離職率が高くなる6つの要因

離職率が高くなる要因とは? 企業がとるべき有効な対策も紹介

深刻な人材不足が続く日本国内において、企業の経営者や人事担当者が頭を悩ませているのが離職率の問題です。求職者は離職率が高い企業を敬遠する傾向があるため、離職率が高いと必要な人材を確保するための採用活動にも影響を及ぼします。

今回の記事では、そもそも離職率が高くなる要因、さらに離職率を抑えるために企業がとるべき対策について、詳しく解説していきます。


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離職率とは

はじめに、そもそも離職率とは何なのか、算出方法や日本国内における離職率の推移について紹介します。

離職率の算出方法

離職率とは、一定期間において退職した人の割合を示す指標であり、厚生労働省では以下のルールに従って離職率を算出しています。

「離職者数」÷「1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)」×100 = 離職率

たとえば社員が100名在籍している企業で、2名が退職した場合は、以下のように離職率が算出されます。

2(退職者)÷100(社員の総数)×100=2%(離職率)


一般的に、「離職率は低ければ低いほど良い」と考えられがちですが、必ずしもそれが正解とは限りません。
たとえば、「離職率が極端に低い」ことの要因には、長年にわたって人材が固定化しているという背景があり、若い人材が入社せず「代謝が進まない環境」の場合もありうるのです。


重要なのは「離職率と採用とのバランス」
であり、適度な人材の代謝を図ることが求められます。


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データで見る離職率の推移

厚生労働省が公表している「平成30年雇用動向調査結果の概況」によると、2018年の平均離職率は14.6%となっています。2017年が14.9%、2016年が15.0%であったことを考慮すると、離職率は年々減少傾向にあることが分かります。

業種によっても離職率は大きく異なり、2018年の調査でもっとも離職率が高かったのは「宿泊業・飲食サービス業」で26.9%。次いで「生活関連サービス業・娯楽業」の23.9%、「サービス業(他に分類されないもの)」の19.9%と続きます。

反対に、離職率がもっとも低かったのは「建設業」の9.2%で、次いで「複合サービス事業」の9.3%、「製造業」の9.4%となっています。

産業別入職率・離職率(平成 30 年)
参考:平成 30 年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省

また、学歴別に新卒から3年以内の離職率を見てみると、大学卒は離職率がおよそ30%で推移しているのに対して、短大卒・高校卒ではおよそ40%で推移しています。

参考:学歴別就職後3年以内離職率の推移|厚生労働省

「離職率が低い」ことは「定着率が高い」とも捉えることができるため、就職・転職の際に、離職率をひとつの指標として企業を判断する求職者もいます。

高い離職率は企業にどのようなリスクをもたらすか

>高い離職率は企業にどのようなリスクをもたらすか

定年退職や結婚・出産などのライフスタイルの変化、さらに社員のキャリア観といったさまざまな要因があることから、離職率0%を目指すことは現実的ではありません。しかし、同業他社と比較した場合に離職率があまりにも高い企業は、さまざまな面でリスクがあることも確かです。

具体的にどのようなリスクが考えられるのか、今回は3つのポイントを紹介しましょう。

採用コストの増大

離職率が高い企業は、欠員を補充するために絶えず採用活動を行わなければならない状況になりがちです。求人誌や求人サイトへの掲載料、採用を行う人事部の人件費、説明会や面接会場の手配にかかる費用、交通費など、採用活動には莫大なコストがかかってしまいます。

ノウハウ・人脈などの無形資産の流出

時間やコストをかけて育成し、業務のスキルやノウハウが身についた後で、離職されてしまうケースもあります。もしその人が、競合他社へ転職してしまえば、それまで人材育成にかけた時間やコストが無駄になってしまうだけではなく、自社が培ってきたノウハウや人脈などさまざまな資産が流出するリスクがあります。

「ブラック企業」とみなされる

働き方改革への取り組みが推進されている現在、企業も求職者も「ブラック企業」というワードに敏感です。ブラック企業には「長時間労働」や「サービス残業」といった負のイメージがあり、なかなか求職者も集まってきません。年間を通して人材を募集している会社は、「人材の入れ替わりが激しいブラック企業」として認識されてしまう可能性もあります。

なかには、労働環境が改善され働きやすく生まれ変わっている企業もあるでしょう。しかし、一度「ブラック企業」と評価されてしまうと、負のイメージを払拭することは簡単なことではありません。社員のモチベーションが低下するだけでなく、新たに人材を採用したい際にも、求職者から選ばれづらい状況が生まれてしまいます。


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雇用動向調査結果から見る、離職率が高くなる6つの要因

雇用動向調査結果から見る、離職率が高くなる6つの要因

同業他社と比較して自社の離職率が高い場合、そこには必ず理由があります。厚生労働省の「平成30年雇用動向調査結果の概況」と照らし合わせながら、離職率が高くなる要因を6つ挙げます。

参考サイト: 平成 30 年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省

長時間労働が蔓延している

定年や契約期間の満了を除いた場合、退職理由として多く見られるのが、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」というものです。男性で10.0%、女性で13.4%もの割合を占めており、特に女性の場合、家事や育児との両立が難しくなって退職するケースも想定されるでしょう。

ハラスメント行為への対策がなされていない

セクハラやパワハラといったハラスメント行為への対策がなされていないと、被害を受けた側が退職という選択をせざるを得ない状況になることが考えられます。

退職理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」という項目がありますが、男性が7.7%であるのに対し、女性は11.8%とやや高い結果になっています。この回答にはハラスメント行為以外にもさまざまな問題が含まれていることが考えられますが、特に女性において「人間関係と退職の関係性」の深さがうかがえます。

正当な評価が得られない

労働時間や休日などの条件に次いで多いのが、「給料等収入が少なかった」という理由です。特に若年層の男性に多く、25〜29歳では16.3%、30〜34歳では17.1%もの割合を占めています。

基本給や賞与の支給額そのものが低い場合もありますが、本人が「正当な評価を得られていない」と感じているケースもあります。業務の中核的な役割を担う世代が、正当な評価を得られていないと感じてしまうと、より良い条件を求めて、転職してしまうケースも少なくないでしょう。

多様性のある働き方が認められない

子育てや介護に関する理由から退職する人も一定数います。女性は「出産・育児」を理由とする退職が1.3%、「介護・看護」を理由にした退職が1.2%となりました。

育児や介護を支援するような制度はあっても、実際には利用することが業務上難しかったり、利用できる雰囲気が組織内になかったり、制度を利用すると極端に待遇が下がったりするケースもあります。制度があっても、「利用しづらい」「利用するメリットが感じられない」ようであれば意味がないのです。

人材育成の体制が確保されていない

人材育成の体制が十分に整備されておらず、OJT(On-the-Job Training)と称して、十分な研修や説明がないままいきなり現場で業務に就くケースもあります。

理解が浅いまま現場に出てしまうことで、顧客からクレームを受けてしまったり、上司から叱責を受けたりすることで、人によっては「自分はこの仕事に向いていない」と感じてしまい、その結果、退職につながってしまうこともあるのです。

厚生労働省の調査でも「能力・個性・資格を生かせなかった」という項目が男性で4.8%、女性で4.3%を占め、「会社の将来が不安だった」という項目では男性で7.6%、女性で4.0%となりました。

有給休暇が取得しづらい

厚生労働省が調査した「長時間労働の抑制と年次有給休暇取得の必要性」において、有給休暇取得率が高いほど社員の休暇に対する満足度も比例して高くなる傾向にあることが分かっています。

参考サイト: 長時間労働の抑制と年次有給休暇取得の必要性|厚生労働省


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離職率を抑えるために有効な5つの対策

離職率を抑えるために有効な5つの対策

離職率を抑え、社員が安定して働ける環境を維持するためにはどのような対策が有効なのでしょうか。今回は特に重要な5つのポイントに絞って紹介します。

長時間労働の改善

労働時間は社員個人のスキルや適性によっても左右されますが、そもそも業務量が適切ではないケースも多くあります。
仕事が早い社員にばかり業務が集中してしまっている場合は、戦力となる社員が退職したタイミングで業務が回らなくなる危険性もあります。

業務の生産性向上や効率化を図るためには、属人的なスキルに頼るばかりではなく、たとえば人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などのテクノロジーを駆使するなどして、会社として業務の仕組みを変えていくことが求められます。

そのうえで、個人のスキルや適性を見極めながら、定時内で終えられる業務量に調整していくことが重要です。

人事や上長との定期的な面談の実施

人間関係やハラスメント行為、自分自身の待遇など、会社に関してさまざまな悩みを抱えているにもかかわらず、言い出せない社員も少なくありません。
一人で悩んだ結果、ある日突然退職を申し出るケースも。引き止めようとしても、その社員のなかではすでに意思が固まっているため、覆すのは極めて難しいでしょう。

このような突然の退職を防ぐためにも、人事部門の担当者や上長などに、本音で悩みを相談できる機会を定期的に設けることが必要です。

ハラスメント防止の研修や相談窓口の設置

日々の業務に追われていると余裕がなくなり、管理職や先輩社員が部下に対して強い口調になってしまい、パワハラと捉えられてしまうこともあります。業務に余裕のない職場では雰囲気も悪くなり、連鎖的に退職者が増えるリスクも考えられます。
職場の悪い雰囲気を断ち切るためにも、ハラスメントを受けている社員が相談できる窓口を設置したり、社員に向けてハラスメント対策の研修を行ったりすることが重要です。

人事や上長との面談では打ち明けられないような内容も、独立した窓口を設けることで相談しやすくなります。

評価基準の明確化

なぜこの給与額なのか、何が評価基準となっているのかが明確化されていないと、社員が「給与額に納得できない(給与が低く感じる)」原因になります。
評価基準があいまいであったり、上長や経営陣の裁量によって社員の評価が決められている場合は、ルールを見直し、明確な評価基準を設ける必要があります。

人事制度の見直し

育児や介護などに従事しながら働き続ける労働者は今後も増加していきます。これは女性のみならず、男性についても同じことです。
少子化が進む社会においては、さまざまな事情を抱えた人の多様性のある働き方が認められない限り、離職率は下がりません。育児休暇や介護休暇などの休暇制度に加え、時短勤務などが整備されていない企業は、多様な働き方に対応できる制度に見直すことが求められます。

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多様化する働き方に向けて企業が検討すべきこと

多様化する働き方に向けて企業が検討すべきこと

離職率を抑えるための基本的な対策に加えて、優秀な人材を会社に定着させるためには、多様化する働き方に合わせた制度作りも必要です。
内閣府が2018年に調査した「働き方・教育訓練等に関する企業の意識調査」のデータをもとに、働き方の見直しに有効な施策や制度をいくつか紹介します。

テレワークやフレックスタイム制の導入

新型コロナウイルスの影響によって、多くの企業がリモートワークやテレワークを導入しました。
通勤時間がなくなったことで自由に使える時間が増加し、社員の満足度向上にも役立つことが期待されています。また、内閣府が2018年に調査した時点においても、テレワークは労働時間の削減につながることが報告されています。

一方で、自宅に落ち着いて仕事ができる環境がなく、仕事がしづらいと感じる人が存在することも事実です。働き方を多様化させるという意味では、テレワーク一辺倒ではなく、選択肢を増やすことが重要といえるでしょう。

また、労働者自身が出勤時間を自由に調整できる「フレックスタイム制」も多様化する働き方に対応できる制度のひとつです。フレックスタイム制単独で実施するよりも、テレワークと併せて導入することで、より生産性が高まることが分かっています。
子育てや介護をしながら仕事を続ける場合、テレワークとフレックスタイム制が導入されていれば、社員にとって働きやすい環境が構築でき、離職率を抑えることにもつながるでしょう。

参考サイト: 働き方の多様化が進む中で求められる雇用制度の改革|内閣府

転勤制度の見直し

介護や子育てをしている社員は、転勤を言い渡された場合やむを得ず退職しなければならないケースもあります。

企業においては、そもそも本当に転勤が必要なのかを今一度見直すことも必要といえるでしょう。多様な働き方に対応するために、転勤制度を撤廃したり、転勤なしの職種を新たに設けたりする企業も現れています。

参考サイト: “転勤”が廃止される!? 働き方の新潮流|NHK

離職率をマネジメントする

離職率をマネジメントする

深刻な人手不足が続いているなか、離職率が高い企業にはさまざまなリスクがあります。しかし一方で、離職率をゼロにすることが、「健全なあるべき姿」とは限りません。

高い離職率に悩んでいる企業は、必要な対策を講じれば離職率を抑えることは十分に可能です。また、多様性のある働き方を認めることで、優秀な人材の定着を図ることもできます。

同業他社の平均値や自社で定めた採用計画をもとに、理想の離職率を目指しマネジメントすることが大切です。

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著者プロフィール株式会社IKUSA

デジタルマーケティング事業を展開し、Webサイトの制作・運用・分析、記事・DL資料・メールマガジンなどのコンテンツ制作などを行う。2021年12月時点、自社で7つのオウンドメディアを運用し、月間合計600件を超えるコンバージョン数を達成。