企業や組織の運営においてマネジメントは欠かせない要素です。しかし、実際にマネジメントを行うマネージャーのなかには、「どのような役割を求められているのかわからない」など、さまざまな悩みを抱えている方も少なくありません。
この記事ではマネジメントの種類、さらにマネジメントで求められるスキルについて解説します。さらにマネジメントに多くみられる課題、それを解決するための具体的な方法を紹介します。
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マネジメントとは

マネジメントを日本語に直訳すると「管理」を表します。
社会学者であるピーター・ドラッカーは1974年に刊行された著書『マネジメント』のなかで、マネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義しました。
ビジネスの分野に当てはめると、「企業や組織の目標を達成するために行う管理」ともいえるでしょう。
マネジメントを行う人材は「マネージャー」とよばれ、日本語では「管理職」という言葉でも知られています。
マネジメントが求められる理由・必要性
企業の経営資源には「ヒト・モノ・カネ」がありますが、これらには限りがあります。
事業を行ううえでは、これらを有効に活用し、成果を最大化しなければなりません。また、さまざまな考え方やスキル・知識を持つ従業員がいるなかで、組織の目標を達成するためには、社員一人一人の目標を組織の目標とつなぎ、管理し、連携を促すための「マネジメント」を行う役割が求められるのです。
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マネジメントの種類

一口にマネジメントといっても、さまざまな種類・方法が存在します。そこで今回は、代表的な「階層別マネジメント」「業務別マネジメント」の2つについてご紹介します。
階層別マネジメント
企業や組織の役職・役割に応じて求められるのが「階層別マネジメント」です。
ここでは、「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3つをご紹介します。
トップマネジメント
代表取締役や経営層などに求められるマネジメントです。企業や組織全体のビジョン・計画の立案および経営戦略を検討し、意思決定を行います。
ミドルマネジメント
部長や課長といった「中間管理職」に求められるマネジメントです。経営層から現場に対する橋渡し役を担うと同時に、現場からの意見を吸い上げて経営層に伝達する役割も担います。
ロワーマネジメント
現場で働くメンバー員を直接的に監督する立場である、係長やリーダーなどに求められるマネジメントです。ミドルマネジメントからの指示や、企業としての方向性を現場に落とし込む役割を担います。
業務別マネジメント
業務内容に応じて行うマネジメントが「業務別マネジメント」です。ここでは、「組織運営」「人材管理」「メンタルヘルス」の3つに分けて、それぞれで必要とされるマネジメントを詳しくご紹介します。
組織運営に関するマネジメントには、以下の3種類があります。
チームマネジメント
具体的には、業務の生産性を高め、組織の目標を達成するためのチームメンバーの育成などが挙げられます。組織やチームの結束力を高めるためにも不可欠といえるマネジメントです。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトの進捗管理やメンバーの配置など、プロジェクトの進行に関するさまざまな要素が含まれます。成果物を納期までに仕上げ、品質を担保するためにも不可欠なマネジメントといえるでしょう。
ナレッジマネジメント
社内のノウハウや知見を管理し、必要に応じて共有することで、他社にはないオリジナリティーあふれる商品やサービス開発に役立てることができます。
人材管理に関するマネジメントには、以下の3つがあります。
タレントマネジメント
メンバーのスキルや特性に合わせた配置や育成を行います。メンバーの得意分野を理解することで、生産性の向上や適材適所の人員配置に役立ちます。人事異動で配属先を検討するときには不可欠なマネジメント手法といえるでしょう。
モチベーションマネジメント
業務に取り組むメンバーの意欲を引き出し、モチベーションを維持するために役立ちます。具体的にはメンバーが適切な目標設定をするためのサポートや、目標を達成できなかった場合に原因や改善策を一緒に考えるといったことが当てはまります。
モチベーションを維持することで作業効率や生産性のアップにつながり、目標を達成するための原動力にもなります。
パフォーマンスマネジメント
PDCAサイクルを回しながら従業員の自主的な行動を促し、仕事のパフォーマンス向上を実現します。マネージャーは、従業員の取り組みや行動が組織目標の達成につながるよう適切にフィードバックする役割もあります。ミスが発生した際のフォロースキルもパフォーマンスマネジメントに含まれます。
メンタルヘルスに関するマネジメントには、以下の3つがあります。
- メンタルヘルスマネジメント…精神的な負担を和らげる
- ストレスマネジメント…ストレスの緩和・コントロール
- アンガーマネジメント…怒りの感情のコントロール
ストレスや不安といった精神状態は、メンバーの健康はもちろん仕事のパフォーマンスや人間関係に悪影響を及ぼすこともあるため、メンタルヘルスは極めて重要なマネジメントといえるでしょう。
ただし、メンタルヘルスの分野は精神的な医学知識が求められることも多いため、マネージャーではなく専門のカウンセラーや医師らに外注する企業も多いです。
マネジメントに求められるスキルとは

マネジメントにはさまざまなスキルが求められますが、そのなかでも特に重要な4つのスキルについて詳しく解説します。
課題を抽出・分析する力
マネジメントには、業務上の問題点や課題を把握する力が求められます。解決すべき課題が正確に見極めていないと、どのような行動を起こせばよいのか、効果的な対策につながりません。そのため、マネージャーには客観的なデータから課題を正しく抽出し、分析する力が求められます。
プロジェクトを管理する力
課題解決に向けては、具体的なアクションプランの策定、スケジュール管理やメンバーの確保、進捗管理などが求められます。しかし、全てが当初の予定通りに進むとは限らず、さまざまなトラブルが発生するケースも多いものです。必要に応じて軌道修正しながら、プロジェクトを完遂する能力はマネジメントにおいて不可欠です。
リーダーシップ
企業や組織が一つの目標を達成させるためには、従業員をまとめあげるリーダーシップが求められます。マネジメントとリーダーシップは混同されやすいですが、マネジメントは目的の達成に向けた管理であるのに対し、リーダーシップは目的の達成に向けて導く力と定義されます。
マネジメントでは一定の方針や計画を立て、それを達成するためにメンバーに対して指示を出す必要がありますが、さまざまな部署・担当者など立場の違いによって意見がまとまらないことも考えられます。
しかし、このような場合でも組織や部署として意思決定を下す必要があります。明確な方針が定まらず、玉虫色のままでは現場が混乱します。明確な意思決定をして現場をまとめあげるためにはリーダーシップが重要となります。
コミュニケーション力
メンバーそれぞれが自ら課題を解決し、業務で自分自身の力を発揮するためには、課題解決の正解を教えるのではなく、「どうすれば解決できるのか」をメンバー自身に導き出してもらう「コーチング」の姿勢が重要となります。
そのためには、日頃からメンバーとのコミュニケーションを図り、互いの考え方や価値観を共有し、信頼関係を築くことが求められます。コミュニケーションをとるときは、メンバー一人一人の能力を認め、対等に接する姿勢が重要です。
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マネジメントに多くみられる課題

マネジメントの重要性は認識していても、実際にはマネジメントのさまざまな課題を抱えているマネージャーも少なくないでしょう。この記事では、マネジメントで抱えがちな課題を3つご紹介します。
課題は把握できているが、どのように改善すべきかわからない
課題や問題点はわかっていても、それを解決するために具体的にどのような行動をとればよいのかわからない。または、解決すべき課題が多すぎて何から手をつければよいのかわからない。このようなケースはしばしばあるようです。
この原因の一つとして、時代の変化とともにマネジメントに求められる役割が多様化していることが挙げられるでしょう。働き方改革やダイバーシティー経営などの推進などにより、多様な人材やさまざまなワークスタイル、それぞれに合う柔軟なマネジメントが求められるようになり、課題もその解決方法も複雑化しているのです。
課題解決に向けたプランが実行されない
課題解決に向けて実行すべきアクションプランは策定したものの、実行できていないケースも少なくありません。通常業務に追われていてアクションプランを実行する余裕がない場合や、人手が不足していて手が回らないなど、さまざまな理由が考えられます。
実際に多くの企業では人手不足が深刻化しており、これはマネジメントも例外ではありません。産業能率大学総合研究所が2019年に実施した「上場企業の部長に関する実態調査」では、上場企業に勤める部長のうち95.8%がプレイングマネージャーとして実務とマネジメントを兼任しているという結果が明らかになっています。
経営層と現場のベクトルが合っていない
現場では目の前の目標を達成して課題意識がない一方、経営層が中長期的に描いているビジョンにマッチしていないケースです。現場に任せすぎたことで経営層が求めるビジョンとのズレが生じていることが考えられます。
会社として定めた方針やビジョンから各現場がズレ始めると、他の部署との間で矛盾やもめ事が生じるなど、組織としてさまざまな問題が生じます。その結果、生産性が低下するだけでなく、人間関係などのモチベーションにも大きな影響を及ぼしてしまいます。
組織や個人の成長のためには、近視眼的に自分の組織のことだけを考えるのではなく、「会社が掲げる中長期的なビジョンを現場のメンバー個人の目標に落とし込み、組織目標の達成につなげる」というマネジメントの役割を再認識する必要があります。
マネジメントにおける課題を解決するための方法

上記で紹介した3つのマネジメント課題を解決するためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。それぞれの課題に対応した解決方法を紹介します。
課題の見える化
漠然とした課題や問題点は感じているものの、どのように解決すべきか分からない場合、まずは課題を正しく把握することが重要です。課題を正しく抽出し、改善につなげるために参考になるのが、「トヨタ式5W1H」という考え方です。
「トヨタ式5W1H」とは?
「問題の背後に隠れている真因」を繰り返し考えることで、「どうやって改善するのか」を導き出すプロセスです。トヨタのような製造現場に限らず、あらゆるプロジェクトや部門において問題や課題は隠れているものです。事業やプロジェクトの計画を綿密に立てたとしても、それを実行に移した段階で問題が浮上するケースも少なくありません。
問題が表面化したとき、それに対する原因を表面的に突き止めて場当たり的に対応するのではなく、「なぜそうなったのか(Why)」を5回繰り返したうえで問題の「真因」を突き止め、「どうやって改善するか(How)」を考えるため「5W1H」とよばれています。
どうしても問題の真因が見えてこない場合には、社内で成功している事例から「なぜ成功しているのか」を考えてみることも重要なヒントとなります。
ITツールの活用
課題解決に向けたアクションプランは策定されたものの、人員が不足などの理由から実行できずに悩んでいるマネージャーは、ITツールの活用を検討してみてください。
たとえば営業部門のマネジメントでは、「SFA」や「CRM」が有効です。
SFA(営業支援システム)
SFAは効率的な営業活動をサポートするツールとして欠かせません。SFAを活用することで、顧客の情報や案件の情報、商談ごとの詳細な情報に至るまで、営業活動に関するさまざまな情報を一元管理することができます。情報を探す手間や営業担当者同士で共有する手間を大幅に減らせます。
さらに、過去の商談内容や受注率などのデータから営業プロセスを分析し、改善につなげることも可能になります。
CRM(顧客管理システム)
CRMは顧客情報をデータベース化し、アフターサービスや新商品の提案などに役立てられます。
たとえば「うちの製品を導入していただいたのが5年前か。そろそろ買い替えを提案してみよう」など、営業活動における効率性アップが見込めます。
上司や他のマネージャーが行っている方法を試す
経営層が求める方針と現場の動きが合っていない場合には、他のマネージャーや上司が実践しているマネジメント手法を試すのも有効です。
経営層の方針を現場に浸透させることがマネージャーの役割ですが、部署やチームのメンバーによってはその方針に納得できず、反発にあうこともあるでしょう。現場と経営層の板挟みにあって悩んだ場合には、他のマネージャーに相談したり、業務の進め方を参考にしたりすることで、最適な打開策を見いだすことができることもあります。
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生産性向上や業務効率化に欠かせないマネジメント

マネジメントは企業や組織目標を達成するために不可欠であると同時に、メンバーのモチベーションにも大きく影響し、生産性や業務効率を左右することもあります。マネージャーは企業としての方向性や経営層のビジョンはもちろんのこと、現場で働く従業員の声も聞きながら、働きやすい環境をつくることが重要です。
複数の課題を抱えるマネージャーが多いですが、解決方法は決して一つではなく、多様な方法があります。業務内容や現場で働くメンバーの特性なども考慮しながら、自社にマッチしたマネジメントを考え、実践してはいかがでしょうか。
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