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2022年2月24日、株式会社ビズリーチは「人事・採用の基本をマスター 採用計画の立て方編」と題したWebセミナーを開催しました。
株式会社人材研究所代表取締役社長・曽和利光氏にご登壇いただき、採用活動の基礎・基本となるテーマを、全6回のWebセミナーで伝えていきます。第1回目は、「採用」の目的・意味合いから、実際の計画の立て方まで、明日から役立てられる考え方を解説します。
この連続セミナーのレポート記事一覧は下記のリンクからどうぞ。

登壇者プロフィール曽和 利光氏
株式会社人材研究所 代表取締役社長
著書等:「人と組織のマネジメントバイアス」、「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」、「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント」、「「ネットワーク採用」とは何か」、「知名度ゼロでも『この会社で働きたい』と思われる社長の採用ルール48」、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」
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要員計画とは ~人材ポートフォリオと人材フロー~
採用計画を立てるためには、自社がどんな組織を目指すのかという「要員計画」が欠かせません。
「要員」とは、「必要な人員」の略で、事業計画を進めるために時期を定めて算出されるもの。基本的には、「人数」×「属性」のみで表されます。「〇年後には、この属性の人員が〇人所属する組織にしたい」というのが要員計画です。
属性は一般的には、等級や部署、職群、年齢、性別などさまざまなセグメントで整理し、それぞれの人数目標を作っていきます。人材ポートフォリオということもあります。

人材フローとは、入社・退職などの人の出入りや、異動・昇進などの流れ(フロー)のこと。現実と理想状態(○年後、等)の双方を算出して、その差から、不足人員を割り出します。
エグゼクティブ、マネジメント、スタッフなど、一つ一つのセグメントや各部門の理想人数に対して、「この部門は〇人、外部採用で増員しよう」「この部門は人員が多すぎるから〇人異動させよう」といった施策を講じて調整していきます。

人事担当者のなかには、要員計画を知らない方もいらっしゃるでしょう。とくに若手の方などは、経営側からおりてくる「今年は中途採用を〇人とる」と数字目標だけを見ている方もいるかもしれません。私自身、リクルートで人事をしていたときは、4年目あたりからようやく「要員計画はこうやって決めるのか!」と背景を知った記憶があります。
要員計画が分かると、降りてきた数字に対して評価ができるようになります。
例えば「今年は新卒を100人採用しよう」という数字に対して、採用現場や労働市場をよく知る側として「〇人は中途採用にした方が、採用実現性や組織構成上、バランスがいいのでは」などと経営にフィードバックができるようになるでしょう。
人材フロー計画づくり
人材フローには、入社数、退職数、昇格率、降格率の算出が欠かせません。これまでの自社平均データを踏襲するほか、昇格・降格率などは意志を持って設定するケースもあるでしょう。

数年後には各部門の構成がどういう状態になるか(したいか)を試算してチェックを行い、最終的な人材フロー計画を決定します。
では、現実味のある人材フロー計画を作るには、何に注意すべきなのか。
検討する際は、次の3点が重要になります。
- 退職率が最もコントロールしにくいため、丁寧なモニタリングとマネジメントが必要になる
- 採用数も市況や自社の採用ブランドによって実現可能性が変わるため、精緻な予測が必要になる
- 社内の昇格(降格)は人事制度(昇格基準等)や育成力(何年で一人前になるか等)によって決まるが、不整合がないかを見極める
コントロールが難しい退職率には、「求心力」と「遠心力」のバランスでマネジメントするという考え方があります。

退職率を「〇%に着地させる」といったマネジメントには、心理的に抵抗感がある方もいるでしょう。しかし、企業にはそれぞれの「理想の退職率」はあると考えています。
例えば、私が人事担当だったリクルートでは、理想の退職率を8%と定めていました。仮の計算として、新卒を100人採用した場合は12~13年で全員退職する計算となり、35~36歳を頂点とした組織ピラミッドができることになります。
基準の数字を置けば、辞める人が増えている場合には求心力(組織コミットメント、従業員エンゲージメント)を高める施策を打ち、逆に退職率が低い場合には、遠心力を高める施策を打つことができます。
未来をきちんとシミュレーションしておけば、リストラではなく、個人にも組織にもWin-Winな退職を導くことができます。退職金制度の工夫や、キャリア研修による自分の能力の棚卸しでどんなキャリアの選択肢があるかを示すなど、会社によって何が遠心力になるのかをしっかりと設計することが大切です。
きちんとした要員計画に基づかない採用を行うと、
- 要員の過不足
- 人員ピラミッドの崩壊
- リストラの危機
が起こります。
短期的には最適な人数だったとしても、中長期の変化によってあるセグメントが増えすぎたり不足したりします。
多くの組織にとっては、上が少なく、下が多い「ピラミッド構造」のほうが、その逆よりもマネジメントしやすく、事業継続の面でも安心でしょう。要員計画に沿わない採用は、年齢構成バランスを崩し、若手が少なく、中間層が多い組織を生み出します。そして、増えすぎた人員を減らすリストラの必要性が生じてしまうのです。要員計画には、現実的で精緻なシミュレーションが大切だということがわかります。
採用計画とは〜ターゲティングの注意点〜
採用計画は、人材フロー計画の一部であり、「いつまでに、どんな人を、何名採用する」というターゲティングの計画を指します。
そして、「どんな人」の部分には、「人材要件」と「求める人物像」と「採用基準」の3つがあります。
※さらに踏み込んで、「どうやって採用するか」(どうやって集めて、選考し、動機づけるのか)という採用プロセスまでを指す場合も多いですが、こちらは次回以降にご説明します。
「人材要件」と「求める人物像」を考える
「人材要件」は人材の必要条件で、必要な能力やスキル、性格特性などの抽象的なコンセプトで表されます。
一方の「求める人物像」とは、より具体的イメージとして採りたい人材のペルソナを指します。一つのキャラクターを構成しているような表現の仕方といえます。

「ペルソナ」とは、元々は心理学用語の「表面的な人格」から転用され、マーケティングの領域で、「商品・サービスの典型的ユーザーイメージ」として使われるようになりました。最近では、採用シーンでも、ターゲットのより具体的な架空の人物像を指すために活用されています。
ペルソナを作ると、関係者間で共通認識が生まれ、「こんなスカウトをもらったら、この人物ならどう反応するだろう」など、具体的な想像をしやすくなります。結果として、採用プロセスを立案しやすくなるのです。

「どんな人」という採用ターゲットを考えるうえでは、「現実」から抽出して考える方法と、「理論」から考える方法があります。
「現実」から考える方法としてポピュラーなものは、インタビューでしょう。ハイパフォーマーや経営者、リーダー層へのインタビューにより、高いパフォーマンスを発揮する人の性格特性、行動特性を集めます。
ただ、当事者の言葉だけに頼るインタビューには危険な面もあります。なぜならば、プロは「自分がなぜプロであるか」をうまく説明できるとは限らないからです。
ある技術の熟練者は「無意識に」「自動的に」、特別な努力をせずともできるように訓練されているため、インタビューをしても「直感的にできた」「気合でできるようになる」などと、抽象的に答えられてしまうケースもあります。
そこで大切なのは、「意見」ではなく「日々実際にやっている行動」を聞くこと。実際に、営業同行などの行動観察ができるなら、現場主義の考え方はおすすめです。
トップ営業にインタビューをすると、抽象度の高い精神論を話していたとしても、行動観察をしてみると「事前準備が入念」「自分の主張はせずに聞き役に徹している」「提案書を出すスピードが驚くほど速い」など、言っていることとやっていることが違う、ことが多々あります。
こうした観察に加えて、パーソナリティーテスト(適性検査)分析を用いると、より客観的情報としての信頼度が高まると思います。
「理論」には、リーダーシップ理論、マネジメント理論、職務適性理論などさまざまなフレームワークがあります。その一つが、ホランドの「仕事の6分類」ですが、これにこだわる必要はありません。理論を参考にして、現実で見えてきたものとぶつけることが大切です。
現実で見えてきた「ハイパフォーマー」が理想像(ベスト・オブ・ベスト)とは限りません。理論で広く見ていけば、さらにいい人材がいるかもしれず、現実からは見えてこないターゲットを見つけるうえで、理論は大いに役立ちます。
現実と理論の両方から多面的に見て、最後はどのように定義するかの問題です。それがターゲティングにおいて、大事なポイントだと思います。

「採用基準」を考える
「採用基準」を考えるうえでは、
- 育成できない要件
- 育成する「機会」がない要件
- 育成する「時間」がない要件
を基準に定めるべきです。
入社後に育成できるものであれば、採用時に持っていなくてもいいため、採用基準にする必要はありません。採用時に身に付いていないとあとから習得するのが難しいスキルや、育成機会はあるけれど時間がなく、「“今”採用したい人材に必要」というものは、採用基準に入れていきます。いずれにしても、MUST条件は最小限にすることが大切です。

ここまで、「どんな人」を示す3つの条件を説明してきましたが、ターゲティングにおいて忘れてはいけないのは「使う言葉は一義的にする」ということです。
「求める人物像」をはじめ、採用条件で使われる言葉の多くは多義的になりがちです。ターゲティングするときに使う言葉が、曖昧で多義的な言葉になると、それまで積み上げてきた要件が台無しになってしまいます。
では、多義的な言葉とはどういうものなのでしょう。
経団連の調査によると、新卒採用において「選考時に重視する要素」の上位5項目は10年以上変わらず「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」です。

この5つはまさに、どんな能力を示しているか、人(企業)によって解釈が異なる多義的な言葉です。
もし、経営や現場が「求める人物像」として、曖昧な「よく出る言葉」を出してきたら、人事サイドが「つまり、こういう意味ですか」「こんな能力のことを指していますか」と一つ一つ確かめる必要があります。
似たような概念、対立概念などを選択肢として提示して、「どちらですか」と尋ねるとより分かりやすいでしょう。
似たような概念、対立概念を整理していくと、「コミュニケーション能力」をはじめとした「人を表現する言葉」から、いかに多様な意味が読み取れるかがわかります。
コミュニケーション能力は、少なくとも、「感受性」「論理的思考能力」「表現力」の3つがあります。この3つは全然違う能力ですので、これらをまとめて一つの言葉にしていたら、採用ターゲットの議論がぐちゃぐちゃになってしまいます。

論理的思考能力にも「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」の2要素があります。クリティカルシンキングとは、論理性を阻害する心理的バイアスに対して批判的である力。企業はこちらの能力を求めているケースが少なくありません。

主体性にも、自ら動き自分の意見を重視する「自発性」と、言うことを聞いて素直に動こうとする「適応力」があります。
チャレンジ精神も、「新規性」なのか「達成意欲」なのか「冒険心」なのかによって、求める要素はかなり異なるでしょう。協調性には、「同調・順応」「貢献欲求」「チームビルディング」「積極性」という要素があり、誠実性には、「勤勉・真面目」と「責任感・使命感」があると分解できます。
このように、皆さんの会社でも、よく使われている言葉を「一義的」なものに分解していってみてください。理論を学び、現場インタビューを重ねてきても、多義的な言葉を使った途端、曖昧になってしまってはもったいないでしょう。ターゲティングは分かりやすく、細かくしていくことが重要です。

Q&A
セミナー後半には視聴者から多くのご質問をいただきました。抜粋してお答えします。
めちゃくちゃ当てはまります。むしろ小さい組織ほど、ポートフォリオの数が少なくシミュレーションしやすくなるので、ぜひやってみてほしいです。
中小企業ほど、採用した人が組織に与える影響が大きく、異動や昇格など人事面で切れるカードが少ないと思います。だからこそ、小さい組織ほどフローを精緻に設計しなければ、採用してから大変なことになるのでは、と考えています。
現実味のある数字に落とし込むことが人事の役回りです。労働市場を一番知っているのは人事です。
現実性を考えて「この採用はリスクがあります」「〇人採用は難しいので計画を見直しましょう」などときちんと伝えることが大事だと思います。
大事な視点ですね。多様性は、求めるあり方を計画的に作り出すことが重要です。そうしないかぎり企業における適切なダイバーシティーは実現しないと思っています。
ハイパフォーマー特性も1つではなく、いろんな特性があると思うので、一つ一つターゲティングして採用していくといいのではないでしょうか。
理論から見ていくのが一つです。スタートアップでは経営者の考え方や思いが大事です。
どういう組織がいいと思っているのか、どういう人材がいいと思っているのかは非常に影響力のある要素なので、経営者が働きたい人物像の理想から考えていくといいと思います。
シミュレーションをきちんとやっているのなら、あまり数字を動かさない方がいいと思います。
例えば20人ぴったり、いい人を順番に採用するのは難しいですし、採用後に「あとから来た人の方がよかったね」ということはあります。でも、だからといって採用計画以上に採りすぎるのはリストラの懸念にもつながります。シミュレーションづくりを精緻にしたのであれば、それに従うのがよいのでは、と思っています。
最後に、セミナーを終えてメッセージをいただきました。

今日お話ししたことは採用を行う手前の話だと感じたかたもいるかもしれません。
しかし、採用目標は降りてくるものではなく、経営サイドの人と一緒になって計画を立てていくべきもの。無理な目標で合意してしまってから、無理な採用活動をして苦労するのは、結局人事です。
人事領域としてやるべきこととして、経営側にどんどん突っ込んでいってほしいなと思っています。
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