内定を出しても辞退する人が多く、採用活動が思うようにいかない…。そんなときに見直したい採用プロセスの一つが、内定後面談です。効果的な内定後面談を行うことが、内定辞退を防ぐ一助となるかもしれません。
本記事では内定後面談の実施目的や面談の流れ、実施のポイントを解説します。
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内定後面談とは

内定後面談とは、既に内定を通知している内定者に対して、企業が行う面談のことです。オファー面談や内定者面談とも呼ばれ、近年は実施する企業が増加傾向にあります。
実施するタイミングは、内定通知を出した後か、内定受諾後のどちらかが一般的で、両方のタイミングで行う企業もあります。内定受諾率や入社後の定着率にも影響するため、しっかりとした準備をすることが大切です。
内定後面談を行う目的と効果

そもそも、内定後面談は何のために行うのでしょうか。それぞれの項目における目的と効果を確認していきましょう。
入社意思の確認
■目的
内定後面談が内定受諾後のタイミングではない場合、入社の意思を確認するために面談を行います。企業が内定を出しただけでは、入社が決定とはいえないためです。
■効果
法律上は、内定承諾書を提出した後であっても、入社の2週間前までは内定辞退が可能です。とはいえ、内定後面談で入社の意思が早期に確認できれば、実際に入社する人数の予測が立てやすくなります。
入社の意思が確認できれば、現在選考中の別の候補者に内定を出す・出さないを決定したり、もし採用予定数に達しなさそうであれば新規で募集をし直したりできるため、採用活動の見通しが立てやすくなります。企業としては入社意思の確認は早めにしておきたいところです。
内定者の心理的フォロー
■目的
内定後面談には、内定者の心理的フォローを行うという目的もあります。
志望度の高い会社に内定をもらったとしても、内定者には迷いや不安がつきものです。「この会社で活躍できるだろうか」「ほかの企業もまだ受けたほうがいいのだろうか」「本当にこの会社でいいのだろうか」など、考えてしまう内定者も多いでしょう。
内定を受諾するかどうかは自分のキャリアにかかわる重大な意思決定であるため、「じっくり考えて決めたい」と考えるのは当然のことです。そこで不安を取り除いたり、志望動機を内定者とともに再確認したり、いかに内定者が自社の求める人材であるかを伝えたりして、内定者の心理的フォローを行うことが必要になります。
■効果
心理的フォローを行うことで、内定者に安心して入社してもらえます。また、仕事の内容を具体的に伝えることで入社後の業務への不安などから起こる入社辞退を防げるでしょう。
各種説明・条件の通知
■目的
内定後面談では、企業理念や仕事内容、労働条件、給与、福利厚生のほか、入社までの手続きや必要な書類などについての説明もなされます。既に配属先が決定している場合は、部署の説明も併せて行います。質疑応答の時間を設けて内定者の疑問を解消するケースも多いです。
■効果
これらの各種説明や条件の通知を行うことで企業と内定者双方の認識をすり合わせ、ミスマッチを防ぐとともに、入社までの手続きや入社後のオンボーディング(新しい職場に配置し定着させ、戦力化させる取り組み)がスムーズになることが期待できます。
配属先決定の参考
■目的
内定後面談を、配属先決定の参考に用いることもあります。特に新卒採用の場合、内定時に配属先が決まっていないことが多いものですが、こうしたケースでは、内定後面談の内容から、内定者が適した部署はどこかなどを考え、配属先決定の参考とする場合があります。
■効果
内定後面談で配属先の希望などを聞くとともに、面談担当者もどのような配属先が適切かを見極めることで、入社後のミスマッチやそれに付随する早期離職を防ぐことができます。
入社辞退の回避
■目的
入社辞退の回避もまた、内定後面談の目的の一つです。特に内定を受諾するか迷っている内定者に向けては、入社辞退を回避するためのアプローチを行います。
たとえば、現場の社員と内定後面談を行うことによって内定者が自社で働くイメージを具体的にもてるようにしたり、内定者の入社意思決定に必要な情報を面談のなかで見つけ、その情報を提供したりします。
ワークライフバランスを重視したい内定者には、そうした働き方を実践する社員との面談を設けます。専門スキルを高められるかどうかで入社の意思決定を行いたい内定者には、どのようなスキルが身につくかを現場社員にヒアリングし、情報を提供したりします。
■効果
入社辞退が予想以上に多いと、予定採用人数に到達できず、再募集を行うなどして採用活動が長期化し、人的コストも金銭的なコストも大きくなりがちです。また、新卒採用のような定期採用の場合、次年度の新卒採用業務に支障が出る場合もあります。入社辞退を回避できれば、このような事態を未然に防げます。
【説得や押しつけは逆効果 】 |
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入社辞退を回避するといっても、内定者を無理やり説得しようとしたり、一方的に自社の魅力を押しつけたりすることは逆効果です。 2018年に株式会社バフと株式会社ビジネスリサーチラボが行った調査によれば、ある会社を受けた220人の応募者の志望度は、会社説明会から最終選考の段階でほぼ上がりきっていて、最終選考以降(内定後面談を含む)の段階ではあまり上がらなかったことがわかっています。 出典:釘崎 清秀 (著), 伊達 洋駆 (著)「『最高の人材』が入社する採用の絶対ルール 」ナツメ社刊、P.205 内定後面談で志望度そのものを上げることは難しく、あくまで採用活動のなかで醸成された内定者の志望度を再確認してもらったり、意思決定のために足りていない情報を補ったりする場であると考えておいたほうがよいでしょう。内定を受諾する・しないにかかわらず、内定者の意思決定を支援するというスタンスが望ましいと考えられます。 実際に、強引に説得して入社してもらったとしても、ミスマッチが発生して「やっぱり合わない」と早期退職してしまうケースもあります。早期退職はさらなるコストを生むため、もともとミスマッチがある場合は内定や入社の時点で辞退となったほうが企業側も内定者側もダメージが少ないでしょう。 |
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内定後面談までの流れ

内定後面談はどのような流れで実施するのでしょうか。各ステップに分けて、解説していきます。

面談の内容や方向性を決定する
まずは面談の内容や、方向性を決めておきましょう。入社意思の確認がメインなのか、不安の解消がメインなのか、給与や手当等待遇面の説明がメインなのかなどを確認します。
入社を迷っているような様子が見られる内定者に対しては、どのような方向性で接するかを決めておきましょう。入社しないという意向を含めて内定者の意思決定を支援していくのか、それとも入社の意思を後押しするような情報を積極的に提供していくのか、といった方向性をあらかじめ決めて準備しておくことで、より有益な面談になります。
面談の実施時期と回数を決める
面談の内容や方向性をふまえて、実施の時期や回数を決めておきます。面談は1度ではなく、時期をおいて複数回に分けて実施するケースもあります。
内定承諾前の場合、意思確認や意思決定、待遇の説明などを行う場合が多く、内定承諾後の場合、入社の手続きやその他の不安の解消などを行う場合が多いといえます。新卒採用においては、一般的に内定が確定する6~9月と、内定承諾後の10~3月に行うことが多いでしょう。
接触回数を増やすことで好感度や安心感、親近感、所属意識を高められるため、複数回の実施が効果的です。
面談の参加者を決める
面談の参加者を決めておくことも大切です。内容によって、面談を行うのに適する人が異なるためです。
意思確認や待遇の説明等には、人事担当者の出席が必要です。意思決定のための情報を提供する場合は、制度面の情報であれば人事、業務面の情報であれば現場社員などが適切でしょう。また、経営陣が直接企業の理念やミッション、ビジョンなどを伝える場合もあります。
内定者からの質問を想定する
面談では内定者から質問を受けることが想定されます。選考中は選考結果に影響しないように控えていた質問も、内定後であればある程度踏み込んで質問しやすくなるため、選考中に聞かれなかった内容を聞かれることも多いでしょう。
【内定者から聞かれることが多い質問の例】
- 配属先は決定していますか?
- 業務をするうえで身につけておく知識などはありますか?
- 入社までに準備しておくべきことはありますか?
- 入社後に取得すべき資格はありますか?
- 給与や昇給についての詳細を教えてください。
- 時間外労働(残業)は平均してどのくらいでしょうか?
- 繁忙期はありますか?
- 研修ではどのようなことを行いますか?
上記は内定者から聞かれることが多い質問の例です。配属先、業務、準備すべきこと、給与や昇給、労働条件、繁忙期についての質問が挙げられます。適切に答えられるように、事前に質問を想定し、それに合わせた回答を準備しておきましょう。
条件面のすり合わせに備える
条件面のすり合わせは、特に中途採用者の面談で発生します。内定後面談の際に詳しい条件を伝えるか、事前に条件を伝えておいて内定者にあらかじめ検討してもらい、内定後面談でしっかり話し合いをするかの2通りの方法があります。スムーズなすり合わせを行うためには、事前に条件を伝えておくパターンが望ましいでしょう。
また、内定者が要望する条件に対してどこまで交渉の余地があるか、事前に社内で確認しておくことも大切です。
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【質問例あり】内定後面談で確認すべきこと

内定後面談で確認すべきことは、入社の意思、条件面の合意、内定者の懸念点や疑問点と、他社の就職/転職活動の状況です。それぞれ質問例とともに確認していきましょう。
入社の意思
【質問例】
- 現在〇〇さんには内定を出しておりますが、内定を受諾する予定ですか?
- 〇〇さんは当社へ入社される意思があると認識していますが、間違いないでしょうか?
入社の意思は必ず確認しておきたい項目です。内定受諾前の面談であれば内定受諾の意思を確認し、内定受諾後の面談なら入社の意思を確認しましょう。
条件面
【質問例】
- お伝えした条件に関しては、問題ないでしょうか?
- 条件面での懸念点があれば、教えてください。
給与などの待遇・条件面は就職/転職活動で重視する人が多い項目です。入社後にトラブルとならないよう、条件面で合意できているかを確認しておきましょう。
ただし、中途採用者が人材紹介会社などを利用している場合は、人材紹介会社の担当者が条件面の交渉を担っている場合もあります。その場合、内定後面談の場では内定者と直接条件面の話をしないこともあるでしょう。
懸念点や疑問点
【質問例】
- 内定後の現在、懸念していることはありませんか?
- 解消しておきたい疑問点はありませんか?
- 心配していること、不安なことがあれば教えてください。
- 事前に聞いておきたいことがあれば、何でも聞いてください。
懸念点や疑問点の解消は、内定者の心理的フォローや内定辞退の回避のために重要です。
心配なことやわからないことがあると不安なもの。安心感を与えるフォローができれば、自社に入社してもらえる可能性も高くなるでしょう。
他社の就職/転職活動状況
【質問例】
- 現在、選考を受けている企業はありますか?
- 差し支えなければ、どのような進捗状況で、いつごろまでに結果がわかるか、教えてください。
- ほかにも内定が出ている企業はありますか?
他社の就職/転職活動状況は、入社の意思を確認するためにも、内定辞退を回避するためにも知っておきたい情報です。
ほかに選考中の企業がある場合、その企業の結果をふまえて内定受諾を検討してもらうために、内定受諾の期限を延長することも可能です。内定辞退によって採用予定数に満たない場合、再度選考をし直さなくてはならないこともあるため、他社の就活情報を聞いたうえで、そのような事態に備えておく必要があるでしょう。
内定後面談実施のポイント

最後に、内定後面談で心がけておきたいことを解説します。
歓迎されている実感を内定者にもってもらう
内定者は「この会社でやっていけるだろうか」「自分のどこを評価してもらえたのだろうか」と不安を抱えるものです。安心して入社してもらうためには、歓迎されている実感を内定者にもってもらうことが大切です。
そのためには、内定を出した理由、ぜひ自社で働いてもらいたいと感じたポイントをしっかりと伝えることが効果的でしょう。また、入社に際しての手続きなどのフォローを手厚くすることでも、歓迎の気持ちが伝わります。
面談後もさらにフォローを行う心づもりで望む
内定後面談を行えばそれで終わり、というわけではありません。面談の最後に「ほかにも質問はありませんか?」「もし疑問点や心配な点があれば、いつでも連絡してくださいね」と声を掛けておき、「気に掛けていますよ」という姿勢を示しましょう。
内定者からの問い合わせがあれば、迅速で誠実な対応を心がけます。忙しいときめ細やかなフォローが難しくなりがちですが、内定者のフォローは採用活動全体のなかでも最優先されるべき業務の一つと心得て対応しましょう。
正確な情報を伝える
入社後に「思っていた業務と違った」などといったミスマッチが起きることを防ぐため、内定者には常に正確な情報を伝えましょう。
企業は内定者を惹(ひ)き付けておくために、ついポジティブな面ばかりを発信し続けてしまいがちです。その結果、内定者はいい情報だけで構成されたイメージを抱いてしまうことになり、入社後に現実との差でミスマッチを感じてしまいます。
ミスマッチは早期退職につながる恐れもあるため、自社のよい情報だけでなく、懸念点なども包み隠さず、正確に伝えることを意識しましょう。全て納得のうえで入社してもらったほうが、定着率も向上します。
まとめ

内定後面談は入社意思の確認や内定者の心理的フォロー、入社辞退の回避などの目的で行われます。内定者フォローは未来の自社人材に対する投資です。入社前から内定後面談を行い、積極的にフォローを行うことで内定者のモチベーションを上げ、入社後に活躍してもらえれば、事業によい影響を与えられます。
選考段階での面談や面接と同じように力をいれて取り組み、内定者との信頼関係を築いていきましょう。
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企業と候補者の対等なコミュニケーションの場である「面談」。能力・スキルを見極めるための「面接」とは異なり、「候補者の入社意欲を高めること」が重要です。
巻末の面談トーク例も参考にしながら、採用成功につながる「面談」を実践してみませんか。