スキルを可視化する人事評価シートとは? 人材育成に人事評価を生かすポイント

人事評価シートとは? 評価シートを使った人材育成のポイントを解説

「評価シート」の活用は、人材を育てるうえで重要な要素です。一方、評価シートを導入したものの、期待する効果を得られていないという問題を抱えている企業も少なくないでしょう。この記事では、人事評価シートの概要や、評価シートを使った人材育成のポイント・注意点をご紹介します。

 

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1. 人材育成の目安となる「評価シート」とは

人材育成の目安となる「評価シート」とは

人材育成は、どの社員にも一律に研修を行えば同じ効果が上がるものではありません。個人の業務内容に応じたスキルを把握し、現時点で被評価者がどの程度習得できているのかを記録していくことが重要です。評価シートで能力を可視化することで、社内で働く人々の実践的なスキル向上にもつながります。ここでは、人材育成の目安となる評価シートの概要や構成を紹介します。

1-1. 厚生労働省の「職業能力評価基準」の概要

組織において、経験や引き継ぎに頼らない人材育成システムが重要であると認識していても、適切な人材育成システムを構築できていない企業は少なくありません。その問題を解決するために、厚生労働省では「職業能力評価基準」を設け、その基準を参考にした「職業能力評価シート」「キャリアマップ」を提示しています。

職業能力評価基準は、厚生労働省により「仕事をこなすために必要な『知識』と『技術・技能』に加えて『成果につながる職務行動例(職務遂行能力)』を、業種別、職種・職務別に整理したもの」とされています。この基準は、採用や人材育成、人事評価など、さまざまな場面で活用でき、客観的な評価を行うための基本となります。評価基準が明確なため、人材評価や人材育成制度の構築における有用な参考資料となるでしょう。

職業能力評価シートは、この基準を核とした人材育成システムであり、人材の能力レベルを把握・評価する際の活用が期待できます。また、キャリアマップを活用し、人材の能力開発における道筋を示すことも非常に有効です。自社独自の人材育成システムを構築することが難しくとも、この2つのツールを活用すれば業務内容に応じた人材育成が可能となるでしょう。

1-2. 職業能力評価シートの構成

職業能力評価シートは、チェック形式で人材の能力レベルや課題を把握できる仕組みです。職業能力評価基準では、業種ごとの仕事内容を「職種→職務→能力ユニット→能力細目」の順番で細分化しています。企業が人材に期待する責任や役割の範囲、職務の難度によって4つの能力段階が設定されており、それを「レベル区分」といいます。

職業能力評価基準では、業務の効率化に必要な職業単位を活動単位ごとにくくった「能力ユニット」という考え方が適用されています。能力ユニットは、職種に共通して求められる能力に関する「共通能力ユニット」と、各職務の遂行のために固有に求められる能力に関する「選択能力ユニット」の2種類に分けられています。その内容をさらに細分化したものが「能力細目」です。能力細目は、能力ユニットを細分化し、作業単位でまとめた能力の要素を指します。各項目にはサブツールとして「業務遂行のための基準」と「必要な知識」が設定されています。

【参考】職業能力評価基準の構成(厚生労働省)

1-3. 評価シートを利用した評価の流れ

評価シートを利用した評価は4つのステップで行います。1ステップ目は被評価者の職種・職務とレベルの特定です。職業評価シートの表紙やキャリアマップを参考に、その人材がどのレベルの職務を行っているのか、上司と相談したうえでレベルを特定します。職業能力評価シートに該当する職務の呼称がない場合は、行っている職務内容からレベルを決定します。たとえば、ホテル業で料飲課長という職務を行っているのであれば、その職務が職業能力評価シートにおけるマネージャーに該当するのかどうかを精査する必要があるでしょう。

2ステップ目は、自己評価の実施です。能力細目ごとに、〇、△、×の3段階で、被評価者本人が自己評価を行います。評価の基準は、〇は一人で業務を行うことができ、下位者への指導が可能なレベル、△はほぼ一人で業務ができ、一部において上位者や周囲の助けを必要とするレベル、×は一人で業務を行えず、常に上位者や周囲の助けを必要とするレベルの3段階です。3段階は、上司による評価の実施です。自己評価と同様に、3ステップ目で上司が評価を記入し、4ステップ目として上司による評価のポイントや理由などのコメント記載をします。

この一連の流れにより、被評価者は現時点での自分の業務能力を知ることができ、客観的な意見を仰ぐことも可能になります。

2. 評価シートを使った人材育成のポイント

評価シートを使った人材育成のポイント

人事評価制度は、肩書きや給料などの処遇を決定するための判断材料として使われることもあります。しかし、活用目的はそれだけではありません。人事評価制度は、人材育成と企業の業績向上に大きな役割を果たします。もちろん、人事評価が処遇に反映されなければ、社員はレベルアップするモチベーションを失ってしまう可能性もあるでしょう。評価基準に対する達成度に応じた処遇を与えることが必要です。ここでは、人材育成における人事評価制度の活用方法と活用のポイントを紹介します。

2-1. 社員それぞれの成長につながる目標を設定する

社員の成長には、具体的な目標と知識の習得、成功や失敗を含めた多様な経験をすることが欠かせません。人事評価では、そのことを深く理解し、企業と社員の双方にとってメリットが見込める目標を設定することが必要になります。たとえば「企業への貢献度を感じられる具体的な目標」「レベルアップへのチャレンジ精神や意欲を育むための目標」「本人が望むキャリアアップのための目標」などが挙げられるでしょう。

企業は業績を維持していかなければ成り立ちません。しかし「社員はそのための単なる労働力」という認識でいては、人材育成は成功しません。それぞれに合った目標がなければ一人一人のレベルは向上しないかもしれません。これでは会社の業績向上も期待できないばかりか、人材が定着しない事態を招いてしまいます。社員自身が仕事へのモチベーションを維持・向上できるよう、適切な目標を設定することが大切です。目標設定をしたら、達成に向けて、中間面接などを通じてコミュニケーションをとり、フォローを欠かさないことも重要です。

2-2. 被評価者が納得できる評価方法にする

社員は自分の評価を受け入れるにあたって、どのような点が評価されたのか、評価者の主観や私情による評価ではなかったか、などの疑念を抱くこともあります。一度生まれた疑念は、簡単に払しょくできるものではなく、評価者への不信感にもつながるおそれがあるため、注意が必要です。人事評価にあたっては、評価される側が納得する評価方法にすることが重要になります。

評価シートでの自己評価と上司評価に違いがあった場合は、なぜその評価に至ったのか、お互いに具体的な行動例を示し、理由を明確にしましょう。評価に正解はありません。フィードバック面談などで評価の理由を共有することが大切です。上司からの一方的な評価が先行し、認識の共有ができないと、人材の定着率低下を招くこともあります。企業側は、人を評価する責任の重さを十分に認識し、明確な目標達成基準の設定や、公平・公正かつ客観的な評価を行うことが重要です。

2-3. 評価内容に根拠を持たせる

根拠のない評価をすると、被評価者からの信頼を失うこともあります。評価の根拠は、お互いの信頼関係を維持するために非常に重要であり、必ず明示する必要があるものだと認識しましょう。

そもそも人が人を評価することに、完璧な正解はありません。だからこそ、事前に評価基準を定めておくことが重要なのです。定められた評価基準を遵守することで「人材育成を目的とした評価」が実現するでしょう。

 

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3. 評価シートを活用する際の2つの注意点

評価シートを活用する際の2つの注意点

評価システムの基準は、客観的な人事評価を行ううえで非常に有効です。一方、評価シートの項目のみで人材を評価すると、さまざまな弊害が起こる可能性もあります。評価システムはあくまでツールであり、人材育成における絶対的な指標ではありません。効率的かつ公正に人材育成を進めるためにも、評価シートを活用する際に必ず押さえておきたい注意点を2つ紹介します。

3-1. モチベーションを下げるような評価は避ける

能力開発は本人のモチベーションなしには実現できません。モチベーションを下げるような評価を続けていけば、結果として人材育成は失敗してしまうでしょう。目標は社員にプレッシャーやノルマを与えるためのものではなく、成長を促すための指標です。そのため、無理難題を目標として提案したり、できないことや欠点を羅列したりするような評価は避ける必要があります。

望ましいのは、社員の成果や成長に着目し、レベルが上がっていることを可視化できる評価です。評価と人材育成がリンクすれば成長するための課題を自ら見出していくことが期待できるでしょう。

3-2. フィードバックや情報共有をおろそかにしない

人事評価は、評価すること自体が目的ではなく、その後のフィードバックを行ってはじめて効果があるものです。フィードバックにおいては、対象者から評価内容について質問を受けることもあります。被評価者にとって評価内容が個人への攻撃のように感じられる場合は、不満や不安が募るものです。それを防ぐためにも、社内での認識や情報の共有を徹底することが大前提となります。各部署の現状や改善点を、企業全体で目的意識として持っていれば、それに則した評価がされるようになるでしょう。また「あの部署の評価は甘い」「自分の部署の評価は厳しい」といった評価基準のぶれも防ぐことができます。

また企業は、評価される側だけでなく、評価する側にとっても評価とは精神的な負担を伴うものであることを認識する必要があります。たとえ業務の一部だとしても、人を評価することには多大な責任が伴うものです。企業は、評価者に対する教育や支援を行うことを忘れてはなりません。

4. 適切な評価で人材の成長をサポートしよう

適切な評価で人材の成長をサポートしよう

厚生労働省の「職業能力評価基準」を核とした評価シートは、現状の人事評価に問題を抱えている企業はもとより、評価制度の見直しをする際にも有効なツールです。また、採用活動で人材の能力をチェックする際にも役立ちます。人材育成は企業の業績向上における重要な課題です。職業能力評価シートを活用して適切な評価を行い、人材の成長をサポートしていくとよいでしょう。

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