ビジネスシーンでしばしば話題に上がる「アジリティ(Agility)」という言葉。日本語で「機敏性」「敏しょう性」を意味する言葉で、スポーツの分野でも耳にしますが、ビジネスシーンではどのような意味で使用されるのでしょう?
企業や組織でアジリティを高めるメリットについて、その高め方も含めて解説していきます。
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アジリティとは?

「アジリティ」とは、日本語で「機敏性」「敏しょう性」を意味する言葉です。もともと、「機敏な」を意味する「アジャイル(Agile)」に由来しており、サッカーやバスケットボールなど、スポーツの分野でも使用されています。
スポーツにおけるアジリティには、敏しょう性だけでなく、「運動の最中に身体をコントロールするスキル」という意味合いもあります。
一方、ビジネスシーンにおいては、「刻々と変化する状況に応じて、機敏に対応できる能力」という意味合いで使用されています。
「スピード」「クイックネス」との違い
アジリティ=敏しょう性というと、「はやさ」を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、「はやさ」といっても、スポーツの世界ではスピード・アジリティ・クイックネスの3種類に分類され、それらの頭文字をとって「SAQ」と呼ばれています。
- S=スピード (前方への重心移動の速さ)
- A=アジリティ (運動時に身体をコントロールする能力)
- Q=クイックネス (刺激に反応し速く動きだす能力)
参照元:SAQトレーニングとは – 特定非営利活動法人日本SAQ協会
アジリティが表す「はやさ」は、スピードやクイックネスとは異なるため、混同しないように注意しましょう。ビジネスシーンで注目されるアジリティは、単なるスピードではなく、「価値観の変化を的確にとらえ、対応する能力」だといえます。
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アジリティが注目される理由とは?

もともとビジネスにおいて、スピード感は大切にされてきました。仕事をテキパキと進める人材は社内で評価されやすく、レスポンスのはやい人材はクライアントからよい印象を抱かれてきました。
しかし現在のビジネスシーンは、これまで以上に変化が目まぐるしく、どの業界や企業も将来を見通すことが厳しく不確実性が増しています。こうした不確実性の高い状況は、下記の4つの頭文字をとって「VUCA時代」と呼ばれています。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
コロナ禍を経て、その傾向はますます強まっています。数年前まで、これほど自宅で働く在宅ワークが取り入れられるとは、予想できなかったのではないでしょうか。
今後、どのような事態が起きるかわからない状況下では、スピードやクイックネスといった「はやさ」だけでは不十分になってきました。そこで新しい指標として、すばやく的確に対応する能力であるアジリティが注目を集めているのです。
アジリティの高い人材の特徴

アジリティは、VUCA時代のビジネスパーソンにとって重要なスキルになっています。
アジリティの高い人材には、
- 業務を円滑に遂行できる
- 発想が柔軟
- リーダーシップがある
といった特徴がみられます。
ここではアジリティの高い人材の特徴について詳しく紹介します。
業務を円滑に遂行できる
上述したように、「仕事がはやい」というのは、それだけでもビジネスシーンでは好印象を持たれます。
特にアジリティの高い人材は、単に仕事がはやい「スピード」や、反応がはやい「クイックネス」のある人材よりも、意思決定をすばやく、的確に行えるため、同僚や顧客から高い信頼を得られます。
その結果、仕事を円滑に進めやすくなり、自分のために使用できる時間が多くなります。適度な休憩を取り入れて自分の身体や頭をリセットすることで業務に集中しやすくなり、自分の能力を最大限に生かせるでしょう。
また、自分の時間を、読書やセミナーへの参加、資格試験の勉強など、さらに能力を向上させるために活用できます。業務を円滑に進められる人材ほど、さらなる成長につなげやすくなるのです。
発想が柔軟
近年、価値観の変化はますます速度を増しています。こうした価値観の変化を把握し、自身の価値観をアップデートすることは、これからのビジネスパーソンにとって必要な条件になります。しかし、多くの人は過去の経験や価値観にしがみついてしまいがちです。そこで重要になるのがアジリティです。
先述のようにアジリティは、単なるすばやさではなく、的確にものごとを判断し、対応する敏しょう性のことです。そのためアジリティの高い人材は、変化に応じて柔軟な発想をもち、臨機応変な対応ができます。反対に、アジリティが低い人材は、過去の経験に縛られた判断を下してしまうことが多く、柔軟な対応が難しくなります。
リーダーシップがある
チームや部署のリーダーには的確な判断力が求められます。メンバーの意見が1つにまとまらない場合や、メンバーが選択に悩んだとき、状況を理解・分析して指示を出すためには欠かせないスキルです。
アジリティの高い人材は、自ら的確な判断を下す機会が多くあります。そうした経験を数多く重ね、判断を下す習慣を身につけることで、リーダーシップが鍛えられます。その結果、チームのなかで必要とされる人材に成長できるでしょう。
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アジリティの高い組織の特徴

アジリティは個人だけでなく、企業やチームにとっても重要です。
アジリティの高い組織には、
- ビジョンが共有されている
- 情報収集に力を入れている
- ボトムアップ型の組織
といった特徴がみられます。
ここではアジリティの高い組織の特徴を詳しく紹介します。
ビジョンが共有されている
組織にとって、最も重要なのは「ビジョン」です。そのビジョンに共感し、行動できるかが、組織としての連帯感につながります。
アジリティの高い組織は、ビジョンが明確で、末端のメンバーにまでその価値観が共有されています。そのため、激しい変化が訪れたとしても、メンバーそれぞれがそのビジョンに沿って臨機応変に対応できます。
一方、アジリティの低い組織では、ビジョンが共有されていないことがしばしばあるため、大きな変化が起きた場合の行動指針がなく、メンバーはリーダーの判断を待つしかなくなります。迅速な判断ができないことで、組織力に影響が出やすくなります。
情報収集に力を入れている
変化の激しい時代では特に、「情報」に高い価値があります。インターネットやSNSでフェイクニュースなどの誤った情報も発信されている現在、正確にはやく情報を収集できることはビジネスパーソンにとって非常に重要な能力です。
アジリティの高い組織では、メンバー同士のコミュニケーションが活発で、積極的に情報の交換・共有が行われています。情報は、1人で収集するよりもチームで収集するほうが、よりはやく、より的確になります。
1人で情報を収集していると、自分の得た情報を「正しい情報」と思い込んでしまいがちですが、複数の視点が加わることで、より客観的に情報を精査できます。また、市場の最新の状況をチーム全体で把握できれば、重大な変化に対応する準備を整えられるでしょう。
アジリティの低い組織では、トップからメンバーへの一方的な情報共有が多くなります。トップがアンテナを張っていない分野の情報は共有されないため、変化に対応できる領域が限定的になってしまう恐れがあります。
ボトムアップ型の組織
かつて、日本企業の多くは、トップが下した意思決定に沿ってメンバーが動くトップダウン型でした。変化が今ほど激しくなかった時代には、優秀なトップがメンバーに指示を与えるトップダウン型は有効な組織のあり方だったといえます。
しかし変化が激しい今の時代において、組織が大きければ大きいほどトップダウン型では、判断を迅速に下すことが困難になっています。その結果、トップダウン型の組織のあり方を見直す企業も増えています。
アジリティの高い組織では、メンバーからのアイデアや意見をトップが集約するボトムアップ型が多く見られます。ボトムアップ型では、メンバーにも裁量権が与えられているため、変化に応じて現場の立場から的確に判断を下すことができます。
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アジリティを向上させる方法

実際に、組織のアジリティを向上させる方法として、下記のような手段が考えられます。
- ビジョンを浸透させる
- メンバーに裁量を与える
- ツールの向上
- アジリティにひもづけた人事評価を行う
アジリティの向上に有効な4つの手段について紹介します。
ビジョンを浸透させる
アジリティの高い組織では、大きな変化が生じた際も、メンバー自身で判断できます。そうした組織をつくるためには、メンバー一人一人が組織のビジョンや行動指針を理解しておく必要があります。
たとえば、所属している企業は「グローバル」に事業を展開することを重視しているのか、「ローカル」にこだわっているのか。会社やチームによって掲げている理念が異なるため、経済状況の変化への対応も、それぞれの組織で変わるでしょう。
企業や組織がどのようなビジョンを持っているのか。わかりやすい言葉で発信して理念を浸透させ、メンバーが組織の価値観に沿った判断を下せるようにしておく必要があります。
メンバーに裁量を与える
トップが組織の動きを把握することは、組織統制やリスクヘッジの点で重要です。しかし一方で、細かな点までトップの承認が必要になると、組織の敏しょう性が損なわれる危険があります。変化の激しい時代において、トップによる承認の多さは弱点にもなってしまうのです。
敏しょう性高めるためには、現場のメンバーに裁量権を与える必要があります。変化が起きたときに、メンバーが現場の立場から判断を下すことで、アジリティの高い組織となります。
メンバーに裁量権を与えることは、組織の「エンパワーメント」にもつながります。エンパワーメントとは、メンバーの能力を引き出し、一人一人がより自発的に動けるように促すことで、大きく2つのメリットが生まれます。
まずはメンバーのモチベーションにつながる点です。自身のアイデアや意見が取り入れられると、自分が組織の役に立っていると感じられるため、自発的・能動的に仕事を行うようになります。
次に、メンバーのリーダーシップが養われる点です。優れた組織は、優れたリーダーを育てることに秀でています。裁量権を与えられる組織では、メンバーが判断を下す機会が多く、各メンバーのリーダーシップが養われます。
ツールの向上
組織のアジリティを高めるためには、業務環境の改善を行うことも重要になります。特に重要なものが、メンバーによる情報の共有と一元化です。先述したように、現代において情報はビジネスにおいて価値の高い武器になるため、メンバー全員が同じ情報を共有できる環境をつくりましょう。
チャットツールなど、コミュニケーションツールを活用することで、2つの観点でアジリティの向上に寄与します。1つは、メンバー同士のコミュニケーションを活発にする点。2つ目に、メンバー全員が常に最新の情報にアクセスできる点です。共有されている情報が多ければ多いほど、メンバーは適切な判断を下しやすくなります。
アジリティにひもづけた人事評価を行う
もう1つ有効な手段は、アジリティの高い人材を正当に評価することです。
「どう努力すれば、会社から評価されるか」。これは多くのビジネスパーソンにとって、大きな関心事といえます。アジリティの高い人材の特徴に「業務を円滑に遂行できる」という点がありますが、こうした人材が成果を出したとき、アジリティの高さをひもづけて評価するようにしましょう。アジリティを高めることが成果につながり評価される、と理解できることで、周囲のメンバーのアジリティ向上も促進できます。
もちろん、組織がメンバーのアジリティを正当に評価するには、評価する側がアジリティの重要性を理解する必要があります。人事やマネージメントに関わる人は、変化にすばやく対応するメンバーの意見や姿勢にしっかりと目を向けるようにしましょう。
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アジリティを学ぶおすすめ教材

アジリティを高めるための方法を、書籍で学ぶこともおすすめです。
「Business Agility」山本政樹 著
20年以上にわたって企業のビジネスプロセスマネジメントのアドバイザーを続けた著者が、「ビジネスアジリティ」について簡潔に解説しています。どうすれば「ビジネスアジリティ」が向上するのか? 現状、多くの組織が抱えている問題点や、課題の改善策について、アジリティの観点から解説している入門書です。
まとめ

アジリティを高めることは、これからの不確定な時代を生き抜く全てのビジネスパーソンにとって重要といえます。また、組織にとっても、どう組織全体のアジリティを高められるかが重要な関心事になっていくでしょう。アジリティを学んで、自身のビジネス領域に活用してください。
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