2021年9月30日、株式会社ビズリーチは「キャリア自律に向け、改革に挑む カゴメの人材育成」と題したWebセミナーを開催しました。
カゴメ株式会社常務執行役員CHO(最高人事責任者)の有沢正人様にご登壇いただき、タレントマネジメントシステムの在り方や、次世代の経営者をはじめ社内人材育成の取り組みについてお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチ取締役副社長で、ビズリーチ事業部事業部長の酒井哲也が務めました。

登壇者プロフィール有沢 正人氏
カゴメ株式会社 常務執行役員CHO(最高人事責任者)
2004年にHOYA株式会社に入社。人事担当ディレクターとして全世界のHOYAグループの人事を統括。全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。また委員会設置会社として指名委員会、報酬委員会の事務局長も兼任。グローバルサクセッションプランの導入等を通じて事業部の枠を超えたグローバルな人事制度を構築する。
2008年にAIU保険会社(現AIG損害保険株式会社)に人事担当執行役員として入社。ニューヨークの本社とともに日本独自のジョブグレーディング制度や評価体系を構築する。
2012年1月にカゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメ株式会社の人事面でのグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。同年10月より執行役員人事部長に就任。2018年4月より常務執行役員CHO(最高人事責任者)となり国内だけでなく全世界のカゴメの人事最高責任者に。

モデレータープロフィール酒井 哲也氏
株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長
※所属・役職等は制作時点のものとなります
前回セミナーの振り返りとQ&A
有沢様にご登壇いただいた前回2021年6月10日に開催されたセミナーでは、「社員の自律的成長で、経営改革を実現するカゴメの人事戦略」をテーマにお話しいただきました。
本セミナーではその前回セミナーのおさらいと、答えきれなかった質問へのご回答をいただきました。
前回セミナーの内容
- 自律的な働き方を後押しする人事制度 ~公平でオープンな評価と報酬とは~
a.グローバルで職務等級を中心とした「ジョブ型人事制度」を導入した過程
b.情報開示が社員の心理的安全性を担保する
- すべての人がイキイキと働ける環境 ~社員にとっての理想的な働き方とは~
a.生き方改革(ソフト)と人事戦略(ハード)の両輪が大事
b. あるべき未来の「理想の働き方」から考える人事制度改革
- 社員のポテンシャルを最大限引き出すHRBPの存在 ~個人のキャリアに寄り添うHRビジネスパートナーとは~
- 視聴者からの質疑応答
- 【まとめ】会社は社員から選ばれる時代である
有沢様にご登壇いただいた前回のセミナーは下記のリンクをご参照ください。
前回セミナーでいただいたQ&A
キャリア⾃律のためのタレントマネジメントシステムについて
カゴメでは、経営戦略と人事戦略連動を進めやすくするようジョブ型を導入しています。
それを支える「タレントマネジメントシステム」は、キャリア⾃律をベースとした経営計画と事業計画の推進にとって⽋かすことのできないツールです。
タレントマネジメントシステムの目的は、企業側、個人側それぞれ下記になります。
- ⼈材情報に基づいた配置の促進
- 「適所適材」の配置の実現
- 抜てき⼈事の推進
- ⾃⼰申告(異動希望)内容の反映強化
- ⾃律的なキャリア形成⽀援
- 成⻑⽬標の可視化による⾃⼰研さん促進
このシステムは、最重要課題である「人材配置」を重点的にサポートできる設計となっています。適材適所ではなく「適所適材」であり、「このミッションには誰がいいか」という視点で抜てき人事を行っています。
人材配置決定のために必要な情報のベースは個人の異動希望と長期のキャリアパスです。本人が将来何をやりたいかに向かって考えることが重要であり、サクセッサー(次期リーダー候補)の「キャリアデベロップメントプログラム(CDP)」に基づいて配置が決まります。

システムには社員全員の「異動希望」「長期キャリアプランの設計」「定性的な人物情報」「定量的な人物評価」「人材基本情報」が入っています。
「異動希望」は、個人・組織のマッチング率を高めるためにもっとも重視されます。希望範囲をできるだけ広げるよう、組織と職務両方で異動希望を可能にしています。

「長期キャリアプランの設計」では、ライフイベントを含んでキャリアを設計することで自律的な成長を促進しています。自分の生活圏をどこに置きたいかを考えてキャリアプランを作ることで、単身赴任をなくしたいと考えています。

10年、20年後という先を見据えたキャリアパスを考えているので、その場限りの異動になってはいけません。そこで設計しているのが「サクセッサーのCDP」です。
CDPは、社長、専務2人、CHOの4人からなる人材開発委員会で議論・決定されます。ターゲットポストに対して「こういう人が抜てき候補です」というキャリアイメージ(人物見立て、キャリアプラン)を人材プロファイルで管理しています。
タレントマネジメントシステムは人事データベースではなく、経営ニーズと個人ニーズのマッチングを図る、人事戦略と経営戦略をブリッジするためのものだと考えています。

経営人材の育成の方向性
経営人材の育成には、「⾃らの強みの理解を起点として、当事者としてカゴメ経営をとらえ、経営を担っていける⼒、意欲と覚悟を、⾃律性を重んじて育んでいく」との基本原則があります。
候補者の育成では、ポジションを可視化したうえで人材開発委員会が育成計画を議論し、報酬・指名諮問委員会に付議して、必ず社外取締役に内容を見てもらいます。これはマーケットの観点から客観的な評価をいただくためです。

育成計画の検討のためには、ポジション別の候補者数が示されたマップ資料や、ポジション別の仕事・人材要件シート(人材要件定義書)を活用します。シートには、実現したいことが記してあり、仕事内容は一切書かれていないのが特長です。
経営者の育成では「役員になってからが勝負」という考えがあり、「役員として必須な内容の取得」を目的とした役員層の教育を定期的に実施しています。

社長候補育成の基本は、「強みを伸ばす」ことです。カゴメの経営を担ううえでの覚悟を、約2年かけて育成していきます。
尚、次世代経営人材(部長)候補でも社長候補と同じ目線や意識を持つよう、同内容のプログラムを2年かけて展開します。

次々世代経営者(課長)候補の育成でも、「強みを伸ばす」方針は変わりません。
育成の基本原則を「⾃らの強みの理解を起点として、社内外ともに幅広い観点で経営・事業をとらえるための基礎スキル・スタンスを得て、次段階に挑める⼒を育んでいく」とし、実践的なケーススタディーや経営シミュレーションで経営を担う力を高めていきます。
これらの人材育成を進めるうえで重要なのは、社長候補、役員候補、部長候補人材が常にいる状態を作ることです。ストックされている人材に対し、強みを伸ばしていくためにサポートするのが育成であり、それを進めるうえで欠かせないのがタレントマネジメントシステムなのです。
⼈材に対する「⻑期的安定をもたらす投資」としてのカゴメにおける「HR Business Partner」機能
カゴメでは、人材・組織両面の成長を促進するために、2017年度よりHR Business Partner(HRBP)機能を導入しています。

HRBPは、個人の資産価値を上げるために以下のミッションを担っています。
- 個人が自らのキャリアを方向づけ前進できるような「自律的なキャリア開発を支援する」
- 個人が直面する課題をヒアリングし、組織として対処すべき「現場の人事課題を明確にする」
- 人事部、事業、経営と連携した強固なブリッジとして「解決策を提案・実行につなげる」
HRBPはあくまでも「本人の希望」に基づいたキャリア支援を行います。部門利益よりも個人の意思を重視するのがカゴメ流。個人へのヒアリングでも、現場に行き、タレントマネジメントシステムを確認しながら「どうしてここを希望しているのか」「次はどんなことをしたいのか」と質問を重ね、HRBPから意見を言うことは基本的に一切ありません。本人が自分のキャリア像をより明確に描けるようになり、納得した方向に進んでもらうのが大事だからです。
HRBPには人事経験が一切ない、現場のエース人材が抜てきされています。人事部長と同格であり、人事と連携しながら人材開発委員会のもとで活動しています。
現場をもっともよく知る立場として人事異動の決定をオーバージャッジする権限も持っています。「この方は3年後に介護が始まる可能性があるので、今異動してはダメです」などと意見するのも重要なミッションです。

カゴメの今後
カゴメでは2013年からグローバル⼈事制度構築に取り組み、ジョブ・グレード、評価・報酬制度等の「インフラづくり」を進めてきました。本来の⽬的である「⼈づくり」のフェーズで本格的に動き出すのはまさにこれからです。
今後は、国際間の異動を含むローテーションの実施に向け、後継候補者の育成とモニタリングを継続的に行う「サクセッションマネジメント」や、リーダー育成研修などを加速させていきたいと考えています。
Q&A
セミナー後半には多くの質問をいただきました。いくつか抜粋して有沢様にお答えいただきました。
最後に有沢様より視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

人材育成では、単にメンバーシップ型やジョブ型を入れることが目標ではなく、そのための「報酬と評価の仕組み」を整えることも大切です。どのポジションに行くとどんな報酬と評価が得られるのかが分からなければ、そこを目指すことはできない。内容をオープンにし従業員の「心理的安全性」を担保することが人材育成を進めるうえでの基本条件になるでしょう。
人材にかかるパワーは、コストではなくインベストメント。人件費ではなく投資と考え、人的資本の拡充を一緒に目指していきましょう。
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