家族手当とは? 扶養手当との違い、平均相場、見直し・廃止が進む理由を解説

家族手当とは? 扶養手当との違い、平均相場、見直し・廃止が進む理由を解説

基本給とは別に支給される手当のひとつに、「家族手当」があります。家族手当の支給は法律で定められているわけではないため、すべての企業に導入されているわけではありません。本記事では、家族手当とはどのような制度なのか、扶養手当や児童扶養手当との違い、導入するにあたって目安となる支給額などについて解説します。

また、これまで多くの企業で活用されてきた家族手当制度ですが、近年、見直しや廃止が進んでいるようです。それは一体なぜなのか、見直し・廃止を行った企業の事例も紹介します。


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家族手当とは

家族手当とは

家族手当とは、民間企業において、家族を持つ社員に対して支給される手当のことです。支給要件となる対象を「配偶者」や「扶養家族」に限定している場合は、「配偶者手当」や「扶養手当」と呼んでいる企業もあります。

労働基準法第4条(男女同一賃金の原則)に基づき、家族手当についても性別を理由とした差別的取り扱いをしてはならないとされています。

家族手当の支給は任意

家族手当は、法律で義務付けられている制度ではありません。制度の有無、要件や支給額は、企業が独自に定めることができます。

なかには、家族手当の支給対象を「正社員のみ」としている企業もあるかもしれません。しかし、「パートタイム・有期雇用労働法」により、正社員と非正規社員で不合理な待遇差を設けることは禁止されています。家族手当も均衡・均等待遇の対象となっているため、不合理な待遇差がある場合には見直していくことが重要といえるでしょう。

税制上の家族手当

家族手当は、税制上どのような取り扱いになるのでしょうか。

まずは、所得税の課税対象となるかどうかです。所得税は、「給与所得」に対して課税されます。「給与所得」には、毎月の給与や一定期間ごとの賞与、そして一部例外はありますが、さまざまな手当も含まれます。よって、家族手当も原則として、所得税の課税対象となります。

次に、社会保険料の対象範囲を紹介します。社会保険料は、毎月の給料などの「報酬」に基づいて算出された標準報酬月額から計算される仕組みです。「報酬」には基本給のほか、賞与(年4回以上)や手当も含まれます。例外はありますが、家族手当のように毎月または一定期間継続的に支給されるものについては、社会保険料を算出する際に対象となります。


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家族手当と扶養手当の違い

家族手当と扶養手当の違い

家族手当と扶養手当の違いは、支給の対象範囲です。家族手当は「家族がいる社員」が対象となり、扶養手当は「扶養家族がいる社員」が対象となります。

たとえば、扶養していない共働きの配偶者を持つ社員Aさんがいるとします。社員Aさんは、企業が設けている制度が家族手当なら支給対象となりますが、扶養手当なら支給対象にはなりません。仮に、社員Aさんに扶養している子どもがいる場合、子どもについては家族手当・扶養手当どちらの場合であっても支給対象となります。

さらに、配偶者の収入を103万(※1)や130万(※2)といったラインで制限を設けている企業も多くあります。その場合、もし社員Aさんが配偶者を扶養していたとしても、収入によっては扶養手当の対象にはなりません。

また、手当の対象範囲を「扶養家族がいる社員」としている場合でも、「家族手当」の名称を使っている企業もあります。就業規則や賃金規則に定めがあるはずです。一度自社の制度を確認してみてください。

※1・所得税が課税されない収入の上限
※2・社会保険の扶養に入ることができる収入の上限

扶養手当と児童扶養手当の違い

扶養手当と児童扶養手当は、名称こそ似ていますが、中身は全く異なります。

扶養手当はそれぞれの企業のなかで導入されている制度ですが、児童扶養手当は、ひとり親家庭を支援するための国の制度です。対象となるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日を迎えるまでの間にある子どもと暮らすひとり親家庭で、自治体に申請することで支給を受けられます。

扶養手当と特別児童扶養手当の違い

特別児童扶養手当も、企業の制度ではなく、児童福祉の増進を図るための国の支援制度です。対象となるのは、精神または身体に障害のある20歳未満の子どもを持つ家庭で、支給額は障害の等級によって定められています。また、受給には所得制限が設けられています。

家族手当を導入する目的

家族手当を導入する目的

家族の人数が増えれば、それだけ多くの出費が必要になります。家族手当の目的は、家族を持つ社員の家計負担を減らし、安心して働ける環境をつくることです。

経済的な負担が軽減されることで、企業に対する満足度の向上や、仕事に対するモチベーション向上にもつながります。就職先を選ぶ際に「福利厚生」や「給与・待遇」を重視する人は多く、手当を充実させることで、採用力の強化といったメリットも期待できるでしょう。


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家族手当の支給条件

家族手当の支給条件

家族手当の支給条件は、企業によってさまざまです。配偶者や子どもだけでなく、同居する両親も対象としているケースもあり、企業が独自に定めることができます。ただし、定め方によっては「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できない場合がある という点に注意が必要です。

割増賃金とは、社員に時間外労働・休日労働・深夜労働を行わせた場合に支払わなければならない賃金です。これは「割増賃金の基礎となる賃金」をもとに算出しますが、家族手当はここから除外して算出できます。

ただし、「扶養の有無に関係なく、一律で支給する」というような場合には除外できません。「扶養する子ども1人につき〇〇円支給する」というように、扶養家族1人あたりの金額を定めている場合には除外できます。

家族手当の相場

家族手当の相場

家族手当の支給額は企業によってさまざまです。業界や地域によっても差がありますが、ここでは例として、東京都産業労働局の「中小企業の賃金事情(令和3年版)」の調査結果を紹介します。

家族別に支給額を定めている企業の平均支給額は、以下のとおりです(※集計企業数:402社)。

  • 配偶者:10,498円
  • 第一子:5,802円
  • 第二子:5,461円
  • 第三子:5,415円

子どもについては、第一子から第三子まで同額としている企業もあれば、子どもの数に応じて減額・増額する企業もありました。

家族別に支給額を定めずに、一律支給を採用している企業数は443社中41社と少なく、業界に偏りも見られます。平均支給額は11,769円という結果でした。

参考:「中小企業の賃金事情(令和3年版)」東京都産業労働局

企業における家族手当の導入率

企業における家族手当の導入率

どれくらいの企業が家族手当を導入しているでしょうか、「令和3年職種別民間給与実態調査」の結果を紹介します。

家族手当の導入率

人事院による「民間給与の実態」によると、家族手当制度を導入している企業の割合は74.1%でした。今も多くの企業で活用されている制度ですが、令和2年は75.9%、平成31年は78%と、導入率は緩やかに減少しています。

企業規模別に見ると、社員が500人以上の企業で73.8%、100人以上500人未満の企業で75.9%、50人以上100人未満の企業で69.1%という結果でした。

配偶者への支給率

「家族手当制度がある」と回答した企業のうち、配偶者への支給率は74.5%でした。規模別に見ると、社員数500人以上の企業で66.7%、100人以上500人未満で87.7%、50人以上100人未満で90.9%となっています。

また、配偶者へ家族手当を支給している企業のうち、配偶者の収入による制限を設けている企業の割合は86.7%という結果でした。

参考:「民間給与の実態(令和3年職種別民間給与実態調査の結果)」人事院

企業における家族手当の見直しや廃止が進む理由

企業における家族手当の見直しや廃止が進む理由

前述したデータからもわかるように、家族手当を導入している企業の割合は年々緩やかに減少しています。なぜ、見直しや廃止をする企業が増えているのでしょうか。3つの理由を解説します。

(理由1)ライフスタイルの変化

高度経済成長期には、「男性が働き、女性が家庭を守る」というような性別による役割分担が一般的だったこともあり、家族手当が定着していました。しかし現在は、女性の社会進出が進み、共働き世帯・単独世帯が増加しています。仕事と家庭(育児・介護等)の両立を支援する制度づくりも進められ、性別や年齢を問わず働く意欲のあるすべての人が活躍できるような社会が求められる時代となってきたのです。

このような変化を受けて、賃金体系を職能型から成果型に変更する企業が増えています。その改革の一環として、手当の必要性を改めて見直し、廃止とするケースが多いようです。

(理由2)配偶者控除の改正

配偶者控除とは、配偶者の給与収入が一定以下の場合に受けられる所得控除のことです。平成30年1月施行の税制改正により、これまでは103万円だったラインが150万円に引き上げられ、150万円を超えても、201万円までは収入に応じた控除を受けられるようになりました。

この改正の背景には、配偶者手当や配偶者控除を受ける目的で、年収を一定以下に抑えるために行われている「就業調整」があります。就業調整は能力発揮の妨げになり、ほかの社員の負担が増えるなどの影響もあることから、以前から課題となっていました。厚生労働省の「平成28年パートタイム労働者総合実態調査」では、22.8%もの有配偶者女性パートタイマーが、就業調整を行っていたことがわかっています。

以前は配偶者に家族手当を支給している企業の半数以上が、103万の収入制限を設けていましたが、この改正により根拠がなくなったため、家族手当の見直し・廃止が進んでいるようです。

(理由3)同一労働同一賃金

令和2年4月1日に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇格差が禁止となりました。家族手当も均衡・均等待遇の対象となっているため、見直し・廃止を検討する企業が増えているようです。

また、非正規社員が正社員と同じ手当などを受ける権利について争われた「日本郵便3事件」も、大きなきっかけになったといえるでしょう。最高裁はこの事件について、扶養手当や特別休暇を非正規社員に与えないのは「不合理である」との判決を下し、企業に衝撃を与えました。

しかし、非正規社員の手当の水準を引き上げればその分人件費が増大し、かといって正社員の処遇を切り下げることは不利益変更になりかねません。納得性を高めるために、人基準から仕事基準の賃金体系へと改革する企業が増えており、その一環として、家族手当の在り方を再検討する動きが進んでいるようです。


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家族手当を見直し・廃止する際の留意点

家族手当を見直し・廃止する際の留意点

家族手当を見直し・廃止する際の留意点について、ポイントを分けて解説します。

1.社員のニーズを把握し、納得性を高める
満足度調査やヒアリングを実施するなどして、社員のニーズを把握します。また、社員にも制度設計に関与してもらうことで、より納得性が高まるでしょう。

2.労使で話し合う場を設け、合意を得る
労使交渉は1~2年かかるケースが多いです。日頃からコミュニケーションをとり、制度設計の段階から交渉をスタートすることが望ましいでしょう。

3.賃金原資総額の維持
廃止した手当相当部分を基本給に組み込むなど、賃金原資の総額を維持しましょう。

4.経過措置を設ける
たとえば、制度の見直しによって不利益を受ける社員がいる場合には、数年かけて段階的に支給額を減額していくなど、経過措置を設けているケースが多いようです。

5.丁寧な説明を行う
新制度が決定したら、経営トップのメッセージを発信する、職場ごとの説明会を開催するなどして、全社員の理解を得ましょう。

家族手当などの福利厚生を魅力と感じている人も少なくありません。人事・採用や定着率の向上といった観点から、モチベーションや働きやすさにつながるような新たな制度を導入するケースもあります。

家族手当を廃止・縮小した企業事例

家族手当を廃止・縮小した企業事例

実際に家族手当を廃止した、または縮小した企業の事例を紹介します。

(企業事例1)廃止したケース

  • 見直し前
    税制上の控除対象親族に支給
    1.配偶者(年収103万円未満):23,000円
    2.その他の扶養対象者:7,500円
  • 見直し後
    基本給に一本化

賃金制度を人基準から仕事基準へと見直すなかで、家族手当を廃止し基本給に一本化した事例です。「税制上の控除対象親族」を対象とした家族手当制度だったために、支給対象が男性に偏ってしまっていたことが男女均等の観点からも適当ではないと考え、廃止に至りました。

手当相当額が基本給に組み込まれ、手当の廃止によって支給額が減少する社員はいなかったため、経過措置は設けていません。労使の交渉期間は約1年、社員を対象とした研修や、労働組合による職場集会を通して、社員の理解を得ました。

(企業事例2)縮小したケース

  • 見直し前
    (扶養家族1人目)配偶者:18,000円 配偶者以外:4,000円
    (扶養家族2人目)子ども、その他:3,000円
  • 見直し後
    扶養家族1人あたり11,000円(配偶者か否かは考慮しない)

仕事と子育ての両立を支援するため、新たな育児支援制度(育児休職期間中の支援金60,000円/月+10日分の有給)を設け、あわせて家族手当についても見直しを実施した事例です。

労使の交渉期間は半年、原資の総額は維持しつつ、それまで最も手厚く支給していた配偶者に対する手当を、5年間かけて段階的に減額する経過措置を設けることで合意を得ました。

企業と社員が納得できる制度づくりを目指そう

企業と社員が納得できる制度づくりを目指そう

現在も7割以上の企業で導入されている家族手当ですが、ライフスタイルの変化、税制の改正などにより、見直し・廃止の流れが強くなっています。

変更にあたっては不利益変更にならないように配慮することはもちろん、自社における制度の実態を改めて把握し、社員がより満足できるような制度をつくることが重要です。

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著者プロフィール株式会社IKUSA

デジタルマーケティング事業を展開し、Webサイトの制作・運用・分析、記事・DL資料・メールマガジンなどのコンテンツ制作などを行う。2021年12月時点、自社で7つのオウンドメディアを運用し、月間合計600件を超えるコンバージョン数を達成。