リーダーシップは経営者や管理職に必要とされるスキルと思われがちですが、組織に携わるすべての人に必要な力です。しかし、ビジネスにおいてのリーダーシップとは具体的にどのような能力を指すのか、明確に理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はリーダーシップの意味やマネジメントとの違い、6つの種類や必要とされる要素について解説。また、リーダーに求められる行動や、リーダーシップを養うためのポイントも紹介します。
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リーダーシップとは

最初に、リーダーシップとはそもそもどのような意味を持つ言葉なのか見ていきましょう。
あわせて、混合されやすい言葉である「マネジメント」「フォロワーシップ」との違いや、代表的なリーダーシップ理論の一つ、「PM理論」についても解説します。
リーダーシップの意味と必要性
リーダーシップとは、日本語に訳すと「統率力」「指導力」のことを指します。ビジネスにおいては、「目標を設定して組織を導いていく能力」を意味するのが一般的です。リーダーシップの言い換え候補としてあげられる類語には、主導権などの意味がある「イニシアチブ」や、「中心的役割」があります。
社員が別々の方向を向いていては、仕事はなかなかうまくいきません。企業が持続的に成長していくためには、経営者や部門の責任者がリーダーシップを発揮して周囲に方向性ややるべきことを示し、着実に実行していく必要があります。
従来の価値観やビジネスモデルが通用せず、先行きが見えにくい現代は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字を取って「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。
このような変化や競争が激しい時代において、リーダーシップの重要性がますます高まっています。社員が迷わないようにするために、マネジメント層などが明確なビジョンを示し、組織を正しい方向に導いていくことが求められています。
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マネジメント、フォロワーシップとの違い
リーダーシップと混同されやすい言葉に「マネジメント」があります。
リーダーシップは組織やチームを導いていく力のことで、自動車でいう「エンジン」に例えられます。一方のマネジメントは目標や目的達成に向けて組織やスタッフを管理することを意味し、「ハンドル」の役割を担います。
役割が違うのと同様に、呼称も「リーダー」「マネージャー」と異なります。将来を見据えて行動するケースが多いのがリーダー、現在の取り組みや課題に着目するのがマネージャーといえるでしょう。
リーダーシップの対義語として用いられるのが、「フォロワーシップ」です。組織を率いるリーダーのもとで業務を行う社員(フォロワー)が、チームやリーダーのために主体的に考えて行動するという意味を持ちます。
組織の方向性を決めるためにはリーダーシップが、それを具現化するにはフォロワーシップが必要となるため、相乗効果を生み出す関係でもあります。
PM理論とは
リーダーシップに関する基本的な考え方の一つに「PM理論」があります。日本の社会心理学者である三隅二不二(みすみ じゅうじ)によって1966年に提唱されたリーダーシップ理論の一つです。
リーダーシップは、P(Performance:目標達成能力)と、M(Maintenance:集団維持能力)の2つの能力要素から構成されるとしていることが特徴。Pは目標設定や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する能力で、Mはメンバー同士の人間関係に配慮し、集団のチームワークを維持・強化する能力を指します。
さらに、PとM、2つの能力の大小によって、4つのリーダーシップタイプを提示しました。
- PM型(P・M共に大きい)
目標を明確に示し、成果をあげられると共に集団をまとめる力もある理想型
- Pm型(Pが大きく、Mが小さい)
目標を明確に示し、成果をあげるが、集団をまとめる力が弱い。
成果はあげるが人望がないタイプ
- pM型(Pが小さく、Mが大きい)
集団をまとめる力はあるが、成果をあげる力が弱い。
人望はあるが、仕事は今ひとつというタイプ
- pm型(Pが小さく、Mも小さい)
成果をあげる力も、集団をまとめる力も弱い。リーダー失格タイプ。
PM理論では、PとMのどちらか一方が優れていればいいということではなく、どちらも優れた「PM型」のリーダーシップが望ましいとしています。
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リーダーシップに欠かせない3つの要素

リーダーシップの具体的な要素については、多くの専門家が提唱していますが、ここでは一般的かつ分かりやすいものとして、経営学者のピーター・ドラッカー(1909〜2005)の考えを紹介します。
ドラッカーは、リーダーシップに欠かせない要素は「仕事」「責任」「信頼」の3つだと定義しました。
■仕事
「リーダー」というと、カリスマ性があり、多くの人を引きつける天性の力を持った人物像をイメージするかもしれません。しかし、ドラッカーは、リーダーシップを「資質ではなく仕事」だと説きました。
求められるのは生まれ持った資質ではなく、仕事として的確に目標や優先順位などを定め、行動することだと定義したのです。
■責任
次にドラッカーは、リーダーシップの要素として「地位や特権ではなく、責任と捉えること」をあげました。リーダーは権力を誇示するのではなく、部下を激励して行動を支援し、失敗したときは全責任を背負う胆力を持つべきだという考えです。
■信頼
ドラッカーは、「『つき従う者』がいるのがリーダー」と定義しましたが、それはカリスマ性によってではなく、信頼によらなければならない、としています。
カリスマ性については「扇動的資質にすぎない」と言い切っており、リーダーはきちんとした方向性を示し、責任を取るなどの行動や姿勢によって、つき従う者の信頼を得なければならない、と提唱しました。
リーダーとして仕事をこなし、部下・メンバーに対する責任を持つことで、信頼を得られるというのが、ドラッカーの考え方です。

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リーダーシップの種類

リーダーシップには、さまざまな種類があります。ここでは、アメリカの心理学者、ダニエル・ゴールマンによる6つのリーダーシップスタイルについて、それぞれの特徴や必要とされる能力を交えて詳しく解説します。

ビジョン型
ビジョン型の特徴は、共通の夢に向かって人々を動かすことです。6つのリーダーシップスタイルのうち最も前向きかつ、最も有効なスタイルとされています。
組織への帰属意識が高まるメリットがある一方で、専門的な知識を有するメンバーがいる場合、リーダーのビジョンは現実的ではないと捉えられてしまう可能性がある点は、デメリットといえるでしょう。
ビジョン型のリーダーシップにおいては、自信や共感力、情報を惜しみなく共有する能力などが必要とされます。
コーチ型
コーチ型の特徴は、リーダーとメンバー、1対1の関係を重視し、個々人の希望を組織の目標に結びつけることです。モチベーションの高いメンバーがいる場合に効果的とされ、メンバーを励ましながら目標達成へと近づけられるスタイルです。
ただし、メンバーを深く理解する必要があることや、十分な専門知識を持ち合わせていないとコーチ型リーダーシップを発揮できないため、実行できるリーダーは少ないとされています。
コーチ型のリーダーシップスタイルを実行する場合、カウンセリング能力や共感力、人材育成能力などが必要です。
関係重視型
関係重視型の特徴は、人々を互いに結びつけてハーモニーを作ることです。課題や目標達成より、部下の人間関係や感情面のニーズを重視します。組織内で意思疎通を図りたいときや、融和を求める場合に有効です。
注意したいのは、関係重視型だけでは効果がなく、主にビジョン型との併用が求められる点です。また、メンバーを気遣うあまりに行動力のないリーダーと捉えられてしまうほか、組織内の競争意識がなくなってしまう場合もあります。
関係重視型のリーダーシップスタイルには、協調性や共感力、解決能力などが必要とされます。
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民主型
民主型は、提案を歓迎し意見を幅広く受け入れることが特徴です。結果よりもプロセスを重視するリーダーシップスタイルで、アイデアの発掘や実態把握に効果的とされます。
ただし、知識や能力不足のメンバーがいる場合は有効でなく、緊急性に対応できないことや結論が出にくいというデメリットがあります。
民主型のリーダーシップスタイルでは、自らをさらけ出し他社を受け入れるという「オープンマインド」や影響力、チームワークを養う能力などがリーダーに必要とされます。
ペースセッター型
ペースセッター型の特徴は、難度が高くやりがいのある目標の達成を目指すことです。高レベルのパフォーマンスを目指し、リーダーが手本を見せてメンバーを鼓舞し、成功イメージを与えます。リーダー個人の成果が高いリーダーシップスタイルです。
リーダーができることをメンバーにも求め、思いやりがなくなってしまう傾向にあるため、十分なスキルと慎重さが必要な「劇薬タイプ」のリーダーシップスタイルともいわれています。
ペースセッター型のリーダーシップを発揮するには、達成意欲や共感力、自身の感情をコントロールする能力などが必要です。
強制型
強制型は、緊急時に明確な方向性を示すことで恐怖を鎮める特徴があります。短期間での成果が求められる際に有効ですが、リーダーが一人で裁量権を握り、命令に即座に従わせたり理由を説明しなかったりするなど、非効率的なリーダーシップスタイルといわれています。
強制型のリーダーシップスタイルは災害時などの危機的状況、問題の多いメンバーに対して他の方法が通用しない場合にも効果があるとされます。また、他のリーダーシップスタイルと組み合わせることで団結力が育ちます。
メンバーの自尊心やモチベーションの低下、帰属意識を失う可能性もあるため、強制型のリーダーシップスタイルを実行する場合は、影響力や自己認識力、共感力などの能力が必要です。
リーダーシップに必要な能力

リーダーシップを発揮するためには、具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。
前項で説明したように、スタイルによって求められる能力が異なるケースもありますが、基本的には「主体性」「課題発見力・決断力」「目標設定力」が重要となります。
主体性
リーダーシップのベースともいえるのが、主体性です。主体性とは、自らの意思において責任を持って行動する姿勢を指します。
主体性を持った人材は、指示を受けたから行動に移したといった受動的な姿勢ではなく、自立的に仕事に取り組みます。また、周囲の人を巻き込み、組織全体を見て業務にあたれるのも特徴です。こうした姿勢は多くのリーダーに共通しています。
また、近年はメンバー各々がリーダーシップを発揮する「シェアド・リーダーシップ」という考え方も注目を集めています。組織の成長や成果の向上のために、メンバー個人それぞれがリーダーシップを発揮し、組織全体にポジティブな影響力を与えていきます。
シェアド・リーダーシップにも、周囲を積極的にサポートしたり、自らが得意な分野で旗手となって行動したりする主体性が求められます。
課題発見・決断力
リーダーには、組織やチームのメンバーが取り組むべきことを的確に判断する、課題発見力が求められます。
会社のビジョンや事業内容、組織が置かれている状況などから現状の課題を見つけ、それを解決するためにはどのような施策が必要なのか、メンバーにどのような指示を与えれば良いのかを具体的に検討します。
抱えている課題に対して適切な改善策を講じるほか、ブレない判断を下し部下の信頼を得ることも重要なことから、決断力も重要な要素の一つです。
目標設定力
リーダーは、組織やメンバーそれぞれの目標を明確にして、進むべきゴールを示す必要があります。ゴールが設定されていなければ、そこに到達するまでの計画を作れないばかりか、現状把握や結果の振り返りも困難になってしまうためです。
魅力的な目標を掲げることができれば、メンバーの仕事へのモチベーションがあがり、生産性の向上につながるといったメリットもあります。事業計画や組織のミッションを理解したうえで、適切な目標を設定し、その意味や真意をメンバーに正しく伝え、理解してもらうことも大切です。
リーダーに求められる行動

ここまでリーダーシップの重要性や要件、種類を見てきましたが、ビジネスの現場で具体的に求められる行動は、どのようなものなのでしょうか。
リーダーシップ論研究の第一人者のジョン・アデアは、リーダーシップの目的を「仕事、チーム、個人のバランスを整え、タスクや目標の達成、チームの団結の維持、個人の能力開発を実現すること」とし、リーダーに求められる行動を8つあげました。
1. 明確にする
チーム全体についても、個人に対しても、仕事の目標や内容を具体的に示す必要があります。その際は「SMART」(具体的=Specific、測定可能=Measurable、達成可能=Achievable、現実的=Realistic、期限付き=Time Constrained)の考え方が重要です。
2.計画する
計画を立案すると共に、難航した場合の複数の代替案も考えおきます。組織のメンバーと打ち解け、建設的で独創的な方法をともに編み出していくことが求められます。
3. 説明する
メンバー一人一人に、仕事の目的や計画を説明してそれぞれの役割を明確にします。全体のアクションプランや進捗状況を共有することも大切となります。
4.統制する
リーダーが適切に組織を統制し、部下の自立を促すことにより、組織の力は最大化します。
5.評価する
部下の能力や実績を正しく見極め、適切に評価することもリーダーに欠かせない能力です。成功しても失敗してもきちんとした振り返りを行い、その後の成長や発展に向け指導することがポイントです。
6.動機付けする
アデアは、個々のスタッフの動機付けも重要だと強調しています。動機付けとは、行動を目標へと方向づけ、保持・推進するための「過程」もしくは「機能」のことです。
7.組織化する
チームとして機能し、目標に向かって進むことができるような組織編成、体制づくりもリーダーの重要な役割。方針や業務内容が変わった際には、フレキシブルに対応できるような組織の見直しも欠かせません。
8.模範となる
優れたリーダーは、周囲に働きかけをするだけではなく、「自身が良き模範となる」ことができる人材です。
これらは職種や業種を問わず、実用的であることから、リーダーシップ育成の場で多く活用されています。
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リーダーシップを身につけるための4つのポイント

ドラッカーも強調したように、リーダーシップは生まれ持った資質ではありません。後天的な努力で身につけられ、誰でもリーダーシップをとることができます。
リーダーシップを身につけるためには、以下の4つのポイントに注目して研修を実施することが有効です。実践的な研修カリキュラムに取り組みリーダーシップをとることで、実際のシーンでもリーダーシップを発揮しやすくなります。
コミュニケーション力を高める
■コミュニケーション力を高める方法
- 相手の話に耳を傾け率直に話すよう心掛ける
- 結論から話すことを意識する
- 質問で会話を深掘りする
- コミュニケーション研修を実施する
ドラッカーやアデアもいうように、リーダーシップを発揮するためには、周囲のスタッフを適切に率いていく必要があります。そのためにはコミュニケーション力が必要不可欠です。
といっても、面白いことをいう必要などはありません。大切なのは、部下の話をじっくり聞いて思いや悩みをくみ取ること、自分の考えを正確に伝えることです。
相手の話に真摯に耳を傾け、率直に話すように心掛ければ、ビジネスで必要なコミュニケーション力は自然と高まっていくでしょう。
発想力を鍛える
■発想力を鍛える方法
- 常識を疑い固定観念にとらわれない見方をする
- フリーライティングを実践する
- 書物などで歴史から学ぶ
- 詩を書いてみる
リーダーは目標を設定したり、目標達成までの道筋を考えたりする必要があります。うまくいかない場合や、部下が悩んでいるときの方策を考える必要もあります。
発想力を鍛えるためには、常識を疑ったり、固定観念にとらわれない見方を意識したりすることが大切です。毎朝時間を決めて、思いついたことを句読点や文法にとらわれずに自由に書く「フリーライティング」も有効な方法です。
また、新しいことに敏感になる一方で、書物などで歴史から学ぶのもいいでしょう。自分とは違う価値観や考え方に触れるのもおすすめです。
行動力や決断力を養う
■行動力や決断力を養う方法
- 新たなことに挑戦する
- やるべきことをすぐに行う習慣をつける
- 何もしない時間を極力減らす
- 小さな決断を積み重ねる
- 他社の事例を客観的に分析する
リーダーが迷っていて指針を示すのを先延ばしにしていては、スタッフも困惑してしまいます。たとえ内心では悩みを抱えていても、部下にはきちんと方向性を示すことが大事です。そのためには、行動力や決断力が重要です。
一朝一夕で身につけるのは難しいかもしれませんが、少しでも新たなことに挑戦して日常的に行動力や決断力を養う機会を自らに課すといいでしょう。また、きちんと情報を集めて下準備を重ねたり、他社の事例などを客観的に分析したりすると、より行動や決断をしやすくなります。
信頼を得る努力をする
■信頼を得るための方法
- 部下を一人の社会人として尊重する
- スタッフを公正に扱う
- 小さな心遣いを大切にする
- 約束は必ず守る
ドラッカーも指摘したように、リーダーシップに信頼は欠かせません。たとえどんなにいいビジョンや有効な方策を示したとしても、部下がついてこなくては真のリーダーにはなれないのです。
普段から部下を一人の社会人として尊重したり、組織内のスタッフを公平に扱ったりと、スタッフから信頼を得られるような行動を肝に銘じることが重要です。

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リーダーシップのある人材を採用するコツ

リーダーシップのある人材、将来的にリーダーになれるポテンシャルのある人材は、自社で育成するのも大切ですが、新たに採用するのも効果的です。
とはいえ、そのような人材は、現在の職場で重宝されていたり、転職市場でも競争が激しかったりします。求人広告を出して応募を待つなど、「待ちの姿勢」ではなかなか採用は難しいのが現状。そこで、企業側から採用したい人材に直接アプローチするスカウト型採用が効果的となります。
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