労働力人口が減少し続けている日本において、特に地方企業の採用活動は難しいといわれています。しかし、企業が成長していくには、このような状況下であっても求める人材を採用していかなければなりません。
本記事では、地方採用市場の現状を把握し、地方企業が抱える採用課題とその原因を確認するとともに、採用成功のための対策を解説します。また、地方企業の採用成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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地方採用を取り巻く状況

現在、地方採用を取り巻く状況は厳しいといわれていますが、実際はどのような状況になっているのでしょうか。都市部との違いや、地方採用市場の状況を、データを交えて解説します。
地方と都市部の採用市場の違い
厚生労働省が発表した令和4年(2022年)4月分の一般職業紹介状況を見ると、有効求人倍率は人口第1位の東京都で0.98、第3位の大阪府で0.99です。1を下回っているのは東京都、大阪府、沖縄県の3県だけであり、沖縄県は0.92で、一番高い福井県の1.99とは大きな開きがあることがわかります。ちなみに人口第2位の神奈川県の有効求人倍率は1.00です。
沖縄県は例外的に低い数値ですが、都市部は買い手市場、それ以外の地域は売り手市場で、地方のほうが採用困難である傾向が見えてきます。
※有効求人倍率とは、有効求人数(仕事の数)を、有効求職者数(仕事をしたい人の数)で割ったもので、厚生労働省が発表する「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」に定期的に掲載されています。
有効求人倍率は、有効求人数と有効求職者数が同じである場合の答えである1を基準として判断します。1より大きいと「働き手が足りない=売り手市場」、1より小さいと「雇ってくれる会社が足りない=買い手市場」となります。

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地方採用市場の状況
上述のように、地方は都市部より採用困難な状況にあります。人口の流れを見ると、2021年の人口推計ではほとんどの都道府県で人口は減少傾向にあり、沖縄県のみ増加しています。
また、秋田県は最も人口が減少しており、人口増減率は-1.52%です。同様に人口が減少している都道府県として青森県、山形県、長崎県、福島県が続きます。
参考:総務省統計局|人口推計 2021年(令和3年)10月1日現在
また、2021年の住民基本台帳人口移動報告を見ると、東京圏は26年連続で転入超過となっています。これは東京を転出する人より、転入する人のほうが多いという状況であり、都市部、特に東京圏への人口移動が続いていると考えられます。
こうしたデータからは、地方の人口が減少していることや、都市部へ人口が流入していることが浮かび上がってきます。これらの点から考えても、今後も地方採用市場は厳しい状況が見込まれます。
参考:総務省統計局|住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果
地方企業が抱える採用課題とその原因

まず前提として、地方や都市部に関係なく、自社の採用課題を把握できていなければ対策は打てません。「地方だから」という外的要因だけにとらわれず、内的要因もあるのではないかとあらゆる可能性を検討するべきです。
そのうえで地方企業の採用課題を考えると、応募者の母集団形成が難しく、目標採用人数を達成できなかったり、求める人材に出会えなかったりすることが挙げられます。
その原因の一つとして考えられるのが、「地元の求職者のみを対象に採用活動を展開している」ということです。引っ越しをしなくても通勤できるような地元の求職者ばかりに目が向いていると、母集団を広げられません。
また、求人募集の内容も別の地方や都市部からの応募を想定していないものになってしまいます。採用活動においても、説明会で遠方へ出向くことや、遠方の求職者向けにオンライン説明会や面談を行うなどの施策が行われないため、地元以外の求職者との接触機会は自然と少なくなります。
このようにして、なかなか応募者が集まらない状況を生み出してしまっているのです。
地方企業が採用を成功させるには?

有効求人倍率が高く、人口も減少傾向にある地方で、企業が採用を成功させるにはどうすればいいのでしょうか。解決策としては、まずは地元だけに絞らず、広く全国から応募者を募ることが挙げられます。そのほかにも、以下のような解決策が有効でしょう。
■地方企業の採用を成功させる解決策の例
- 全国の求職者を対象にする
- U/Iターン人材に地方勤務のメリットを発信する
- オンラインを活用して接触機会を増やす
- 地元での知名度を高める
- 人材要件を見直す
- ダイレクトリクルーティングを行う
これらの解決策について、次で詳しく解説していきます。
全国の求職者を対象にする
応募者を増やすためには、地元の求職者だけでなく、全国の求職者から広く人材を募る必要があります。
2020年に内閣府が発表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、年代別では20歳代が、地域別では東京都23区在住者が、コロナ禍で最も地方移住に関心が高くなったという結果でした。
都市部から地方へ移住する意向のある求職者がいることを想定し、現在都市部に在住している求職者も対象にして採用活動を行うのがよいでしょう。

出典:新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(令和2年6月21日)│内閣府
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U/Iターン人材に地方勤務のメリットを発信する
全国の求職者から人材を募るとともに、UターンやIターンを検討している人材に対して、地方勤務のメリットを発信しましょう。例えば以下のような地方のメリットを打ち出し、魅力をアピールします。
- 人口密度が高くないためゆったりと暮らせる
- 自然が豊かな環境でのびのびと子育てができる
- 気候のよさ
- 食べ物のおいしさ
- 自治体の地方創生の取り組み内容など
地方に移住したいと思ってもらえるような情報を求人に盛り込んだり、自社サイトで発信したりすることが大切です。
また、UターンやIターン支援として転居費用の補助を行うなど、移住支援制度の整備も効果的です。住宅を探すことが難しい地域であれば、社員寮の整備や、自治体や地元の不動産会社と協力して住宅探しの手伝いも可能である、といったこともアピールするとよいでしょう。
2022年7月に内閣府が発表した「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、地方移住への関心理由として「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」が最も多く、次いで「テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため」などの回答が続いています。

出典:第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査(令和4年7月22日)│内閣府
テレワークの浸透により、勤務先企業の所在地と自分が現在住んでいる場所が離れていても問題ないと考える層は増えています。もし募集しているポストがフルリモートでも勤務が可能ならば、移住する必要もなく、全国どこにいても勤務してもらうことが可能です。
オンラインを活用して接触機会を増やす
地方企業の採用活動では、会社説明会や応募前のカジュアルな面談などに人が集まりにくいという現状があります。オンラインでの説明会や面談を実施し、参加できる人の範囲を広げることで、求職者との接触機会を増やしましょう。
オンラインを活用することで、距離の垣根を越えて全国の求職者に自社を知ってもらう機会が増えます。結果として、応募者を増やすことにつながるでしょう。
また、SNSを活用して自社の広報を強化したり、採用活動を行ったり、自社Webサイトのコンテンツを充実させるといったオンライン施策も効果的です。
地元での知名度を高める
オンラインを活用するとともに、地元での企業の知名度を高めることも非常に大切です。
特に地元密着型企業の場合は上述のSNSだけでなく、地元のテレビやラジオに出演したり、広告を出稿したりすることも有効です。
新卒採用も検討している場合は、地元大学と協業して研究開発を行ったり、学生向けにスクール事業を行ったりする方法もあります。
参考書籍:加藤 千雄 (著)「新卒の採用コスト平均60万円が7万円になる採用メソッド」、p46-47、セルバ出版
人材要件を見直す
採用を成功させるための根本的なテコ入れ方法は、人材要件を見直すことです。人材要件を見直し、求める人材の幅を広げることで母集団を大きくするのが狙いです。母集団が大きければ多くの人材と出会えるため、魅力的な人材を採用できる可能性が高まります。
例えば以下のように、見直すポイントは多くあります。
- 今まで中途採用しかしてこなかったが、新卒採用も検討できないか
- 経験者を希望しているが、未経験者を採用して社内で育成できないか
- フルリモートで雇用できないか
- 通勤手当を拡大することでより広い地域からの募集を狙えないか
既存の人材要件が本当に譲れない要件なのか、一つずつ検討するとよいでしょう。
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ダイレクトリクルーティングを行う
ダイレクトリクルーティングとは、企業側が「欲しい」人材を獲得するために、企業自身が採れる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用活動を指します。
ダイレクトリクルーティングを行うことで、求職者の応募を受け身で待つだけではなく、自社の求める人材要件に合致する人材を、能動的に探してアプローチできます。
企業側から働きかけるので、知名度が高くない企業でも、自社を知ってもらうきっかけをつくることができます。現在企業の所在地近くに住んでいる人には自社の魅力を中心に伝え、別の地方に住んでいる人には地方の魅力や移住に関するサポート制度もあわせて伝えるなど、対象に合わせてアプローチを変えられることも利点です。
地方企業の採用成功事例

ここからは、ビズリーチのダイレクトリクルーティングを用いて採用に成功した、地方企業の事例を紹介します。それぞれ地方企業の抱える課題をどのように解決したのか見ていきましょう。
株式会社北の達人コーポレーション
北海道に本社があり、東京・台湾・韓国に拠点がある株式会社北の達人コーポレーション。東京勤務のポジションは他社の求人も多いため、いきなり選考をするのではなく、まずは人事とのカジュアルな面談から始めました。
北海道勤務のポジションは、東京在住の求職者にアプローチする際にはあまり地方色を打ち出しすぎないよう注意しました。これは、他の在京企業と比較されることを想定したためです。
また、地方では「安定感」や「転勤なし」という文言が好まれますが、これらの言葉を安易に加えることはせず、「責任や裁量があってやりがいを感じられる」ことなどをスカウトの文面で伝えました。
加えて、同社が「プライム上場×ベンチャー」であり、安定した環境で挑戦できる点や、従業員数が約230名という会社規模のため、社長との距離が近い点なども求職者に訴求しました。
こうした採用活動の結果、同社はビズリーチで東京3名、札幌1名の採用に成功。特に札幌のカスタマーセンター(CS)管理者には、外資系の大手IT企業出身で10年の経験があるベテランを採用できました。
上述のカスタマーセンター管理者は、同社が声を掛けるまでは転職の意思がなかったものの、スカウトがきっかけで面談に進んだそうです。副社長との最終面接で同社が目指すCS像に共感したこともあり、入社が決まりました。
参考:転職潜在層へのアプローチにより出会えなかった人材に出会えた。北海道・東京の2拠点で即戦力採用に成功! 株式会社北の達人コーポレーション|株式会社ビズリーチ
双葉電子工業株式会社
千葉県茂原市を拠点とする双葉電子工業株式会社は、これまでの採用活動では母集団形成に苦労してきましたが、出会える層の拡大と、より人材要件にマッチする人材を求め、企業が能動的に動くダイレクトリクルーティングをビズリーチで開始。人材要件を緩和し、母集団を大きくしました。
具体的な要件の緩和例としては、今までは「専門領域の経験は5年以上、管理職は7年以上」などといった基準があった部分を緩めて、他業種での経験も可としたことが挙げられます。
実際に、同社の領域である電気・電子領域のみでは該当者が少なかったため、食品系メーカーなどにも対象を広げました。また、小型製品領域に経験を絞っていましたが、こちらもプラント系など大規模な事業領域に広げ、母集団を大きくしていきました。
そのほかの採用における工夫として、現場の担当者にも人事情報を参照できる権限を与え、求職者のスキルを確認してもらうことで、スキルのミスマッチを防いだという点が挙げられます。
スカウト文を作り込んで「なぜあなたが必要なのか」を伝える工夫や、面接の段階ではスキルや経験よりも社風にマッチする人柄を重視して採用活動を行った結果、ビズリーチを導入後半年強で4名という今までにないハイペースでの採用に成功しました。
一般的に知名度が高くない地方の企業でも、ダイレクトリクルーティングを通じて事業や経営姿勢を伝えることができ、候補者に興味をもってもらえた、とのことでした。
参考:「待ちの採用」からの脱却。千葉にあるニッチなメーカーが半年間で4名を採用できた理由とは 双葉電子工業株式会社|株式会社ビズリーチ
三明機工株式会社
三明機工株式会社は、静岡県に本社を置く企業です。新卒社員の育成を担える社員が不足しているという課題がありましたが、人材紹介会社に相談しても人材要件にマッチする人がいないのか、なかなか紹介をしてもらえない状況でした。
そこで、同社は企業側から求める人材を探すことが可能な点や、候補者と直接コミュニケーションをとれる点に期待をもち、ビズリーチのダイレクトリクルーティングを導入。
現在の勤務地や希望勤務地が静岡県以外というケースが非常に多かったものの、「オファーをしたら、静岡に来てくれるかもしれない」という思いでアプローチを行いました。
その結果、希望勤務地にもともと静岡県が含まれていない候補者の採用も決定。静岡県に勤務することを希望していなかった候補者でも、話してみると勤務や転居について意外と柔軟に考えてくれるケースもあるということがわかりました。
また、経営者自らが職務経歴書を見たり、オファーを行ったりなど採用の初期段階から積極的に関わることで、同社の目指す方向性に共感してくれる人材の採用に成功しました。
参考:県外から複数名の採用に成功。静岡にあるメーカーの経営トップが採用最前線に立つ理由 三明機工株式会社|株式会社ビズリーチ
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株式会社ケーイーシー
奈良県を中心として事業を展開する株式会社ケーイーシー。中途採用は主に求人媒体・人材紹介・社員紹介の3つの手法で行っていましたが、採用にかかる費用が高額になることや、事業拡大によって採用人数が増えたことなどがネックでした。これまで以上に中途採用に力を入れなければならないタイミングが訪れたこともあり、ビズリーチのダイレクトリクルーティングを導入しました。
スカウトを送る際には、「この企業は、自分の力を必要としてくれている」と感じられるようなタイトル付けを意識。スカウト文では候補者に対して魅力を感じた点をつづり、社内の雰囲気が伝わるような動画を紹介するなど、魅力をアピールできるようなスカウトを行いました。
さらに、各事業部の部長を巻き込み、採用を自分事として積極的に取り組んでもらった結果、1年間で6名の採用に成功。なかなか採用できずに困っていた教室運営スタッフ職の人材も採用でき、大きな成果を得られました。
参考:事業部主導で候補者と丁寧に向き合う採用スタイルに変更し、採用が難しかった職種を含め6名の即戦力人材を採用 株式会社ケーイーシー|株式会社ビズリーチ
株式会社デンカシンキ
株式会社デンカシンキは、愛媛県松山市に本社、東京・仙台・宇都宮に支店を置く企業です。本社のある四国は転職検討者の数が少なく、どうしても人材獲得の競争率が高くなってしまうという課題がありました。
同社はこれまで掲載料の低い地方求人誌をメインに採用活動を行っていましたが、エリアにとらわれず管理職を採用できる方法を模索し、ビズリーチのダイレクトリクルーティングを導入。
希望勤務地が四国以外となっていても、魅力的な候補者を見つけた場合は積極的にアプローチを行うようにしたところ、首都圏など四国以外のエリア在住で、優れたスキルや経験をもつ候補者からも応募してもらえるようになりました。
正直に同社の現状や今の課題を話し、目指すビジョン、なぜ候補者の方の力を必要としているのかなどを誠実に伝えました。また、2次面接以降は代表が直接候補者と会い、思いと魅力を伝えるようにしたところ、ビズリーチ経由で3名の採用に成功。経験豊富な部長職の人材も迎えることができました。
参考:地域にゆかりのない部長職を2名採用。 四国の約50名の企業が実施した、誠実な採用活動とは 株式会社デンカシンキ|株式会社ビズリーチ
まとめ

地方での採用は、都市部に比べると難しい側面があることは事実です。しかし、人材要件の見直しやオンラインツール、ダイレクトリクルーティングを活用するなどして積極的にアプローチすることで、採用を成功させる企業は数多くあります。
まずは自社の採用課題を把握し、本記事で紹介した解決策を参考に、自社に合った採用活動に取り組んではいかがでしょうか。
ビズリーチ導入から1年で採用コストを80%削減した企業も

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