人材不足の解消や採用のミスマッチ防止に効果的な助成制度が、トライアル雇用です。労働者と企業がお互いを理解したうえで常用雇用へ移行できるほか、一定の要件を満たすと国から助成金が受け取れるなど、さまざまなメリットがあります。
本記事では、トライアル雇用の仕組みや試用期間との違いを紹介。「一般トライアルコース」「障害者トライアルコース」をはじめとした助成金の種類や支給額、申請から受給までの流れなどを解説します。
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トライアル雇用とは

「トライアル雇用」とは、職業経験の不足やブランクによって就職が困難な求職者を、企業が一定期間試験的に雇用する制度です。
制度の目的は、トライアル雇用期間中に企業と求職者が相互理解を深め、常用雇用のきっかけとすることにあります。
厚生労働省と公共職業安定所(ハローワーク)が主体となって、就業経験が少ない人や、子育て、病気、介護などによって長期間のブランクのある人、障害者などへの救済措置として設置されました。
期間の原則は3カ月間で、企業はその期間中に求職者の適性や能力を見極められることがポイントです。求職者と企業が相互理解を深められるため、常用雇用へ移行する際にミスマッチを防げます。求職者側にとっても、経験やスキルなどにとらわれずに求職活動ができるなど、多くのメリットがあります。
実際に雇用に至るケースは多く、2020年度の実績では、トライアル期間終了後に約7割の人が無期雇用へ移行したとされています。
参考:未経験の仕事で正社員を目指す!「トライアル雇用」に挑戦してみませんか│政府広報オンライン
▼採用活動においてミスマッチが発生すると早期離職につながり、新たな採用コストがかかることもあります。人事や採用担当者が把握しておくべき早期離職の原因と対策については、こちらの資料で詳しく解説しております▼
トライアル雇用の仕組みと実施の流れ
トライアル雇用を実施するにあたっては、その仕組みを理解しておく必要があります。

上図のとおり、トライアル雇用はハローワークや職業紹介事業者を介して行われます。企業がハローワークなどに求人票を申請し、トライアル雇用であることを伝えて求人を出します。
その後、求職者が紹介されますが、ハローワーク側では、求職者との相談のなかでトライアル雇用が必要だと思われる対象者をあっせんするため、紹介のプロセスはスムーズに進むでしょう。
紹介を受けた求職者に対して面接を行う際は、給与などの雇用条件も決める必要があります。採用が決定したら、対象者と原則3カ月の有期雇用契約を結び、トライアル雇用へと進みます。
採用後は「トライアル雇用実施計画書」を作成し、紹介を受けたハローワークに対し、雇い入れから2週間以内に雇用契約書など労働条件が確認できる書類と共に提出します。
トライアル雇用期間終了後、対象者の勤務実績や能力等から、企業が雇用継続の有無を判断します。 助成金を申請するタイミングや支給額については、この後の「トライアル雇用助成金とは」の項で詳しく解説します。
トライアル雇用と試用期間の違い
では、採用活動でよく行われる一般的な「試用期間」とはどのように違うのでしょうか。
企業が本採用の前に行う試用期間は、基本的に事業者側に採用の義務が生じます。試用期間であっても雇用契約が締結されるため、解雇の場合には正当な理由が必要となり、手続きも煩雑です。期間の長さは企業が自由に定められ、1~6カ月が一般的、最長でも1年程度のケースが多くなっています。
一方のトライアル雇用は、採用におけるミスマッチの防止も目的としていることから、事業者側に本採用の義務はありません。期間は原則3カ月と国が定めていることも、試用期間とは異なる点です。
また、構造上の違いもあります。企業が独自に行う試用期間は、人材の募集から雇用の手続きに至る、一連の採用活動を事業者自らが行います。トライアル雇用はハローワークや労働局といった公的機関と共に進めるもので、ハローワークは企業と求職者の仲介、労働局は助成金の手続きなどで関係します。
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トライアル雇用助成金とは

トライアル雇用助成金は、就職が困難な求職者を無期雇用契約へ移行することを前提に、トライアル雇用を行う事業者を助成する制度です。求職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的に設置されています。
方針が合致する企業は次に解説するポイントを確認しながら、活用を検討してください。
トライアル雇用助成金の種類

トライアル雇用助成金は、対象となる求職者によって種類が分類されています。主なものは、「一般トライアルコース」「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」です。
「一般トライアルコース」は、安定的な就職が困難な求職者に対するトライアル雇用の助成です。離職期間が長期にわたる人、妊娠・出産で職を離れた人などが対象となります。
「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」は、障害者を試行的・段階的に雇い入れるための助成です。このうち障害者トライアルコースは原則フルタイム、障害者短時間トライアルコースは週20時間以上の就業を目指す障害者が対象になっています。
そのほかにも、「若年・女性建設労働者トライアルコース」があり、35歳未満や女性を対象に、その入職促進に取り組む中小建設事業主に対して助成されます。「一般トライアルコース」「障害者トライアルコース」の支給が前提で、上乗せできる助成であるため、対象となる場合は併用しましょう。
コロナ禍の特例として、設置されていた「新型コロナウイルス感染症対応(短時間)トライアルコース」は、2023年3月31日限りで廃止となりました。要件や支給額が都度更新されているので、最新情報を随時チェックしてください。
トライアル雇用助成金の支給額

一般トライアルコースの助成金は、対象者を雇い入れた日から原則として1カ月単位で、最長3カ月間支給されます。支払いは対象期間中の月額合計がまとめて1回で支給される形で、1人あたりの上限は月額4万円です。3カ月間の実施で、1人につき最大12万円が支給されます。
ただし、対象者が母子家庭の母や父子家庭の父の場合は、1人あたり最大月額5万円となり、最大で1人あたり15万円が一括支給されます。対象者のトライアル雇用期間中における離職や正規雇用への移行によって、期間中の雇用期間が1カ月に満たない月がある場合、終了した日数から計算した金額が支給されます。
障害者トライアルコースの助成金は、障害の種類によって異なります。対象労働者が精神障害者の場合、6カ月間トライアル雇用の期間を設けられ、最初の3カ月間は月額最大8万円、その後の3カ月間は月額最大4万円。それ以外の場合は、月額最大4万円(最長3カ月間)が支給されます。
障害者短時間トライアルコースは、求職をする障害者が週20時間以上の就業が困難な場合に利用できます。まず週の所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、障害者の職場適応状況や体調などに応じて、トライアル雇用期間中に20時間以上とすることを目指していく形です。助成期間は最長12カ月で、支給金額は対象者1人あたり月額最大4万円となっています。
申請から受給までのプロセス
トライアル雇用の一般トライアルコースを申請し、助成金を受け取るまでのプロセスは以下のとおりです。
1. ハローワークトライアル雇用である旨を記入した求人票を提出
2. ハローワークから対象労働者の紹介を受け、各コースの期限に従って雇用する
3. トライアル雇用開始から2週間以内に、対象労働者を紹介した機関に「トライアル雇用実施計画書」を提出する
4. トライアル雇用終了日の翌日から2カ月以内に「トライアル雇用結果報告書」「トライアル雇用奨励金支給申請書」を労働局に提出する
5. 助成金を受給
ハローワークに求人を申請する際は、「トライアル雇用併用求人」を希望することで、一般求人とトライアル雇用の同時募集が可能です。経験者からの応募は一般求人、未経験者などの場合はトライアル雇用が用いられ、双方からの応募が期待できます。
助成金を受給するためには、トライアル雇用終了日の翌日から起算して2カ月以内に、事業所を管轄するハローワークまたは労働局に支給申請書を提出する必要があります。申請期限を過ぎると助成金を受給できなくなるので注意が必要です。

障害者トライアルコースの場合も基本的な流れは、上記1~5と同じです。2のタイミングで「障害者トライアル雇用等実施計画書」を、4のタイミングで「障害者トライアル雇用等結果報告書 兼 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース支給申請書」を、必要書類と共にハローワークもしくは労働局に提出します。

厚生労働省のWebサイトから、トライアル雇用助成金の申請様式、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)の申請様式をダウンロードできます。
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トライアル雇用助成金のコース別支給要件

トライアル雇用助成金の受給に関しては求職者側、事業者側の両方に要件があります。2つのコース別に、具体的に対象となる要件を見ていきましょう。
一般トライアルコースの支給要件
求職者側の要件は、対象者が「安定した職業に就いている者」「自営業者」「学校に在籍している者」などに該当しないこと、「紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職を繰り返している」「紹介日前において離職している期間が1年を超えている」などのいずれかに該当することなどです。
■求職者側の主な要件
① 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
② 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている※1
③ 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業※2に就いていない期間が1年を超えている
④ 55歳未満で、ハローワーク等で担当者制による個別支援を受けている
⑤ 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する※3
※1 パート・アルバイトなどを含め、一切の就労をしていないこと
※2 期間の定めのない労働契約を締結し、1週間の所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること
※3 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者
■紹介日時点で、次の方はトライアル雇用の対象者にはなりません。
- 安定した職業に就いている人
- 自ら事業を営んでいる人または役員に就いている人で、1週間当たりの実働時間が30時間以上の人
- 学校に在籍中で卒業していない人(卒業年度の1月1日以降も卒業後の就職の内定がない人は対象となります)
- 他の事業所でトライアル雇用期間中の人
出典:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内|厚生労働省
一方、事後者側の要件は、「ハローワーク・紹介事業者などの紹介により雇い入れること」や「1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同程度とすること」などがあげられます。要件を満たした対象者を、事業者側が以下の条件で雇い入れた場合、助成金を受給できます。
■事業者側の主な要件
①ハローワーク等の紹介により雇い入れること
②原則3カ月のトライアル雇用をすること
③1週間の所定労働時間が、通常の労働者の1週間の所定労働時間(30時間以上(※))と同じであること
※対象労働者が日雇労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者の場合は20時間以上
出典:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
障害者トライアルコースの支給要件
求職者側の要件は、主に2つです。
1つ目は、「継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者トライアル雇用制度を理解したうえで、障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している者」であること。
2つ目は、障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、「就労の経験のない職業に就くことを希望する」「紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある」「紹介日前において離職している期間が6月を超えている」「重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者」のいずれかに該当していることです。
■求職者側の主な要件
次の[1]と[2]の両方に該当する者であること
[1]継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者トライアル雇用制度を理解したうえで、障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している者
[2]障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のア~エのいずれかに該当する者
ア紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する者
イ紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある者
ウ紹介日前において離職している期間が6か月を超えている者
エ重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
一方、事業者側の要件は、「ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること」「トライアル雇用の期間について雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと」です。
■事業者側の主な要件
①ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
②障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
また、障害者短時間トライアルコースの求職者側の要件は、精神障害者または発達障害者で、「継続雇用を希望し、障害者短時間トライアル雇用による雇入れについても希望していること」「障害者短時間トライアル雇用制度を理解していること」。
事業者側の要件は、「ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること」「3カ月~12カ月間の短時間トライアル雇用をすること」になっています。
出典:障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース 主な受給要件|厚生労働省
トライアル雇用のメリット【企業側】

トライアル雇用は企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。主に以下のようなメリットが期待できます。
- 助成金が支給される
- ミスマッチを防げる
- 採用コストを抑えられる
具体的に見ていきましょう。
助成金が支給される
トライアル雇用の最大のメリットは、国から助成金が受け取れることです。先述のとおり、一定の要件を満たすことで、雇用する対象者の状況に応じた「トライアル雇用助成金」が支給されます。
助成金を活用して採用活動・組織づくりを進められるため、コストを抑えながら人材採用を図りたい企業にとっては有効な制度といえるでしょう。
ミスマッチを防げる
トライアル雇用では雇用期間中に対象者の適性を見極められるため、採用後のミスマッチを減らせます。ミスマッチが生じると、採用にかかる時間や人員などを消耗しますが、これらのリソースを削減・最適化できるため、経営面でのメリットも大きいでしょう。
また、有期雇用契約の期間である3カ月が経過した後、常用雇用に移行するかは企業側の判断に委ねられるので、対象者とマッチしなければそのまま契約終了することが可能です。試用期間と比べても契約解除が容易であることから、チャレンジングな採用活動も可能になります。
採用コストを抑えられる
リソースを削減できるのはミスマッチの防止だけではありません。トライアル雇用ではハローワークから条件と合致する人材の紹介を受けるため、事業者側は面接を行うだけで採用活動を進められ、通常の採用活動よりもスピーディーに人材を採用できるでしょう。
さらに、ハローワークを通じて採用活動を行うことから、求人の掲載費などはかからずコストは原則無料です。求人にかかるコストを削減できるうえ、条件を満たせば助成金が支給されるため、採用コストを抑えられます。
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トライアル雇用のデメリット【企業側】

一方、トライアル雇用にはデメリットもあります。主なものを2つご紹介しましょう。
- 助成金受給のリソースが必要
- 未経験人材の教育・育成が必要
助成金受給の作業リソースが必要
基本的な採用活動の手間やコストを削減できる一方で、助成金の受給には作業リソースが必要になります。
トライアル雇用助成金の申請に際する手続きやスケジュール管理、申請書、計画書、報告書といった書類を作成する必要があるほか、関連する専門知識も求められます。助成金関連全般を担当する人員を確保しておくことが必要になるでしょう。
未経験人材の教育・育成が必要
就職が困難な人を救うトライアル雇用では、求職者の多くが未経験です。通常の採用活動のように即戦力を見込むことは難しいと考えましょう。
また、ゼロからの教育が必要となるケースが多いため、人材育成が長期化し、育成コストも発生します。まずは自社に必要な人員を見定め、適切な手段を選択することが重要です。
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トライアル雇用のメリット・デメリット【求職者側】

次に、求職者の視点に立ち、トライアル雇用のメリットを見ていきます。求職者にとっては、主に以下のようなメリットが挙げられます。
- スキルや経験にとらわれずに応募できる
- 職場を事前に知ることができる
採用義務のないトライアル雇用は、企業側にしてみれば人材を受け入れるリスクが低いことが特徴です。つまり求職者は、期間中において通常の採用よりも受け入れられやすくなるため、積極的な応募が可能になります。書類選考ではなく面接で採用が判断されるうえ、スキルや経験が少ないことを企業側も承知しているため、就職のチャンスを広げられるでしょう。
トライアル雇用期間中、求職者は実際の仕事を体験し、職場環境を見られることもメリットです。業務や職場が自身に合っているかを事前に判断できるため、ミスマッチを防ぎやすくなります。
一方、求職者にとってのデメリットは、主に2つです。
- 不採用となる可能性がある
- 複数の企業には応募できない
トライアル雇用は無期雇用契約へ移行することが前提とはいえ、採用事業者側に採用の義務はありません。そのため、期間終了後に不採用となる可能性があることを念頭に置かなければなりません。不採用となると解雇という職歴が残るため、その後のキャリアにも影響します。
また、トライアル雇用期間中に身につけたスキルも、別の企業では使用しない場合もあるため、次に生かせないケースもあります。トライアル雇用を利用して求職活動をするかどうかは、慎重に判断しなければなりません。
複数の企業に応募できないことも、通常の求職活動との違いです。トライアル雇用期間に入ると他社との比較検討ができなくなるため、事前リサーチによる企業の吟味が重視されます。
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トライアル雇用における注意点

実際にトライアル雇用を活用する場合、どのような点に注意が必要になるのでしょうか。
期間終了後、企業側に採用の義務はないものの、不義理な解雇はトラブルに発展する可能性があります。対象者に対し雇用終了時の理由について、十分な説明をすることが重要です。
条件によって助成金の支給額が減額になったり、利用の対象外になったりする場合もあるので、事前にポイントを把握しておきましょう。
助成金の減額対象になる条件
トライアル雇用助成金は、一定の条件に合致すると減額される可能性があります。まず、以下の理由によってトライアル雇用期間が1カ月に満たない月が生じた場合は、減額の対象になってしまいます。
- 支給対象者に故意の過失がある場合
- 本人都合による退職
- 本人の死亡
- 天災など、やむを得ない理由によって事業が継続できなくなったことによる解雇
- 常用雇用に切り替わった場合
これらの場合は、離職日までにおける実際の勤務日数に応じて、支給額が算出されます。また、休暇や休業が予定された就労日の75%を下回る場合も減額の対象となるため、注意しましょう。
制度利用の対象外になる条件
トライアル雇用については、制度利用の対象外となるケースもあるため、事前に確認しましょう。
まず、派遣求人や法令に違反する求人はトライアル雇用の対象外となります。またハローワークなど求人を出す機関の求人規定も満たさなければなりません。
その他、過去5年間において不正などで助成金が取り消しとなった企業も、トライアル雇用の対象外となります。以下は、厚生労働省が公表している「受給できない事業主」であり、1~9のいずれかに該当した場合、助成金は受給できないとしています。詳しくは厚生労働省のWebサイトから確認しましょう。
【受給できない事業主】
- 不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けた場合、当該不支給決定日又は支給決定取消日から5年を経過していない事業主
- 申請事業主の役員等に他の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる場合
- 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
- 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主
- 事業主又は事業主の役員等が、暴力団と関わりのある場合
- 事業主又は事業主の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れのある団体に属している場合
- 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
- 不正受給が発覚した際に都道府県労働局等が実施する事業主名及び役員名(不正に関与した役員に限る)等の公表について、あらかじめ承諾していない事業主
他の助成金との兼ね合い
トライアル雇用助成金は、雇用関係助成金の中でも受給しやすい制度の1つといえ、手続きも比較的簡易です。しかし、その分金額は少なく、同一の対象者の場合にも他の正社員化・教育の雇用関係助成金を受けられなくなる可能性もあるので、ほかの助成金と比較検討したうえで選択する必要があるでしょう。
例えば、類似する「特定求職者雇用開発助成金」との併給は可能ですが、その一期分とトライアル雇用助成金のどちらかを選択しなければならないなど、各助成金にルールがあるのでチェックしてください。
参考書籍:雇用関係助成金 明晰会 『9訂版 雇用関係助成金申請・手続マニュアル』日本法令、p232
トライアル雇用の活用事例

最後に、厚生労働省のWebサイトに掲載される、トライアル雇用の活用事例を紹介します。
【事例1】
畜産食料品製造を営む事業所では、障害者雇用の経験がなく、雇い入れに対し漠然とした不安を抱えていました。そこで障害者トライアル雇用を活用し、運動失調症状を抱える40代の男性を雇ったところ、労働能力を間近で確認できたため、継続雇用に至ったそうです。
本件では、障害者就業・生活支援センターなどのサポートにより受け入れ環境の整備などが進められ、事業者が段階的に作業の習熟度合いを確認することで、不安を払拭(ふっしょく)できたとされています。
【事例2】
過去に障害者を雇用し、短期間で離職してしまった経験を持つ、設備工事業を営む事業所では、障害者トライアル雇用を活用して広汎性発達障害を抱える20代の男性を採用。
対人関係や職場ルールの理解が不十分であったものの、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用することで、職場への定着を促進し、継続雇用を実現しました。継続雇用後もジョブコーチが事業所を訪問し、男性を支援しています。
このように、障害者雇用のノウハウに不安を抱えるケースでも、外部機関のサポートを併用することで、人材の確保を実現した企業は多いようです。
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困ったときに、「採用課題」から「解決策」を探せる

採用計画は立てたけれど「思うように応募がこない」「スカウトしても返信がこない」。そんな課題に直面している方は必見。
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