【イベントレポート】人事・採用の基本をマスター 採用手法の選び方編(第2回/全6回)

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2022年3月17日、株式会社ビズリーチは「人事・採用の基本をマスター」と題したWebセミナーを開催しました。

株式会社人材研究所代表取締役社長・曽和利光氏にご登壇いただき、採用活動の基礎・基本となるテーマを、全6回のWebセミナーで伝えていきます。第2回は「採用手法の選び方」編として、採用計画を終えたあとに「どう採用するか(HOW)」、採用手法ごとのメリット・デメリット、注意ポイントなどを解説します。

この連続セミナーのレポート記事一覧は下記のリンクからどうぞ。

曽和 利光氏

登壇者プロフィール曽和 利光氏

株式会社人材研究所 代表取締役社長

リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験、また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や情報経営イノベーション専門職大学客員教授も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。

著書等:「人と組織のマネジメントバイアス」、「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」、「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント」、「「ネットワーク採用」とは何か」、「知名度ゼロでも『この会社で働きたい』と思われる社長の採用ルール48」、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」

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2つの採用手法~「オーディション型」と「スカウト型」~

採用手法は、「オーディション型採用」「スカウト型採用」の大きく2つに分けられると考えています。

オーディション型は、広く公募し、向こうから来た人を見極めるという方法です。

オーディション型には、

  • 多くの候補者に接触できるが、合格率が低く、やや非効率
  • 自社のファンが中心で、質は採用ブランドに依存する

という特徴があります。

スカウト型は、ターゲットを特定し、会社側からアプローチするという方法です。

  • 合格率は高いが、手間がかかるため効率に難あり
  • 自社のファン以外にリーチできるため、ブランドに依存しない

という特徴があります。

2つの採用手法

自社のファンが中心になることは、採用力にどんな影響があるのでしょう。私の持論ではありますが、ファンだけをターゲットにした採用は、中長期的に採用力を下げる可能性があると考えています。

ファンで志望する方の採用を否定するつもりはまったくありませんし、入社後の組織へのコミットメントを高く持ってくれる可能性は大いにあります。

ただ、ファン「だけ」、つまりファンではない方を排除するような採用をしてしまうことには、注意したほうがいいでしょう。

もし、100のエントリーが来たのに、実際に応募した方が3割だったとしたら。それは、ファン採用になっている可能性があるかもしれません。

ファンとして興味があってエントリーしたものの、応募段階では離脱してしまっているのなら、選考までに何らかのハードルがあると考えられます。

私は選考辞退した方の調査をしていますが、辞退した方のなかには、応募先企業に適した優秀層が少なからずいることが分かりました。適性検査が煩雑だったり準備すべき資料が多かったりすると、「応募がこんなに大変なら、他の企業にしよう」と違う企業に行ってしまう。優秀層だからこそ選択肢は多く、離脱につながっているのです。

「ファン」採用だけでは採用力を下げる可能性がある

ファン採用の難しさは、選考辞退しているのが優秀層であることにあまり気付かないところです。

「すっぱいブドウ」の理論とは、「取れなかったブドウはどうせすっぱい」と負け惜しみを言う童話になぞり、「自社に来てくれなかった離脱者は、きっとうちには合わなかっただろう」と考える心理的なバイアスを指します。

ファン採用は、志望度が低い人たちをスクリーニングしているため、選考後の移行率が高く、うまくいっているように見えます。そのため、採用手法に問題意識を持ちづらいのです。

ただ、辞退者を追っていくと宝の山であることも多いので、「今より採用力をつけたい」と思う企業は、自分たちがファン採用に依存していないかを見直すことをおすすめします。

オーディション型の採用手法と工夫のポイント

オーディション型の候補者集団形成には次のような手法があります。

【採用広報メディア】

いわゆる「就職ナビ」「転職ナビ」を指します。最近では、「エンジニア」「コンサルタント」「医療」などブティック化が目立ってきました。

【合同説明会/就職・転職フェア】

採用支援会社や公共団体、経済団体などさまざまな主催者がいます。会場のブースなどのリアル場において、企業と候補者が出会います(最近はオンライン化が進んでいます)。

来場した候補者に声をかけて、接点を増やすことが重要になるため、担当者の対人能力が大いに影響する手法ともいえます。

オーディション型の大きなポイントは、RJP(Realistic Job Preview)をきちんと行わないと、イメージギャップがミスマッチを生む可能性があるということです。

RJPとは、企業や仕事内容について、ネガティブな内容も含め「現実的な仕事情報の事前開示」を行うことです。過剰な期待を緩和したり、自分で選んだという意識を高めたり、入社後の期待が明確になる効果もあるといわれています。

予防策としてのRJP(Realistic Job Preview)

採用広報メディアは、広告ですから、いいことを伝えないと応募にはつながりません。しかし、いいことを押し出せば押し出すほど、副作用として「リアリティショック」の懸念が高まります。入社後に、現実と理想とのギャップが起こり早期退職に結びついてしまうのです。

ここがオーディション型採用の難しさといえるでしょう。

理想化は、入社時にもっとも高まります。転職は人生の大きな決断であり、誰でも「自分が選んだ道はいいものだ」と思いたいためです。

しかし現実に触れ、3カ月でモチベーションは下がっていきます。ここがリアリティショックによる早期退職が起こりやすい時期になります。

オーディション型採用では、RJPを意識的に行い、理想化の反動が大きく出ないような情報提供が大切だといえます。

リアリティショックは早期退職をもたらす

では、RJPはどのように行うとよいのでしょう。

行うタイミングとしては、ある程度入社意思が固まり、社員や内定者などとの人間関係・つながりが深まってからが適切です。

人材獲得が難しい今の状況を考えると、早い段階でRJPをやると、候補者が逃げていってしまう可能性があるからです。

RJPは、ネガティブな情報開示をすればいいというものではなく、入社後に起こりうるリアリティショックを避けるために行うものです。そのため、同じ事実を伝えるとしてもポジティブな表現を意識し、ただデメリットを伝えるのではなく、悪い面の「裏側にあるメリット」を伝えることが大切です。

「試行錯誤をしている状況だからこそ、フロンティア領域にも挑戦できる」「同業他社と比べて給料が低いけれど、その代わり仕事環境がすごく整備されている」「給料ではなく能力開発に投資している」といったトレードオフの伝え方を意識するといいと思います。

伝えるには第三者の力を伝えると納得感が高まります。新聞記事や書籍などで自社が取り上げられているなら、記事URLを候補者に共有するのもいいでしょう。

ただ、同じ情報でも、人によってプラスになったりマイナスになったりします。「急成長の会社」であることは、ベンチャー思考の人にはプラスですが、落ち着いて仕事がしたい人にとってはマイナスになる可能性があります。

人それぞれ価値観が異なるなかで、RJPで何をどう伝えるかはよく考える必要があります。

RJPの実践的なポイント

これらのRJPの実践的なポイントとして、前提となるのは「信頼関係」です。採用時から信頼関係を築くためには、次のような工夫が欠かせません。

採用時から信頼関係を築くための工夫うが必要

●採用担当者の自己開示

●非言語コミュニケーション減少への対応
―できるだけ感情を言葉にしていく、身振り手振りや表情などを使う

●メンターとなる社員との相性を考えたマッチング
―候補者につける採用担当者は、性格特性を見極めて選ぶ

●内定者のチームビルディングのワークショップ
―内定者同士がつながることで会社へのコミットメントが生まれやすくなるので、内定者同士が仲良くなるような取り組みを実施する

信頼関係を築いたうえでRJPを行うことで、オーディション型採用の最大のネックであるリアリティショックを防げるでしょう。

スカウト型の採用手法と工夫のポイント

スカウト型の候補者集団形成には、大きく3つの手法があります。

社員や内定者ネットワークを使った「リファラル」、候補者データベースに企業がアプローチする「スカウトメディア」、企業の代わりにスカウトをする「人材紹介サービス」です。

企業側から声をかけて採用プロセスへと乗せていくため、候補者に合わせた後工程の設計も、スカウト型採用のポイントになります。

スカウト型の候補者集団形成手法の特徴

リファラル採用

リファラルの利点には、

  • 自社を最初から志望していない層(非ファン層)にもアプローチできる
  • 評価情報の信頼性が高い(当たりはずれが少ない)
  • 定着率が高い(企業文化へのフィット感を事前に確認できている)
  • コストパフォーマンスが高い(広告費、紹介フィーが不要。紹介者へのインセンティブを出したとしてもフィーはかなり安くなる)
  • インフォーマルネットワークが強化される

などが挙げられます。

通常の採用活動は、2~3回の面接で決定に至ります。リファラルでは、社員がよく知る相手(前職で一緒に働いていた元同僚など)なので、会社にフィットするかどうかの評価情報の信頼性が高いと考えられます。

また、もともと関係性のある人材なので、入社後のインフォーマルな人のつながりが強化されます。その人脈のなかでサポートし合ったり、育成にもかかわってくれたりと、組織開発にもつながる可能性があります。

一方で、リファラルには手間がかかるのも事実。丁寧に対応すべきリファラル採用成功のポイントを紹介していきましょう。

重要なのは、紹介の募り方における工夫です。まずは、内定者や新入社員に個別に会って紹介を依頼すること。一斉メールなどで「紹介してね」と連絡しても、誰かがやるだろうと思うので能動的に動いてくれません。できるなら、一人一人に個別に時間をとって依頼するといいと思います。

内定時や入社直後など、できるだけ、すぐ紹介を依頼するのも大切です。うまくリファラル採用ができている会社には、入社時の導入研修で、リファラル研修の時間を1時間組んでいるところもあります。入社した直後が、外のネットワークにおいて、一番濃い関係性を持っている時期です。

半年後、1年後になると、前職の人とのつながりが弱くなっていることもあるので、入社したらすぐに紹介依頼するのがポイントです。

リファラル研修などの参加者に対しては、しつこく入社を勧誘したりしないなど、趣旨を明確に伝え、紹介したらどうなるのかをきちんと説明して依頼・紹介者として安心させましょう。

マーケットの状況や採用の重要性を説明し、動機づけるのも大切です。また、紹介に手間がかからないように、会社やイベントの説明資料、簡単に説明できるものを準備するといいでしょう。「これを送るだけでOK」というURLなどがあってもいいと思います。

紹介された人には、必ず会うこと。紹介してくれたのに会わなければ、もう二度と紹介してくれないからです。

最後に、もっとも大事なことは、紹介者には連絡先だけ教えてもらい、後は採用側で引き取るという点です。

連れてきてもらうまでが紹介、という考え方は紹介者への負担が大きすぎます。面接日程を調整してもらう、説明会に呼んでもらうのも同じです。連絡先だけ教えてもらったら、その後の連絡はすべて人事が引き取らなければ、なかなかうまくいかないと思います。

紹介の募り方における工夫

なんだか大変そう…と思うかもしれませんが、習慣づければできることです。上記のような細かな手間をきちんと行うことが、リファラル採用成功への近道だと考えています。

スカウトメディア

リファラル採用では起点となる人がなかなかいない、というケースもあります。そこで活用できるのがスカウトメディアです。

スカウトメディアには、候補者データベースに企業からアプローチできるようなものもありますし、SNSなどを利用するのもいいでしょう。

スカウトメディアの利用では、ブルーオーシャンを発見できる検索力と、そこに刺さるメッセージ作成能力が求められます。

スカウトメディアを使うと、どうしても「ぴかぴかの人材」に目が行きがちです。そこにスカウトを送るのはいいのですが、それらの人材は競争の激しいレッドオーシャンです。そこで、多くの人が狙わない層に幅を広げ「ブルーオーシャン」を探すのです。

「営業は未経験だけど接客業経験者であれば、必要な力はあるかもしれない」などと採用対象を広げることで、思いがけない逸材に出会えるかもしれません。

スカウトメディアでの人の探し方

人材紹介会社

人材紹介会社との付き合い方では、「自社に優先的に紹介したい理由」を作る必要があります。優秀な候補者は他の会社にも紹介できるため、人材紹介会社が活動しやすくなるようなコミュニケーションを取ることが大切です。

では、紹介数を増やすためにはどんな工夫が必要なのでしょう。チェックポイントには次のような項目があります。

紹介数を増やすためのチェックポイント

人材紹介会社からすれば、せっかく候補者を口説いて紹介したにもかかわらず、門前払いになると、候補者に顔が立ちません。「もうあの会社に紹介するのはやめよう」と思われてしまうかもしれません。

人材紹介会社への情報提供では資料を用意したり、面接後の不合格の理由をきちんと伝えたりと、次につなげるコミュニケーションも大切です。

選考スピードは、書類が送られてきた当日か翌日には選考を進め、選考全体で2~3週間以内に終えるといいでしょう。それ以上かかると「待たされる会社」という印象が強くなり、次の紹介が続かなくなることもあります。

オーディション型とスカウト型、自社はどちらが適しているのか

ここまで、オーディション型とスカウト型との違いや内容を詳しくお話ししてきました。では、自社は適した方法はどちらか、考えるポイントもご紹介します。

大事なのは、就活ペルソナ」を作ることです。

「就活ペルソナ」を作る

どの程度の就職活動量か、活動時期はいつか、情報収集チャネルはどこかなどを想像することで、スカウト型かオーディション型なのか、スカウトのなかでもどの方法を選ぶべきかが絞られてきます。

就活ペルソナの構成要素

候補者像のイメージができたら、採用プロセス設計に反映します。

オーディション型とスカウト型では移行率が大きく異なるために、チャネルごとに必要接触量や採用目標を決めることが必要です。

採用プロセス設計に反映する

また、後工程でも、オーディション型とスカウト型で注意すべきポイントが異なります。

スカウト型は、もともと自社への転職意向が低い(場合によっては転職意向も低い)ため、途中辞退率は高くなります。カジュアル面談などでコミュニケーションを取りながら自社の魅力を伝えていく必要があるでしょう。

オーディション型とスカウト型の後工程の違い

質疑応答

セミナー終盤には視聴者からの質問に答えていただきました。抜粋してご紹介します。

Q
オーディション型採用が適しているのは、どのような採用課題・特徴を持っている企業でしょうか。
A

求める人材像が広く、採用ターゲットがマスで訴えかけられる層である場合かなと思います。採用ブランド力が高い企業も、オーディション型で多くの応募を期待できると思います。

ただ、知名度があればオーディション型採用がいいかというとそうともいえません。会社が打ち出しているブランドイメージと求める人材像とにギャップがあるのなら、スカウトのほうがいいと思います。

Q
リファラル採用について。入社直後に紹介を依頼すると、組織フィットの観点から、その後のミスマッチにつながる可能性があるのでは? そこは、自社の面接官の目を信じ、入社者の紹介であれば、という視点で実施すべきですか。
A

紹介してもらわないとミスマッチが起こるかどうかも分かりません。紹介していただく可能性が高いのが入社直後なので、候補者との接点を増やすためにも、紹介してもらったほうがいいと思います。

ただ、おっしゃるとおり、入ってきた人が適切な人材を紹介できるのかという指摘は的確です。候補者のことはきちんと見るべきですが、価値観や考え方が似た人を紹介するケースも多く、大幅なミスマッチにつながることは少ないのではないかと思っています。

最後に、視聴者へのメッセージをいただきました。

曽和 利光 氏
曽和 利光 氏

さまざまなポイントをご説明させていただきましたが、『ファン採用』については、ぜひ自社で振り返ってみてほしいと思います。自社志望度が高い層だけ狙って採用していると、もっといい人材と出会う機会損失が起こっているかもしれません。

採用手法を見直し、スカウトで非ファン層にアプローチするのも一つではないか、と思っています。

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著者プロフィール田中瑠子(たなか・るみ)

神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。株式会社リクルートで広告営業、幻冬舎ルネッサンスでの書籍編集者を経てフリーランスに。職人からアスリート、ビジネスパーソンまで多くの人物インタビューを手がける。取材・執筆業の傍ら、週末はチアダンスインストラクターとして活動している。