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キャリアプランとは? 考え方や作成の方法・例、企業ができる支援策を解説

変化の激しい社会のなかで、社員それぞれのキャリアは企業が用意するものではなく、個人が主体的に描く必要性が増しています。そのなかで注目を集めているのが、「キャリアプラン」という言葉です。

キャリアプランは個人が持つキャリアの目標を達成するために、計画を立てることを指します。今回はキャリアプランの考え方・立て方や世代別の例を紹介。社員のキャリアプランを支援する方法についても解説します。


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キャリアプランとは

キャリアプランとは

キャリアプランとは、自分自身の仕事や働き方について理想の将来像を明確にし、実現するために立てる計画のことを指します。直訳すると「職歴の計画」という意味を持ちます。

一つの会社でキャリアを積んでいきたいと考える人もいれば、転職や独立を視野に入れている人もいます。自らが働く企業や組織が変わることも含め、職業人生全体の計画を立てるのがキャリアプランです。

厚生労働省は、生涯を通じたキャリア・プランニングや職業能力証明ができるツール「ジョブ・カード」の活用を推進しています。このようなツールを利用することもキャリアプランを考えるヒントになるでしょう。

参考:厚生労働省「マイジョブ・カード」

類似用語との違い

キャリアプランと混合されがちなワード

キャリアプランと似た言葉として「キャリアパス」「キャリアデザイン」「キャリア開発」などがあります。

キャリアパスは、目標とする職位や職務に向かって進んでいくための順序や道筋を意味します。キャリアプランが働く個人が計画するものである一方、キャリアパスはキャリアアップの道筋を企業が計画・提示するという点で異なります。たとえば「3年以内に昇格するためには、2年連続営業目標を達成し、関連資格を2つ取ること」などと企業側から社員に提示するものを、キャリアパスとよびます。

キャリアデザインは、仕事のみならずプライベートを含めて自らの生き方を設計することという意味で使われます。そのため、プライベートを含めるか含めないかがキャリアプランとの違いです。

一方、社員のスキルや能力を伸ばすために企業が行う施策や計画を指す言葉が、キャリア開発。企業が社員に行うという点や、業務上求められるスキルや能力を磨くことが目的という点がキャリアプランとは異なります。

社員のキャリアアップに向けた取り組みを実行していくためには、キャリアアップ計画書の作成が欠かせません。人材育成のカギといえるキャリアアップ計画の立て方については、こちらの資料で詳しく解説しております

キャリアプランの考え方

キャリアプランを考えるにあたっては、1978年に米国のエドガー・H・シャイン博士が提唱した理論「キャリア・アンカー」が参考になります。

この理論では、その人がどうしても譲れない価値観や欲求を船のアンカー(いかり)に例え、キャリア選択に大きな影響を与えるものとしています。キャリア・アンカーは、以下8つに分類されます。

  1. 管理者:組織のなかで責任のある役割を担う
  2. 専門能力・職人:自分の専門性や技術を高める
  3. 安全・安定:安定的に一つの組織に属する
  4. 起業家的創造性:新しいことを生み出す
  5. 自律と独立:自分のスタイルで仕事を進める、独立する
  6. 奉仕・社会貢献:社会をよくしたり他人に奉仕したりする
  7. チャレンジ:解決が難しいことに挑戦する
  8. 生活様式:プライベートと仕事のバランスを調整する

これら8つの項目を参考に自らのキャリアプランを考える方法がある一方、必ずしも明確なキャリアプランを必要としないという考え方もあります。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した、プランド・ハップンスタンス理論で、日本語では「計画された偶発性」などと訳されます。

この理論は、変化の激しい現代社会では、キャリアの8割が偶然の出来事によって形成され、その偶然を利用してキャリア形成していこうという考え方です。「自ら偶然の出来事を引き寄せるアプローチ」を大切にすることで、積極的にキャリア形成の機会を得られます。実践するにあたっては、以下5つの行動指針があります。

  • 好奇心
  • 持続性
  • 柔軟性
  • 楽観性
  • 冒険心

キャリアプランが重要な理由

終身雇用が一般的だった時代は、会社から期待された仕事を遂行していれば、いつの間にか経験が積まれ、勤続年数や年齢などに応じてキャリアアップが保証されていた側面があります。

一方で現代は、変化の激しく先行きが見えにくい「VUCA(ブーカ)時代」とよばれています。年功序列制度のようなキャリアアップは保証されていないことも多くなっています。

実際、日本経済団体連合会(経団連)がまとめた「2020年版 経営労働政策特別委員会報告」では、従来のような終身雇用や年功序列型の賃金体系から、職務を定義して採用するジョブ型雇用、成果主義による賃金体系への転換が必要であるとされています。

キャリアに対して受け身の姿勢では、いつの間にか居場所がなくなってしまうこともあるでしょう。自ら主体的にキャリアプランを描き、意欲的に経験やスキルをしっかりと身につけることで、予期せぬ変化にも対応できるようにすることが重要です。

コロナ禍による働き方の変化などにより、主体的なキャリア形成を重視する人材も増えました。ビズリーチの会員を対象にした調査では、92%が「企業に依存せずに自律的なキャリア形成が必要」と回答しています。 

92%が「企業に依存せずに自律的なキャリア形成が必要」と回答

参考:新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、約6割がキャリア観に変化 うち9割以上が「企業に依存しないキャリア形成が必要」と回答|株式会社ビズリーチ プレスルーム

一方、企業側の観点から考えると、個人のキャリアプランを理解したり、支援したりすることは、優秀な人材の流出を防ぐことにつながるといえます。やりたい仕事がない、この企業では自身が望むキャリアを描けないと感じてしまうと、社員は転職を考えます。社員のキャリアプランを上司・会社が理解し、その実現に向けて配置や経験を設計すること定着率を上げていくことが大切です。

また、明確なキャリアプランを設定されている場合、それを実現するために社員が主体的に業務に取り組むことも期待できます。その結果、生産性の向上につながる可能性もあるでしょう。


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キャリアプランを作成するメリット

キャリアプランを立てることで、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを2つに分けて紹介します。

仕事へのモチベーションが高まる

キャリアプランを作成すれば、自らが理想とする姿を実現するために、今やるべきことが明確になります。

目標もなく、ただ漠然と仕事を進めていては、モチベーションの向上は期待できません。キャリアプランを立てることで今の自分に必要な能力やスキルのほか、何に取り組むべきかが見えてくるため、仕事への意欲につながります。

さらに、業務を通してキャリアプランの実現につながっていると実感できれば、さらなるモチベーション向上が期待できるという好循環も生まれるでしょう。

判断に対しての軸になる

今いる部署から異動したい、転職、独立したいなど、キャリアにおいて重大な判断をくだす際にもキャリアプランは有効です。

自らが所属する企業では、理想の将来の実現が難しいといったケースもあるでしょう。今後何をしたいのか、思い描いていることを実現させるためには歩むべき道がキャリアプランの作成によって明確になっていれば、岐路に立ったときに自信を持って決断できるようになります。

また、キャリアプランは日々の業務においても、判断軸になります。たとえば、とあるプロジェクトに参加するかどうか迷ったとき。自身のキャリアプランにそのプロジェクトが必要なのか、という視点で参加・不参加を決められるでしょう。

ビジネスにおいての行動指針になるという点が、キャリアプランを作成する大きなメリットといえます。


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キャリアプランの立て方

キャリアプランの立て方

キャリアプランを立てる際には、「10年後にこうなっていたい」という大きな目標だけでなく、スモールステップで目標達成への道筋を一つ一つ設計しましょう。そのためには、これまでのキャリアの振り返りや、定期的な目標達成進捗の振り返りをすることが一つの手です。

ここからはキャリアプランの立て方を紹介します。各項目において、分析結果などまとめたキャリアプランシートを作成すると、可視化され整理しやすくなるでしょう。

キャリアの振り返り・自己分析

まずは、キャリアの振り返りや自己分析をすることが、キャリアプランを立てる第一歩です。たとえば以下のようにこれまでのキャリアを見つめ直してみましょう。

  • これまで経験した業務のなかで、やりがいを感じてきたものは何か
  • これまで経験した業務における成果・実績は何か
  • 現在の仕事で何が楽しい・やりがいになっているか
  • 現在どのようなスキルを持っているか
  • 今後どのような働き方をしたいか
  • 今後どのように社会に貢献したいか

自己分析は、フレームワークを使って行うのが一つの手です。たとえば以下のようなフレームワークがあります。

  • マインドマップ:一つの主題を中心にして、関連する言葉を放射状に書き出す表現方法
  • モチベーショングラフ:自身の過去を振り返り、モチベーションの上下をグラフで示す方法
  • SWOT分析:内部環境を強み(Strength)と弱み(Weakness)に、外部環境を機会(Opportunity)と脅威(Threat)に分けて、プラス要因とマイナス要因を明確にする方法

理想の姿をイメージする

これまでの振り返りができたら、未来について考えます。まずは10年後、どのような職位についているか、社会のなかでどのような役割を果たしているかなど、大まかな理想像をイメージしましょう。

理想の姿は、今まで築いてきたキャリアの延長線上で考える必要はありません。自身の可能性の幅を狭めてしまう恐れがあるためです。新しい領域で挑戦することを含めて、本当に理想とする将来像を自由に描くことが大切です。

実現に向けた計画を考える

10年後の理想像が描けたら、5年後、3年後、1年後…と徐々に短期的な計画に落とし込みます。計画の内容も徐々に細かくしていき、具体的なプランに落とし込むと良いでしょう。たとえば以下のようなことを考えてみます。

  • 10年後の理想像を達成するには5年後、何ができている必要があるのか
  • 目標を達成するには、どのようなスキル、資格、成績・成果が必要か

これまでのステップで行った自己分析と、理想の姿とのギャップを確認し、それを埋める方法を計画することが重要です。


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キャリアプランの例

キャリアプランの例

経験や立場によって、作成するキャリアプランは異なるでしょう。ここでは、年代別の主なキャリアプランの例を解説します。

若手社員

20代の若手社員は入社して数年経過し、業務への適性が分かってくる時期です。今置かれている状況を冷静に分析し、理想と現実のギャップを見直すことが大切となります。そのうえで、将来なりたい姿を実現させるため、どんな知識やスキルを身につける必要があるのか考えていきます。

また、過去の実績や経験よりもポテンシャルを意識する立場にあることから、今までの経験にこだわりすぎず、広い視野を持ってキャリアを検討しましょう。

■若手社員のキャリアプラン例

  • ○○の資格を取得し、マーケティングの知識を向上させる
  • 営業成績を伸ばすために人脈を広げ、3年後にトップの成績を目指す
  • 10年後、マルチに活躍できる人材になるため、○○部に異動して経験を積む
  • 現在の部署では能力を発揮できないので、社内制度を用いて○○部に異動する

中堅社員

ある程度の知識やスキルを有し、経験も積んできた30代~40代前半の中堅社員は、専門的な道でスペシャリストを目指すのか、管理職に進むのかといったことで悩むことが多いでしょう。この先、希望する立場を考慮してキャリアプランを立てる必要があります。

自身の市場価値を考慮しておくことも大切です。現在所属する企業で実現できることと、キャリアプランに相違がある場合は転職も選択肢の一つとなります。

■中堅社員のキャリアプラン例

  • マーケティング部のリーダーとして信頼を得て、メンバーを統括できる立場につく
  • 業務範囲を広げて経験を重ね、技術職のプロフェッショナルになる
  • 自身の能力をさらに発揮できる環境に身を置くため、転職する

ベテラン社員

40代中盤以降のベテラン層は、これまでの経験をいかして事業を推進する、後進育成に尽力するなどのキャリアが考えられます。また、役職定年や早期退職といったことも視野に入れておく必要があるため、何が起きても対応できるように準備することが大切です。

人生100年時代といわれ、70歳を超えても現役で働く人がいる時代です。豊富なスキルをどういかすかを熟慮し、新たな分野で挑戦するといった選択肢もあります。複数の視点を持ってキャリアプランを立てましょう。

■ベテラン社員のキャリアプラン例

  • 新たな組織体制の構築を進め、3年以内に売り上げ1.5倍を達成する
  • これまで培った経験やスキルを若手社員に伝え、組織の総合力の向上に貢献する
  • 今年中に早期退職して起業し、10年後には○○の分野の事業も展開する
  • 定年まで今いる会社で勤めあげ、再雇用制度を活用し70歳まで働く

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社員のキャリアプランを支援する方法

社員のキャリアプランを支援するために、人事ができること

キャリアプランは働く個人が計画していくものですが、実現性を高めていくには企業や人事、上司による支援も重要となるでしょう。

ここからは人事担当が社員のキャリアプランを支援するためにできることを紹介します。

情報の提供

まずできることは、キャリア形成に役立つ情報の提供でしょう。直接的にキャリアプランに役立つ情報だけでなく、会社の方向性や、他部門や社内制度の情報などを伝えることで、キャリアプランの計画・実践のサポートになります。

ほかにも、社内にキャリア相談窓口を設置する、上司や人事担当者がキャリア面談を行うなどの方法を用いて情報を伝達するのも効果的です。いずれにおいても、社員のキャリアに関する悩みに対して、真摯に耳を傾ける姿勢が重要となります。

経験や研修などの機会を提供

社員が活躍できる場、成長できる場を計画的に与えることも、キャリアプラン支援の一つです。キャリアプラン構築に関する研修を実施したり、他部門の人材同士で交流したりすることで、キャリアプランを考えるきっかけや学ぶ機会になります。

制度による支援

個人のキャリアプランを、会社の制度で支援するという方法もあります。

「自身のキャリアプランを実現できない」といった理由で、転職を考える社員もいます。そのため、以下のような柔軟な人事制度を設けることで、人材流出を防ぐ効果も期待できます。

  • 社内ベンチャー制度:新たな事業モデルを創出するために企業内に独立した組織を設置する制度
  • 自己申告制度:社員が異動や将来のキャリア志向などを企業側に申告する制度
  • 社内FA制度:社員自らが実績やスキルをアピールし、希望の部署への異動を実現させる制度
  • 社内公募制度:人材を求める部署が社内募集を出し、異動を希望する社員が応募する制度
  • ジョブリターン制度:結婚や出産、介護などを理由に退職した社員を、もとの企業で再雇用する制度

これらの制度を活用することで、社員のキャリアプラン実現にダイレクトに応えられるでしょう。


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キャリアプランの質問例

キャリアプランの質問例

採用面接でキャリアプランを尋ねる主な目的は、企業の方向性と求職者のビジョンが合致しているかどうかを見極め、ミスマッチを避けることです。

企業側と求職者の間で認識の違いが生じるミスマッチは、早期離職の原因の一つ。求職者が描いている将来像を面接の段階で聞き、それが自社において実現できそうなプランなら、ミスマッチや離職のリスクを抑えられます。加えて、求職者がキャリアプランを設定し、明確な目標を持っていれば、その実現のため、前向きに業務に取り組んでくれる期待も高まるでしょう。

以下に、面接でキャリアプランを聞く際の質問の例を紹介します。

  • 10年後にどのようになりたいのか、描いている自らの姿を教えてください
  • 将来の目標は何ですか?
  • 入社した後のキャリアプランはありますか?

これらに対する回答から、自社で活躍できそうな人材かどうかを判断します。さらに、キャリアプランを実現させるための中・長期的な計画や、現在取り組んでいるについて深掘りして聞くといった方法も有効です。

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。