効果的なOJTとは 5つのポイントをチェック

OJTを効果的にするポイントとは? 導入メリットや失敗しないための対策も解説

多くの企業では、新卒社員や中途採用向けの研修としてOJT(On the Job Training)が採用されており、研修方法として定番の一つといえるでしょう。しかし、実のところ効果的なOJT研修ができず悩んでいる企業も少なくありません。その原因は何なのでしょうか。今回は、OJTを導入するうえで重要なポイントや対策について解説します。

OJTとは

OJTとはどのようなトレーニング方法なのでしょうか。OJTの基本的な意味や、これまでの歴史、多くの企業で採用されるようになった背景について解説します。

OJTとは

OJTの意味

OJTとは「On the Job Training」の略称で、実際の業務を通じて、上司や先輩社員がトレーナー(指導役)となり、部下や後輩に必要な知識や技術を習得させる実践的なトレーニング手法です。
厚生労働省が2018年に実施した「能力開発基本調査」によると、実に62.9%もの事業所が正社員に対して計画的なOJTを実施しており、多くの企業において定着している研修方法であることが分かります。
(出典:令和元年度「能力開発基本調査」の結果を公表します|厚生労働省

OJTは、1917年にチャールズ・R・アレンによって開発された「4段階職業指導法」をもとに生まれたとされる指導法であり、日本には高度経済成長の時代から盛んに採用されるようになりました。
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OJTとOFF-JTの違い

OJTと対極にある研修方法としてOFF-JTが挙げられます。両者はどのような違いがあり、どのような場面で使い分ける必要があるのでしょうか。

OJTとOFF-JTの違い

OJTの特徴

実践のなかでスキルを身につけていくOJTの最大の特徴は、実務を体験しながら、知識や技術などを覚えることができるため、効率的に業務について学べることが挙げられます。

人手不足により、新人教育を担う人材が減少している企業も少なくありません。このような背景から、座学形式や合同での研修ではなく、いち早く現場で活躍する社員が育つことを期待してOJTを重視する企業が多いのです。

一方で、OJTは業務に直接関わりのある限定的な内容しか学べないケースも多く、企業や部署全体の役割、業務の一連の流れを体系的に学ぶことは難しい側面もあると言われています。

OFF-JTの特徴

実践ではなく、座学研修や集合研修などのトレーニングはOFF-JT(Off the Job Training)とよばれます。業務の現場から離れ、ビジネス上や組織のなかで必要な基礎知識やスキルを身につけるために開催される導入研修などが代表的な例といえるでしょう。

OJTを行う場合であっても、ビジネスパーソンとして最低限身につけておくべき基礎的な知識がなければ、理解を深めることは難しいでしょう。いきなりOJTとして研修をスタートするのではなく、業務フローを体系的に学ぶ機会としてOFF-JTを設けるケースが多いです。

ただし、OFF-JTで学んだことはすぐに現場で生かすことが難しいため、実践力を身につける場合はOJTのほうが適しています。

OJTとOFF-JTの違いは下表の通りです。実践的なスキルはOJT、体系的な知識はOFF-JTによる研修が適しており、それぞれのメリットを生かしたカリキュラムを検討することが重要です。

OJTとOFF-JTの特徴の違い

OJT(On the Job Training) OFF-JT(Off the Job Training)
・実践的に学べる ・体系的に学べる
・外部コストがかからない ・外部コストがかかることがある
・フィードバックや振り返りの機会が多い ・実施後の研修効果を測りづらい
・トレーナーによって指導内容にバラつきがある ・研修内容やクオリティが安定している

OJTを取り入れるメリット

OJTを研修に取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを紹介します。

OJTを取り入れるメリット

即戦力が身につく

OJTは実践のなかで仕事を覚えていくため、実務に関する知識やスキルが早く身につきやすいというメリットがあります。また、入社2年目、3年目のような若手社員にとっても、OJTで教育する側に回ることを通して、スキルや知識が定着しやすくなることも重要なポイントといえるでしょう。

一人一人の理解度や習熟度に合わせて育成できる

実務を一通り経験しただけで業務を実践できるケースもあれば、複数回取り組まないと理解が深まらないケースもあります。OJTは全体研修とは異なり、一人一人が実際の業務を通じて学んでいくため、個人の理解度や習熟度に合わせて育成していくことができます。

日本でOJTが浸透している理由

日本では、若い優秀な人材を育て上げるために、中途採用よりも新卒採用を重視することが多く、大企業ほどその傾向が強いのが現状です。
2019年に厚生労働省が報告した資料においても、従業員数が5,000名以上の大企業では、2017年度の新卒採用が62.6%であったのに対し、中途採用は37.4%にとどまっています。一方、従業員数が300名未満の中小企業においては、新卒採用は23.3%、中途採用は実に76.7%にのぼっています。
(出典:中途採用に係る現状等について|厚生労働省職業安定局

自社の方針や仕事の進め方について、実際に肌で感じ取ってもらうためにはOJTが効率的であることも、多くの企業で浸透している理由の一つといえるのです。

OJTの問題点

人材教育の効率という面では大きなメリットのあるOJTですが、問題点も存在します。

OJTの問題点

社員の通常業務に支障をきたす場合がある

特別に時間を割くことなく通常業務をこなしながら新人教育ができるOJTは、効率がよいと考えられがちですが、OJTを担当するトレーナーばかりに頼りきっていると、トレーナーの負担は増大し、通常業務に支障をきたすことも考えられます。

そのため、本来トレーナーが担うべき通常業務と、OJTに割く時間とのバランスを考慮しなければなりません。

トレーナーが通常業務にばかり時間をとられていると、教えられる新人社員にとっては「放置されている」とさえ感じてしまい、企業に対して不信感を抱くことにもなりかねません。

社員によって指導スキルにバラつきが生じる

OJTはトレーナーと新入社員との間で、マンツーマンで行われることも多いため、教え方がうまい社員とそうでない社員とで効果にバラつきが生じることもあります。

OJTを受けた新入社員の間で研修成果に差が生じてしまい、新入社員によってはトレーナーを担当する先輩社員に不信感を抱いたり、モチベーションが低下したりといったことも起こり得るでしょう。

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OJTに向いていない業務もある

OJTは決して万能な研修方法ではなく、向いていない業務もあります。繰り返し同じ作業でルーティン化できる仕事であれば、OJTをしながら効率的に仕事を覚えていくことができますが、イレギュラーなケースが多く個別の判断が求められる業務はOJTだけでフォローすることは難しいものです。

OJTを行うにしても、判断が難しい案件などに直面した場合は、「なぜそのような判断を行ったのか」を、その都度説明しながら教えていくことが必要です。

OJTの進め方

実際にOJTを進めるにあたっては、「業務を見せる」「業務内容の詳細を説明する」「実際に業務を行ってもらう」「良かった点を評価し、改善点をアドバイスする」という4つのステップを踏みます。

OJTの進め方

実際の業務を見せる

まずは、トレーナーが手本として実際の業務を目の前で実行します。言葉で説明するよりも、実際に行動で示したほうが分かりやすく、これから行う業務をイメージしやすいというメリットもあります。

業務内容の詳細を説明する

なぜこの業務を行うのか、その必要性も併せて業務内容を説明します。単に作業内容や流れを覚えてもらうだけではなく、業務の遂行にあたって重要なポイントや注意すべき点についても説明し、疑問に感じたことがあれば質問も受け付けます。

また、危険が伴う作業やリスクにつながる行動など、安全面で配慮すべきポイントがあれば、このタイミングで説明しておきます。

実際に業務を行ってもらう

新入社員に実際に手を動かして作業を行ってもらいます。このとき、新入社員が作業に集中しやすいように、できるだけサポートはしないようにしましょう。ただし、危険が伴う場合や大きなリスクにつながるおそれがある場合に備え、常に目を離さないことが重要です。

改善点をアドバイスする

実際の作業のなかで、うまくいかなかった部分とその理由を伝え、成功に導くための具体的なアドバイスを行います。単に悪いところを挙げるだけではなく、「こうすれば改善できる」という対策を示すことが重要です。また、良かった点があれば重点的に褒めることでモチベーションアップにもつながります。

また、作業の質を向上させるために、細かい注意点や改善点も補足して説明します。

効果的なOJT 5つのポイント

OJTによって研修効果を最大化するためには、どのようなポイントに注意して取り組むべきなのでしょうか。効果的なOJTのポイントについて、5つの項目を紹介します。

効果的なOJTのポイント

OJTに適した業務を見極める

OJTは現場での動き方や実践的な業務内容を教える際には効率的ですが、体系的な研修には不向きという特性があります。業務全体の流れや、どの部署でどのような業務を担っているのかなど、OJTを実施する前に全体研修としてOFF-JTが求められることもあります。

トレーナーの人選とサポート体制

たとえば営業のOJTを行うにあたって、営業成績が優秀な人材=優秀なトレーナーとは限りません。OJTのトレーナーになるということは新人教育に割く時間が生じるため、必然的にトレーナーを担当する社員の生産性は低下することになります。

経験豊富なベテラン社員は教えるのがうまいケースも多いですが、新入社員にとっては年が離れた社員には話しかけづらく、トレーナー自身もコミュニケーションがうまくとれない可能性も考えられます。

一方で、入社2年目や3年目の社員は年も近く話しやすいものの、トレーナー経験もないためOJTの質という面では不安を感じることもあるでしょう。

トレーナーを選出する際は、OJT を担当する社員本人にとって「トレーナーという仕事に抵抗がないか」を確認し、業務負荷を軽減するために周囲もサポートしていく体制づくりが求められます。

OJTの目標と実施計画を策定

最終的にOJTのゴールとして、どのような人材を目指すのか、具体的な目標を立てることが重要です。一般的には「一人前になる」「独り立ちできるようになる」と表現されることも多いですが、新入社員にとっては何をもって「一人前」なのかが判断できません。

たとえば営業部門の場合であれば「一人で顧客先を訪問し商談や質問に対応できる」「月間売上目標をクリア」などが挙げられます。定性的で曖昧な目標ではなく、定量的で客観的に評価しやすい指標をつくることが重要です。

フィードバックの重要性

トレーナーは新入社員に対して定期的にフィードバックを行い、アドバイスをすることが重要です。

ただし、注意しておきたいのは、目標を実現するために何が足りないのか、そのためにどの部分をどのように改善すべきなのかを具体的に示すということ。単なる「ダメ出し」になってしまうと、新入社員は具体的な改善策を見出すことができず、モチベーションは低下してしまいます。褒めるべきところは褒めつつ、改善が必要な点に対しては建設的で前向きな意見やアドバイスをすることが求められるのです。

また、フィードバックが十分に行われていないと、研修を受ける側の新入社員としても「自分はこのままで良いのか」と不安になってしまうため、できるだけこまめにフィードバックの機会を設けるようにしましょう。

「人・組織を育てる『フィードバック』の基礎知識」ダウンロードページはこちら リモートコミュニケーションのヒントも

OJTシートの活用

効率的かつ計画的に研修を進めていくために、OJTシートを活用してみましょう。

OJTシートには、OJTの達成度や管理を行う「育成計画シート」と、トレーナーと新入社員のコミュニケーションを図るための「コミュニケーションシート」が存在し、それぞれの目的でシートを使い分けます。

育成計画シートは、OJTの目標や研修内容を記録するシートです。トレーナーと人事部、関係部署も含めてOJTの進捗具合を共有するために有効で、今後の人材育成プランを検討する際にも役立ちます。また、新入社員にとっては、どの程度カリキュラムをこなしてきたかが分かり、ゴールまでのスケジュールも把握しやすくなります。

コミュニケーションシートは、トレーナーと新入社員との間でフィードバックなどのやり取りを行うシートです。トレーナーが伝えたいことを簡潔に文章として表現できるため、OJTを受ける新入社員に意図が伝わりやすく、研修内容を客観的かつ冷静に振り返ることができます。

OJTがうまくいかない理由とその対策

OJTを実施していても、思うような成果が出ずに困っている企業もあるでしょう。なぜOJTがうまくいかないのでしょうか。考えられる原因をピックアップするとともに、必要な対策についても紹介します。

OJTがうまくいかない理由とその対策

トレーナーのスキルにばらつきがある

OJTにおいて最も多い悩みが、トレーナーのスキルによって研修の質が左右されることです。教えるのがうまいトレーナーのもとでは新入社員が伸び、反対に教えるのが苦手なトレーナーのもとでは新入社員が伸び悩むことも多いです。

このような悩みを抱える企業の多くは、OJTそのものが属人化している可能性があります。業務に精通しているのは現場で働く社員ですが、だからといって新人教育の全てを現場の社員に丸投げすべきではありません。

このような問題を解決するためには、全社でOJTの方針や取り組み内容をカリキュラム化し、研修の内容や方法が指導するトレーナーによって左右されないようにする工夫が必要です。研修における共通の目標や取り組み内容をトレーナーに明示することで、スキルの差に影響されにくいOJTが実現できます。

前職での経験やルールが抜けきれていない

中途入社や第二新卒として採用された社員の場合、前職での経験やルールが抜けきれておらず、新しい職場環境になじめないケースがあります。

前職では問題なかった行動や考え方も、職場が変わると通用しないということが多々あります。先輩や上司が指示を出しても、自分自身が納得しないと動かなかったり、そもそもどのように動けば良いのか分からなかったりすることもあるのです。

このような場合、単なる業務命令として指示するのではなく、なぜこの研修が必要なのか、という「動機付け」が重要になります。また、問題を解決するためにはトレーナーのサポートが求められることも多いため、単に問題点を指摘して終わりではなく、あくまでも一緒になって解決していく姿勢が大切です。

トレーナー以外に相談できる相手がいない

新入社員の立場で考えたとき、トレーナーに相談しづらい内容や、トレーナーでは答えてくれないような内容を相談したいことも考えられます。たとえば、「これまで何度も教えられてきた内容なので、今さら聞きづらい」「いつも忙しそうにしていて話しかけづらい雰囲気がある」など、その人が抱える事情はさまざまです。

また、人間対人間である以上、新入社員とトレーナーとの相性の問題でコミュニケーションがうまくとれないケースも想定されるでしょう。相手は先輩や上司であり、ましてや面と向かって相談しづらい内容の場合は、一人で悩んでしまう新入社員も少なくありません。

このように、OJTのなかで新入社員が悩んでいる様子があれば、トレーナー以外の人間が相談に乗ったり、定期的に上長などが1対1での打ち合わせをしたりすることも必要です。

まとめ

まとめ

日本では人材育成の手法としてOJTが浸透していますが、必ずしも全てのケースにおいてOJTが最適とは限りません。OJTに向いていない業務や研修もあり、必要に応じてOFF-JTと組み合わせたカリキュラムを組むことが求められるのです。

また、新入社員を教育するトレーナーの人選や、適切な目標設定、進捗管理などもOJTの成功に向けて不可欠な要素の一つです。

OJTがうまくいかない場合、原因としてはさまざまな理由が考えられ、決してトレーナー個人の責任と決めつけるべきではありません。OJTによる新人教育は、企業全体として目標やカリキュラムを検討したうえで、OJTを担当するトレーナーをフォローしていく必要があるのです。

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著者プロフィール株式会社IKUSA

デジタルマーケティング事業を展開し、Webサイトの制作・運用・分析、記事・DL資料・メールマガジンなどのコンテンツ制作などを行う。2021年12月時点、自社で7つのオウンドメディアを運用し、月間合計600件を超えるコンバージョン数を達成。