ESGとは? 企業へのメリット、注目される取り組み事例を紹介

ESGとは? 企業へのメリット、注目される取り組み事例を紹介

近年、ビジネスシーンで耳にすることが多くなった「ESG」。世界中で浸透しており、業態を問わず、あらゆる企業の活動に関係するため、これからの全てのビジネスパーソンにおける必須知識になりつつあります。本記事では、ESGの基礎知識や具体的な取り組み事例についてご紹介。株式会社ニューラル代表取締役CEOの夫馬賢治氏に監修していただき、ポイントを整理しながら解説します。

夫馬 賢治氏

監修者プロフィール夫馬 賢治(ふま・けんじ)氏

株式会社ニューラル代表取締役CEO
サステナビリティ経営・ESG金融コンサルタント

東証一部上場企業を数多くクライアントに持つ。環境省、農林水産省、厚生労働省のESG分野有識者委員。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌で解説を担当。全国・海外での講演多数。著書「超入門カーボンニュートラル」(講談社)、「ESG思考」(講談社)、「データでわかる 2030年 地球のすがた」(日本経済新聞出版)など。ハーバード大学大学院リベラルアーツ(サステナビリティ専攻)修士、サンダーバードグローバル経営大学院MBA、東京大学教養学部国際関係論専攻卒。
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ESGとは?

ESGとは?

まず、ESGについてESG投資の概念とともに、改めて定義を整理していきます。

ESGの定義

「ESG」とは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取った略語です。温室効果ガスの削減や生物多様性の保全といった環境課題、労働環境の改善やジェンダー平等などの社会課題、法令遵守や社外取締役の設置といった企業統治は、企業が長期的な成長をするための取り組みとして欠かせなくなっています。これら3つの概念について、世界中の企業が共通のキーワードとしているのがESGです。

では、各国の企業がESGに注目するようになったのはなぜでしょうか。

環境や人権が経済成長を妨げることが理解されるようになった21世紀の潮流のなかで、持続可能な世界の実現は、人類の社会と経済の発展を実現するための大きな目標になりつつあります。企業活動は地球上の活動の大部分を占めるため、短期的な目先の利益だけを追求したモデルからの脱却が求められています。

そうしたなかで2006年、国連が「責任投資原則(PRI)」を提唱。PRIでは、機関投資家が投資先を決定する際、ESGを判断指標として取り入れることを求めています。このPRIがターニングポイントとなり、各国の投資機関はESGに取り組む企業への投資を活発化。企業側もESGを重要視するようになりました。

ESG投資とは?

ESGに配慮した企業に対して投資を行うことを「ESG投資」といいます。従来型の投資では、投資先の企業を決める際に重視されていたのは、売上や利益率などの「財務情報」でした。ESGの注目度が高まって以来、事業がもたらす社会や環境へのインパクトや従業員の労働環境などの「非財務情報」が注目されるようになっています。財務情報と非財務情報をまとめた「統合報告書」を作成する企業が増えているのも、こうした流れを受けてのことだといえるでしょう。

ESG投資は、投資家からしてもメリットが大きい構造になっています。たとえば温室効果ガスの排出や、法律で定められている年齢未満の危険・有害な労働である児童労働によって大量生産された商品は、政府の規制強化により販売できなくなったり、納品先の店舗が取扱を拒否したりする可能性があります。すると売上そのものが下がり、中長期的な成長を見込むことができません。こうしたリスクを避けられるESG投資は、結果として投資家に価値が還元されていくのです。

なお、ESG投資と似た言葉に「SRI(社会的責任投資)」があります。1920年代にルーツがあるとされる概念で、宗教的倫理観から派生したアルコールやギャンブルなどへの不買運動から始まりました。こうした背景から、SRIでは特に企業倫理が重視されていることが、ESG投資と比較した際の特徴となります。

ESG投資の種類

ESG投資の投資手法は、主に7つの方法に分類されます。

  1. ネガティブ・スクリーニング
  2. ポジティブ・スクリーニング
  3. 規範に基づくネガティブ・スクリーニング
  4. ESGインテグレーション
  5. エンゲージメント・議決権行使
  6. サステナブルテーマ投資
  7. インパクト投資

わかりやすいものが「ネガティブ・スクリーニング」で、武器やギャンブル、化石燃料など、ESGの観点で将来性のリスクのある事業に関わる企業を除外するものです。反対に、ESG評価が高い企業への投資を進めるのが「ポジティブ・スクリーニング」です。また、「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」などの国際的規範に反する企業を除外する「規範に基づくネガティブ・スクリーニング」といった方法もあります。

日本で多く用いられる投資手法が、「ESG インテグレーション」と「エンゲージメント・議決権行使」です。「ESGインテグレーション」は、財務情報・非財務情報を分析し、幅広く分散投資する手法。「エンゲージメント・議決権行使」は、株主総会での議決権の行使や企業への情報開示要求など、株主として直接企業に働きかけることを指します。

その他、クリーンエネルギー、グリーンテクノロジー、サステナブル農業など特定のテーマに投資をするのが「サステナブルテーマ投資」、投資を通じて環境や社会の変化を起こすことそのものを目的とするのが「インパクト投資」です。

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ESG経営の重要度が高まっている理由

ESG経営の重要度が高まっている理由

言葉としては10年以上前から存在したESGですが、近年はより注目度が上がっています。ここからはその理由を見ていきます。

SDGsの浸透

2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)が理由の一つでしょう。SDGsは、企業、政府、国際機関、NGO(非政府組織)・NPO(非営利団体)などが協働して達成すべき、社会・環境課題が挙げられています。2030年が達成目標であることから、徐々に社会全体におけるSDGsが達成できないことによる経済への悪影響が認識されるようになり、その認識が企業におけるESG経営を後押ししていると考えられます。

特に近年は、2020年より国際的に問題となった新型コロナウイルス感染症、同年に菅内閣のもとで宣言された「カーボンニュートラル(2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてプラス・マイナス・ゼロにする考え)」、世界各地で多発する気候変動を原因とした災害など、地球規模のトピックが顕著に注目されるようになりました。同時に政府の政策や予算だけでは、これらの対応が難しいこともわかってきたため、企業は自主的な対策を始めるようになりました。ESG経営は成長戦略として、今後いっそう定着していくでしょう。

GPIFのESG投資への取り組み

もう一つの大きな理由として挙げられるのが、日本の公的年金を運用する「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」が、2017年にESG投資を開始したことです。世界最大規模の年金基金でもあるGPIFがESG投資を開始したことで、GPIFから資産運用を委託されている運用会社がESG投資への関心を高めたことが、日本でESG投資が普及したきっかけとなりました。

企業のESG評価は定量評価で採点され、具体的なスコアになって表されます。GPIFは現在、ESGスコアの高い企業で構成される株価指数「ESG指数」を参照し、それに基づいて投資対象を選定しています。上場企業にとってESG指数を構成する銘柄に選ばれることは、株価の上昇にもつながります。また、日本企業全体のESGスコアが上がっていけば、海外投資家からの日本への投資が増えることにもつながります。こうしたことから、GPIFの投資規模拡大とともにESG経営の注目度が上がっているのです。

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ESG経営のメリット

ESG経営のメリット

次に、ESG経営がもたらす企業にとってのメリットを見ていきます。

長期的な企業価値の向上

いまやGPIFや海外の大手機関投資家は、ESGスコアの高い企業は、長期的な市場競争力が高くなると考えるようになりました。市場競争力が高まった企業には売上や利益が増加し、そこで得た利益をさらにESGスコアを高める分野への研究開発や事業投資に回すことができれば、さらに世の中へのプラスの影響力が高まり、そのことで経済成長にもつながります。中長期的に企業価値は向上していきます。

こうして、社会や環境に配慮した企業活動は、一般市民や地域社会、関係団体などにも恩恵をもたらしていきます。一つ一つの活動が世の中をよりよいものにし、SDGsの達成に貢献することは、最終的に人類社会の未来に寄与することにもなるのです。

企業評価による競争力の向上

ESG経営のメリットは、より身近な部分でも表れます。採用や人事もその一つです。サステナビリティや、サステナビリティのテーマの一つでもあるダイバーシティを重視した企業は、採用市場でも人気が高いため、有能な人材の採用、人材流出の防止にもつながります。特に大学生をはじめとした若者世代は社会的意識が高い傾向があり、新卒採用においても有利に働くでしょう。

また、生活者の消費行動においても、ESGは有効です。最近では、若い世代を中心に、人や社会、環境に配慮した「エシカル消費」が普及してきているように、近年は生活者自身が企業の姿勢や取り組みを考慮して、商品やサービスを選択する動きも出てきています。情報化社会となった現代は、誰もが各企業の生産プロセスや組織体にアクセスすることが可能になりました。環境や社会への配慮に欠けた企業活動はすぐにマイナスとして受け入れられる一方で、ESGの取り組みを情報発信することは、ブランド力の向上にもつながるのです。

ESGの先進的な取り組み事例

ESGの先進的な取り組み事例

ESG経営とは、具体的にはどのような取り組みを指すのでしょうか。多岐にわたるESGの活動の中から、自社がどのようなことに取り組むべきかを考える際は、他社の先進的な事例から学ぶとよいでしょう。先進事例は、各社の統合報告書、金融機関や報道機関の情報から知ることができます。

本記事では、先進的な取り組みについて、2社の事例をご紹介します。

花王株式会社の取り組み

ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を掲げる花王は、「快適な暮らしを自分らしく送るために」「思いやりのある選択を社会のために」「よりすこやかな地球のために」の3つの柱で取り組みを推進。

ユニバーサルガイドラインに適合する新規製品・改良製品の比率を2030年までに100%とするという目標を掲げた「ユニバーサル プロダクト デザイン」や、ライフスタイルに大きく、ポジティブなインパクトを与える製品を2030年までに10件以上提案する目標などを掲げた「暮らしを変える製品イノベーション」といったアクションを進めています。2021年にはプラスチック循環社会に向け、「アタック ZERO」「キュキュット Clear泡スプレー」のボトルで使われるプラスチック(PET)を、すべて再生プラスチック(PET)に変更。環境配慮においても先進的な施策を展開しています。

参考:花王、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表│花王

伊藤忠商事株式会社の取り組み

GPIFが選定したESG総合型指数の1つ「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に選定されている伊藤忠商事は、コロンビアの発電用石炭の鉱山権益における2021年度中の売却を発表しました。蓄電池・再生可能エネルギー事業、アンモニア燃料関連事業、水素関連事業などのクリーンテックビジネスでも、先行している海外企業への出資や技術ライセンスの獲得を積極的に進めています。

ダイバーシティ推進では、社内取締役・監査役、社外取締役・監査役、執行役員人事・総務部長らで構成する「女性活躍推進委員会」を発足。また、管理職や新卒採用での女性比率、男性育児休暇取得率での数値目標も設定。LGBT等性的マイノリティに関する専用の相談窓口も設置しています。

参考:伊藤忠商事 ESGレポート 2021(PDF)
参考:女性活躍推進委員会の新設について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社

まとめ

まとめ

あらゆるステークホルダーに対する信頼を獲得し、企業価値を向上させるためにも欠かせなくなりつつあるESG経営。事業規模や業態を問わず、全ての企業に関係する課題といえます。社会的機運の高まりから、今後は採用や人事領域における重要度も増していくでしょう。ぜひ、先進事例や海外の動向をチェックしながら、自社の企業活動にご活用ください。

■参考資料
夫馬賢治監修「60分でわかる!ESG 超入門」技術評論社刊

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著者プロフィール株式会社ケイ・ライターズクラブ

書籍やムック、企業系冊子、Web記事、動画など、さまざまな教養の実用書籍から企業・大学案内、エンタメ系ムック、官公庁や地方自体のWEB記事など、幅広いジャンルのコンテンツ制作をワンステップで行う編集プロダクション。採用や人事、マネジメント、転職などに関するコンテンツも多数制作している。