・人材紹介手数料は「成果報酬型」が一般的
・手数料の相場は理論年収の30%~35%程度
・「返還金制度」は早期退職が発生した場合の制度
少子化による労働力不足の懸念や、急速に進むデジタル社会においてIT人材の需要が高まっているなか、人材紹介会社の利用を検討している企業も少なくないでしょう。しかし、人材紹介会社の利用にも手数料がかかるため、企業としては費用対効果を見極めなくてはなりません。
この記事では、企業が人材紹介会社を利用する際にかかる手数料の仕組みや相場を紹介するとともに、採用コストをなるべく抑えるポイントについても解説していきます。
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人材紹介会社とは

人材紹介とは「求人サイトに求人を出す」「企業説明会を開催する」などの採用活動と違い、自社ニーズにマッチした人材を仲介会社(以下、人材紹介会社)に紹介してもらう採用手法のことです。
人材紹介に対する手数料はかかりますが、自社による採用業務を減らしつつ、ニーズに合う人材を見つけられるのが特長です。
また、人材紹介会社とは、求職者と求人者(以下、企業)をつなぐ仲介会社のことです。人材紹介の仕組みのなかには、ハローワークや地方自治体が主体となるものもありますが、ここでは民間企業の人材紹介会社について見ていきます。
人材紹介会社となるには厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。また、職業安定法による資産・資金要件や、個人情報管理等の要件を満たさなければなりません。

厚生労働大臣の許可を受ける際には、「職業紹介事業許可申請書」や「事業計画書」など、必要な書類を厚生労働大臣に届け出ます。職業安定法第32条の3では、厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づいた手数料の徴収が認められている旨が規定されているため、人材紹介会社が受け取る手数料をまとめた「手数料表」も提出する必要があります。
参考:
令和3年4月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領│厚生労働省
職業安定法 第三十二条の三(手数料)|e-Gov法令検索
人材紹介会社の仕組みについて詳しくは、こちらの記事からご覧いただけます。
人材紹介手数料の仕組み
手数料の種類は複数ありますが、ここではより一般的な「上限制手数料」と「届出制手数料」の2つについて解説していきます。
【上限制手数料】
上限制手数料を設定する場合は職業安定法において次のように定められています。
- 支払われた賃金額の10.8%(免税事業者は10.3%)相当額を上限に設定する
- 同一の企業に6カ月を超えて雇用される場合には、6カ月間の雇用における賃金額の10.8%(免税事業者は10.3%)相当額とする
ただし期間の定めのない雇用契約では上記と異なる場合もあります。
【届出制手数料】
「届出制手数料」は一般的に採用されている手数料形態で、次のように柔軟に設定できます。
- 厚生労働大臣に届け出た手数料表の額を設定可能
手数料の設定は人材紹介会社により変わりますが、一般的な相場は理論年収の30%~35%程度といわれています。
以下、「手数料」とある場合は「届出手数料」を指します。
求職者から手数料を徴収することは法律で禁止されているため、人材紹介にかかる手数料は人材を採用する企業側が支払います。求職者は無料で人材紹介会社を利用できます。
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人材紹介手数料の相場

ここからは、人材紹介にかかる「届出制手数料」の相場について詳しく紹介します。
紹介手数料の相場
既述のとおり、届出制手数料の一般的相場は、理論年収の30%~35%程度といわれています。一方、希少人材であるエグゼクティブ層を紹介するようなケースでは40%を超えるケースもあるようです。
人材紹介においては求職者と企業、双方の要望を聞き取り、進捗状況に応じたフォローをしなければなりません。また同時に求職者の履歴書や職務経歴書の確認、希望条件のすり合わせや面接日程の調整なども必要です。エグゼクティブ層など、条件にあった人材を探し出し交渉に至るには多くの時間も必要でしょう。
なお、職業安定法では手数料が極端に不当な場合、厚生労働大臣は「手数料表を変更すべきことを命ずることができる」としています。
参考:職業安定法 第三十二条の三(手数料)|e-Gov法令検索
「成果報酬型」の手数料が一般的
一般紹介・登録型の人材紹介会社を利用したときにかかる手数料は一般的に、採用決定時に発生する成果報酬型であることが多いようです。その場合は、マッチングして雇用契約を締結に至った後に紹介料(手数料)が発生します。「採用決定時」に厳密な定義はありませんが、入社時もしくは内定時であることが多いです。
成果報酬型のスタイルが多いといわれるのは、自社のデータベースを活用し、マッチングに至るまでのコストが抑えやすいためと考えられます。
なお、事前に着手金が発生することもあります。事前に支払った額は成功報酬に充当される場合がありますが、成功しない場合でも返金されないのが一般的です。紹介手数料の支払い時期とともに、着手金の取り扱いも確認しておきましょう。
着手金が必要なケース
着手金が必要なケースは、人材紹介の依頼時に着手金を手数料の一部として支払い、雇用契約が締結された後に残りを支払うもので、「リテイナー型」とも呼ばれます。
これは企業の要望に合った人材を探していくサーチ型の人材紹介会社に多い傾向です。サーチ型は、エグゼクティブ層や専門スキルを持つ人材など、企業側の人材への要求が高いことや、それらの人材に個別のアプローチが必要であるなど、マッチングに至るまでのコストがかかりやすいためと推測できます。
人材紹介の手数料は高い?
仮に手数料相場を理論年収の30%~35%程度とした場合、理論年収700万円の人材を採用した際の手数料は、210万円~245万円程度となります。採用コストや費用対効果の面を考えて、人材紹介会社に依頼するか迷う採用担当者もいることでしょう。
ただ、人材紹介会社に依頼することで、履歴書や職務経歴書の確認、面接日程のすり合わせなど、時間を要する業務を代行してもらえるため、自社での採用にかかる工数を減らせるというメリットがあります。
また、求職者の希望を聞き取ることや、条件のすり合わせを行うことで、採用のミスマッチを回避できる確率が高まり、早期退職を防ぐことにもつながります。長く自社で働く人材を採用できる可能性が高い点も踏まえ、自社の状況に合わせて検討するとよいでしょう。
返還金(返戻金)制度とは?

契約内容に納得し、人材紹介を受けても早期退職に至ってしまうリスクはあります。そのリスクヘッジとして確認しておきたいのが「返還金(返戻金)制度」です。
返還金制度とは紹介した人材が早期退職した場合に、紹介手数料の一部を返金する制度で、例えば「入社から30日未満の退職で80%」「90日未満の退職で50%」を返金するといったように、多くの人材紹介会社が返金規定を設定しています。事前に返還金制度の有無とその内容について確認しておきましょう。
「早期退職」の定義は明確ではありませんが、厚生労働省の「職業紹介事業パンフレット」によると帳簿書類に記載する事項として「6カ月以内の離職により返戻金制度に基づき返金が行われたか否か」とあります。そのため、まずは6カ月以内の返金規定があるか確認してみるといいでしょう。
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【年齢・職種別の具体例あり】人材紹介手数料の算出方法

人材紹介にかかる手数料は既述のとおり「理論年収の30%~35%程度」であるといわれています。
例えば理論年収が500万円の場合、30%の手数料であれば、150万円程度と算出できます。届出手数料の割合だけでなく、求職者の理論年収によっても金額が変わるのが大きな特徴です。
次に、年齢・職種別に2つの具体例を挙げて、人材紹介にかかる手数料を算出します。
例(1)30代後半/システムエンジニア
- 職業 システムエンジニア
- 年齢 30代後半
- 一般的な年収※ 490万円程度
上記から算出するシステムエンジニアの人材紹介手数料は、「490万円×30%~35%=147万~171.5万円程度」が相場となります。
例(2)50代前半/プログラマー
- 職業 プログラマー
- 年齢 50代前半
- 一般的な年収※ 550万円程度
こちらも同様の計算方法で算出すると、人材紹介手数料は、「550万円×30%~35%=165万~192.5万円程度」が相場となります。
※「一般的な年収」は仮定であり、おおよその相場と考えて参考にしてください。
理論年収とは

人材紹介手数料算出時のベースとなるのが理論年収です。ここからは、理論年収について詳しく見ていきます。
理論年収の計算方法と具体例
「理論年収」には、一般的に次のような項目が該当します。
- 採用者の基本給・所定外労働手当の12カ月分
- 年間の賞与、交通費以外の諸手当、報奨金および一時金など
次に、具体例を挙げて理論年収を算出します。
- ケース1:月給35万円(基本給30万円、諸手当5万円)+賞与(基本給1.5カ月分)
- ケース2:月給40万円(基本給38万円、諸手当2万円)+賞与なし
上の場合、ケース1の理論年収は「35万円×12カ月+賞与(45万円)」で、465万円。ケース2の理論年収は「40万円×12カ月」で、480万円となります。
月給だけ見れば、ケース2の方が年間で60万円の差がありますが、理論年収は諸手当と賞与を加味するため、最終的な差は15万円にとどまります。
賞与については、入社後の最初の賞与が査定対象期間ではなく支給対象外となる企業もありますが、その場合でも理論年収では社内規定にかかわらず、賞与を加算して算出するケースもあるため注意が必要です。

理論年収と実際の年収が違う理由
理論年収は基本給の金額だけでなく、賞与や諸手当も含めた額となるのが一般的です。そのため所定の資格取得により生じる諸手当や、一定の技能を持った人材に対して発生する技能手当などがある場合は注意が必要です。
基本給をベースに手数料を計算してしまうと、人材紹介会社から提示された手数料が想定よりも高くなる可能性があります。
人材紹介を利用した採用を成功させるコツ

人材紹介会社を利用して採用を成功させるには、どのような点に注目すべきでしょうか。押さえておきたいポイントを紹介します。
求める人材像を明確にする
まず、自社が求める人材像を明確にすることから始めましょう。例えば、求める人材の要件が必要以上に多く絞り切れない場合、条件に合う人材が見つからず採用に至らないというケースもあります。自社にとって必要な人材像を正しく見極めることが重要です。
自社に合った人材紹介会社を選ぶ
人材紹介会社の特徴が自社と合っているかどうかも重要です。「建築業」「医療系」「IT系」など、専門分野の人材紹介に強みを持つ人材紹介会社も多くあります。
自社の業界について理解が深ければ、自社ニーズの意図をくみ取り、求める人材をより的確に見つけやすくなるでしょう。
手数料に見合った効果が得られるか検討する
提供サービスはもちろん、手数料や後述する返還金制度等については契約前に確認しておきましょう。手数料については紹介会社があらかじめ求人企業に明示しなければならないものではありますが、求人企業側からも説明を求めて理解を深めましょう。
手数料も人材紹介会社ごとに異なるので、自社の状況と照らし合わせ、手数料に見合った効果が得られるかで契約を判断する必要があります。
こまめな連絡を心がける
一つ一つの連絡に対する返信が遅れると、タイムロスが発生してしまいます。そのため、人材紹介会社からの連絡が入った場合は時間をおかず返信することが大切です。
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人材紹介手数料や採用コストをなるべく抑えるには

人材紹介の手数料や採用にかかるコストを抑える、2つの方法を紹介します。
紹介手数料の割引を相談する
手数料をなるべく抑えたい場合は、人材紹介会社に紹介手数料の割引を相談するのも選択肢の一つです。しかし、紹介手数料は人材紹介会社における収入源です。質の高いサービスを維持するためには、割引に限度があることを理解しておきましょう。
別の採用手法を検討する
人材紹介会社以外の採用手法を活用するのも一つの手です。比較的コストがかかりにくい下記の採用手法について解説します。
- リファラル(リファーラル)採用
- ソーシャルリクルーティング
- ダイレクトリクルーティング
■リファラル(リファーラル)採用
リファラル採用は、自社社員の知人や友人などを紹介してもらう採用手法です。自社と候補者の双方をよく知る社員からの推薦であるため、ミスマッチが起こりにくいとされています。
想定されるコストは紹介者である社員への謝礼です。
■ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングは、FacebookやTwitterといったSNSを活用した採用手法です。自社アカウントを通じ、企業が自ら人材を探し、アプローチすることが可能です。候補者がSNSで情報発信をしている場合は、それによって候補者のスキルや仕事への姿勢、経験値などの情報を収集できます。
手数料はかかりませんが、SNS上で候補者を探す時間や、やり取りの時間は発生します。
■ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業側が必要な人材を採用するために、企業自身が採用手法や手段を主体的に考え、積極的に行動していく採用活動です。企業自らが主体的に候補者を見つけたり、情報収集を行ったりしていく採用手法のほか、自社サイトによる求人手法もダイレクトリクルーティングの一種です。
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人材紹介も含めて、あらゆる手段で求める人材を採用しよう

求人を出す、企業説明会を開催するなどの採用活動もありますが、自社の求める人材に出会えないケースも考えられます。人材紹介会社を活用することで、自社ニーズにマッチした人材採用を試みてはいかがでしょうか。
ただし手数料が発生するので、費用対効果が納得できるものであるかどうかを慎重に見極めなければなりません。また万が一の早期退職に備えた返還金制度の有無についても事前に確認しましょう。信頼できる人材紹介会社を見つけることが、人材紹介による採用を成功させる第一歩といえるでしょう。
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