2023年1月24日、株式会社ビズリーチは「【第6回/全6回】基礎から学ぶ面接官養成講座 オンライン/構造化面接の基本と実践」と題したWebセミナーを開催しました。
株式会社人材研究所の曽和利光氏にご登壇いただき、今回は、コロナ禍以降普及したオンライン面接、そこで必要となる構造化面接について、基本的な内容から実践方法まで具体的なメソッドを含めてお話しいただきました。

登壇者プロフィール曽和 利光氏
株式会社人材研究所 代表取締役社長
著書等:「人と組織のマネジメントバイアス」、「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」、「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント」、「『ネットワーク採用』とは何か」、「知名度ゼロでも『この会社で働きたい』と思われる社長の採用ルール48」、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」
「構造化」のメリットとは
本セミナーでは、以下2点についてご説明します。
- 面接を「構造化」することのメリットやデメリット
- 面接を「構造化」する際の注意点
そもそも「構造化」とは何か、まずは言葉の定義から整理していきましょう。
「構造化(structured)」とは、物事を構成している要素に分解して、その要素間の関係を整理することです。
例えば以下の画像のように、組織文化を形成するものを、理念、事業、組織構造、人材、制度・ルールと分解していくことを「構造化」といいます。

では、「面接を構造化」するメリットには何があるのでしょうか。
1点目は、抜け漏れ(見落とし)がなくなり、面接で「あの情報を聞いておくべきだったのに聞かなかった!」ということがなくなります。
2点目は、質問のダブり(重複)がなくなり、生産性が高まる点が挙げられます。
3点目は、全体の「原因と結果」の関係がわかるので、より根本的な要素に目を向けることが可能になります。面接では、構造化することで、その人のさまざまな行動に表れるベースの性格・特性を見つけやすくなります。
4点目は、物事が整理されて、伝達や議論、判断がしやすくなる点が大きなメリットです。面接は複数回行われるため、候補者から得た情報を次の面接官に正確に伝達することが必要となります。質問を構造化しておくことで「この分野に関する質問に対して、回答はこの内容」と整理しやすくなり、その後の判断がしやすくなります。

「構造化面接」とは
改めて、「構造化面接」(structured interview)とは何かを整理します。
構造化面接では、フリートークをして思ったことをアドリブで聞くのではなく、何を聞くか、何を話すかをマニュアル化しておきます。すべての候補者に対して同じ質問を決まった順番で行うことも特徴です。重要なのは、すべての候補者が同じ評価基準で評価されることです。そのため、「構造化面接」を進める際には、記録の仕方、評価の仕方など、面接の後工程を含めすべてを構造化しておくことが大切です。

では面接を構造化するか、しないかではどんな違いがあるのでしょうか。
構造化面接において、主導権を握るのは面接官です。応募者が何を話してもいい非構造化面接とは異なり、構造化面接は面接する側が聞きたい情報を取りに行き、確かめたいことを確認します。面接担当者が質問内容をアドリブで考える手間もなくなり、短時間で効率的な面接ができます。
面接の質を下げるものの一つに無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)があるといわれますが、構造化面接では面接官の主観が入りにくくなりバイアスに惑わされにくくなるのも特徴です。
ただ、構造化面接では、面接官がその場を仕切るため、相手(候補者)に構造化力(自分の考えを構造化し、話を順序だてて相手にわかりやすいように伝える能力)があるかどうかはわかりません。
構造化面接は仮説検証型で、確かめたいものを相手が持っているかどうかを確認する手法です。面接官側が想定していないような素晴らしい要素を見つけるのは難しく、構造化面接には発見が少ないとも考えられます。

構造化と非構造化にはそれぞれ良しあしがあります。面接で何を求めるかによって、どれくらい厳密に構造化面接を行うかを決めていくのがいいでしょう。
また、半構造化面接といわれるもので、構造化の加減をゆるやかにしたものや、面接時間の半分は想定通りの質問(構造化面接)を行い、残りの半分をフリートーク(非構造化面接)にするというやり方もあります。
さまざまなスキルや能力を精度高く見極める点で、構造化面接は効果的だといわれています。妥当性係数を調べた研究では、認知的能力テストと構造化面接は同じスコアであり、非構造化面接との差は明確です。

また、構造化面接はオンライン化に向いているともいわれています。
面接の構造化とは、マニュアル化であり、「どんな要素を確認するために、どんな質問をして、どう評価するか」を明確にすることです。
オンライン面接のデメリットにはフリートークのしにくさ(話のキャッチボールのしにくさ)があるため、面接をある程度マニュアル化する必要があります。そのため構造化面接は、オンライン面接にマッチしたやり方なのです。
対面面接では、「マニュアル的な面接は堅苦しい」「冷たい」といった印象を持たれ、動機形成にとってマイナスになる可能性があります。しかし、オンライン面接では「ちゃんと自分を出すことができた」「話を聞いてくれた」と印象を上げることもあります。

また下の図のように、オンライン面接の場合は構造化によって魅力度が上がり、対面面接の場合は非構造化のほうが魅力度が上がるという研究結果も出ています。

「構造化面接」を実際に行う際の注意点
構造化面接を進める場合、「質問」「評価」「ターゲット」の3つを構造化する必要があります。

質問の構造化で注意したいのは、STAR面接(Situation、Task、Action、Result)だけでは情報量が足りないところです。
例えば、候補者に仕事のプロジェクトについて話してもらうと、生じた問題、とった対策、出た結果の3つしか話さないケースが多くあります。そこで質問の構造化では、「環境」「思考」「苦労」についてもあわせて聞くことが大切です。
- 環境:どんな状況でその仕事をやったのか、どういうお客様なのか、チームはどれくらいか
- 思考:問題から対策にいたるまでに何を考えて、どんな判断で最終的な対策を決めたのか
- 苦労:結果を出すためにどんな壁や苦労があり、それをどう乗り越えたのか
これらの話を聞いてはじめて結果を評価できるので、質問を構造化する際には、こういった質問を取り入れるといいでしょう。

また、評価を構造化する際には、評価のレベルを5段階に分けて考えましょう。
言われたからやるというレベル1から、レベル5に相当する「環境まで変えてしまう」といった5段階の分類があります。能力や性格の評価を段階分けすることで、面接官の目線や評価レベルを合わせやすくなります。

「ターゲット」の構造化
「ターゲット」を構造化するためには、人材要件や求める人物像を整理する必要があります。
人材要件と求める人物像は、同じように聞こえますが、それぞれ以下のことを指します。
- 人材要件:人材の必要要件であり、抽象的なコンセプトを羅列したもの
- 求める人物像:生き生きとしたペルソナやキャラクターなどの具体的なイメージ

ペルソナとは、イメージをそろえるためにつくる人間像の例です。
ペルソナ=キャラクター(候補者)を具体的にイメージしておくと、自社のどんな強みや魅力を訴求すべきかを考えやすくなります。面接官の判断基準を合わせるうえでも、求める人物のイメージがずれないように細かく設定することが重要です。

ターゲットを考える方法
ターゲットを構造化する際、多くの企業は、「現実」にいる社内の優秀な人材(ハイパフォーマー)から話を聞いて整理しています。

しかし、社員のインタビューをもとにターゲットを決めるのは少し危険です。
なぜならば、プロは自分がなぜプロであるかを説明しにくいからです。
プロ=熟練者は、「無意識」「自動的」にできるほどに訓練された人なので、自分のことを必ずしも言葉で説明できるとは限りません。そこで、「意見」だけを聞くのではなく、「日々実際にやっている行動」を見たり聞いたりすることが重要です。行動から類推し、「こういう特性が必要では」と整理していくのがいいでしょう。
実際に営業同行などの「行動観察」までするなら「現場」主義でよいのですが、エンジニアなど特殊なスキルを持つ人の場合は行動観察だけではわからないケースもあるでしょう。そこで、準「客観」的情報としてパーソナリティテストなどを用いて、「こういう特性がハイパフォーマーに多いのだろう」と、整理する方法がおすすめです。
ただ、今社内にいるハイパフォーマーが本当にベストかはわかりません。そこで、RIASEC(ホランド理論)などの性格・能力に合わせて仕事を分類したものを参考にするのも一つのやり方です。

採用基準を決める際、「求める人物像」をそのまま「採用基準」にするのにも注意が必要です。
入社後に育成できるにもかかわらず人材要件に含み、それを採用基準にしてしまうと「入社後育成できるのに、面接時になかったから不合格にした」というもったいないケースが頻出します。マスト条件は最小限にとどめ、採用基準は育成できないものや、育成機会や時間がない要件にのみ絞っていきましょう。
ただ、その際に欠かせないのが経営層や事業部リーダーとのディスカッションです。現場では、「育成できるとはいっても即戦力がほしい」のが本音でしょう。採用ターゲットを広く設定しなければいけない転職市場の背景などを伝え、マスト条件をどこまで減らせるかが、人事の大事な役割になります。

「育成できるもの」と「育成できないもの」を見極めることは非常に難しく、自社で研究・分析していくしかありません。
ただ、客観的な参考情報としては「結晶性知能」「流動性知能」の分類があります。長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく知識とされる結晶性知能とは違い、若いうちにピークを迎えるとされている流動性知能に分類されるものは採用基準に加えてもいいといえるでしょう。

また、ターゲットの構造化において、使う言葉を一義的にすることも大事です。
「求める人物像」で使われる言葉の多くは多義的です。経営や現場から「求める人材像」を聞いた際に、人によってさまざまな意味に捉えられる言葉があれば、きちんと、「こういう意味ですか」と確かめる必要があります。人を表現するプロとして、似たような概念、対立概念などを選択肢として提示して、「どちらですか」と尋ねるとよりよいでしょう。

例えば「コミュニケーション能力」一つをとってもさまざまな意味があり、自社内ではどういう意味で使われているのかを整理することが欠かせません。
質問、評価、ターゲットの構造化について説明してきましたが、最後に、構造化面接を実行するために大事な要素が3つあります。
- 面接評定表とのリンク(第4回参照)ができていないと意味がない
- 面接マニュアルの作成
- 面接官トレーニングの実施(第3回参照)
第3回、第4回セミナーでも詳しくお話ししていますので、アーカイブ記事をぜひご参照ください。
Q&A
一言一句残すのは現実的ではないと思います。面接中は、キーワード、単語ベースで箇条書きにして残して、面接後の記憶が鮮明なうちに文章にまとめていくといいのではないでしょうか。面接中に、面接評定表に書いていくのは最初のうちは難しいので、「覚えておくためのメモをとる」という気持ちで、単語を書いていくのがいいと思います。
例えば各社で求められる「コミュニケーション能力」にはさまざまなパターンがあります。論理的思考力であれば流動性知能といえますが、社交性、言語能力などは入社後に経験を積み重ねていって伸びるものです。どちらの「コミュニケーション能力」を求めているかを自社内で検証する必要があります。
検証の方法としては、社内のモデルケースを探し、「Aさんは新人時代にこれくらいのレベルだったが、3年たってここまで伸びた」と社内独自の基準を決めていくしかないのではないかと考えています。
最後に、視聴者の皆様にメッセージをいただきました。

6回にわたり本セミナーを聞いてくださり本当にありがとうございました。
面接は人と人とのコミュニケーションゆえに、『誰でもできるのではないか』と思われがちです。しかし実際は、日頃のコミュニケーションと真逆に近いやり取りが求められるなど、かなり専門的なスキルが必要です。現場の面接官をガイドする人事の皆さんからその認識を改め、広めていき、面接は実は難しいものだよということがもっと広まるといいなと思っています。
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