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ケイパビリティとは? 意味やビジネスでの活用方法を解説

テクノロジーの発展や経済のグローバル化に伴い、環境が変化するスピードは加速しています。人々のニーズも多様化し、時代とともに移り変わっていくなかで、企業が生き残っていくためには変化に対応できる力を身につけなければなりません。

そこで重要な考え方となるのが、「ケイパビリティ」です。本記事では、そもそもケイパビリティとは何なのかという基礎知識をはじめ、ケイパビリティが重要な理由や向上させる方法を詳しく解説します。


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ケイパビリティとは

ビジネスにおける「ケイパビリティ」とは

そもそもケイパビリティとはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。ビジネス業界で用いられる際の意味や2種類のケイパビリティを紹介するとともに、誤解されやすい「コアコンピタンス」との違いについても詳しく解説します。

ケイパビリティの意味

ケイパビリティ(capability)とは、日本語に直訳すると「能力」や「強み」「特性」などの意味を持つ言葉です。さまざまな業界で使用されますが、ビジネス業界では、経営者や社員個人の能力や強みというよりも、「企業や組織全体における強み」という意味で使われることが多い傾向にあります。

たとえば、すぐれた営業担当者の活躍によって売り上げが上がったとしても、企業のケイパビリティが営業力にあるとはいえません。営業部門の全従業員が成果を挙げられる仕組みや、他社には真似できない営業方法があるなど、「個」ではなく「組織」として好業績につながる状況を作り出せたときに、初めて営業力が自社のケイパビリティといえるのです。

自社の魅力や強みを言語化することで、採用を成功させた企業もあります。社員15人ほどのWebプランニング会社「株式会社ウェブライダー」がはじめての「スカウト」に挑戦し、2名の優秀なメンバーを採用するまでの経緯をまとめた資料はこちらからダウンロードできますので、参考にしてください

企業が持つ2種類のケイパビリティ

企業が持つケイパビリティは、「オーディナリー・ケイパビリティ」と「ダイナミック・ケイパビリティ」の2種類に分けられます。

  • オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)

現在ある経営資源を効率的に活用し、利益を最大化する考え方=「ものごとを正しく行う」こと

  • ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)

時代や環境の変化に応じて、企業がとるべき行動を変革し続けていく能力=「正しいことを行う」こと

緻密な計画を立て、経営の効率性やコストコントロールを目的としてベストプラクティス(ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動)を求めることがオーディナリー・ケイパビリティの特徴です。

たとえば、「効率的な生産プロセスを確立する」ということは、オーディナリー・ケイパビリティの典型的な例といえるでしょう。

ダイナミック・ケイパビリティは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール教授のデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された理論です。環境や状況の変化に応じて、企業内外の資源を再構成して、自己を変革することを指します。

同氏は、ダイナミック・ケイパビリティを実践するための能力を以下の3つに分類しています。

  • 感知(センシング)…脅威や危機を感知する能力
  • 捕捉(シージング)…機会を捉え、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する能力
  • 変容(トランスフォーミング)…競争力を持続的なものにするために、組織全体を刷新し、変容する能力

出典:経済産業省「2020年版ものづくり白書 第2節 不確実性の高まる世界の現状と競争力強化」

2つのケイパビリティは相反する概念ではなく、ダイナミック・ケイパビリティを実践するためには、企業にとって基本的な能力であるオーディナリー・ケイパビリティが前提として必要となります。

コアコンピタンスとの違い

ケイパビリティと似た意味を持つ言葉として、コアコンピタンスがあります。

コア(core)は「核」、コンピタンス(competence)は「能力」や「適正」という意味を持つ言葉で、コアコンピタンスは企業における中核事業、または中核となる技術そのもののことを指します。

1992年に発表された「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy」という論文のなかで、両者は以下のように定義されています。

  • コアコンピタンス=バリューチェーン上における技術力や製造能力
  • ケイパビリティ=バリューチェーン全体に及ぶ組織能力

バリューチェーンとは、業務をフェーズごとに分割し、業務効率や生産性、競争力を最大化するための戦略・経営手法のことです。

たとえば、大手家電メーカーにとってのコアコンピタンスは「家電製品そのものの開発力や技術力」を指し、ケイパビリティは「販売網や流通網なども含めた組織力」といえるでしょう。


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企業経営にケイパビリティが重要な理由

企業経営にダイナミック・ケイパビリティが重要な理由

企業経営においては、ケイパビリティを備えることが極めて重要です。情報化とグローバル化が進んだ「VUCA時代」とよばれる現代においては特に、企業の変革を進めていくダイナミック・ケイパビリティが注目されています

VUCA時代とは以下の頭文字を取った言葉で、一言で表すと「変化が激しく先が見通しづらい時代」といえるでしょう。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

このようなVUCA時代において、企業が生き残っていくことは決して簡単ではありません。なぜならば、顧客ニーズが多様化し、時代の変化するスピードが速く、オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)によって現時点では順調な経営ができていたとしても、それがいつまで続くか分からないためです。

環境や時代の変化、顧客ニーズの変化を見極め、企業として経営方針を柔軟に変化させていくために重要になるのが、ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)です。時代や環境の変化を「感知」し、チャンスを「捕捉」し、競争力を身につけ、経営を「変容」することで、VUCA時代に対応できる可能性が高まります。

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ケイパビリティを活用するメリット・デメリット

ケイパビリティを活用するメリット・デメリット

ここからは企業がケイパビリティを活用することで得られるメリットとデメリットを解説します。

【メリット1】競合との差別化を図れる

競合他社に打ち勝つためには、ユーザーに対して自社にしかない価値を提供することが重要ですが、製品やサービス単体は模倣されやすいという特徴があります。

ケイパビリティは、事業プロセス全体における組織的能力を表すため、「組織力」と表現できるでしょう。組織としての強みは単一的ではないことに加え、目に見えないことから模倣されづらく、市場で独自の価値を提供することにつながります。

ケイパビリティを高めることで他社との差別化が図れ、競争優位性が高まることは大きなメリットです。

【メリット2】持続性が期待できる

ケイパビリティは、経営基盤や事業プロセスといった組織力に基づいているため、一度高められればすぐには下がらず、維持できる点が特徴です。企業活動の土台として活用することで、安定的な経営の実現につながります。

また、ダイナミック・ケイパビリティを高められれば、組織全体を刷新し変容する能力も向上していきます。自社を取り巻く状況などに想定外の変化が起きた際に迅速な対応が可能となるため、企業の持続的な発展・成長が期待できます。

【デメリット】構築までに時間を要する

企業活動の土台となるケイパビリティですが、構築までに時間を要する点には留意する必要があります。

組織を一朝一夕で変化させていくことは難しく、経営ビジョンを明確にさせたり、それに合わせて社員を育成したりするなど、多くのプロセスが必要です。ヒット商品の発売によってすぐに売り上げが向上するというような、即効性は期待できないでしょう。

また、これまで効果があったケイパビリティに固執してしまうといったことが原因で、企業活動が衰退するリスクもあります。時代や環境の変化など、外的要因を鑑みながら対応していく柔軟な姿勢も求められます。


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自社のケイパビリティを把握する方法

自社のケイパビリティを把握する方法

自社のケイパビリティを見つけるために効果的な方法が、SWOT分析です。

自社を取り巻く要素について、内部環境を強み(Strength)と弱み(Weakness)に、外部環境を機会(Opportunity)と脅威(Threat)に分けて、下図のような構造でプラス要因とマイナス要因を明らかにしていきます。

SWOT分析

上記のフレームワークに沿って、項目別にアウトプットすることで、自社の事業の強みや課題が明確になり、全体の組織力も把握できます。

書き出した強みは、競合との差別化を図るため、他社と比較して相対評価することが重要です。4つの要素を見比べ、弱みとなる領域から撤退して強みに資源を分配するなど、自社のケイパビリティをいかす施策を実施していきましょう。

ケイパビリティを向上させるためには

ダイナミック・ケイパビリティを向上させるためには

不確実なVUCA時代を生き残っていくためには、ケイパビリティを向上させることが重要であることは先述のとおりです。ここからは、ケイパビリティを高められる仕組みを構築するために重要な3つのポイントを解説します。

経営資源の活用方法を見直す

最初に行うべきこととしては、変化する環境に対して経営資源が有効に活用されているかを確認することが重要です。

たとえば、レガシーシステム(古い情報システムや技術)が放置され、DX(テクノロジーを駆使した改革)に向けた取り組みが先送りになっていないかを確認すること、などが挙げられます。

経済産業省がまとめた「DXレポート」では、2025年を境に企業のレガシーシステムが経営の足かせとなり、毎年最大12兆円もの経済損失が発生するリスクがあると報告されています。また、古いシステムを刷新しないことで情報セキュリティのリスクも増大し、サイバー攻撃による情報漏えいの危険性も高まります。

自社の経営資源の活用状況をチェックする際は、「現時点で業務に支障が出ていないから問題はない」と考えるのではなく、将来を見通したうえで必要な対策を講じていくことが求められます。

そのためには、経営者が現場の意見を定期的にヒアリングしたり、社外からの意見にも耳を傾けたりして、環境の変化を機敏に察知できるプロセスや仕組みを構築することが大切です。

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改善し変革していくことを当たり前と捉える

これまでの時代は、ビジネスモデルや組織、会社そのものが変化していない状態を安定的と捉えるのが一般的でした。

しかし、情報の伝達スピードが加速し、経済のグローバル化が進んだ現在、従来のような価値観ではなく、つねに変化し動いていることが当たり前の時代になりつつあります。そのため、改善し変革していくことを特別視するのではなく、当然のこととして考える必要があります。

具体的には、社内でアイデアを出し合い、業務プロセスの改善やイノベーションの創出に向けてアクションを起こすことが求められます。仮に、思うような成果が出なかったとしても、それを失敗と捉えるのではなく、改善すべき点を見つけ出すためのプロセスと考えるようにしましょう。

改善点を見つけ出し、それに対するアクションを繰り返していくことで、環境の変化に対応できるほか、ダイナミック・ケイパビリティの能力が向上し、企業として成長していけるはずです。

なお、変革を試みる際に必ずといっていいほど発生するのが、社内における反発や抵抗勢力ですが、経営層が「抵抗勢力との取り引きコストが高い」と感じてしまうと、変革は進みません。

加えて、経営層がつねに「自己批判的」な姿勢を持ち、今の経営のあり方で本当に問題がないかを自問自答しながら、新たな問題が見つかったらすぐに対処し解決していく姿勢が重要です。

人材育成

企業のケイパビリティを向上させるためには、人材育成に力を注ぐことも重要です。

学習支援や業務にいかせる資格取得のサポートなどを行い、社員それぞれが学び続ける状況を作り出すことで、環境の変化のなかでもケイパビリティがつねにアップデートされた状態となります。社員の能力や可能性を広げるために、ジョブローテーション制度などを用いて所属部署以外の業務を経験させるといった施策も有効です。

現在の競争に直接役立つものでなくても、将来の競争を視野に入れた場合に必要なことを社員に学習してもらうための研修や、文化づくりを取り入れることを検討しましょう。


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ケイパビリティが成功につながった事例

ダイナミック・ケイパビリティが成功につながった事例

ダイナミック・ケイパビリティに取り組んだことにより、事業の成功につながった企業の事例を3つ紹介します。

富士フイルム株式会社

デジタルカメラの普及により、富士フイルム株式会社(以下、富士フイルム)の主力事業である写真フィルムの需要は低下し、2000年代に入ってから一時本業消失の危機に陥りました。

そこで、富士フイルムは既存の写真フィルム生産事業に特化するのではなく、フィルム生産過程において得たノウハウや知見を再利用・再配置し、事業を多角化する道を選択しました。その結果、液晶画面を保護するためのフィルムや、化粧品やサプリメントといった製品の開発に成功。写真フィルムの生産を本業としていた時代よりも高い利益を上げています。

ダイナミック・ケイパビリティの要素のうち、既存の資産・知識・技術を再構成して競争力を獲得する「シージング能力」と、組織全体を刷新し変容させる「トランスフォーミング能力」に秀でていたことで、成功につながった事例といえるでしょう。

ソニー・コンピュータエンタテインメント株式会社(現 ソニー・インタラクティブエンタテインメント)

これまでに世界で累計5億台以上の販売台数を誇る「プレイステーション」シリーズですが、1990年代半ばに初代プレイステーションが登場する以前は任天堂がゲーム業界において圧倒的シェアを誇っていました。

そこで、ソニー・コンピュータエンタテインメント株式会社は自社だけで競争に挑むのではなく、ソフトメーカーや販売店なども取り込んだエコシステムを構築し、すべてのステークホルダーが利益を得る仕組みをつくりました。その結果、1996年には日本における任天堂の市場シェアを上回り、世界的にも成功しました。

自社の経営資源のみならず、他社の経営資源も相互にいかしたダイナミック・ケイパビリティの代表的な成功事例といえるでしょう。

参考:成功する日本企業には「共通の本質」がある|東レ P.11

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アップル社

「iPhone」などを展開する米IT企業・アップル社は、主力商品を浸透させるため、既存の小売店ではなく直営店を各地にオープンさせ、そこで販売するという戦略をとりました。

コストはかかりますが、販売プロセスを自社で管理するとともに、商品の魅力を専門スタッフが詳細に伝えることで顧客の満足度を向上させ、組織としての強みを生み出すことに成功しています。

また、同社は洗練されたデザイン性の高い商品を数多く発表し、市場において独自のポジションを築いています。デザイナーの採用に力を注ぐなどしてケイパビリティを高め、他社商品との差別化につなげた好例といえるでしょう。


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不確実な時代において不可欠なケイパビリティ

不確実な時代において不可欠なケイパビリティ

先行きが不透明で変化が激しいVUCA時代において、企業がこの先も生き残っていくためには独自の強みや特性を打ち出し、他社との差別化を図ることが重要です。

企業にとっての強みにはさまざまな要素がありますが、どのような業種においても、時代や環境の変化に対応できることは最大の強みといえるでしょう。

企業の「通常能力」であるオーディナリー・ケイパビリティを高めていくことはもちろん、変革し続けていくために必要なダイナミック・ケイパビリティは、これからの企業が備えておくべき重要な指針のひとつでもあるのです。

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著者プロフィール株式会社IKUSA

デジタルマーケティング事業を展開し、Webサイトの制作・運用・分析、記事・DL資料・メールマガジンなどのコンテンツ制作などを行う。2021年12月時点、自社で7つのオウンドメディアを運用し、月間合計600件を超えるコンバージョン数を達成。