しばしば雇用予定の従業員から記入を求められる「採用証明書」は、従業員の雇用保険に関わる大切な書類です。しかし、必ず作成しなければならないわけではなく、状況によって異なります。
この記事では、採用証明書が必要となるケースはどのような場合か、記入項目や記入方法、注意点、提出までの流れを、実際の採用証明書のサンプルを用いながら詳しく解説します。
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採用証明書とは

採用証明書とは、企業が労働者を採用したことを証明する書類です。失業手当を受給している失業者の再就職を証明するために用いられます。
企業は、転職者を採用した際に採用証明書への記入を求められる機会が多くあります。採用証明書は労働者の氏名や住所、生年月日などの情報を記入する欄と、雇用予定期間や雇用の内定日、職種、採用経路、企業側の署名欄などで構成されており、基本的に企業側で記入します。ただし、支給番号や個人情報などいくつかの項目は労働者が事前に記入する場合もあります。
作成した採用証明書はハローワークに提出され、雇用保険の停止や再就職手当の受給の手続きに用いられます。そのため企業は、内容を正しく記入する必要があります。
採用証明書が必要となるケース

先述した通り、採用証明書が必要になるケースは、大きく分けて以下の2つの場合です。
- 雇用保険の基本手当給付を停止するとき
- 雇用保険の再就職手当を受給するとき
どちらの場合にも、「再就職が決まったことの証明」として必要な書類です。それぞれのケースについて詳しく解説します。
雇用保険(基本手当)を停止するとき
採用証明書が必要になるケースの1つ目は、雇用保険(基本手当)を停止するときです。雇用保険に加入していた場合、失業者は雇用保険(基本手当)を受け取れます。これは失業中の人の再就職をサポートするための制度で、再就職が決まった際には雇用保険(基本手当)の受給を停止しなければなりません。その際、再就職が決まったことを証明する書類として、採用証明書が必要になります。
再就職手当を受給するとき
2つ目のケースは、再就職手当を受給するときです。雇用保険(基本手当)の支給日数が一定以上残っている状態で再就職した場合、再就職手当を受け取れます。この再就職手当を受給する際に、再就職が決まったことを証明する書類として、採用証明書が必要になります。
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採用証明書の記入項目、記載方法および注意点

企業は、採用証明書の記入項目に従って正確に記入する必要があります。万が一事実に相違した記載を行い、それが雇用保険の不正受給につながった場合、雇用保険法に基づいて給付を受けた者と連帯で、返還および納付をしなければならない場合があります。
ここからは採用証明書の記入項目と記載方法、記入や提出の注意点について解説していきます。採用証明書は自治体ごとに書式が用意されており、様式は若干異なりますが、書き方や項目は基本的に同じです。以下は、東京労働局が公開している採用証明書の様式です。

本人記入欄
本人記入欄は以下の通りで、基本的に労働者が記入します。
- 支給番号
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
「支給番号」は、雇用保険の受給資格者証を参照して記入します。
東京労働局の様式では「本人記入欄」との記載はありませんが、記入ミスの防止や企業の事務手続き簡略化などの観点から、本人があらかじめ記入してから再就職先企業に渡すことが望ましいでしょう。氏名や生年月日等は、企業側でも確認するようにします。
事業所記入欄
事業所記入欄には以下の項目があり、企業が記入します。
- 雇入(予定)年月日
- 従業員数
- 職種
- 雇入年月日前のその企業での就労の有無
- 採用経路
- 雇用形態
- 雇用期間の定めの有無
「雇入年月日」とは、雇用契約が開始される日のことです。例えば、5月1日付で採用した場合、雇入年月日は5月1日となります。これは5月1日が休日・祝日の場合や、5月1日時点は研修期間で、6月1日から正従業員となる予定であっても変わりません。雇用契約締結日や内定日ではないので、間違わないよう注意しましょう。
「従業員数」にはパートやアルバイトなどの非正規雇用労働者の人数も含みます。続いて、「雇用形態」には契約上の雇用形態を記入します。
また、「雇用期間の定めの有無」は、再就職手当の受給要件に「1年を超えて勤務することが確実であると認められること」という項目があるため、受給に大きく影響する部分です。間違いのないように記入しましょう。
事業主証明欄
最後に、事業主証明欄にある、以下の項目を記入します。
- 事業所所在地
- 事業所名称
- 代表者氏名
- 電話番号
- 雇用保険適用事業所番号
これらを記入できたら、指定の場所に押印します。押印がないと証明書の効力が認められないため、押し忘れに注意しましょう。
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採用証明書を提出するまでのフロー

次に、採用証明書をハローワークへ提出するまでのフローを解説します。大きな流れは、以下の通りです。
- 雇用予定の従業員から採用証明書の書式を受け取る
- 企業は必要事項を記入する
- 雇用予定の従業員に採用証明書を渡す
- 雇用予定の従業員がハローワークへ提出
内定を出した従業員から採用証明書の記入を依頼されたら、書式を受け取って記入します。いつまでに記入して渡せばよいか、期限をあらかじめ確認しておきましょう。
また、雇用予定の従業員が再就職手当の受給要件を満たしている場合は、採用証明書と同時に再就職手当支給申請書の記入を依頼される場合もあります。
採用証明書の提出期限と注意点
ハローワークへの提出期限は、採用が決まってから雇入日の前日までの間です。何らかの事情で採用証明書の発行が遅れる場合は、早めに雇用予定の従業員に伝え、ハローワークに相談してもらうようにしましょう。記入内容に誤りがあると再提出となるため、余裕をもって早めに作成しておくとよいでしょう。
また、記入した採用証明書を雇用予定の従業員に渡す際は、郵送などで従業員の自宅へ送りましょう。郵送事故を防止するためには、特定記録や簡易書留等の記録付き郵便が推奨されています。
採用証明書が必要になる雇用保険(基本手当)の手続き内容

ここからは、採用証明書が必要になる雇用保険(基本手当)の手続きについて、雇用保険(基本手当)とはどのようなものかという点から解説していきます。受給対象者、受給期間、受給手続き、受給額、受給停止手続きについても、項目ごとに確認していきます。
雇用保険(基本手当)とは
まずは「雇用保険」について解説します。雇用保険は、雇用に関するさまざまな支援をするための保険制度です。労働者を一人でも雇っている場合、企業は必ず雇用保険の加入手続きをして、保険料を納めなければなりません。雇用保険は失業した場合などに給付を行うことから、失業保険ともいわれます。
次に、「雇用保険の基本手当」について解説します。雇用保険による給付にはいくつかの種類があり、「基本手当」は求職者給付のひとつで、失業手当とも呼ばれます。これは失業した人が安心して再就職できるよう支援するための給付で、労働者が失業したときには給付を行い、次の就職先を決めるまでの間、労働者の生活が安定するよう支援するものです。次の就職先で働き始めるまでの経済的な支えとなるという役割が期待される手当です。
基本手当の受給対象者
基本手当の受給対象者は、以下の要件を満たしている人です。
- 原則として、離職前2年間に被保険者期間(※1)が12カ月(※2)以上ある
- ただし、倒産・解雇等の理由により離職した場合(※3)、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した場合(※4)は、離職前1年間に被保険者期間が通算して6カ月(※2)以上必要
- 失業の状態にある。失業の状態とは、次の条件を全て満たす場合のこと。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと。
(※1)過去に基本手当(再就職手当等を含む。)または特例一時金の支給を受けたことがある場合には、その支給を受けた後の被保険者であった期間のみが算定されることになります。
(※2)離職日から1カ月ごとに区切った期間に賃金が支払われた日数が11日以上ある月を1カ月とします。また、このように区切ることにより1カ月未満の期間が生ずる場合、その1カ月未満の期間の日数が15日以上あり、かつ、その期間内に賃金が支払われた日数が11日以上あるときは、その期間を2分の1カ月として計算します。
(※3、4)詳しくはこちら(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html)をご覧ください。
出典:厚生労働省|Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~
離職前の2年間(倒産・解雇等の場合は1年間)の間に疾病、負傷、出産、育児などの理由により、引き続き30日以上賃金の支払いを受けられなかった場合は、これらの理由により賃金の支払いを受けられなかった日数を加えた期間(加算後の期間が4年間を超えるときは4年間が最長)により受給に必要な被保険者期間があるか判断します。
基本手当の受給期間
雇用保険を受給できる期間は原則として離職日の翌日から1年間です。離職日の翌日から1年以内に、30日以上継続して職業に就けない場合は、受給期間の延長申請が可能です。延長申請を行うと、本来の受給期間である1年間に働けない日数を加えることができ、職業に就ける状態になった後に、受給手続きができるようになります。ただし、受給期間に加えられる期間は最大3年間です。
基本手当の受給手続き
基本手当の受給手続きは以下の6ステップです。いずれも、主体となって動くのは労働者です。
1.下記の必要書類を持参し、管轄のハローワークで受給申請を行う
・離職票-1
・離職票-2
あわせて本人確認書類、写真またはマイナンバーカード、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードも必要
2.ハローワークが受給資格を確認し、受給を決定する
3.雇用保険説明会に参加する
4.受給資格の決定日から失業の状態が通算7日間経過する(※自己都合退職などの給付制限がある場合はさらに2〜3カ月の待期が必要)
5.4週間に1回、受給資格者証と失業認定申告書を提出する
6.基本手当が支払われる
基本手当の受給額
失業前の勤務先で受け取っていた給与の総支給額によって異なりますが、目安としてはおおむね以下の通りです。給与は保険料等が控除される前の額で、賞与は除きます。
給与の平均額(月額) | 基本手当の受給額(月額) |
---|---|
15万円程度 | 11万円程度 |
20万円程度 | 13.5万円程度(※1) |
30万円程度 | 16.5万円程度(※2) |
(※1)離職時の年齢が60歳以上65歳未満の人は月額13万円程度
(※2)離職時の年齢が60歳以上65歳未満の人は月額13.5万円程度
およその計算式は、「(離職前6カ月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率」となり、給付率は、離職時の年齢や賃金により、45~80%になります。
また、給付額には上限・下限があり、詳しくは厚生労働省のWebサイト(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000601754.pdf)からご覧いただけます。
基本手当受給停止の手続き
基本手当の受給停止手続きは以下の5ステップです。いずれも、受給手続きと同様に主体となって動くのは労働者です。
- 再就職が決まったらハローワークに報告する
- 採用証明書の原本を入手する
- 再就職先に採用証明書の記入を依頼し、受け取る
- 就職日が次回認定日より後の場合、採用証明書を持参し、指定されている次回の認定日にハローワークで就職が決まったことを申告する
- 就職日が次回認定日より前の場合、採用証明書を持参し、原則として就職の前日に来所して就職の申告をする
ステップ2の「採用証明書の原本」は、雇用保険受給時に配布される「受給資格者のしおり」内にあります。ただし、管轄ハローワークのWebサイトからもダウンロード可能な場合が多いので、そちらを利用してもよいでしょう。
また、採用証明書をハローワークへ持参して提出することが難しい場合、事前にハローワークへ電話連絡をしたうえで採用証明書を郵送で提出することも可能です。個人情報を含む内容のため、特定記録や簡易書留等の記録付き郵便が推奨されています。
採用証明書が必要になる再就職手当の手続き内容

次に、再就職手当の手続きについても見ていきましょう。再就職手当とはどのようなものか、受給対象者、受給額、受給手続き、受給停止手続きについて、項目ごとに確認していきます。
再就職手当とは
「再就職手当」は雇用保険による給付のうち、就職促進給付に分類できる手当です。これは雇用保険の基本手当の支給日数を一定以上残して再就職した場合にもらえる手当で、ハローワーク就職祝い金とも呼ばれています。
早期に再就職できた場合は、再就職先からの給与に加えて再就職手当を受給することで、雇用保険(基本手当)を1年間全て受け取ってから就職するよりも、収入が多くなる可能性があります。そういった意味でも失業者の早期再就職を促し、再就職率を高めるという目的があります。
再就職手当の受給対象者
再就職手当の受給対象者は、以下の要件を満たしている人です。
- 雇用保険(基本手当)を受給している/受給手続きを済ませている
- 雇用保険(基本手当)の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して、安定した職業に就き、以下の1〜8の支給要件を全て満たしている
- 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
- 待期満了後の就職であること
- 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1カ月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
- 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと(資本・資金・人事・取引等の状況からみて、離職前の事業主と密接な関係にある事業主も含む。)
- 就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
- 受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
- 原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること
※ 1.の支給残日数については、就職日から受給期間満了年月日までの日数を超えるときは就職日から受給期間満了年月日までの日数が支給残日数となる。
出典:厚生労働省|Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~
覚えておきたいのは、ハローワークを介さずに人材紹介会社や求人サイトで就職が決まった場合も、受給条件を満たしていれば再就職手当を受給できるということです。
また、雇用形態がアルバイトやパートでも条件を満たせば支給されますが、派遣社員の場合は契約期間に注意してください。受給の要件として、「1年を超えて勤務することが確実であると認められること」と定められています。
再就職手当の受給額
再就職手当の受給額は基本手当の支給残日数によって異なり、以下のように算出します。
■基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合
基本手当日額×所定給付日数の残日数×70%
■基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合
基本手当日額×所定給付日数の残日数×60%
再就職手当に係る「基本手当日額」には上限額があり、その金額は「毎月勤労統計」の平均定期給与額により、毎年8月1日に改定されることも留意しておく必要があります。
再就職手当の受給申請手続き
再就職手当の受給申請手続きは、以下の7ステップです。いずれも、主体となって動くのは労働者です。そのフローは以下の通りで、基本手当の受給停止手続きと同時に行います。
- 再就職が決まったらハローワークに報告する
- 採用証明書の原本を入手する
- 再就職先に採用証明書と再就職手当支給申請書の記入を依頼し、受け取る
- 就職日が次回認定日より後の場合、指定されている次回の認定日にハローワークで就職が決まったことを申告する
- 就職日が次回認定日より前の場合、原則として就職の前日に来所して就職が決まったことを申告する
- ハローワークで最後の失業認定を受け、再就職手当申請に必要な書類を受け取る
- 就職日の翌日から1ヶ月以内に、以下の3点をハローワークへ提出する
・採用証明書(再就職先に記入を依頼)
・再就職手当支給申請書(再就職先に記入を依頼)
・雇用保険受給資格証(失業手当受給時の雇用保険説明会で受け取り済)
ステップ2の「採用証明書の原本」は、「基本手当受給停止の手続き」で解説した通り、雇用保険受給時に配布される「受給資格者のしおり」内にあります。管轄ハローワークのWebサイトからもダウンロード可能です。
また、ステップ7で必要な3点の書類をハローワークへ持参して提出することが難しい場合、事前にハローワークへ電話連絡をしたうえで採用証明書を郵送で提出することも可能です。この場合、特定記録や簡易書留等の記録付き郵便が推奨されています。

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まとめ

採用証明書は従業員が雇用保険上の手続きをするための重要な書類です。また、採用証明書の内容に偽りがあり、雇用保険の不正受給につながった場合には、給付を受けた者と連帯で責任を負わなければなりません。間違いのないよう確実に記入し、雇用予定の従業員の再就職をスムーズにサポートしましょう。
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