバイアス」や「3つの公正感」が影響しているかもしれません。「納得と成長を生む評価方法」をテーマに、株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆さんが解説します。