【イベントレポート】基礎から学ぶ面接官養成講座 ミスマッチを防ぐための見極めと評価(第4回/全6回)

2022年12月6日、株式会社ビズリーチは、「【第4回/全6回】基礎から学ぶ面接官養成講座 ミスマッチを防ぐための見極めと評価」と題したWebセミナーを開催しました。

株式会社人材研究所の曽和利光氏にご登壇いただき、入社後のミスマッチを防ぎ、正しく評価を行うための評価項目の策定から、客観的に確認するための具体的な質問例まで、具体的なメソッドを含めてお話しいただきました。

曽和 利光氏

登壇者プロフィール曽和 利光氏

株式会社人材研究所 代表取締役社長

リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験、また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や情報経営イノベーション専門職大学客員教授も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。

著書等:「人と組織のマネジメントバイアス」、「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」、「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント」、「『ネットワーク採用』とは何か」、「知名度ゼロでも『この会社で働きたい』と思われる社長の採用ルール48」、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」

インタビュー・アセスメント・ジャッジの精度を向上させる

本日の内容は、面接のコアともいえる実務がテーマとなっています。面接の精度を高めるために、向上させるべきヒアリングのテーマや深掘りのポイントなどをお伝えしていきます。

面接のプロセスのどこがおかしいかでトレーニングの内容が変わる

面接のプロセスは「インタビュー(情報収集)」「アセスメント(見立て)」「ジャッジ(評価)」の3つに分かれ、それぞれのプロセスで精度が低くなる理由は異なります。

インタビューでは、相手の事実を聞けているかが重要です。面接の基本は、事実から能力や性格、価値観を推測することなので、これが精度を高くする秘訣となります。

アセスメントでは、ターゲティングの回で取り上げた、人の特性を表現する言葉の理解が関わってきます。

ジャッジにおいては、採用基準の正しい理解が重要になります。

これらの点のどこに問題があるかによって、トレーニングの内容は違っていきます。

インタビューでは、客観的事実を収集する

「客観的事実」を収集することが第一

インタビューでは、客観的事実を収集することがもっとも重要です。面接における時間配分は、客観的事実を聞くのに時間の8割を費やし、主観的事実は2割くらいがよいでしょう。5年後にどうなっていたいかという質問は、参考情報として聞く分にはよいのですが、その人のキャリア志向について知りたければ、何をどんな場面でやってきたかという事実から推定するべきです。

ビジネスにおいて何らかの成功をされている方が面接官を頼まれると、普段の会話では一を聞いて十を知るといった想像力・知識・経験で候補者の話を理解しようとすることがあります。しかし、面接では相手が言っていないことを想像して理解してしまうと、客観的事実を知ることができません。面接で会う候補者とは、基本的に毎回初対面であり、そのなかで性格や能力を判断するのは容易ではないのです。

対策としては、相手の発言の後に「具体的には」「たとえば」など事実を取りにいく言葉を発するよう、癖付けしておくのがよいでしょう。

そして、抽象的な言葉や形容詞に着目することもおすすめです。たとえば「都心のカフェで働いていました」といっても、丸の内か池袋かで印象は異なります。「難しい試験に合格しました」というときの、「難しい」も注意すべきです。これらについては、固有名詞で聞きだしたり、合格率何%の試験なのかなどを確認したりとその場ですぐ質問しましょう。数字にできるものは、数字にするのも有効です。

たとえば「接客で心がけていたことは?」という質問に対し、「お客様の声に耳を傾け、ニーズに寄り添いました」という答えも具体性を欠く表現で、たとえ話や比喩としか受け取れません。具体的に何をやったのかを聞きだす必要があります。

また、「こそあど言葉」にも注意が必要です。たとえば「私はこの経験を通じて、どうすれば人の心を動かせるのかを学びました」という発言だけでは、結局何を学んだのかが不明瞭です。とにかく具体化していくことで、初めて評価ができるのだというのを忘れないようにしてください。

面接官からピンポイントで聞くべき事柄

ほかにも、情報を得るポイントをお伝えします。新卒なら学生時代に力を入れたこと、中途なら今までやってきた仕事のなかで一番成果を出せたことは何か、といった質問です。候補者は何かしらのエピソードを持っているはずなので、何を話すかを選ばせて聞くのもよいですが、面接時間には限りがあるので、面接官のほうからピンポイントで「こういう話はないですか?」と聞くのがよいでしょう。

面接担当者から話題を指定する

その際、内容は1人でがんばって自己完結した話より「集団のなかでがんばった話」であれば、チームプレーでどういった行動が取れる人かを判定しやすくなります。また、うまくいったことより「苦労したこと」のほうが、持てる力でピンチをどう切り抜けられたかが分かり、人となりを知ることができます。

そして、論理的思考力がある人でも、好きではないことではうまく能力を出せないこともあるので、「義務で行ったこと」を聞いて、そこで能力を発揮できたかを確認するとよいでしょう。

また、短期間においては我慢して何とかこなすこともできますが、それよりは「長期間」に繰り返して能力を発揮できた話を聞くほうが、再現性の高い能力を見定めることにつながります。

整理すると、「チームでやった話」「最初は嫌だと思ったけれど、やってみて面白かった話」「一番長くやった仕事」などについて聞き、その話題を深掘りしていくと、良い事実情報が得やすいということになります。

エピソードを聞くときにプラスアルファで聞きだすべきポイント

候補者が話さない部分は決まっている

次に、エピソードを聞くときに深掘りするとよいポイントについてです。

多くの場合、候補者はエピソードを語るときに情報が抜けた状態で話してしまうことが多く、「問題」「取った対策」「出た結果」の3つしか話しません。

たとえば、「私は飲食業で焼き肉業態の店で働いていました。コロナ禍になって売り上げが落ち、赤字に転落するという問題がありました。そのとき私は…」と、ここでいきなり対策に飛ぶわけです。そして「ランチメニューを工夫したり、テイクアウトのメニューを作ったりしました」と対策を重ね、また話が飛んで「それにより売り上げが倍になり、こういう結果が得られました」と言うのです。

しかし、この話には3つの抜けがあり、面接官が聞かないとそれは出てきません。

まず、どういう「環境」だったのか。表通りか裏通りか、人気店かそうでもないか、アルバイトが多いか社員だけか、大規模店か零細店か。それにより、成果のレベル感が変わってくるでしょう。これは優秀な人でも、あまり語らない部分なので、どんな環境だったのかを、ぜひ最初に数多く質問してください。

2つ目が、そのときの「思考」です。やったことから行動力はうかがえますが、思考力を見るには、問題が起こってから対策を取るまでに、どう考えたか、ここが重要です。

たとえば、原因分析や、ほかにどんなアイデアがあったかという発想の部分です。複数の選択肢からなぜその対策を選んだのかが聞けると、面接で聞きたいポイントである「思考力」が分かるはずです。

3つ目は「苦労」したことです。結果が素晴らしくても、まぐれかもしれないですし、想定外の事態をどう乗り越えたかを聞けると、その人本来の力が見抜けます。

特に「思考」「苦労」を聞くことで、「フリーライダー」ではないかどうかも分かりやすくなります。トラブル対応の話ができなければ、その対策の中心人物ではなかった可能性があるでしょう。

整理すると、エピソードを聞くときは「環境」「問題」「思考」「対策」「苦労」「結果」の6つを埋めるようにして、情報収集することが大事だということです。

また、若手の候補者だと成果のレベルに差がなかったり、勉強が本分の学生だとアウトプット自体があまりなかったりします。その場合は、なぜその性格や価値観を得たのかというライフヒストリーを聞くとよいでしょう。

たとえば「その能力はどこで培われたと思いますか?」「なぜそういう価値観になったのですか?」などと質問することで、その習慣が本当に根付いたものなのかも確認できます。

「主観」は後で、人物仮説を確認するために聞く

「主観」は「後」で聞く

次に「主観的意見」についてです。志望動機や自己分析もこれに当たります。

たとえば、「あなたの強み/弱みは何ですか?」「今、転職活動をどういう軸で考えていますか?」「会社を選ぶポイントは何ですか?」「当社で何をしていきたいですか?」「10年後はどうしていたいですか?」といった質問です。

これらの質問の答えは「主観的な意見」になりますので、面接時間の最後に聞くのがおすすめです。それまでに具体的なエピソードなどで、候補者の「人物仮説」を立てておき、その仮説を確認する意味で、最後に聞きましょう。そうすることで自己認知の度合いも分かりやすくなります。

自己認知はハイパフォーマーに共通する要素だと言われており、さまざまな能力のベースになっています。たとえば、自分ができていないのにできていると思っている人は学習能力が低いですし、チームプレーにおいて自分の特徴が分かっていないとその場で適切な役割を担えません。感受性や好き嫌いなどの価値観に無自覚な人は、自分の好みを現実に投影して物事をゆがめがちです。

そうした大事な自己認知のチェックとして、主観を後で聞くと役立てられます。

また、自己認知ではなく、「周りからどんなふうに見られているか」など、周囲からの認知を聞くのも有効です。客観的な意見なのでうそがつけませんし、意外とネガティブなことも出てきやすく、人となりが分かりやすくなります。

志望動機がうわべだけのものでないかを確認するポイント

次に「志望動機」についてです。最近はスカウトがきっかけで候補者に会うことも多かったり、志望動機として「○○に共感したので応募しました」と言われることも多かったりしますが、それでは何の事実も集められません。

そこでおすすめなのが「選社基準」を聞くことです。「あなたが仕事を選ぶときに大事にしている基準は何ですか?」と聞き、その理由を深掘りしていくことで、多くの情報が得られます。

志望動機に根っこが生えているかどうかを知る方法

その際に、その志望動機が本当に確かなものかを確認できる方法が、「きっかけ」「意見」「行動化」の3つを質問することです。

きっかけでは、「なぜそういうふうに思うようになったのか」という出来事や影響を受けた人のことなどを聞きます。意見は、環境問題に興味があるということであれば、たとえば「電気自動車とハイブリッドカーの問題点をどう思うか」などと聞くのです。本当に興味があれば、何かしらの意見を持っているはずです。

そして、「その環境問題に関係することで、行動に移していることはありますか?」という質問も有効です。思うだけなら簡単ですが、社会人なら行動してほしいものです。「御社に入ったら貢献したいと思います」ではダメで、本当にやりたいのであれば、転職しなくても何かしら行動しているはずです。

この3つの質問は、主観的なことを掘り下げるときに役立つので、ぜひ使ってみてください。

また、深掘りしていく際に注意してほしいのが、「なぜ」という言葉を使いすぎないことです。「なぜですか?」という受け答えを多用すると候補者に圧力を感じさせやすいので、いろいろな言葉を使って聞くようにしましょう。「理由は?」「原因は?」「背景は?」「きっかけは?」「どうして?」などと言い換えるとよいです。

また、事実が大事だと言っていますが、これには非言語の表情や視線、声色、手や足の動作なども含まれます。そこから何か緊張が感じられれば、それはなぜだろうと考え、確かめてみるのもよいでしょう。

アセスメント&ジャッジで適正に評価するポイント

ジャッジとは、一人一人が持っている能力や性格、思考が仕事や文化に合っているかどうかを見ることです。

どの部分をどの段階でキャッチするかは、段階別になっていることが多いです。選考の初期段階では候補者も玉石混交なので、粗くてよいので能力面をスクリーニングします。候補者の人数が多いため、経験のない人に面接官を依頼することの多いこの段階では、難しいことを要求しないためにも、基礎能力のスクリーニングで十分です。選考の中期でやや絞り込めてくると、管理職や人事担当者など、日頃から人を見ることに秀でた人たちが面接を行うので、大枠のタイプ分けなどをして、パーソナリティーの確認を行います。

結果の大小だけではなくインプットとアウトプットの倍率を見る

このジャッジの際に大事なのは、アウトプットについて結果の大小だけでなく、難しい状況下でアウトプットを出せたほうを高く評価できるとよい、ということです。たとえば、昨今オンラインによる採用で、全国から応募があります。都会と地方の人を比べると、一見都会の人のほうがアウトプットで勝っているように見えがちですが、そもそも機会の少ない地方で結果を出せていることのほうを評価すべきときもあるでしょう。このように、結果の大小だけでなく、インプットとアウトプットの倍率を見ることが大事です。

「能力」「性格」の5つのレベル

次に「レベル分け」です。上の図はコンピテンシーの5段階といわれるもので、言われたからやるというレベル1から、選択肢を自分で考えるとか、環境まで変えてしまうといった5段階の分類があります。能力や性格を段階分けすることで、面接官の目線や評価レベルを合わせやすくなります。

レベルの実現を検討する(例)

また、上記の図のように、能力や性格のレベル分けを自社内で検討することで、より評価レベルを合わせることが可能なので、ぜひ自社でも考えてみてください。

面接評定票の作り方で、面接の精度が変わってくる

最後に、面接で情報を収集して、候補者を見立てた後に、最終的なレベルを採用基準と照らし合わせる「評価」についてです。

いろいろ気を使ってきても、最後の面接評定表が具体性を欠くものになっていると台無しになります。また、これを面接官全員に埋めてもらうのはなかなか難しいものですが、うまく作りこんでおくことで、面接を成功させられます。

面接評定表の例

一例を挙げると、まず総合評価があり、選考を進めるか進めないかが分かるようにします。

この総合評価を決めるときに、自社の基準としている、たとえば執着心・自己効力感・成長意欲・受容性・面倒見の良さなどを挙げます。このときに、各項目を4段階で点数付けして、その合計で総合評価を決めるのはお勧めしません。それだと各評価要素が無意識に平等に扱われてしまいますし、この項目についてもっと高く評価したいという候補者がいても反映ができません。

「総合評価」は「詳細評価」の和ではない

さらにいえば、総合評価はまず直感でつけてよく、詳細評価のバランスを見て、適正かどうかをチェックします。それで、詳細評価の結果を見たうえで、もう一度総合評価を修正してフィックスするという進め方がよいでしょう。

「評価点」「評語」は意味あるものに

次に「評価点」「評語」は具体的なアクションが分かるものにしましょう。これはSABCDEなどの評価点とその評価が示す具体的な文言をひも付けることで、その候補者に対するアクションが自動的に決まります。単なる段階分けだと、面接官ごとの癖が出ますが、Eなら不合格などと決めておくことで、おのずと目線合わせができます。

最後に、取得してほしい情報は分類して配置することが大事です。面接評定表のフォーマットで、事実情報を記す欄を大きくしておけば、面接官は事実情報をたくさん得ようとします。また、欄を大きく取っておくだけでなく、志望業界や競合内定情報、就職活動状況など、書くべき内容の例示も添えておくのも大事です。

Q&A

セミナー後半では、視聴者から寄せられた質問にお答えしました。

Q
面接において、事実を収集していくことと、候補者の入社意欲を高めることの両立が難しいと感じます。両立させるためのアドバイスをお願いします。
A

そもそも面接では、相手に興味を持っているという印象を与えることはとても大事です。本質的な対応ではないかもしれませんが、質問は突っ込んでいても、雰囲気が穏やかだったり、言葉遣いが柔らかかったりするだけで印象は違うと思います。また、「あなたに興味があるから、こんなに聞いてしまうのだ」というのは、プラスに感じてもらえるでしょう。

最後に、視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

曽和 利光氏
曽和 利光氏

面接というのは、きちんとできていると思っている人が多いものですが、私が面接トレーニングをさせていただくときに多くの人事の方から言われるのは、「みな面接官としてうまくできていると思っているのですが、できていないので何とかしてください」ということです。

実際、深く候補者の心情について聞けていなかったり、事実を聞かずに想像して埋めていたりしますので、人事としては、面接官の方にまずそのことに気づいてもらうことが大事です。自覚さえしていただければ、これまでのアーカイブで取り上げたトレーニング方法を活用するなどして、スキルアップしてもらえればと思います。本日はありがとうございました。

候補者を公平に見極める。「面接」の手法を見直そう

面接のトリセツ1

採用活動における課題の一つが、面接官による評価のばらつき。「面接手法」を改めて見直し、判断基準を標準化しましょう。

本資料では「構造化面接法」と「インシデントプロセス面接」をご紹介します。

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著者プロフィール久保田かおる(くぼた・かおる)

横浜市生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。株式会社リクルートで12年、旅行・学び領域での編集/クライアントワーク経験を積み、当時の社是である「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」を実践。現在はフリーランスで、経営者やVC/CVC、コンサルタント、エンジニア、HR担当者、医師に対する取材・執筆を中心に活動。6年間のインタビュー実績はのべ1,618名。