エバンジェリストとは。営業や広報との違いは何? エバンジェリストの活動内容や企業における意義を解説

エバンジェリストとは? 意味・役割、仕事内容を詳しく解説

エバンジェリストはIT業界における新しい職種で、企業にとって重要な役割を担うポストです。エバンジェリストには、どのような能力が求められるのでしょうか。

記事では、エバンジェリストの活動内容とともに活用のメリットについて詳しく解説します。また、エバンジェリストを社内で育成する場合と、外部採用する場合のそれぞれのメリット、導入時の注意点などについても広く紹介します。


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エバンジェリストとは

エバンジェリストとは

エバンジェリストとは社内においてどんな存在なのでしょうか。その役割と必要とされる背景を見てみましょう。

エバンジェリストの役割

エバンジェリスト(evangelist)とは、自社製品の技術、最新のテクノロジーやITのトレンドなどについて、クライアントをはじめ一般ユーザーや自社の社員等にわかりやすく解説し、広く知らせる役割を担う人材です。
それ以外の役割が派生することもありますが、特定の専門分野に対して深い知識を持っていることを前提に、難しい技術やサービスの仕組みを相手に分かりやすく伝えるという専門的な業務を担当します。

●エバンジェリスト(evangelist)の意味とは?

エバンジェリストの語源はキリスト教の「伝道者」であるとされています。伝道者は布教活動によって民を教え導く存在です。その語源からは、単に製品やサービスを「伝える」だけではなく、「啓発する」役割も持つことがわかります。自社の製品やサービスの基礎となる技術を広く浸透させ、社会によい影響を与えることが期待されます。

エバンジェリストが必要とされる背景

エバンジェリストが必要とされる背景として、IT技術の高度化や複雑化が進んでいる点が挙げられます。IT技術はさまざまな産業やサービスへの応用が広がり、多様化が進んでいます。幅広い分野で活用されるにつれ、IT技術はますます高度化し、質の高い知識や情報を持つ人材は貴重なものとなりました。クライアントや一般ユーザーはもちろん、IT企業の社員や技術者にも高度化による影響が生じています。
こうした背景のなか、幅広くIT技術に精通している専門家としてエバンジェリストの必要性が高まっています。

エバンジェリストと、営業や広報との違い

「伝える」ことを重要な役割とするエバンジェリストは、ともすると営業や広報との違いが見えにくいかもしれませんが、明確な違いがあります。
営業も製品やサービスのメリットや詳細を伝えますが、対象はあくまで見込み客やクライアントです。最終的な目的は成約や契約の継続であり、「伝える」こと自体を役割とするエバンジェリストとはやや異なります。

また広報は、自社の事業の活動方針を広く社会に伝えることで企業価値を構築したり、社会の共感をえたりする役割を担っています。エバンジェリストと似た部分もありますが、広報には「啓発する」といった要素はあまりありません。

エバンジェリストは営業のように商品の訴求のみに特化せず、また、広報のように自社の情報を拡散するだけにとどまらず、専門分野における高度な知識や技術情報を、必要な相手によりわかりやすく伝える役割を持つといえます。

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企業におけるエバンジェリストの具体的な活動内容

企業におけるエバンジェリストのミッションと活動内容

エバンジェリストの活動は多岐にわたります。なかでも主となる活動は、以下の3つです。

イベント等での講演

新製品発表会やIT関連のイベントなどさまざまなシーンで、メディアや一般ユーザー、エンジニアに向けて講演を行います。自社の製品・サービスの価値を伝える講演・講師業は、エバンジェリストのコア業務ともいえる活動です。

個別デモンストレーション

すでに自社の製品やサービスを導入しているクライアントや、これから導入を検討している見込み客に対して、個別にデモンストレーションを行います。個々が抱える課題の解決に向けて、包括的な視点で新たな提案を行います。

インナーマーケティング

社内会議や研修等、自社社員に対するプレゼンテーションも、エバンジェリストの活動のひとつです。自社の製品やサービスの価値、技術、に加え、競合他社や市場動向などへの理解を社員に深めてもらいます。


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企業におけるエバンジェリストのミッション

企業におけるエバンジェリストのミッション

エバンジェリストのミッションは、さまざまな対象や場面ごとに、最適な内容・方法で伝えることです。また生じている課題を解決していくこともミッションに含まれます。

さらに、「新しい価値を創造」することもエバンジェリストの重要なミッションといえるでしょう。新しい価値とは、IT技術や自社製品を新たなサービスと結びつけたり発展させたりしながら、技術によって社会全体や個々の生活に改革をもたらすことを指します。例えば、すでに多くの国に広がった「スマートフォン」も新しい価値の創造といえます。運転者が自ら運転しなくとも自動走行する「自動運転システム」なども、社会に変化をもたらしています。

自社のIT技術が社会にどのように変化を与えるのかを示すことで、聞き手の気持ちを動かし、よりよい社会づくりに貢献します。

エバンジェリストを活用するメリット

エバンジェリストを活用するメリット

エバンジェリストを活用することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。

社外からの認知・信頼の獲得

エバンジェリストの活動により、社外に対して自社製品やサービスの価値を客観的にアピールできます。エバンジェリストは業界全体、他社製品にも精通しているため、説得力を持って自社の強みや製品の魅力、活用法を具体的に発信できます。自社製品の価値を多くの人に知ってもらうだけでなく、ブランディングの構築も期待できます。
またエバンジェリストは中立性を備えた存在です。自社のメリットをアピールするだけでなく、俯瞰した視点で、特徴や良しあしを伝えます。このような公平な情報発信は、製品・サービスひいては企業の信頼につながるでしょう。

自社製品・サービスの価値向上

エバンジェリストの持つ高い技術や最新の情報を活用し、既存技術の改善やイノベーション、新技術の開発などによって自社製品・サービスの向上が期待できます。営業現場や開発部門とは一線を画すエバンジェリストの視点によって、これまでにないアイデアが生まれることもあるでしょう。

社員への啓発

社内における個別のプレゼンテーションや技術者研修、現場の技術者との対話などによって、広く社員と関わりながら情報を提供します。社員の知識レベル向上に伴い、クライアントに対する説明スキルが上がったり、自社製品やサービスの価値を理解することで仕事へのモチベーションアップにつながったりすることが期待できます。

エバンジェリストを起用する際の注意点

エバンジェリスト導入時の注意点

エバンジェリストを起用する際に注意したいポイントをまとめました。

エバンジェリストは営業ではない

エバンジェリストは、「営業」の役割があるように混同されがちです。しかし既述のように、営業の目的は自社製品・サービスの成約です。一方、エバンジェリストはその分野の専門家として、他社や業界の動向も含めて情報提供をすることが重要であり、中立的な立場が求められます。
エバンジェリストが特定分野のプロフェッショナルとして、その役割を果たすためには、組織全体に向けて「営業との違い」や「立ち位置」をきちんと周知しておくことが大切です。そのうえで、活動を活用・支援・評価する仕組みを整えましょう。

強みを生かせる人材戦略が必要

複数の「エバンジェリスト」を起用する場合、個々の得意分野や強みを生かした人材戦略を考える必要があります。それぞれが持つ知識レベルや実践経験を踏まえ、評価を行いながら、戦略的な活用を考えることが大切です。また、発信の活動においても、講演を得意とする人もあれば、SNSの活用が得意な人もいるでしょう。各エバンジェリストの個性を理解し、最適な活用法を検討します。


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エバンジェリストは社内育成か、外部採用か

エバンジェリストは社内育成か、外部採用か

上述したように、社内育成には長期計画で取り組む必要があります。しかし、事業計画によっては、もっと早い段階で人材を確保したいと考えるケースもあるでしょう。即戦力となるエバンジェリストを得るには、外部採用も一つの手です。社内育成と外部採用それぞれのメリットを比較してみましょう。

社内育成のメリット

社内で育成したエバンジェリストは、自社の経営理念を理解し、社内文化や自社製品、サービスについて精通しています。自社の魅力を十分に理解したエバンジェリストは、自社独自の視点も持ち、企業価値を「伝える」役割として大きな貢献が期待できます。

また、採用コストも抑えられるかもしれません。というのも、専門人材であるエバンジェリストは選考や求人コストのほかに、ヘッドハンティングといったコストも発生する可能性があるからです。

複数の社員を育成しエバンジェリストの人数を増やせば、それぞれの得意分野に特化した活動を広げられます。さらに育成のノウハウも蓄積することで、エバンジェリストを継続的に育成できるようになり、社内ナレッジの強化にもつながります。

外部採用のメリット

エバンジェリストを外部採用する最大のメリットは、社内育成と比べて時間がかからないことです。ただし、求める条件に見合った人材を探すまでに時間がかかる可能性はあります。

また、社内にない知見・ノウハウ・人脈を持っている点もメリットです。他の企業を経験した人材ならではの広い視野で、客観的な分析によるアドバイスが期待できるでしょう。また、企業風土に染まっていない分、それまでの慣習や暗黙知にとらわれず、新たな視点での業務改善や効率化が進む可能性もあります。こうしたことから、組織としての改革を求める場合にも、外部採用にメリットがあるといえます。


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エバンジェリストを育成する際のポイント

エバンジェリストを育成する際のポイント

「エバンジェリスト」というポストを担える人材が、必ずしも社内にいるとは限りません。社内に適した人物がいたとしても、他の重要な職務についているケースも考えられます。そういった場合には、エバンジェリストの起用に向けて、新たに社内育成を行うか外部採用を検討することになるでしょう。ここからは、エバンジェリストを社内で育成する際のポイントを解説します。

専門分野の人材からの選考と研修による強化

エンジニアやプログラマーなど、IT知識の基礎を有している分野から、エバンジェリストの素質を持つ人材を見極めます。具体的には、土台になる知識を持った技術者を社内で選考し、「伝える」ために必要なプレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルを研修で培います。ただし、エバンジェリストは専門的な知識に加えて、公平性のある提案を行える柔軟性も必要です。条件を明確にして、候補を絞りましょう。

経営方針と目標人材に対する情報共有

中立的な立場といえ、自社の方針とマッチしていなければアピールにつながりません。現状の経営状態や今後の経営方針など、自社のビジョンを作り上げるための基本情報を共有します。例えば、複数の事業を行っている企業であれば「主力事業と不採算事業の確認する」、今後の経営方針として「事業の統廃合を進めていく」「テコ入れのために合併を積極的に行う」などが該当します。最終的に、経営者の視点で企業の状態を評価できるところまで育成します。

また、研修ではどのような人材に育てたいのかを明確にしていきます。経営陣自ら明確な目標を示すことで、育成を受ける側も何を身につけるべきかがわかり、成長のスピードが高まるでしょう。

長期的な視野で専門の育成プログラムを導入

エバンジェリストとして必要な専門的な基礎知識があっても、プレゼンスキルや問題解決思考など、その他を補う多くのスキルを研修で身につける必要があります。また、実践経験も求められるため、短期間での育成は難度が高いといえます。例えば技術職出身の社員を育成するなら、経験を積むためにあえて違った部門に異動させることもあるでしょう。年単位の長期的な計画で、エバンジェリストの育成プログラムを進めるとよいです。

実践の機会を与える

顧客とのマンツーマンでの対話や、プレゼンテーション、講演などは、机上のみでは身につかないスキルです。実践の機会を提供することも、エバンジェリスト育成には欠かせません。トライ&エラーを繰り返しながら、エバンジェリストとしての成長を支援することが大切です。

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エバンジェリストになるために必要な知識・スキル3つ

エバンジェリストに必要な知識・スキル3つ

エバンジェリストを目指すには、どのような知識やスキルが必要になるのでしょうか。また、企業がエバンジェリストを起用する場合、どのような条件を考える必要があるのでしょう。ここからは、エバンジェリストに必要な知識とスキルについて解説します。

専門知識を意欲的に学ぶ

IT企業のエバンジェリストであれば、IT技術への理解や、技術をどう生かすのかなど、体系的な専門知識を持っているのが前提です。また、最新の知見や技術に対応するため新しい知識を学ぶ姿勢も欠かせません。国内にとどまらず、グローバルな視点でIT技術・知識を探し蓄積するためには基本的な英語力も必要でしょう。幅広い視点で専門知識を得て、また学び続ける意欲のある人はエバンジェリストの素質があります。

プレゼンテーションスキル

知識を正確かつ、分かりやすく伝えるスキルがあることも重要です。エバンジェリストは人前で話すことが主な活動であり、対象や状況に応じたプレゼンテーションスキルが求められます。例えばプレゼンテーションの規模が小さければ「ヒアリングや対話をしつつプレゼンテーションを行う」、規模が大きいイベントであれば「イベントの趣旨や来場者が欲しい情報を分析してそれに見合ったテーマを伝える」など、柔軟に対応できる適応力も必要でしょう。また、プレゼンテーションに使用する資料作成のスキルがあることも確認しましょう。

柔軟なコミュニケーションスキル

上述したように、エバンジェリストのミッションのひとつに「問題解決」があります。問題点を把握するためには「聞く」スキルが、解決策をわかりやすく提案するためには「対話」のスキルが必要です。相手のニーズや状況に応じた解決方法が採れるよう、柔軟なコミュニケーションスキルが求められます。

エバンジェリストが活躍する企業事例

エバンジェリストが活躍する企業事例

日本マイクロソフト株式会社

日本において著名なエバンジェリストとして、日本マイクロソフト株式会社の西脇資哲氏があげられるでしょう。1996年日本オラクルに入社したのち、2009年12月にマイクロソフトへ移籍し、マイクロソフト製品すべてを扱うエバンジェリストとして活躍しています。
また、IT業界屈指のプレゼン講師であり、日経電子版提供のラジオ番組「エバンジェリストスクール」(TOKYO FM)のパーソナリティーとしても活躍されています。

一方で、同社には「テクニカルエバンジェリスト」というポジションもあります。テクニカルエバンジェリストは、最新テクノロジーに精通した「エンジニア」としてパートナーとともに開発にあたる役割に加え、かつ新たな市場を創造するための種をまく「マーケター」としても含むと定義されています。

テクニカルエバンジェリストとして活躍する社員のインタビューによると「仕事の9割は開発、1割が講演」とのスタンスで活動をしているとのこと。それは「市場創造につながるようなエッジの効いたアプリ開発の事例を作り上げること」が第一の使命であり、講演はあくまでその事例やサービスを知らしめる手段と考えるからです。
エバンジェリストに求められている役割によっても活動内容が変わる事例といえるでしょう。
参照先:テクニカルエバンジェリスト|日本マイクロソフト

富士通株式会社

富士通株式会社で活躍する首席エバンジェリストの中山五輪男氏は、前職でもエバンジェリストで活躍をし、年間約300回ペースで講演を行っていたそうです。ヘッドハンターの方から最初に同社を紹介されたとき、「高い技術がありながらそれを社外にアピールできていない」と評価しており、「だからこそエバンジェリストとしての価値が発揮できる」と考え、転職を決意。

現在は、企業や商工会、医学会などさまざまな場での講演やセミナーのほか、大学での講義も行うかたわら、社内のエバンジェリスト育成にも従事。「エバンジェリスト育成プログラム」を開講し、新たにエバンジェリストの創出にも尽力されているそうです。
参照先:CAREER RECRUITING|FUJITSU

エバンジェリストを生かすには役割と活動内容を知ることが大切

エバンジェリストは実績に裏付けされた高い専門性をもって情報を発信し、自社製品・サービスの価値を向上させ、その価値を社外に効果的に広める役割があります。経営に関わるケースもあり、将来のビジョンに大きな影響を与える存在になることもあるでしょう。しかし、その役割が周知されなければ、営業や広報と混同されやすく、本来の働きが生かせない場合もあります。エバンジェリストのメリットを生かしながら、活動を支援、評価し、自社の価値を高めましょう。

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著者プロフィール株式会社IKUSA

デジタルマーケティング事業を展開し、Webサイトの制作・運用・分析、記事・DL資料・メールマガジンなどのコンテンツ制作などを行う。2021年12月時点、自社で7つのオウンドメディアを運用し、月間合計600件を超えるコンバージョン数を達成。