採用方法には大きく分けて「一括採用」と「通年採用」があり、新卒者を対象とした採用活動では一括採用が一般的です。しかし、近年になって従来の一括採用に加えて、一年を通して採用活動を行う通年採用を導入する企業も増えています。
なぜそういった傾向が見られるようになったのかを解説するとともに、通年採用の特徴や導入までの流れ、実施するにあたってのポイントやメリット・デメリットについても紹介します。
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通年採用とは

通年採用とはその名の通り、一年を通して実施する採用活動のことを指します。
新卒採用では高校や大学を卒業する春に合わせて学生を採用するのが一般的であり、このような採用方法は一括採用とよばれます。
通年採用にはどのような特徴があるのか、一括採用との違いも含めて紹介しましょう。
通年採用の特徴
通年採用は、新卒採用、中途採用を問わず一年を通して採用活動を行います。さまざまな求職者にアプローチできる、慎重に採用活動を進められることなどが特徴です。ただし、企業によっては新卒採用のみ、中途採用のみを行うケースもあります。
日本では春に採用活動をスタートさせる一括採用が一般的ですが、欧米の企業や外資系企業の場合は通年採用が一般的です。
通年採用と一括採用の違い
一括採用の場合、採用活動は学業や学校生活に影響を与えないようにするために一定のルールのもとで組まれるのが慣例です。
一括採用の推奨されるスケジュールはこれまで経団連(日本経済団体連合会)が決めていましたが、2021年卒からは政府が主導となってルールを決めています。急なルール変更になると企業側の準備が間に合わない、学生にとっても混乱をきたす、などの理由で2023年卒までは従来の採用スケジュールで運用されることになりました。2024年卒もおおむね変更なしとされています。例年、採用広報が解禁されるのが3月、採用選考の解禁は6月となっています。
これに対し、通年採用の場合はそもそも解禁日という概念がなく、年間を通して採用広報や採用選考が行われるという違いがあります。また、一括採用は新卒者のみが対象ですが、通年採用では新卒者に限らず、第二新卒者や既卒者、中途採用者などが対象者となります。
ちなみに、一括採用の場合、採用計画を立てていても内定辞退やエントリー数が集まらないなどの理由で予定採用数に満たないこともあるため、内定者フォローが重要となります。これに対し通年採用では、採用者の不足状況に合わせて補完計画を立てやすいといった違いもあります。

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通年採用を導入する企業が増えている背景

日本では従来一般的であった一括採用から、通年採用へとシフトする企業が増加傾向にあります。
なぜこのような動きが見られるのか、社会的背景を含めた理由を解説します。
経団連が通年採用を拡大する方針を打ち出したため
2019年4月に開催された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」のなかで、経団連は一括採用とあわせて通年採用を進める方針を示しました。
新卒採用において、従来のような横一線での一括採用のみでは、在学中に専門分野の勉強に時間を費やした学生やインターン、留学などによって就職活動の時間を確保できなかった学生の採用が難しいといった問題がありました。
しかし、通年採用を拡大することで上記のような問題が解決され、多様な採用活動が実現できると期待されます。
企業が採用力を強化するため
少子高齢化などの影響で日本は深刻な人手不足に陥っており、採用募集をかけても十分なエントリーが集まらない傾向にあります。
一括採用では、採用の広報活動や選考活動の解禁日に合わせて大手企業へのエントリーが集中しがちで、知名度の低い企業には不利にはたらく傾向がありました。そこで、エントリーが集まりづらい企業では、新卒採用で自社にマッチした人材をいち早く採用するために、大手企業が採用活動をスタートする前に動き出すことで採用力を強化する動きが出てきました。
大企業に比べて知名度が低い企業でも、通年採用に取り組むことによって、いち早く学生へアプローチをかけられ、採用力の強化につなげられるのです。
グローバル人材が求められているため
経済のグローバル化にともない、日本国内だけでなく海外に目を向けた事業を展開する企業も少なくありません。そこで重要となるのが、グローバル人材の採用です。
海外での事業をスタートするにあたり、現地で人材を採用したり、海外の求職者を日本で採用したりといったケースもありますが、海外の大学は日本とは異なり、5月から6月に卒業し、その年の9月ごろに入社するといったパターンが多くあります。一括採用ではグローバル人材を採用するタイミングが合わないことから、通年採用に踏み切る企業が増えています。
企業側から見た通年採用のメリット・デメリット

通年採用を導入することで、企業にとってはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれを把握したうえで導入を検討することが大切です。
メリット
通年採用の主なメリットとして考えられるのは、以下の3点です。
■さまざまな求職者にアプローチできる
従来の一括採用では、春に卒業見込みの学生が選考の対象となります。
しかし、通年採用を取り入れることで、春までに採用が決まらなかった学生や第二新卒者、さらには海外の大学卒業生、留学生なども対象となり、一括採用では対象とならなかった求職者に対してもアプローチが可能になります。さまざまなキャリアをもった多様な人材の採用につながると期待できるでしょう。
■慎重に採用活動を進められる
一括採用の場合、推奨されるスケジュールが設けられています。採用の選考活動が解禁される6月から翌年の春までに採用者を決めなければなりません。
エントリーしてくる求職者が多ければ多いほど、企業は書類選考や面接に多くの時間と人員を割く必要があります。限られた時間内に採用しなければならないと考えると、競合他社の選考状況を気にするなどして正確な判断ができなくなる採用担当者も出てくると考えられます。
しかし、通年採用では採用選考の解禁日という概念もなく、企業は余裕をもって採用スケジュールを決められます。余裕のあるスケジュールで慎重な選考ができれば、採用のミスマッチも低減される可能性があるでしょう。
■内定辞退があったときに欠員補充がしやすい
採用の内定を出したとしても、全ての人材が自社へ入社してくれるとは限らず、内定を辞退されるリスクもあります。
新卒者を対象とした一括採用においては、一度締め切った募集を再開したとしても、求職者からの応募が集まりにくくなるのが一般的です。
しかし、通年採用も並行して行えば、内定を辞退されてしまった場合でも欠員補充のための採用活動を行いやすいメリットがあります。
デメリット
通年採用は決してメリットばかりではなく、デメリットとして挙げられるポイントもあります。主なデメリットを2つ紹介します。
■採用コストが増大する
年間を通して採用活動を行うということは、求人広告の掲載期間や求人イベントなどの実施期間も長期化することを意味します。
その結果、一括採用に比べると採用コストが増大する傾向が見られます。
■研修担当者の負担が増大する
通年採用の場合、入社日が分散するため都度研修を行わなくてはなりません。
一括採用の場合は年に1回で済んでいた研修が、入社のタイミングに応じて複数回実施しなくてはならず、研修担当者の負担が増大する原因にもなるでしょう。
求職者側から見た通年採用のメリット・デメリット

企業側だけでなく、求職者側から見た場合の通年採用のメリット・デメリットも見ていきましょう。
メリット
求職者にとっての通年採用の主なメリットは以下の2点が挙げられます。
■幅広い企業にエントリーできる
通年採用を行う企業が増えているということは、一括採用がメインの企業以外にエントリーできる機会が増えることを意味します。
大企業だけでなく、知名度は低いものの魅力的な中小企業に出会える可能性もあり、求職者にとっては自分にマッチした企業が見つかる可能性が高まるでしょう。
■チャンスが複数回ある
一括採用では、ほかの学生が同じタイミングで就職活動を行います。就職活動で内定を得られなかった場合、採用スケジュールが定められていることもあり「多くの企業が採用を締め切っていた」などの事態も考えられます。
しかし、通年採用を行っている企業が増えれば、新卒採用に失敗しても新たなチャンスが残っていると前向きに捉えられます。チャンスが複数回あり、猶予もあることで万全の準備を整えてから就職活動に臨みやすいこともメリットでしょう。
デメリット
求職者にとって通年採用のデメリットとして考えられるのは以下の2点です。
■自律的に就職活動を行わなくてはならない
一括採用の場合、学校の在学中に就職活動のさまざまな指導を受けられたり、就職支援センターなどからマッチする企業の紹介を受けたりすることもできます。
しかし、通年採用の場合は企業によって採用スケジュールがまちまちになるため、求職者自ら積極的に情報収集することが求められるでしょう。
また、学校を卒業してからも就職活動を行うケースがあるため、自律的に就職活動を継続していかないと内定を得られない可能性もあります。
■内定を得られる難度が高くなる
通年採用では新卒者ばかりではなく、社会人経験のあるキャリア採用の求職者もライバルとなります。
実務経験やスキルのある社会人経験者と、新卒者や第二新卒者とを比較した場合、前者のほうが採用されるケースも少なくありません。そのため、通年採用は一括採用に比べると内定を獲得できる難度が高くなる傾向にあります。
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通年採用を導入するまでの流れ

企業が通年採用を取り入れる場合、どのような流れで取り組んでいけばよいのでしょうか。導入するまでの一例を紹介します。

採用計画を立案する
はじめに、なぜ自社で通年採用を行うのか目的を明確にし、どの部署にどの程度の人数を、いつ採用するのかを採用計画として立案します。
採用計画は人事部や経営層だけでなく、現場の意見も取り入れながら検討することが重要です。
求める人材要件を設定
採用計画を決めた後はどのような人材を採用すべきなのか、具体的な要件を設定します。
人材要件の設定にあたっては、自社で活躍している社員をモデルに、求めるスキルや実務経験を具体化し、架空の人物像をつくり上げるのもよいでしょう。
このような架空の人物像のことを「ペルソナ」とよび、ペルソナを設定することで候補となる人材との比較がしやすくなり、選考をスムーズに進められるメリットもあります。
採用担当者のアサイン
求める人材要件を具体化できたら、書類選考や面接、採用広報などを行う採用担当者をアサインし、チームを編成します。
採用計画によっても採用チームに必要な人数は異なるほか、面接の担当者に求められる専門性やスキル、能力は異なってきます。人事部の担当者だけでは足りない場合もあるため、面接官を立てる際には必要に応じて他部門の協力も仰ぐようにしましょう。
採用手法の検討
どのような方法でエントリーを集めるのかなどを採用担当チームの中で話し合い、具体的な採用方法を検討します。
一括採用の場合は求人イベントや合同説明会などへの参加もありますが、通年採用ではそのようなイベントが開催されていない時期もあるでしょう。
そこで、自社採用サイトの立ち上げや人材紹介会社の活用、SNSを用いた採用活動やスカウト採用など幅広い方法を検討することが重要です。
研修体制の構築
採用が決まった後、新入社員をどのように育成していくかを検討し、研修体制も構築しておきましょう。
通年採用では入社のタイミングがバラバラになるため、入社後、個別に研修を実施するケースもあります。どのタイミングで研修を受けても同じ研修内容にするなど、カリキュラムにバラつきを生じさせない工夫が重要です。
通年採用を実施する際のポイント

通年採用を成功させるためには何が重要なのか、押さえておきたい4つのポイントを紹介しましょう。
ターゲットを明確化する
どのような人材を採用すべきか、ターゲットが明確に定まっていない状態では採用の方向性が定まらず、スキルや能力、特性もバラバラな人材が採用されてしまう可能性があります。通年採用の場合、応募時期が分散されるので、一括採用に比べて候補者の比較がしづらいという傾向もあります。
そこで、採用計画の立案および人材要件の設定段階でターゲットを明確化し、効率的に対象の求職者へアプローチできるようにしましょう。
なお、一括採用とは異なりスケジュールが変則的となるため、学業や学校行事など、アプローチする学生の動向にも気を配る必要があります。
採用ブランディングに取り組む
大手企業に比べて中小企業は知名度に弱みがあり、通年採用といえども求職者の目に留まる機会は決して多くありません。
そこで、より多くのエントリーを獲得するためにも、採用ブランディングに取り組み、採用サイトやSNSなどで自社の魅力を積極的に発信して自社の認知度を上げていくことも行いましょう。
採用強化の時期を設ける
通年採用に移行した場合でも、多くの企業が一括採用を実施する時期である「ハイシーズン」に募集活動を活発化させるなど、採用強化の時期を設けましょう。
一括採用の時期は、志望度が高い求職者が集まりやすいというメリットがあることは事実です。一括採用のスケジュールを意識しながら、自社でも多くのエントリーを得られるように採用スケジュールを組むのも効果的です。
複数の手法を組み合わせる
通年採用では長い目で採用活動に取り組むことが前提となります。そのため、ひとつの採用手法にこだわらず、複数の手法を組み合わせることも検討しましょう。
採用ブランディングにも取り組む必要がありますが、その際にはSNSや自社サイトを活用した継続的な情報発信や、自社独自の採用イベントの開催など、自社を知ってもらう取り組みを積極的に行うことが重要です。
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通年採用を導入している企業事例

採用活動の多様化にともない、通年採用を取り入れている企業にはどういった事例があるのでしょうか。大企業における通年採用の導入事例を3社紹介します。
株式会社リクルート
大手人材紹介会社である株式会社リクルートでは、「就職活動の時期は一律ではなくそれぞれが望むタイミングであって良い、将来を考える時期は多様であって良い」という考えのもと、新卒採用、中途採用という枠組みを廃止し、30歳以下を対象にポテンシャル採用として一本化する試みを行っています。
一括採用がメインの新卒採用という枠組みを廃止し、年間を通じてエントリーも受け付けているため、実質的な通年採用といえます。ただし、リクルートは知名度の高さからつねに多くのエントリーが集まってくるため、通年採用の導入にあたって社内リソースの確保が問題となります。
そこで、リクルートでは採用活動や研修体制のリソースを確保するために、入社時期は4月に限定しています。
ソフトバンク株式会社
大手通信事業者のソフトバンク株式会社でも、20代を対象とした通年採用を実施しています。
一括採用では出会えない求職者にアプローチすることを目的に通年採用を取り入れ、求職者からのエントリーを待つだけでなく企業側からも積極的にアプローチ。特に技術革新のスピードが速いIT業界だからこそ、さまざまな経歴・スキルをもった求職者を採用するために通年採用は有効な方法といえるでしょう。
なお、ソフトバンクもリクルートと同様、採用や研修にかかる負担を考慮し、入社時期は4月と10月の2回に限定しています。即戦力を求めるキャリア採用は通年で行っています。
株式会社ユニクロ
アパレル大手企業の株式会社ユニクロでは、グローバル人材を採用するために通年採用を導入しています。
日本のみならず世界でビジネスを展開するユニクロにとって、グローバル人材の採用および育成は重要な経営課題のひとつです。
ユニクロの場合、入社時期を毎年3月と9月の2回に分けることで、海外の学生や留学生を含む優秀な求職者をグローバル人材として採用し、育成していく環境を整えています。
採用力の強化に向けて通年採用を検討しよう

人手不足に悩む企業が多いなかで、企業は採用力を強化するためにさまざまな対策を講じています。
従来一般的であった一括採用に加えて、今回紹介した通年採用の導入も効果的な方法といえるでしょう。
通年採用の場合、採用活動は一年を通して行うというのが原則であり、その分、人事部や採用担当者にかかる負担も増大しがちなため、入社のタイミングを決めて負担を軽減するなど、さまざまな工夫がなされています。
今回紹介した通年採用のメリット・デメリットをふまえ、複数の採用方法も検討しながら、自社にマッチした通年採用を設計し、取り入れてみてはいかがでしょうか。
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