CSRとは「企業の社会的責任」のことです。現代の企業は、自社の利益最大化や質の高い商品・サービスの提供を追求するだけでは不十分で、環境や貧困などの社会的な課題解決につながる取り組み、慈善活動やボランティアなどの社会貢献も求められています。
この記事では、企業がCSRに取り組むメリット・デメリットや進め方の手順を紹介するとともに、CSRを企業の採用活動に生かすコツについても解説していきます。
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CSRとは

CSRとは「corporate social responsibility」の頭文字をとった言葉です。直訳すると「企業の社会的な責任」となりますが、法令順守や納税といった義務ともいえる事柄だけをさすのではなく、環境保護や社会問題の解決など、もっと広義な社会的活動のことをいいます。
また責任を負う範囲は自社だけではなく、消費者や取引先、投資家などあらゆるステークホルダーが対象です。
CSRが注目される背景

日本でCSRが注目され始めたのは2000年頃のこと。当時、企業による食品の産地、消費期限の偽装などの不祥事が相次いでいました。そのため、企業活動に対する社会の関心や警戒感が高まっていたこともあり、企業の社会的な責任に対しても関心が集まったのです。
近年では環境問題をはじめ国際的な社会問題がより注目されているため、今後、企業に対する市民や消費者といったステークホルダーの目は一層厳しくなっていくと考えられます。
参考:開発途上地域における企業の社会的責任 CSR in Asia│環境省
CSRはサステナビリティ、SDGsとどう違う?

CSRの類似用語に、「サステナビリティ」や「SDGs」が挙げられます。これらとの違いについて解説していきます。
サステナビリティとは
「サステナビリティ(sustainability)」とは、「持続可能性」という意味を持つ言葉です。ビジネスの現場では、企業が環境、経済、社会全体に対して与える影響を考慮しながら、バランスのとれた企業活動を行うことを意味し、そのような取り組みを「コーポレート・サステナビリティ」といいます。
また、企業が持続可能な社会の実現に向けて行っている活動をまとめた報告書を「サステナビリティ・レポート」といい、一般に開示してサステナビリティを意識した経営をしていることを示します。
SDGsとは
「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった言葉で、「持続可能な開発目標」のことです。17の大きな目標と、目標を達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。
2015年9月の国連サミットで採択され、2030年までの実現を目指して世界中の国や多くの企業が取り組みを進めています。
参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
CSRとサステナビリティ、SDGsとの使い分け
この3つは同じ文脈で使われることもあり混同してしまいがちですが、厳密に区分すると、次のように分けられます。
CSR | 企業が社会的な責任を果たしていくための取り組み |
サステナビリティ | 世の中全体を持続可能な状態にしていく考え方や姿勢 |
SDGs | 持続可能な世界を目指す国際的な目標 |
CSRの取り組み方

企業がCSRを推進する際には、組織の社会的責任に関する国際規格の「ISO26000」を参考にするといいでしょう。ISO26000には、社会的責任の概念を表した「7つの原則」と、活動の指針となる「7つの中核課題」があります。
ISO26000 の7つの原則
ISO20006の7つの原則は、下記の通りです。
1.説明責任組織の活動が外部に与える影響を説明する
2.透明性組織の意思決定や活動の透明性を保つ
3.倫理的な行動公平性や誠実であることなど、倫理観に基づいて行動する
4.ステークホルダーの利害の尊重さまざまなステークホルダーに配慮して対応する
5.法の支配の尊重各国の法令を尊重し、順守する
6.国際行動規範の尊重法律だけでなく、国際的に通用している規範を尊重する
7.人権の尊重重要かつ普遍的である人権を尊重する
参考:やさしい社会的責任 ― ISO26000と中小企業の事例 ―│ISO/SR 国内委員会
ISO26000 の7つの中核課題とCSR活動例
社会的責任を果たすための取り組みとして、下記の7つの中核課題が挙げられます。ここでは例として、CSRの活動例も示しますので参考にしてください。
ただし企業によって置かれている環境も、取り組むべき優先課題も異なるため、自社の状況に応じて目標や行動を設定することが大事です。
7つの中核課題 | CSRの活動例 |
---|---|
1.組織統治 | 経営の公平性、透明性を保つための体制整備 |
2.人権 | あらゆる差別のない雇用 |
3.労働慣行 | 職場の労働条件・環境整備の徹底 |
4.環境 | 省エネ活動 |
5.公正な事業慣行 | フェアトレード製品を扱う |
6.消費者課題 | 積極的な情報開示 |
7.コミュニティーへの参画およびコミュニティーの発展 | 地域の取り組みへの参加 |
参考:やさしい社会的責任 ― ISO26000と中小企業の事例 ―│ISO/SR 国内委員会
CSR活動の本質を理解する
前述したように、CSRは国際規格にも基づいた、企業が社会的責任を果たしていくための取り組みです。まだこのことが日本で浸透しきっていないため、「CSR」というと「PR活動としてのボランティアや慈善活動」として捉えられることもありますが、それは本質ではありません。
あくまでも社会の一員である企業が、社会全体の持続的な成長、発展に寄与するために求められる社会的責任なのです。ただCSR活動に力を入れた結果、企業のイメージアップにつながることはあるでしょう。目的と手段を混同せず、誠実に取り組むことが大事です。
海外のCSR事情

日本ではまだ浸透しきっていない部分もあるCSR活動ですが、海外ではどのように取り組まれているのでしょう。CSRの取り組みについては、文化圏ごとにその背景や特徴が異なります。ここでは、アメリカやヨーロッパにおけるCSRの動向について紹介します。
アメリカにおけるCSRの動向
アメリカでは、企業が主体となってCSRに取り組んでいる場合が多く、企業のリスクマネジメントやコーポレートガバナンス(企業統治)を強化するための意味合いが強くみられます。
日本でCSRが注目されるようになった背景と同様に、アメリカでも、企業の不正や不祥事が相次いだことがCSRに取り組むきっかけの一つです。企業倫理の再構築や法令順守、コーポレートガバナンスを見直す手法として、地域社会への貢献や寄付活動といったCSRの取り組みが行われています。
ヨーロッパにおけるCSRの動向
ヨーロッパでCSRに対する関心が高まった背景には、失業・雇用問題や人権・労働問題、環境問題などがあります。なかでも失業率の高さによる雇用問題への対応が、CSRの普及を後押ししました。
また、2000年に開催された欧州理事会で「より良い雇用と社会的結束によって、持続可能な経済成長をめざす」といったEUの戦略的目標が宣言されたことにより、欧州委員会がCSRに関する本格的な検討を開始。企業や労働組合、消費者、投資家などのステークホルダーが参加したフォーラムでの討議を経て9項目からなる勧告がまとめられ、EUにおけるCSRの推進と実施が促されました。
こうしたEUの動きにより、加盟国のイギリスでは、2001年4月から貿易産業省の閣外大臣としてCSR担当大臣とCSR専任部局を設けるなど、政府が積極的に関与してCSRを推進している特徴があります。なお、ヨーロッパではCSRと法令順守を結びつける傾向は少なく、社会や環境問題に関する取り組みが主な内容となっています。
参考:開発途上地域における企業の社会的責任 CSR in Asia│環境省
CSRに取り組むメリット

ここからは、企業がCSRに取り組むことで期待できるメリットを紹介します。
企業の価値や存在感の向上
CSRに積極的という理念や姿勢が社会に伝わることによって企業のイメージがアップし、企業価値や存在感が向上します。それにより、売り上げや評価が上がり、本業に好影響が出ることも期待できるでしょう。
顧客や取引先からの信頼が高まり、関係も深まる
企業価値が高まることによって、従来の顧客や取引先からの信頼も高まるでしょう。さらに継続的なCSRへの取り組みによって信頼を得られれば、より一層顧客や取引先、投資家などとの関係も強化され、企業活動を円滑に進めやすくなります。
コンプライアンス意識が高まる
CSRに取り組むなかで、「自社がどのように社会的責任を果たしていくか」という点に向き合うことになります。それによって会社全体としても、個々の従業員にとっても、コンプライアンス意識が高まるでしょう。
従業員満足度の向上
従業員がCSR活動を通して社会貢献に対する達成感ややりがいを感じたり、社外から評価されたりすることで従業員満足度の向上が期待できます。従業員満足度の高さはモチベーションのアップにもつながり、企業においては生産性の高まりも感じられるでしょう。
採用力の強化につながる
従業員も社外のステークホルダーも魅力を感じる企業であれば社会的な存在感や人気も高まり、求職者の増加が見込めます。それにより新卒、中途採用を問わず、自社が求める優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。
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CSRに取り組むデメリット

次に、企業がCSRに取り組むことで想定されるデメリットを紹介します。
短期的にはコストがかかり、直接的な利益につながらない場合も
これまで挙げたメリットは、CSRの取り組みが軌道に乗ってから得られるものがほとんどであり、一定の時間がかかることが一般的です。
短期的に見ると本業に関係のないコストがかかり、直接的な利益につながらない可能性もあるので、腰を据えて取り組むことが求められます。
CSRに取り組む人材の確保が必要不可欠
CSRを進めるためには、そのための人材確保が欠かせず、人手不足の企業にとってはデメリットに映るかもしれません。
ただ「そこまで人手を割けない」「本業に支障が出る」などと近視眼的に捉えず、できる範囲から始め、軌道に乗り始めたら取り組みを拡大していくといいでしょう。
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CSRの具体的な進め方

次に、企業がCSRを導入するためのステップを紹介します。
活動内容の思案・決定
まずはどのような活動をするか決めます。前述したISO26000の「7つの原則」や「7つの中核課題」、後述する先進的な取り組み事例を参考に、自社の事業内容や取り巻く環境などによって検討するといいでしょう。
運営・管理体制の構築
次に体制を考えます。企業によっては経営陣がトップを務め、専任部署を設けているケースもあります。最初からそこまでできない場合も、全社的に取り組めるような運営・管理体制を構築するといいでしょう。
取り組みの実施
活動方針や内容が決まり、体制も整ったら、実際に取り組みを実施します。可能な限り、なるべく多くの従業員が関われる形にするといいでしょう。
活動内容の情報開示
実施した活動内容については、社内の一部の活動にならないよう自社のホームページで公開したり、報告書をまとめたりして、情報開示することも大事です。
また、報告書は営業や採用に活用できるツールにもなるため、詳細にわかりやすく作成するにようにしましょう。
見直し・改善
CSRにおいても本業と同様、PDCAが欠かせません。取り組みを見直して課題を洗い出し、改善点を検討して、活動をブラッシュアップしていくことが重要です。
CSRを積極的に実施したい分野

ここからは、企業が実際にCSRを実施するうえで押さえておきたい分野と、その具体的な内容について紹介します。
多くの企業が取り組む環境保護活動
CSRのメインは、社会の課題解決の一助となる活動です。人権保護や労働、貧困問題など分野は多岐にわたります。なかでも環境保護は、気候変動や災害の増加もあって、国際的に関心が高まっている喫緊の課題となっており、多くの企業が取り組んでいます。
地域や消費者に関係する活動も
地域の歴史や文化財の発掘や保護、地域コミュニティーの発展など、地域に根ざしたCSRの活動も多くあります。また、BtoC企業では消費者への体験学習を重視しているところも目立ちます。
従業員に関する取り組みも含まれる
CSRは社外に対する活動だけではありません。企業にとって優秀な人材の流出を防ぐことも重要な取り組みの一つのため、従業員の能力向上を支援したり、ワークライフ・バランスを実現できる制度を整備したりといった活動も含まれます。職場の安全衛生や健康管理として、メンタルヘルスケアも求められています。
CSRを企業の採用活動に生かすコツ

近年では、サステナビリティやボランティア活動に関心を持つ人が増え、企業のCSR活動への注目度も高まっています。特に若い世代にその傾向が顕著といわれています。そのため、自社が取り組んでいるCSR活動の内容について、企業ホームページなど求職者の目に付きやすい箇所に掲載するといいでしょう。
また企業説明会や面接・面談においても、CSR活動について触れると、求職者が自社に抱いているイメージがさらにアップすることが見込め、社会的関心が高い人材の採用につながるでしょう。
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先進的な取り組み事例

最後に、CSRの先進事例を紹介します。「東洋経済新報社」が毎年まとめている「CSR企業ランキング」より、最新の2021年版のトップ3を紹介します。
出典:信頼される「CSR企業」ランキングTOP500社 | 東洋経済オンライン
KDDI
会社としてCSRに力を入れることを「KDDIフィロソフィ(社会への責任を果たす)」として掲げ、専任部署の設置に加えて専任役員も配置して取り組んでおり、2020年から2年連続でCSR企業ランキングのトップに選ばれました。
具体的な取り組みとしては、全国各地の環境保全活動に参加したり、開発途上国の通信環境改善の取り組みに参画したりしています。また取引先にもアンケートを行い、CSRを考慮した調達を実施しています。
日本電信電話
「NTTグループCSR憲章」を制定し、代表取締役副社長がCSR担当役員を兼任するなど、グループ一体でCSRを推進しています。
具体的な取り組みとしては、「スマホ・ケータイ安全教室」を年約7,600回行ったり、「子どもの健全な育成」「経済的困難な子どもの支援」に取り組むNPOを支援したりしています。また調達に際しても、サプライヤーと協力して環境負荷低減に向けて取り組んでいます。
富士フイルムホールディングス
2030年度を目標したCSR計画を定めて中長期的に取り組み、持ち株会社に事業会社を統括する専任部署を設置してグループ全体でCSRを実践しています。CSR企業ランキングでは過去に4回トップに輝いたこともある、ランキング常連企業です。
具体的な取り組みとしては自然保護活動や、自社商品も活用して古文書の複製・復元、開発途上国向けの結核迅速診断キット開発などを進めています。
参考:『CSR企業総覧』富士フイルムホールディングス│東洋経済
CSR活動は企業の成長要因になる

アメリカやヨーロッパをはじめ世界的に取り組まれているCSRは、企業のPRを目的とするのではなく、消費者や従業員、投資家などのステークホルダーに向けて「企業の社会的責任」を果たすための取り組みが求められています。
自社のCSR活動を強化することは、企業の存在感や採用力を高めることにつながり、長期的に見たときに成長要因になるので、じっくり取り組むことが大事です。
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