優秀な人材を採用するためには、適切な採用基準を設定する必要があります。本記事では、採用基準とは何かを解説したうえで、実際に採用基準を作成する流れから、重要な評価項目や注意点を紹介します。
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採用基準とは
採用基準とは、自社にとって必要かつ最適な人材を採用するために、採用選考において必要となる指標です。特に複数の採用担当者がいる場合、それぞれの性格、経験、価値観や判断などによって選考結果に差が生じてしまうこともあります。
自社に必要な人材にもかかわらず採用する機会を逃す、採用後にミスマッチに気付く、といった問題が起きてしまいます。こうした事態を防ぐため、採用活動のマニュアルの一部ともいえる「採用基準」は重要です。
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採用基準の作り方の流れ
採用活動においてなくてはならない採用基準。実際に採用基準を作成する際の手順について、確認しましょう。
人材要件の定義
まず、配属する予定の現場責任者や経営陣にヒアリングを行います。ヒアリングで経営陣の意向ばかりを取り入れてしまうと、実際の現場で求められる人材との乖離(かいり)が生じる可能性もあります。
逆に現場目線での要件定義では、管理職や事業の中核を担えるような人材を見落としてしまうことも。経営層と現場の意見をうまく取り入れて、必要なスキル・経験や志向性などを言語化した「人材要件定義」を作成しましょう。
コンピテンシーモデルの作成
コンピテンシーとは、高い業績や成果を上げている社員に共通してみられる行動特性のことです。実際に自社で活躍している優秀な社員を分析することで、自社にマッチした人材を獲得するために有効な「コンピテンシーモデル」を作成できます。
コンピテンシーモデルを作成する際は、自社で活躍している社員からその性格の特長や行動特性を抽出します。このとき重要なのが、「行動内容そのもの」よりも「なぜそのような行動をとったか」という思考の部分に着目することです。
採用選考時に、面接でヒアリングした候補者の今までの行動内容が、コンピテンシー指標とどれくらい合致するかを測るためにも、採用基準とする際には5段階や7段階などレベル別にすると評価がしやすくなります。
【参考記事】
コンピテンシーとは? ハイパフォーマーを生み出すための人材育成のモデル
求める人物像(ペルソナ)を明確にする
社内でのヒアリングを参考に定義した人材要件や、コンピテンシーの分析で得られた特性などをもとに、求める人物像(ペルソナ)を明確にしていきます。その際、具体的な人物モデルとなるペルソナを設定するとよいでしょう。
スキルセットやマインドセットに加え、パーソナリティーも組織で働くうえで大切な項目です。これらを詳細に設定していき、そこに想定される給与額や勤務形態などの条件を加えると、自社で求めるペルソナが明確になります。
重視する評価項目を決める
評価項目を増やすほど詳細な評価が可能になりますが、項目が多すぎると評価する採用担当者や面接官への負担も大きくなります。評価する側の負担をある程度軽減するために、書類選考や一次面接などの選考活動の初期段階で、重点的に評価する項目を絞り込むとよいでしょう。明確な評価項目があることで、担当者ごとの選考判断のばらつきを少なくする効果もあります。
これらを明文化しておくことで、ミスマッチの防止や採用の効率化だけではなく、担当者が変わったとしても評価基準は変わることなく採用活動を進めていくことができます。
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新卒採用で重要な3つの評価項目
新卒採用の応募者は、基本的に実務に関するスキルや経験を持っていません。そのため、中途採用に比べて、必須スキルなどを明文化しづらく、採用基準が曖昧になりがちです。ここでは、新卒採用で重要視される評価項目を挙げていきます。
コミュニケーション能力
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が発表している「新卒採用に関するアンケート調査結果」の「選考にあたって特に重視した点」において、16年連続(2018年度 調査結果)第1位となっているのが、コミュニケーション能力です。ビジネスにおけるコミュニケーション能力は、円滑に他者と人間関係を構築する能力のほか、相手の求めるものを聞き出せる力や真意・感情を推し量る力、意見を伝える力など多岐にわたります。
【参考】
2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果(一般社団法人日本経済団体連合会)
主体性
先ほど紹介した経団連が発表している「新卒採用に関するアンケート調査結果」の「選考にあたって特に重視した点」において、10年連続(2018年度 調査結果)第2位を維持しているのが「主体性」です。どのようなことでも「自分ごと」として物事に進んで取り組める能力のことで、主体性がある人材はさまざまなことに積極的に取り組むため、問題解決能力なども高い傾向にあります。
また、主体性は自己評価や自己管理にもつながる能力であるため、入社後の成長スピードを速める素養といえます。
協調性
協調性とは、ただ周囲の人の意見に同調することではなく、意見や立場が異なる人とも円滑にコミュニケーションできることをいいます。また、他者と協力して行動する「チームワーク」にも欠かせないものでもあります。特に新卒入社の場合、入社当初は上司や先輩社員の指示を受けながら誰かとともに業務を進めていくことがほとんどです。自分の知りたいことを聞くだけではなく、相手が求めていることを聞き出す「傾聴力」なども協調性の一要素であり、組織の一員として働いていくためには欠かせないでしょう。
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採用基準を作成する際の注意点
採用基準を作成する際には、注意点もあります。なかには法律によって禁止されている事柄もありますので、採用基準を作成する際は注意しましょう。
禁止されている項目を含んでいないか
法律上、採用基準に含めることが禁止されている事項があります。たとえば、雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集および採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されました(ただし、例外として年齢制限が認められる場合もあります)。
【参考】
その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?(厚生労働省)
そのほか、性別、身長・体重、障害・病気の有無、転居を伴う転勤に応じるか、といった項目も採用基準に含めることが禁じられています。採用基準作成の際は、細心の注意を払う必要があります。
配慮を求められる項目を含んでいないか
就職差別につながる恐れがあるため、本人に責任のない事項や、本人の自由であるべき事項について、面接の場で質問することは法律で禁止されています。
身元調査・合理的必要性のない採用選考時の健康診断を実施することなど、14事項が挙げられます。応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、「家族に関すること」の質問が約半数を占めているそうです。面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようですが、十分に注意しましょう。
言葉の定義を明確にする
採用基準を作成し、いくら言語化しても、担当者によって言葉の捉え方が異なっては、齟齬(そご)が生じてしまいます。採用活動に関わる人の間で迷いやブレが生じないよう、言葉を明確に定義する必要があります。「リーダーシップがある」「思考力が高い」とは具体的にどのような能力を指すのか、どのような質問をすればそれを見極めることができるのかを明確にしましょう。
また、「経験年数」などを採用条件にしている場合、その設定年数に期待する能力や経験を明確にすることも大切です。同じ「職務経験3年」でも、その3年で得た経験やスキルは候補者によって異なります。経験年数を採用基準にする場合には、「クライアントとの調整・折衝経験」や「プロジェクトの規模」といった具体的な条件も加え、共通理解を深めます。
候補者を公平に見極める。「面接」の手法を見直そう

採用活動における課題の一つが、面接官による評価のばらつき。「面接手法」を改めて見直し、判断基準を標準化しましょう。
本資料では「構造化面接法」と「インシデントプロセス面接」をご紹介します。