社労士とは? 仕事内容や企業が業務を依頼するメリットについて解説

社労士とは? 仕事内容や企業が業務を依頼するメリットについて解説

人事や労務管理の領域で、企業がお世話になることの多い社労士。社労士と顧問契約の締結を検討している企業も多いのではないでしょうか。

この記事では社労士の行っている業務内容や、企業が社労士に業務を依頼するメリットについて解説します。


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社労士(社会保険労務士)とは?

社労士(社会保険労務士)とは?

社労士とは、社会保険労務士の略称で、1968年に成立した社会保険労務士法に基づいた国家資格を有する専門家です。

社会の発展に伴い、社会で働く人を守るために「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として業務を行っています。

社労士は「士業(しぎょう)」と呼ばれる専門性と公益性が高い職業であり、その中でも住民票などの請求権が認められている「8士業」にも数えられています。

8士業は以下の通りで、いずれも国家資格が必要な職業です。

  • 弁護士
  • 弁理士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 行政書士
  • 土地家屋調査士
  • 海事代理士
  • 社会保険労務士

■参考書籍
貫場恵子著『みんなが欲しかった! 社労士 合格へのはじめの一歩 2022年度版』TAC出版、p4

社労士の専門領域

社労士は社会保険、人事、労務管理のスペシャリストです。専門領域は労働社会保険諸法令で、社労士はこれらの法令に関する専門家として、法令を円滑に実施するための役割が期待されています。

社労士が企業において行う業務としては、以下のものがあります。

  • 労働や社会保険に関する手続き
  • 人事や労務管理

企業が人材を採用し、そして人材が退職するまでには労働保険や社会保険に関するさまざまな手続きが必要となります。しかし、これらは専門知識が必要な手続きであり、日々忙しく業務に励む企業にとっては負担が大きいものです。社労士は、専門知識を生かして複雑な手続きを的確に行えます。

また、企業の人事や労務管理については、労働者が働きやすい環境づくりに関わります。たとえば、企業と労働者が良好な労使関係を維持するために就業規則の作成や見直しを行ったり、労働者のモチベーションを高めるための賃金制度の構築を行ったりします。

社労士は企業以外にも、個人の相談を受けることもあり、年金相談などを行っています。日本は原則としてすべての人が公的年金制度に加入していますが、その仕組みは複雑であり、わかりやすいとはいえません。適切な手続きができず、本来は受けられるはずの年金が受けられないといったことも起こっています。社労士は年金に関する権利を守る立場として、個人の相談を受けたり、手続きを代行したりします。

■参考書籍
ユーキャン社労士試験研究会編『2022年版 ユーキャンの社労士 はじめてレッスン』自由国民社、p30

社労士が資格取得のために学ぶ主な法令

社会保険、人事、労務管理のスペシャリストである社労士が専門とする労働社会保険諸法令には、50種類を超える法令が含まれます。その中でも、社労士が資格取得のために特に重点的に学ぶ法令等は以下の通りです。

法令等の名称概要
1.労働基準法労働条件の最低基準を定めた、労働者を保護するための法律
2.労働安全衛生法労働災害(労災)を防止し、労働者が安全で健康に働けるようにするための法律
3.労働者災害補償保険法業務災害や通勤災害などの労災を被った労働者に対する、保険給付関連の法律
4.雇用保険法失業した労働者の所得を保障するための法律
5.労働保険徴収法労災保険と雇用保険の保険料をまとめて徴収することなどを定めた法律
6.労務管理その他の労働に関する一般常識1〜5以外の、労働関係諸法令や労務管理、労働経済などの幅広い知識
7.健康保険法業務災害以外の病気やけがに対する保険給付に関する法律
8.国民年金法全国民を対象とした、年金について定めた法律
9.厚生年金保険法国民年金を土台とした、いわゆる「2階」部分の年金について定めた法律
10.社会保険に関する一般常識7〜9以外の社会保険諸法令や社会保険の理論等の幅広い知識

■参考書籍
ユーキャン社労士試験研究会編『2022年版 ユーキャンの社労士 はじめてレッスン』自由国民社、p16


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社労士の具体的な業務内容

社労士の具体的な業務内容

社労士の仕事は下記の図の通り、1号業務、2号業務、3号業務に分かれています。

社労士の主な業務内容

出典:ユーキャン社労士試験研究会編『2022年版 ユーキャンの社労士 はじめてレッスン』自由国民社、p34

それぞれの仕事内容について、詳しく解説していきます。

1号業務(書類作成、手続き代行・代理)

1号業務は社労士の独占業務で、社労士の資格をもつ人だけが、報酬を得てこれらの業務を行えます。1号業務は「書類作成」「提出代行」「事務代理」「紛争解決手続代理業務」の4つに分類できます。

【書類作成】

労働社会保険諸法令に基づいて行政機関に提出する申請書等を作成する業務です。労働保険や社会保険に関する届出書、報告書、申請書などを扱います。

【提出代行】

労働保険や社会保険に関する申請書等の、提出に関する手続きを代行する業務です。提出する際の行政機関への説明や、行政機関からの質問への回答などの業務も含みます。

【事務代理】

労働保険や社会保険に関する申請について、または行政機関からの調査や処分に関して、行政機関への主張や陳述を代理する業務です。意見を述べ、事実関係の説明を行います。

【紛争解決手続代理業務】

労働組合の紛争ではなく、使用者と労働者間の個別トラブル解決のために、紛争の当事者を代理して手続きを行う業務です。この業務は厚生労働大臣が定める研修を終了し、試験に合格したうえで全国社会保険労務士連合会の名簿にその旨の付記を受けた特定社会保険労務士のみ行えます。

紛争解決手続代理業務には、以下の事務が含まれます。

  • 紛争解決手続に関する相談
  • 紛争解決手続中の和解交渉
  • 紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とした、和解契約の締結

2号業務(帳簿書類の作成)

2号業務も、1号と同様に独占業務で、社労士の資格をもつ人だけが、報酬を得て業務を行えます。

2号業務は「帳簿書類」の作成です。1号業務で解説した書類作成とは異なり、帳簿書類の作成は労働者名簿や賃金台帳など、行政機関等に提出しない帳簿書類を作成するものです。

3号業務(相談・指導、コンサルティング)

3号業務は独占業務ではないので、社労士ではない人も行えます。とはいえ、社労士のように専門資格を有する人は信頼がおける相談相手として選ばれやすい傾向にあるため、独占業務はないとしても、社労士の重要な仕事のひとつといえます。

3号業務は「相談・指導」の業務です。労務管理や社会保険に関することの相談・指導を行います。コンサルタント業務ともいえるでしょう。たとえば、企業からの人事、賃金、労働時間などの相談を受けたり、一般の人に対して年金制度を説明したり相談に乗ったりする業務のことを指します。

補佐人制度

補佐人制度とは、労使間トラブルで紛争解決手続をもってしても解決できず、依頼者が裁判による解決を望む場合の制度です。社労士は、弁護士に依頼したうえで補佐人として弁護士である訴訟代理人と共に裁判所に出頭し、陳述ができます。

■参考書籍
ユーキャン社労士試験研究会編『2022年版 ユーキャンの社労士 はじめてレッスン』自由国民社、p34-39
貫場恵子著『みんなが欲しかった! 社労士 合格へのはじめの一歩 2022年度版』TAC出版、p11-12

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社労士の業務形態

社労士の業務形態

社労士は法律上、開業社会保険労務士、勤務社会保険労務士、社会保険労務法人の3つに分類されます。これは社労士として社会保険労務士名簿に登録する際に選択します。それぞれどのような業務形態か、解説していきます。

開業社会保険労務士

独立開業し、社労士の業務を行います。誰からでも有償で業務の委託を受けられますが、主に中小企業経営者のパートナーとして顧問契約を結び、労働や社会保険の手続き、人事労務管理の相談や指導を行うことが多いでしょう。「開業社労士」と略されることもあります。

勤務社会保険労務士

企業あるいは開業社会保険労務士の事務所に勤務して、社労士の業務を行います。勤務社会保険労務士は、勤務先以外の仕事は引き受けられません。「勤務社労士」と略されることもあります。

開業社会保険労務士の事務所等ではなく、一般企業に勤める勤務社会保険労務士の場合は、勤務先以外の仕事が引き受けられないため、企業での業務に専従することになります。弁護士や行政書士は企業に就職した場合、その企業で自身の資格を使用して業務を行えないのですが、社労士は社労士としての業務を行うことが認められているという点は特徴的です。企業に勤める場合は人事労務管理部門などに所属するケースが一般的です。

このほか、日本年金機構や健康保険組合など、労働や社会保険に関する専門機関で働くというケースもあります。

社会保険労務士法人

社労士の業務のために社労士が設立する法人のことです。「社労士法人」と略されることもあります。法人化することで社会的信用が得られやすくなり、大規模な社労士法人では、大企業の膨大な事務手続きや、解雇などの高度な労務相談を請け負うケースもあります。

社会保険労務士法人は、全員が理事となって連帯無限責任を追います。連帯無限責任とは、同じ社会保険労務士法人に所属する社労士の1人が何か問題を起こした場合、その法人に所属する社労士全員が均等に責任を負うという考え方です。

また、社会保険労務士法人は、今まで設立に際して2人以上の社員が必要でしたが、平成28年からは社員が1人でも設立が可能になりました。ただし、1人で設立する場合は全国社会保険労務士会連合会会則第39条の3第4項により、後継候補者を決めておかなければならず、後継候補者の届出書及び同意書が必要です。後継候補者は社員が死亡して法人の社員が欠員した場合に、新たに加入させる社員の候補者を決めておくものです。

■参考書籍
ユーキャン社労士試験研究会編『2022年版 ユーキャンの社労士 はじめてレッスン』自由国民社、p32


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企業が社労士に業務を依頼するメリット

企業が社労士に業務を依頼するメリット

ここからは、企業が社労士に業務を依頼するメリットについて解説していきます。リスク削減、増収増益、従業員のリソース削減など多くのメリットが考えられます。

リスク削減が期待できる

社会保険関係の手続きは煩雑で、新たに法令が変更されることもしばしばです。社労士に業務を依頼することで手続きの手違いや法令違反のリスクを削減できます。

また、労務環境をしっかり整備しておかなければ、従業員とトラブルになることも考えられます。社労士に依頼し、労務環境を整備しておくことで、予期せぬ労務違反、損害賠償、未払い賃金などの発生リスクを防げます。

増収増益が期待できる

従業員のモチベーションを高める人事制度や賃金制度の構築を社労士に提案してもらい、実施することで、増収増益が期待できます。これは、従業員満足度が上昇すれば働くモチベーションが増加し、業績によい影響を与える効果が期待できるからです。また、従業員満足度の上昇が退職者の減少につながれば、採用や退職にかかる費用を抑えられるでしょう。

さらに、社労士は助成金申請も得意分野です。助成金を活用するための相談や、代理申請も委託できるため、企業運営において適切なアドバイスが受けられます。

従業員の負担軽減につながる

社労士に人事や労務関係の業務を任せることで、それまで担当していた従業員の業務負担を軽減できます。これにより、従業員が別の業務に割く時間を確保できるでしょう。特に、経営者や管理職などが労務管理業務を行っている場合、社労士に任せることによって確保できるリソースはさらに大きいと考えられます。

■参考書籍
ユーキャン社労士試験研究会編『2022年版 ユーキャンの社労士 はじめてレッスン』自由国民社、p41


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社労士と行政書士、税理士との違い

社労士と行政書士、税理士との違い

社労士と同じ士業に行政書士や税理士があります。これらは社労士とどのように異なるのでしょうか。

行政書士との違い

行政書士は、行政書士法に基づく国家資格が必要な職業です。専門は許認可等の書類作成や事実証明に関する書類の作成などで、街の法律家と呼ばれています。

税理士との違い

税理士は、税理士法に基づく国家資格が必要な職業です。専門は会計業務、税金に関すること、融資の相談などです。

社労士の専門は労働、社会保険、労務などなので、行政書士、税理士ともに、専門分野が異なります。

職業資格専門分野
社労士社会保険労務士法に基づく国家資格労働、社会保険、労務など
行政書士行政書士法に基づく国家資格許認可等の書類作成や事実証明に関する書類の作成
税理士税理士法に基づく国家資格会計業務、税金に関すること、融資の相談など

まとめ

まとめ

人事や労務管理のエキスパートである社労士。幅広い専門知識をもち、書類作成から人事労務のコンサルティングまで、社労士に依頼できることは数多くあります。顧問契約を締結して年間を通じたサポートを依頼すれば、法令順守の安心感や従業員の業務負担軽減など多くのメリットが得られるでしょう。

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