近年、人材データベースを人事戦略に活用する企業が増えています。
今回は、人材データベースとはどのようなものか、需要が高まっている理由、活用する目的、構築する方法や押さえておきたいポイントについて、わかりやすく解説します。
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人材データベースとは

人材データベースとは、社員の人材データを集約し、可視化したもののことです。または、人材データを活用するためのシステムそのものを指す場合もあります。
人材データとは、人材にひもづく情報のことで、人事データとも呼ばれます。近年の人材データベースは、社員の基本情報だけでなく、採用時の性格検査、人事評価、スキル、マインドなど、あらゆるデータを一括で管理できるのが特徴です。人材データの保管だけでなく、閲覧、共有、分析などさまざまな目的で活用できます。
人材データベースの需要が高まっている理由

少子高齢化やグローバル化などの影響により、優秀な人材の採用や生産性向上の重要性が増しています。また、急速なIT化の影響で、人材開発や人材マネジメントの技術も進化しています。
以前は、社員の基本的な情報や人事評価などを、紙ベースの書類で保管する企業がほとんどでしたが、IT化が進み、社員データや評価、給与計算までを一括で管理できる人事データベースシステムが誕生しました。
膨大な人材データを適切に管理して有効に活用すれば、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が高まるほか、求める人材の採用につながることもあるため、人材データベースは注目されています。
人材データベースシステムは、社内にサーバーを設置する必要があり、システムを安定して稼働させるためのシステム保守も高額であるため、徐々にクラウド型のシステムに置き換わってきています。
人材データベースを活用する目的

近年は、大企業を中心に人材データベースを活用する企業が増えています。ここからは、人材データベースを活用する主な目的を紹介します。
現状把握と課題の分析
社員のあらゆる人材データが可視化されることで、人事担当者が企業の組織構造や人事の現状を正しく把握できるようになります。これにより、企業が抱えている経営課題や人事課題の発見と分析がしやすくなります。
また、発見した課題を解決するための施策を実行するにあたり、経営者や管理者の同意が必要な場合もあるでしょう。課題解決の施策を説明する際に、具体的なデータを示すことで、経営者や管理者の理解を得やすくなります。
適材適所の人材配置
可視化された社員のスキルやパフォーマンスなどの人材データをもとに、適材適所の人材配置が可能になります。最近では、配置前と配置後のパフォーマンスをシミュレーションできるシステムも登場しています。
また、少子高齢化やIT化などの影響で、ライフスタイルや働き方のニーズも多様化しており、「仕事と生活の調和」という意味を持つワークライフバランスを推進する企業も増えています。人材データベースでは社員の勤怠情報も可視化できるため、ワークライフバランスを加味した働き方改革を推進するうえでの人材配置にも役立ちます。
タレントマネジメント
タレントマネジメントに取り組むうえでも、人材データの可視化は欠かせません。タレントマネジメントとは、社員が持つタレント(才能・素質)やスキル、経験値などの情報を一括管理し、戦略的な人事施策を行うことです。具体的には、先に紹介した適材適所の人材配置や、入社後の人材育成、離職防止対策などが挙げられます。
少子高齢化が進む現代において、採用だけでなくタレントマネジメントにも力を入れ、社内で優秀な人材を育てていくこと、そしてその人材が十分に能力を発揮できる環境を整えていくことが大切です。
適切な人事評価
社員のモチベーション維持や離職防止のためには、公正で適切な人事評価が必要です。評価基準があいまいだと、社員は何に力を注げばよいのかわからなくなります。また、「成果が適切に評価されていない」という不満が生まれれば、モチベーションも低下してしまうでしょう。
人材データをもとにした人事評価は社員一人一人の実績をもとにした客観的な評価が行えるため正当性が高いことが特徴です。データを示すことで評価の理由も説明しやすくなるので、評価に対する社員の納得度を高められます。
人事管理業務の効率化
人事管理業務とは、採用や人材育成、人材配置、人事評価など、企業の目的を達成するために人材を管理する業務を指します。社員数が多い企業ほど人事管理業務の量も多くなり、多大な時間とコストがかかります。人事担当者の負担が大きくなると、仕事におけるパフォーマンスが低下してしまう可能性もあるでしょう。
人材データベースを活用して社員のあらゆる人材データを一括管理することで、人事管理業務に必要な時間やコストが削減され、業務効率が向上し、人事担当者の負担を軽減できます。
労働者名簿として活用
労働者を雇用する企業は、労働者名簿の作成が法律で義務付けられています(労働基準法第107条)。記載しなければならない項目は、労働者の「氏名」「生年月日」「履歴」「性別」「住所」「従事する業務の種類」「雇入年月日」「退職(または死亡)年月日とその理由・原因」です。
社員数が増えてくると、紙ベースの労働者名簿を管理・更新するだけでも多大な労力がかかります。この業務負担を軽減させるために、比較的安価なクラウド型の人材データベースを労働者名簿として導入する企業が増えています。
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人材データベースを構築する方法

ここからは、人材データベースを構築する具体的な方法を紹介します。主な方法はシステム導入と「Excel」の2つがあり、コスト面や管理するデータの量に応じて自社に適したものを選びましょう。
システム導入
近年主流となっているのは、人材データを活用するためのシステムを導入する方法です。企業にサーバーを設置して運用する「オンプレミス型」と、インターネット上のサービスを利用する「クラウド型」の2種類があります。
オンプレミス型は、クラウド型に比べて初期コストやシステム保守のコストが高い一方、カスタマイズの自由度が高いというメリットもあり、現在も多くの企業が利用しています。
クラウド型は、サーバー設置やインフラ構築などの設備投資が不要なため、初期費用が抑えられます。また、基本的なシステム管理やセキュリティ対策はシステム提供側が行ってくれる場合がほとんどで、多くの企業が利用できるように汎用的な機能がそろっているというメリットがあり、近年広く普及しています。
「Excel」
社員数が少ない企業であれば、「Excel」で人材データを管理することも可能です。
ただし、高度な分析をするには多くの工数が必要になるので、人事担当者の負担が大きくなります。また、ファイルの紛失や破損のリスクもあります。そのため、必要最低限のデータ管理だけでよい場合は、「Excel」がよいでしょう。システム導入に比べて、導入・運営の費用も抑えられます。
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人材データベースに必要な項目

人材データベースでは、社員のさまざまな情報を管理できます。ここからは、人材データベースを構築する際にまず設定するべき、基本的な7つの項目を紹介します。
基本属性
基本属性とは、個人を特定するための基本的なデータです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- 氏名
- 生年月日
- 入社年月日
- 所属
- 性別
- 役職
- 等級
これらは、人材データベースの基礎となる情報です。正しく登録されていないと、データの検索や抽出が必要なときに、求めているデータを得られない可能性がありますので、入力ミスのないように注意しましょう。
ダイバーシティを推進する企業では、性別を男女ではなくLGBT(Lesbian・レズビアン=女性の同性愛者、Gay・ゲイ=男性の同性愛者、Bisexual・バイセクシュアル=両性愛者、Transgender・トランスジェンダー=身体と心の性が一致していないため身体の性に違和感を持ったり心の性と一致する性別で生きたいと望む人、の頭文字を取り性的少数者の一部の人々を指した総称)に配慮して設定するケースも見られます。
経歴・実績・履歴
入社前の経歴や、現在に至るまでの実績・履歴などです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- 学歴
- 職歴
- 所属履歴
- 評価履歴
- 研修受講履歴
- 表彰歴
これらのデータは、人事評価や、配置換えによる影響を分析するときなどに活用できます。
勤怠状況
社員の勤怠状況を把握するためのデータです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- 入室/退室時間
- 残業時間
- 出勤日数
- 遅刻
- 早退
- 欠勤
これらのデータから、人事課題や経営課題、社員の離職の前兆などが見つけやすくなります。また、働き方改革の推進や、社員の勤務態度を見直すときなどにも活用できます。
能力・保有資格
個人のスキルに関するデータです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- スキルレベル
- 保有資格
- 語学力
これらのデータをもとにスキルマップを作成しましょう。スキルマップとは、業務を遂行するうえで必要なスキルと、社員一人一人の現在のスキルレベルを一覧表にしたものです。作成すれば、社員個人だけでなく、グループや部門単位でのスキルレベルを把握しやすくなるほか、社員のモチベーションアップや、新たな目標に向けた意識付けのツールとして活用できます。
マインド
マインドとは、社員の性格やモチベーション、エンゲージメントに関するデータです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- キャリア志向
- アンケートや適性検査の結果
- 面談履歴
- 上司メモ
これらのデータを人材データベースに残し、社員のマインドを可視化しておくと、社員のモチベーション維持や離職防止、企業全体の生産性向上などに役立てられます。近年は、マインド関連のアンケートを実施できるシステムもあります。
職務内容
現在社員が任されている具体的な業務に関するデータです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- 業務内容
- ミッション
- 目標
社員数が多い企業ほど、経営層や人事担当者が全社員の職務内容を把握しておくのは難しくなります。現在の業務に関するデータを人材データベースにまとめておくことで、社員の現状を把握・分析しやすくなり、人事評価や人材配置に役立てられます。
行動データ
行動データとは、社員一人一人にウェアラブル端末などを持たせることで得られるデータです。たとえば、以下のような項目が挙げられます。
- 位置情報
- 心拍数
- 発言時間
このような個人の細かな行動を把握することで、各種成果や能力との相関関係の分析が可能となります。また、上司が行動をチェックできないような営業職やリモートワークの場合でも、行動データを分析することで適切な評価を行えます。行動データの分析については、有益な結果を得るために、データ分析の専門家に依頼するのがおすすめです。
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人材データベースを構築する際のポイント

人材データベースは、ただ構築するだけでは効果がありません。ここからは、人材データベースを有効に活用するために押さえておきたい4つのポイントを紹介します。
使用目的を明確にする
まずは、「なぜ人材データベースを構築するのか」「人材データをどのように活用するのか」を明確にします。これらが不明確なまま進めてしまうと、構築の途中で必要な項目や機能がわからなくなり、時間やコストばかりがかかってしまうという事態になりかねません。本記事の「人材データを活用する目的」の項目で説明したことなどをふまえ、人材データベースの使用目的を明確に定めましょう。
目的を明確にする手段として、「ボトムアップ」と「トップダウン」というアプローチ方法があります。
ボトムアップは、現場から意見を吸い上げ、課題を解決または改善するために人材データベースを活用するという考え方です。一方、トップダウンは、経営陣などが中期経営戦略や事業戦略をベースに策定した人事戦略を達成するために、人材データベースを活用します。
全社的な意思決定に向いているのはトップダウンですが、部署レベルで行う場合や、短期集中の効果を狙うならボトムアップが適しています。どちらが優れているというわけではなく、両方向からアプローチしてバランスを取ることが重要です。
必要なデータを定義し更新のルールを決めておく
集める人材データは多ければよいというものではありません。データ量が多くなるほど、人材データベースの構築や更新には時間がかかり、その分だけ人事担当者の負担も大きくなります。設定した人材データベースの使用目的に応じて、必要なデータを定義しておきましょう。
必要なデータを定義できたら、データの項目ごとに権限の設定も行います。あらかじめ誰がデータを閲覧・変更できるのかを決めておくと、人材データベースをスムーズに活用できます。また、構築した人材データベースをスムーズに運用するために、更新の頻度や方法、更新担当者、バックアップシステムなど、更新のルールをあらかじめ決めておきましょう。
社員にも共有する
人材データベースを有効に活用するためには、人材データをできるだけ最新の状態に保つことが重要です。データに変更や追加があった際に速やかに更新作業を行えるように、人材データベースの存在を社員全員に共有しておきましょう。
また、社員数が増えるほど人材データベースの管理や更新などの業務が多くなり、人事担当者の負担が大きくなります。社員に自身のデータを変更できる権限を与えておけば、人事担当者の業務負担を減らせるだけでなく、人材データを最新の状態に保ちやすくなります。
しかし、自身のデータだからといって、すべてを閲覧・変更できる状態は望ましくありません。社員個人が閲覧・変更できる範囲は、住所や連絡先、スキルレベルや保有資格など基本的なデータのみにとどめておくことをおすすめします。
はじめから完璧を求めない
はじめから完璧な人材データベースを構築しようとすると、慣れない作業に多大な時間を取られ、本来の業務がおろそかになる可能性があります。まずは必要最低限から、無理のない範囲で人材データベースの構築を始めましょう。
たとえば、いきなり全社員をターゲットにするのではなく、チームや部署単位で人材データベースを構築して運用します。運用方法が定まってきたら、徐々に範囲を拡大していきましょう。このように段階的に進めていくことで、人材データベースの構築・運用の失敗を抑えられます。
また、構築したらそれで終わりではなく、適切な運用ができているかを適宜振り返ることも重要です。
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組織のパフォーマンスを向上させるために、まずは人材データベースの使用目的を明確にして、必要最低限から構築・運用を始めてみてはいかがでしょうか。
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