IPOとは、自社の株式を証券取引所に公開して「新規上場企業となること」を意味します。2021年の世界の新規株式公開(IPO)社数は過去最高を更新し、日本国内においても14年ぶりに100社を超えるなど、IPO社数が増加しています。
この記事では、IPOとは何か、企業・従業員・株主それぞれのメリット、IPOが成功する企業の特徴や、必要な資本政策について解説します。
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IPOとは?

IPOとは、自社の株式を証券取引所に新規に上場し、投資家に売り出すことです。
Initial(最初に)、Public(公開された)、Offering(売りもの)という3つの英単語の頭文字をとったもので、「新規公開株」や、「新規上場株式」 などと訳されます。
IPOの目的
IPOの目的は、不特定多数の投資家から広く資金を集めることです。上場することで、より多くの投資家たちに企業の存在を知ってもらうことができます。
日本でも1990年代から活発に行われており(リーマン・ショック後を除く)、今後もIPOを目指す企業は増えると予想されます。
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IPOによる企業のメリット

IPOによって企業が得られるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。IPOの目的である「資金調達」を強化できるメリットのほかにも、さまざまなメリットが期待できます。
資金調達力の強化・多角化
目的でも触れたとおり、上場することで多くの投資家の目に留まるようになり、広く資金を集められるようになります。公募増資(一般の投資家を対象に株主を募集し、新株式を発行して資金を調達すること)を行うことも可能です。
また、信用力が上がるため金融機関からの借り入れもこれまでより容易になるでしょう。
知名度・ブランド力の向上
IPOを行うと、企業の存在を知ってもらえる機会が増えます。メディアに取り上げられたり、証券会社から投資家へ向けて情報が発信されたりすることで、知名度がアップし、ブランド力の強化につながります。
社会的信用の向上
IPOは、どの企業でもできるわけではありません。上場するためには厳しい審査があり、財務状況だけでなく、経営体制の整備・強化も求められます。また、上場したらそれで終わりではなく、その後は継続的に企業の財務状況などを開示していく義務があります。
このように、上場することで企業経営の透明性が高まるため、社会的な信用を得られるでしょう。
採用力の強化
少子高齢化により、人材の獲得競争が激化しています。IPOにより企業のブランド力や社会的信用が向上することで、「この企業で働きたい」と希望する人が増え、人材を確保しやすくなるでしょう。
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IPOによる従業員のメリット

IPOにより、企業だけでなく、働く従業員にもメリットが生じます。主なメリットを3つ紹介します。
財産形成
従業員は、「従業員持株制度」などにより財産形成ができます。従業員持株制度とは、従業員持株会に加入することで、自社の株を購入できる制度です。購入金額の1割程度を企業側が補助する場合が多く、通常よりも多くの株を購入できます。
また、IPO株は、初値が公募価格を上回ることが多く、利益を上げやすいこともメリットのひとつです。比較的リスクが少なく挑戦しやすい株であるため、初心者向けの投資としても注目されています。
注意点としては、もしIPOがうまくいかず、業績が悪化した場合、従業員持株会による配当がなくなることです。従業員持株会は、従業員の毎月の給与や賞与から一定額を天引きして株式を購入し、会社が出した利益から配当金が支払われるため、会社の業績に左右されやすくなります。
社会的信用度の向上
IPOにより企業の社会的信用度が向上すれば、その企業に勤めている従業員個人の、社会的な信用度も向上します。クレジットカードやローンの審査などはもちろん、転職の場面でも有利になる可能性があります。
モチベーションの向上
「上場企業に勤めている」という事実は、個人のステータスになり、モチベーションの向上につながります。
IPOの審査をクリアするためには、経営体制を整備・強化する必要がありますが、これにより、職場環境もより良いものとなり、働きやすさも向上するでしょう。
IPOによる株主のメリット

IPOにより、株主にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なものを3つ紹介します。
創業者利益の確保
創業者利益とは、創業者が自社の株式を譲渡して得る利益のことです。「創業者利潤」や「創業者利得」ともいわれます。企業の規模や状態にもよりますが、公開前から株式を所有している株主にとっても大きな利益が生じることになります。
株式の流通拡大
非上場株式の多くは、譲渡に制限がかけられており、株主が自由に売買することはできません。しかし、上場することで売買が可能になり、株式の流動性が拡大します。
株式の資産価値増大
一般的にIPOは、上場すれば株価が大きく上昇する場合も多く、株主が保有する株式の資産価値も増大します。
また、前述したように、IPOにより企業には多くのメリットがもたらされます。業績が向上すれば株価上昇につながり、資産価値もさらに高まることが期待できるでしょう。
IPOを行う企業に生じるデメリット

IPOによって企業、従業員、株主それぞれにメリットがある反面、デメリットもあります。次は、IPOによる企業のデメリットを5つ紹介します。
コストがかかる
IPOのためには、監査法人や主幹事証券会社の選定、経営体制の整備・強化など、さまざまな準備が必要となります。これには3~5年の準備期間が必要といわれており、かなり時間がかかるものです。
さらに、上場前・上場時・上場後には多額の費用がかかります。以下はその一例です。
- 上場前(監査法人・証券会社・コンサルティング会社などへの報酬)
- 上場時(新規上場料、登録免許税など)
- 上場後(上場維持費や監査報酬など)
企業の規模や状況によっても異なりますが、少なくとも数千万円という費用が必要になると考えられます。
社会的責任の増大
上場後は、有価証券報告書や四半期報告書の発行など、さまざまな情報を開示することが義務付けられます。社会的な信用が向上することはIPOのひとつのメリットですが、その分だけ責任も大きくなるのです。
情報開示義務をしっかり果たし、これまで以上にコンプライアンスを順守しなければ、せっかく得られた信用が失われてしまうリスクがあります。
IR活動の負担が増す
IR(Investor Relations)とは、企業が株主や投資家に対して、経営や財務の状況、業績の実績、今後の見通しなどを伝える活動のことです。例えば、自社Webサイトでの情報開示、ディスクロージャー資料の送付、説明会の開催などが挙げられます。
通常業務に加え、これらの活動のために人員を割かなければなりません。IRコンサルティング会社に委託する場合は、報酬を支払うことになります。
株主への説明責任が生じる
発行された株式には議決権があり、株主は企業経営に対して意見ができるようになるため、経営層の意向のみで経営方針を決定することはできません。円滑に経営を進めていくためには、さまざまな株主の声に耳を傾け、株主の意見を反映させること、経営判断について十分に説明をすることが重要となります。
買収されるリスク
IPOにより、株式が自由に売買できるようになることはメリットのひとつですが、同時に自社を買収されるリスクが生まれます。企業は、第三者に株式の半数を取得されてしまうと「経営権」を奪われ、3分の2以上を取得されてしまうと「支配権」を奪われるためです。
これを防ぐためには、買収防衛策を講じる必要がありますが、その分だけコストも発生します。
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IPOに向いている・向いていない企業とは?

IPOは、資金調達を強化して企業規模を拡大させたいといった企業には魅力的な方法です。しかし、前述したようなデメリットもあるため、IPOを目指すかどうか、迷う企業もあるでしょう。一概にはいえませんが、IPOが向いている企業と向いていない企業には以下のような違いがあります。
まず、IPOに向いているのは、調達した資金で継続的かつ安定的に成長できる企業です。経営者の自信と積極的な姿勢、長期的なビジョンを描ける力が必要となります。
一方、IPOに向いていないのは、具体的な長期ビジョンが定まっていない企業です。また、現状の資金調達に不足がなく事業を展開できているのであれば、IPOの必要はないといえます。
これらの点を踏まえて、IPOが成功する企業・失敗する企業の特徴について、次で詳しく解説します。
IPOが成功する企業と失敗する企業の違い

IPOは、成功すれば大きなメリットがもたらされますが、必ずうまくいくとは限りません。成功する企業と失敗する企業には、以下のような特徴があります。
成功する企業の特徴
IPOの準備期間は平均3~5年で、それ以上かかっている企業も少なくありません。長期間にわたるため、スケジュールどおりにいかないことも出てくるでしょう。そのため、IPOを途中で断念してしまう企業も多くあります。成功するのは、このような場合でも「諦めずにIPOを目指す」という判断を下せる企業です。
また、経営体制を早期に整備・強化している、IPOの準備期間中は好業績を維持していることも重要となります。
失敗する企業の特徴
IPOの準備期間中に断念してしまう理由として多いのが、「コストの負担が厳しくなった」「経営体制を変更したら、うまく機能しなくなった」「業績が悪化した」などです。
また、果たすべき義務・責任の重さや、業績向上のプレッシャーに負けてしまい、上場後すぐに失敗してしまう企業もあります。
IPOは、ゴールではありません。成功するためには、上場後のビジョンを明確にすることと、強い意志が大切なのです。
IPO成功のために人事・労務面で押さえたいポイント

上場のためには、経営体制を整備・強化しなければなりません。株式市場は複数ありますが、例えば、東証スタンダード市場では、「コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制が適切に整備され、機能していること」という審査基準があります。少なくとも、以下のポイントは押さえておきましょう。
- 社内規定や人事制度が整備されているか
- 36協定の締結・届け出がなされているか
- 有給休暇の取得状況
- 社会保険の加入状況
- ハラスメント防止措置がとられているか
- 安全管理体制が構築されているか
また、IPOには時間と労力がかかりますので、各部門の年収設定も十分に検討する必要があります。IPO経験者を採用する必要が出てくる場合もありますが、経験者は市場価値が高く、深い知識が求められます。IPOの時期にあわせて、採用活動も早めに行わなくてはなりません。
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IPO成功のために必要な資本政策立案の手順

資本政策とは、事業に必要な資金を調達するための施策のことです。上場後の株式の流動性を考慮しつつ、資金調達と株主構成のバランスの最適化を図ります。
資本政策を立案するにあたって重要視すべきは、事前検討のステップです。手順は以下のとおりです。
資本政策立案上の事前検討
資本政策は、一度実行すると修正することが難しいため、事前にしっかりと検討しておかなければなりません。検討事項としては、例えば以下のようなものがあります。
- どの程度まで新株式を発行できるのか
- 株式を誰にどの程度保有してもらうか
- オーナーの相続税対策
- 従業員持株会制度は導入するのか
- 法律的に留意すべき事項
など
また、上場時・上場後に適正な評価を受けるためにも、投資家を意識した資本戦略が求められます。
資本政策の立案
上場までにいくら資金が必要なのか、その資金を、いつ、誰から、どのような方法で集めるのかを決定します。
あわせて、上場後に資金を調達しながら経営権を維持していくための対策(買収防衛策)を検討することも重要です。
IPOに向けた資本政策の具体的な方法

資本政策は、法律や規制を考慮しつつ、株主をはじめとするステークホルダーの同意を得られるように立案しましょう。ここでは、以下に挙げた、資本政策の具体的な10の方法について紹介します。
- 株式移動
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
- 新株予約権
- 新株予約権付社債
- 株式分割
- 株式併合
- 財産保全会社
- 種類株式の活用
- ストックオプション制度
株式移動
株式移動とは、株主が所有している株式を、他者に売買または贈与する方法です。株主構成を変えたいときや、特定の取引先などとの関係を強化したいときに用いられます。
移動価額が適正でない場合(無償、または時価の1/2未満)は、時価で移動したときと同じ税額がかかります。
株主割当増資
株主割当増資とは、既存の株主に対して、持株比率に応じて新株を発行する方法です。現状の株主構成を維持しつつ、事業運営のための資金調達ができます。
第三者割当増資
第三者割当増資は、既存株主以外の第三者(役員、従業員、取引先など)に新株を発行する方法です。株主となる出資者を指定できるため、安定株主を確保しつつ株主構成を見直せます。実行には、株主総会での決議が必要です。
新株予約権
新株予約権とは、一定期間内に、定められた株価で株式を購入できる権利のことです。会社法第2条第21号に規定されています。
特定の者の持株比率を上げたい場合や、自社の役員・従業員へのインセンティブとして株式を付与する目的で用いられる方法です。
新株予約権付社債
新株予約権付社債とは、一定条件のもとで株式を購入できる権利が付いた社債のことです。会社法第2条第22号に規定されています。
通常の社債よりも利息が少なくて済むため、企業はコストを抑えて資金を調達できます。また、投資家にとっては、新株予約権を行使後は社債よりも大きなリターンが狙えます。
株式分割
株式分割とは、既存の株式を細分化して株式数を増やす方法です。既存株主に対して平等に、資金負担なしで行うので、持株比率・純資産額ともに変動はありません。
IPO時における株価の割高感が軽減されるため、流動性を高める効果があります。
株式併合
株式併合とは、発行済みの株式数を減らすために、複数の株式を統合する方法です。こちらも株式分割と同様に、既存株主に対して平等に、資金負担なしで行うので、持株比率・純資産額ともに変動はありません。
株式の流動性を調整し、適正な株価水準を確保するために用いられます。
財産保全会社
財産保全会社とは、安定株主比率の維持や事業継承のために、オーナーが設立する別会社のことです。「資産管理会社」ともいわれます。オーナー家の相続税対策や、財務基盤を安定させるなどの目的があります。
種類株式の活用
種類株式とは、会社法108条1項で規定されている9つの権利を組み合わせて発行される株式のことです。組み合わせることで、さまざまなニーズに対応しやすくなります。
9つの権利を持った株式は、以下のとおりです。
- 剰余金の配当にかかる株式
- 残余財産の分配にかかる株式
- 議決権制限株式
- 譲渡制限株式
- 取得請求権付株式
- 取得条項付株式
- 全部取得条項付株式
- 拒否権付株式
- 取締役・監査役選解任権付株式
ストックオプション制度
ストックオプション制度とは、自社の役員や従業員に対するインセンティブのひとつです。将来に、あらかじめ定められた価格で自社の株式を購入できる権利を付与する制度で、モチベーションを高め業績向上につなげる目的で用いられます。
IPOに関するよくある質問

最後に、IPOに関するよくある質問を紹介します。
東京証券取引所には、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場・TOKYO PRO Marketという4つの市場があります。各市場の特色と、自社の事業規模や成長性などを総合的に判断して決定します。
IPOは、自社の株式を証券取引所に公開して投資家に買ってもらうこと、一方M&Aは、複数の企業が合併・買収(経営権も含む)することです。I
POの相手となるのは不特定多数の投資家ですが、M&Aは企業同士で行われます。
上場廃止基準に該当した場合、上場廃止となります。
詳しくはこちらをご参照ください。(上場廃止基準 | 日本取引所グループ )
少ない株数で多くの資金を得られるため、高いほうが好ましいといえます。
公開価格はブックビルディング方式と入札方式のいずれかで設定しますが、なかには上場後の株価が下回る場合もあり、プロセスの見直しを検討すべきであるという指摘もあります。
株式を発行し、企業が直接資金を調達する場所を「発行市場」、発行済みの株式を投資家同士で売買する場所を「流通市場」といいます。
IPOで、持続的な成長を実現しよう

IPOは、すべての企業ができるわけではありません。厳しい審査をクリアする必要があり、時間、労力、経済的な負担もかかります。また、上場後も社会や株主の声を聞き、誠実に対応していかなければなりません。
このように、IPOは決して容易ではありませんが、成功すれば大きなメリットがもたらされ、企業の持続的な成長に貢献するでしょう。
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