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人材獲得競争の激化が叫ばれる中、アメリカ系企業を中心にタレント・アクイジション(Talent Acquisition:タレント人材獲得)という組織・役割を見かける機会が増えてきました。
人材獲得、特に有能な人材(タレント人材)の獲得というのは、今や日本でもめずらしいことではなく、同業種間ではもちろん異業種間での奪い合いにも発展しています。
例えばIoTに関わる技術者は様々な製造業で必要とされるだけでなく、IoT技術を用いたあらゆるサービスの事業者においても必要な人材として求められるように、タレント人材の獲得こそが、新しく事業を起こし、拡大させていくために必要不可欠となっており、タレント人材の獲得失敗によってビジネスチャンスを逃すことも起きています。
海外の文献や実際にその組織・役割を持つ企業の活動をもとに、そもそもタレント・アクイジションとは何か、なぜ作られ、どのような役割を果たしているのかを3回(前編/中編/後編)にわたってご紹介します。
タレント・アクイジション(Talent Acquisition)の定義
本記事では今回、タレント・アクイジションを調査するにあたり、下記のように定義を行いました。
タレント人材を獲得するために、採用広報や選考・採用(リクルートメント)といった従来の採用活動に加え、戦略立案、タレント人材の分析や定義、採用ブランドの構築、潜在層へのアプローチ・引きつけなどのタレント人材発掘(ソーシング)、採用後の定着(オンボーディング)と、より広範な採用活動を行う。
採用に直接・間接的に関わる、かなり広範な役割が定義されていますが、実際にすべてを実施している企業はまだ多くありません。それには、次の要因があります。
- タレント・アクイジション自体がまだ新しく、進化し続けている
- 役割が広範になるにしたがい、必要な人員数も多くなってくるが、そこまで人を割くことができない(優先順位・コストの問題)
- 役割が既存組織と重複することもあり、その場合、その組織に役割を担ってもらうことが多い
すべての内容を実施する必要はありませんが、現状の活動や採用に与えるそれぞれの活動と比較することで、既存の採用組織の在り方を考えるきっかけになるでしょう。
それではなぜ、今まで使ってきた「採用」ではなくタレント・アクイジションなのか、タレント・アクイジションの変遷から確認していきます。
タレント・アクイジションはどのように変わってきたのか
企業が正式にタレント・アクイジションの組織を作り、活動を始めたのは、Human Resource Management誌におけるルーセントテクノロジーのタレント・アクイジションについての論文(Curtis R et al., 1999)でした。
また「Talent」という言葉が脚光を浴びるきっかけとなったのは、 柿沼英樹(2015)によれば、有能な人材(タレント人材)の確保の重要性を強調した「The War for Talent」(Michael Williams et al., 2000)であり、その後2000年代を通じて多くの論考が蓄積されました。つまり、1990年代後半から萌芽があったということになります。なお、このころは社内(内部)のタレント人材の発掘を中心に実施されていました。
【タレント・アクイジションの変遷】
1995年前後 | 人材獲得競争の激化 | 1997年に調査が開始されたマッキンゼーによる「The War for Talent」(2000年刊行)よって人材獲得競争が明らかになった。併せて、タレントマネジメントが起こり始めてきた。1994年創業のmonster.comに代表されるインターネットを活用した採用活動が始まる。 |
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2000年前後 | 内部を含めた人材獲得 | Talent Acquisitionは1999年にはルーセントテクノロジーに存在。内部・外部双方の人材配置として生み出された。 |
2005年前後 | タレントマネジメントシステムの進展 | ERP企業がタレントマネジメントシステムを取り込み始めるものと合わせて、ERP企業を中心に外部調達のTalent Acquisition組織が広がる。LinkedIn (2003年創立)が欧米で利用され始める。 |
2010年前後 | 人事大変革の影響 採用の中枢化 |
人事組織の変革が並行で進む。人材獲得が中枢になり、人事中核組織のCoE(Center of Excellence / Expertise)に位置づけられる。 |
2015年前後 | HR Technology 採用手法の進化 |
より人材獲得競争は激化。ダイレクトソーシング・リファラル採用(リファーラル採用)といった採用手法の広がり、加えて、採用管理・入社後定着支援などのHR Technologyが様々起こり、よりマーケティング能力、テクノロジー・リテラシーが重要になる。 |
2005年前後になると、西海岸の企業やERP企業を中心にタレント・アクイジションという組織が出てきます。これはIT分野のタレント人材の獲得競争が激しくなるとともに、タレントマネジメントシステムがERPに組み込まれ始めたことから生まれたものと推測されます。また、このころには、インターネットでの採用活動が拡大してきました。つまり、採用手法の大きな転換がインターネットによって始まった時期ということになります。
2010年前後には、人事大変革(HR Transformation)が起こり始めます。これは、今までオペレーティブだった人事が、より経営に貢献できる組織に変わっていくものでした。その際に採用組織は、人事の中核組織(CoE)に位置づけられることになりました。加えてこのころには、タレントマネジメントについてもCappeli(2008)に代表されるような書籍が出てきており、ビジネス界においては、一定の蓄積が始まったといえます。
そしてここ最近は、リファラル採用やHR Technologyという言葉に代表されるような、新しい採用手法への対応が必要となってきています。こうした変遷を踏まえ、今採用組織にどのようなことが求められ、そしてなぜタレント・アクイジションが求められるようになったのかを確認します。
タレント・アクイジションが求められる環境要因
タレント・アクイジションが求められる環境要因は次の4つに整理されます。
- タレント人材の重要性の向上
- タレント人材獲得競争に対応するための採用力強化
- コストの増加
- 新しい採用手法の登場
1: タレント人材の重要性の向上
前述の「The War for Talent」でも指摘されていたように、タレント人材の重要性が向上したことが要因としてあります。これは、ITの分野では顕著で、1人のタレント人材が生み出す成果が大きな影響を与える知識産業化が進むとともに、産業構造・ビジネスモデルの変化やグローバル・ボーダーレス化による競争の激化、さらにその状況に対応するタレント人材が必要になったためといえるでしょう。
2: タレント人材獲得競争に対応するための採用力強化
ビジネス環境が変化すると求められる人材も変わり、タレント人材を獲得する必要が出てきます。
例えば、製造業におけるIoTの活用、それに伴うIT技術者の獲得です。タレント人材獲得競争が激化するなかでは、よりスピード感を持って候補者と接しなければ、ほかの企業が採用してしまうという状況も出てきます。このように、採用力がタレント人材の獲得に大きな影響を与えるという状況になっています。
3: コストの増加
変化が激しくなればなるほど、獲得すべき人数も増え、その分のコストが膨大になります。これを抑制するために、工夫が求められるようになりました。
4: 新しい採用手法の登場
2000年前後にネット広告が出てきましたが、それ以降さまざまな採用手法が登場しています。近年では、ソーシャルメディア・リクルーティング、ダイレクトソーシング、リファラル採用などが生まれ、そして進化しています。
これまでとの大きな違いは、「待ち」から「攻め」の採用に変わったことでしょう。何が何でもいい人材を採用するため、さまざまな採用手法の活用に対応できる採用組織が必要になってきました。今までの採用組織では対応できず、抜本的に変えないとタレント人材獲得競争には勝てない状況になったといえるでしょう。
今までの採用手法と何が異なるのか
では実際にタレント・アクイジションが進んでいるアメリカではどのような状況になっているでしょうか。Robin(2012)によれば、タレント・アクイジションについては、今までの採用(リクルートメント)に加えて次のような特徴があります。(訳は筆者)
- Talent Acquisition Planning & Strategy
タレント人材獲得のための計画および戦略策定 - Workforce Segmentation
必要なタレント人材の要件把握と組織体制・配置の把握 - Employment Branding
採用ブランディング - Candidate Audiencesb
必要な候補者の定義 - Candidate Relationship Management
候補者との関係構築 - Metrics & Analytics
採用改善のための指標の形成と分析
上記を踏まえると、より戦略的に、広範に、そして深くタレント人材に関与し、理解していくことが必要ということがわかります。この内容を踏まえ、中編では、それぞれの具体的な役割について掘り下げていきます。
参考文献
Curtis R. Artis, Brian E. Becker, and Mark A. Huselid,(1999), “STRATEGIC HUMAN RESOURCE MANAGEMENT AT LUCENT”, Human Resource Management, Winter 1999, Vol. 38, No. 4, Pp. 309-313
Peter Cappelli,(2008)“Talent on Demand : Managing in an Age of Uncertainty”, Harvard Business Press. 若山由美訳『ジャスト・イン・タイムの人材戦略』日本経済新聞出版社、 2010
Robin Erickson(2012)“Recruitment is NOT Talent Acquisition”, Bersin by Deloitte, http://blog.bersin.com/recruitment-is-not-talent-acquisition/
柿沼英樹(2015)「企業におけるジャストインタイムの人材配置の管理手法の意義-人的資源管理論でのタレントマネジメント論の展開-」, 経済論叢(京都大学) , 189(2) 49-60, 2015年6月
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