IT業界は慢性的な人手不足に陥っており、優秀なITエンジニアの採用に苦戦している企業も少なくありません。そのようななかで、企業は採用力を高めるために従来とは異なるアプローチや採用手法を模索しています。
人材採用にはさまざまな方法がありますが、特にITエンジニアの採用にあたって有効なのが「エンジニア人材紹介会社」の活用です。
本記事では、エンジニア採用市場の最新動向に触れ、エンジニア人材紹介会社ではどういったサービスを提供しているのかを紹介します。また、エンジニア人材紹介会社を利用するメリット・デメリット、気になる費用相場や会社選びのポイントのほか、採用を成功させるために押さえておきたいコツも詳しく解説します。
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エンジニア採用市場の最新動向

日本ではさまざまな業種で人手不足に陥っており、企業の求人数が多く、求職者が少ない売り手市場が続いています。
厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況」(令和4年9月分)によると、プログラムの開発、構築されたシステムの管理などを行う情報処理・通信技術者の新規求人倍率は3.56倍(パートを除く)。職業計の新規求人倍率、2.24倍(同)よりも高くなっており、企業にとっては優秀なエンジニアの採用が難しい状況にあります。
従来、ITエンジニアといえばIT企業からの需要が中心でしたが、現在ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えたこともあり、IT以外の業種においてもクラウドシステムやAIに強いエンジニアの需要が高まっています。
IT業界は特に技術の進歩が早いこともあり、今後もさまざまな次世代の技術が続々と登場してくる可能性は高いでしょう。それに合わせて、エンジニア採用はさらに売り手市場になっていくと考えられ、エンジニア人材紹介会社が注目されています。
ちなみに、ITエンジニアのなかには企業や組織に属さない「フリーランス」として働く人材も少なくありません。IT業界は学歴や年齢、性別などを問わず実力主義の傾向が強く、優秀なITエンジニアほどフリーランスとして独立するケースが見られます。働き方改革や副業の広がりから今後、フリーランス人口が増える可能性も考えられるでしょう。
エンジニア人材紹介会社とは

人手不足の状況下で注目されているエンジニア人材紹介会社とは、どういった仕組みで運営されているのでしょうか。混同しやすい人材派遣会社との違いもあわせて詳しく解説します。
エンジニア人材紹介会社の仕組み
エンジニア人材紹介会社は、人材紹介会社のうちのひとつで、その名の通りエンジニアの採用に特化しています。厚生労働大臣から許可を受けた「有料職業紹介事業者」に分類されます。自社に登録された求職者を企業へ紹介し、企業から紹介手数料を得るというビジネスモデルで運営されているのが特徴です。
人材紹介会社と人材紹介を受ける企業との間では、人材紹介契約が締結されていることが前提となります。求職者と企業との間で雇用契約が成立すれば、採用した企業からエンジニア人材紹介会社に対して紹介手数料が支払われます。

ただし、高度なスキルをもった専門人材や役員クラスなどを紹介する場合には、紹介手数料とは別に着手金が支払われるケースもあるようです。
人材派遣会社との違い
人材派遣会社とは、厚生労働大臣から許可を得た「労働者派遣事業」を行う会社のことを指します。
エンジニア人材紹介会社と人材派遣会社との最大の違いは、求職者がどこと雇用契約を締結するのか、という点にあるでしょう。
エンジニア人材紹介会社の場合は、紹介先企業と求職者が直接雇用契約を結びますが、人材派遣会社は紹介先企業ではなく、人材派遣会社が雇用主となって求職者と雇用契約を結びます。
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エンジニア人材紹介会社の費用相場

エンジニア人材紹介会社からの紹介で採用が決まった場合、紹介手数料の相場としては初年度理論年収の30~35%程度とされています。ただし、高度なスキルと実務経験をもったプロフェッショナル人材や、役員クラスの人材ともなると35%以上の紹介手数料がかかる場合も少なくありません。
なお、理論年収とは、給与12カ月分に加えて残業代などの諸手当、賞与などが含まれたもの(通勤手当・出張手当などは除く)を指します。たとえば、理論年収500万円の人材を新たに採用した場合、紹介手数料35%と想定すると175万円程度を紹介手数料として支払う計算になります。職業安定法にもとづき、紹介手数料の割合は自由に定めることができますが、50%以上は慣行として開業の許可がおりないとされています。
エンジニア人材紹介会社を利用するメリット

エンジニア人材紹介会社を利用して採用する場合、どういったメリットがあるのでしょうか。主な4つのポイントを紹介します。
自社が求める人材を見つけやすい
売り手市場が続くなかで、専門的なスキルを持ち需要が高まっているITエンジニアを自社で募集しても、なかなか条件にマッチした人材からエントリーが集まるとは限りません。
エンジニア人材紹介会社には多数のITエンジニアが登録されており、必須スキルなどの条件に合った求職者を人材紹介会社が紹介してくれるため、求める条件が高いほど、エンジニア人材紹介会社を利用するメリットが高まるといえるでしょう。
さらに、エンジニア人材紹介会社を利用すれば一から母集団を形成する必要がないため、紹介までが早く、採用がスピーディーに決まる可能性が高まることも大きなメリットです。たとえば、急な欠員が出たため穴埋めができる人材が欲しい場合などでも対応できるでしょう。
採用活動の工数を削減できる
自社で採用活動を行う場合、できるだけ多くのエントリーを集めて母集団を形成し、書類選考や面接、内定出しなどを行わなくてはなりません。
多くのITエンジニアを一度に採用するケースでは、書類選考や面接だけでも多くの工数を要し、人事部門の担当者だけでは回らなくなることもあるでしょう。
エンジニア人材紹介会社では、以下のような採用業務も委託できます。
- 求人の作成
- 求職者の人選・推薦
- 面接日程の調整
- 求職者への合否連絡
- 給与などの条件交渉
特に多くの工数を要する業務を委託することにより、人事担当者が直接選考に関わる面接などに集中でき、採用活動をスムーズに行えるようになります。
募集までの時間を短縮できる
求人募集の代表的な方法・手段として求人サイトへの掲載があります。しかし、求人サイトを利用する場合には、求人情報の原稿を自社で作成することはもちろん、求人ページへ掲載する画像などの素材も用意しなければなりません。
そのため、求人募集に慣れていない企業にとっては準備に多くの時間を要し、原稿の修正などの手間もかかってしまいます。
エンジニア人材紹介会社を利用すれば、求人内容に関するヒアリングや、求人を送付するだけで求職者を紹介してくれるなど、募集までの時間を大幅に短縮できるメリットがあります。
初期費用がかからない
エンジニア人材紹介会社を利用する場合、初年度理論年収の30~35%程度の紹介手数料を支払うと紹介しましたが、手数料が発生するのは採用に至った場合に限られます。
エンジニア人材紹介会社の多くは採用が決定した場合に紹介手数料を支払う成功報酬型を取り入れているため、仮に紹介された求職者が万が一採用に至らなかった場合には手数料が請求されないケースがほとんどです。このような成功報酬型の場合は初期費用がかからず、リスクを抑えて運用ができるでしょう。
ただし、採用したい人材のスキルや要件が高く、個別にヘッドハンティングやスカウトをしなければアプローチできない場合には、例外として着手金が請求されるケースもあるため注意が必要です。
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エンジニア人材紹介会社を利用するデメリット

メリットの半面、エンジニア人材紹介会社にはさまざまなデメリットがあることも事実です。利用する前段階で押さえておきたい2つのポイントを紹介しましょう。
成功報酬が高額
エンジニア人材紹介会社からの紹介を受けて採用が決まった場合、成功報酬は初年度理論年収の30~35%程度と高額です。採用条件にもよりますが、社員1人あたりの採用コストは100万円単位となることも少なくありません。
そのため、複数のITエンジニアを採用するとなると、人数分の成功報酬を支払わなければならないため、採用コストが高額になることがあり大量採用には不向きといえるでしょう。
エンジニア人材紹介会社だけに頼るのではなく、求人サイトなど複数の採用チャネルを組み合わせることが重要です。
自社に採用ノウハウが蓄積されない
エンジニア人材紹介会社には母集団の形成から書類選考、面接日程の調整、内定出しに至るまで、一連の採用プロセスを委託できます。
採用にかかる工数を削減できる半面、人材紹介会社へ採用プロセスを任せきりにしてしまうと自社に採用ノウハウが蓄積されないといったデメリットも考えられます。そのため、あくまでも採用主体は自社であることを念頭に置くことが重要といえるでしょう。
たとえば、採用計画の立案は自社で行い、母集団の形成について人材紹介会社からアドバイスをもらうなど、自社でできることは自社が主体となって取り組み、ノウハウを蓄積していく姿勢が求められます。
エンジニア人材紹介会社を選ぶ際のポイント

さまざまなエンジニア人材紹介会社があるなかで、どういった基準をもとに依頼先を選べばよいのでしょうか。特に押さえておきたい4つのポイントを紹介します。
登録者数や求人内容の傾向を把握する
はじめに、エンジニア人材紹介会社に登録されている求職者の数や、公開されている求人内容を確認しておきましょう。求職者の数が多ければ多いほど、自社にマッチした求職者を紹介してもらえる期待が高まるためです。
また、エンジニア人材紹介会社のなかには複数の業種に対応した企業も存在します。ひとくちにIT業界といっても、システム開発やネットワーク、セキュリティ、Web、ゲームなど業種は多様です。エンジニアについても、システムエンジニア、ネットワークエンジニア、サーバーエンジニア、データベースエンジニアなど、専門分野が分かれています。
業種に特化した人材紹介会社を選び、求人内容を細かく指定することで自社が求めるエンジニアに巡り会える可能性が高まるでしょう。
報酬体系や仕組みを把握する
エンジニア人材紹介会社の多くは、成功報酬型の報酬体系をとっています。
費用相場の項目でも解説した通り、理論年収の30~35%が相場となっていますが、高度なスキルと実務経験を備えた人材の採用ともなるとヘッドハンティングやスカウトが必要な場合もあり、それ以上の費用がかかることも少なくありません。成功報酬とは別に前金や着手金として初期費用が請求されるケースもあります。
エンジニア人材紹介会社へ支払う報酬は高額であるため、どのような報酬体系をとっているか、仕組みを事前に把握し、認識違いやトラブルが起きないように注意する必要があります。
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これまでの実績を確認する
エンジニア人材紹介会社のなかには、これまでの取引社数や紹介人数、利用者の満足度など、さまざまな実績がWebサイト上に公開されているところもあります。過去の実績をもとに信頼性を検討し、依頼できるかどうかを確認することも重要なポイントといえるでしょう。
また、実際にエンジニア人材紹介会社を利用して転職に成功した事例を紹介しているサイトも少なくありません。転職成功事例は、どういった求職者がどういった企業へ転職したのか細かく記載されているため、紹介してもらえる求職者が自社で求めている人物像に近いか参考にすることができるはずです。
複数のエンジニア人材紹介会社を比較する
エンジニア人材紹介会社によっても、登録されている求職者の傾向が異なる場合があります。たとえば、20代・30代の若年層が多く登録している人材紹介会社もあれば、30代・40代またはそれ以上の経験豊富な人材が多く登録されている人材紹介会社も存在します。
また、全国各地に求職者が点在しているケースもあれば、首都圏など都市部に集中している人材紹介会社もあるなど、それぞれ特徴が異なります。
自社が求める人材が多く登録されているか、これまでの実績を確認するなどして、複数の人材紹介会社を比較しながら検討しましょう。
エンジニア採用を成功させるためのコツ

エンジニア人材紹介会社を利用することは、採用力を強化するためのひとつの方法といえますが、採用業務を委託したからといって、採用活動が成功するとは限りません。
エンジニア採用を成功させるためには、どういったポイントに注意すべきなのでしょうか。企業が意識すべき4つのコツを紹介します。
採用の目的を明確化
そもそもなぜ採用活動を行うのか、その目的を明確化することが重要です。
たとえば、新規プロジェクトのスタートにあたって専門スキルをもった人材が必要なケースもあれば、通常業務を行ううえで人手が不足しているケースもあるでしょう。
採用目的によっても求める人材のスキルレベルは異なるため、まずは目的を明確化することがエンジニア採用を成功させるための第一歩となります。
求めるスキルレベルの確認
採用目的に応じて、どういったスキルが求められるのかを確認しておきます。
たとえば、通常業務を任せたい人材の採用が目的であれば、必ずしも高度なスキルが要求されるとは限りません。ほかの社員のサポートを受けながら戦力として育成していくこともできるでしょう。
一方で、新規プロジェクトの立ち上げなどにあたって、自社にないノウハウを得ることが目的であれば、高度な専門スキルと実務経験が必須となるでしょう。人材に求めるスキルレベルを明確化させることが大切です。
ペルソナの設計
採用活動におけるペルソナとは、具体的な人物像のことを指します。採用ペルソナともよばれ、求める人材に合わせた架空の人物像をつくり細かな要件やプロフィールを設定します。
たとえば、性別や居住地、年齢、出身校、職歴、保有資格、趣味、特技などを具体的に設定し、採用したい理想の人物像をつくります。
採用ペルソナが詳細に設定されていれば、それに照らし合わせて採用可否の参考とすることができ、採用のミスマッチを防げるほか、選考もスムーズに進められるでしょう。
待遇や条件の検討
ITエンジニアの新規求人倍率は高く売り手市場であり、給与や賞与、休日日数、各種手当、福利厚生などの待遇面が他社と比較されやすい傾向にあります。自社の待遇面が求職者にとって魅力的な待遇・条件となっているかを見直しましょう。
テレワークやフレックスタイム制、副業の可否などを重視する求職者も増えているため、改善の余地がないかを検討するのも具体的な方法のひとつです。
利用時によくあるトラブル例と予防法

エンジニア人材紹介会社へ人材の紹介などを依頼したものの、実際に利用するとさまざまなトラブルに発展するケースも少なくありません。
どういったトラブル例があるのか、またそれを予防するためのポイントも併せて解説します。
内定辞退や早期退職があった
エンジニア人材紹介会社からの紹介を受けて採用を決定したものの、内定後に辞退される、または入社して間もなく退職に至るケースもあります。企業にとっては採用コストがそのまま損失となってしまうほか、一から採用活動をスタートしなければなりません。
このような内定辞退や早期退職の原因は、求職者がイメージしていた仕事内容や社風と齟齬があったという場合が少なくありません。
これを防ぐためにも、エンジニア人材紹介会社を利用する際には求める人材の要件をしっかりすり合わせることが大切です。また、返金保証などについても確認しておきましょう。エンジニア人材紹介会社によっては、入社後数カ月以内の退職や内定辞退であれば返金に応じてもらえるケースや、ほかの求職者を紹介してもらえる場合もあるようです。
人材要件にマッチしない求職者を紹介された
エンジニア人材紹介会社から、希望条件にマッチしない求職者を紹介されるケースです。
たとえば、「プログラミング経験3年以上」という条件を出していたのに、実際には1年未満しか経験がなくスキルに乏しかったというケースもあります。
このような場合、人材紹介会社へ必ずしも賠償を求められるとは限らず、個別の交渉が必要となります。トラブルを未然に防ぐためにも、まずは明確な人材要件を決めたうえで人材紹介会社と共通の認識をもっておくことが重要です。
高額な手数料を請求された
エンジニア人材紹介会社から高額な手数料が請求されるケースです。
人材紹介会社は手数料の条件について事前に提示し、企業が合意のうえで契約をしているケースがほとんどのため、こういったトラブルは少ない傾向にありますが、利用規約について詳しい説明がないケースも考えられます。
実際に高額な手数料が請求されトラブルになった事例もあるので、支払時になってもめないように、まずは契約時に手数料の支払い条件や金額を詳しく確認しておきましょう。
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エンジニア人材紹介会社をうまく活用し、採用を成功に導こう

エンジニア採用に苦戦している企業にとって、エンジニア人材紹介会社は母集団の形成から選考・採用業務まで委託できるため、心強い味方となってくれる存在です。また、多数のITエンジニアが登録されているため自社が求める人材を見つけやすいほか、求人サイトやハローワークなどではアプローチできなかった求職者に対しても、効率的なアプローチができます。
しかし、エンジニア人材紹介会社にすべてを任せきりにしてしまうと自社に採用ノウハウが蓄積されないことも事実です。自社の担当者が積極的に採用プロセスへ関与し、求職者を見極めることが重要となります。
本記事で紹介したエンジニア採用を成功させるためのコツなどを参考にして、エンジニア人材紹介会社をうまく活用しながら採用力を高めていきましょう。
押さえておきたい「ITエンジニア採用の知識」

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