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「コンピテンシー」とは、ハイパフォーマー(高業績者)に共通する行動特性を指し、人事分野で広がりつつある概念です。コンピテンシーの活用にあたっては、人事担当者が現場を巻き込み、協議しながら設計を進めることが望ましく、人事や経営層からトップダウンで進めていると、有効に活用できなくなってしまう可能性があります。
今回はコンピテンシーに関する基礎的な知識とともに、コンピテンシーをどのように人材育成や人事評価、採用面接で活用するのか、またその活用方法、注意点について解説します。
1. コンピテンシーに関する基礎知識
コンピテンシーの活用方法をお伝えする前に、その定義とモデルについてご紹介します。コンピテンシーの評価項目は企業の状況・特性によって変わることを理解しましょう。
1-1. コンピテンシーとは
コンピテンシー(competency)は、直訳すると「適性」。冒頭でご紹介したように、人事の分野で、コンピテンシーは「ハイパフォーマーに共通する行動特性」を指します。コンピテンシーの考え方は、1970年代にハーバード大学の心理学者マクレランド氏が提唱し、米国を中心に人材開発の分野で広まっていきました。
「高い成果を上げている」と誰もが認めるような人材に対し、その人材が成果を出せる理由を明らかにすることで、優秀な人材の採用・育成に役立てられると考えられます。つまり、コンピテンシーは人事戦略における一つの手段であるといえます。
コンピテンシーは、普遍的かつ一元的に決められるものではありません。業種・職種や企業がどのような成長フェーズにあるのか、どのような戦略をとるのか、などによって変わります。
たとえば営業職のコンピテンシーといえば、目標達成への強固な意志やストレス耐性、コミュニケーション能力などが考えられます。一方でシステムエンジニアのコンピテンシーは、集中力や論理的思考力、プログラミングに関する知識、向学心などが挙げられそうです。少なくとも、営業職のコンピテンシーとは大きく異なるでしょう。
コンピテンシーを自社で定義することにより、採用・育成・評価の方向性も定まります。コンピテンシーを一つの指標として人材の採用と育成を行い、コンピテンシーに基づいて社員を評価することで、社員一人一人の成長と、企業の成功をともに達成できる、という考え方が背景にあります。
このようにコンピテンシーは、それぞれの企業に合わせて、柔軟に設計する必要があります。他社のコンピテンシーや先行事例をそのまま活用するのではなく、自社内で現場と人事、経営層などでともに検討することが望ましいでしょう。
1-2. コンピテンシーの主な種類
コンピテンシーを有効に活用するためには、コンピテンシーの概念をモデル化した「コンピテンシーモデル」が参考になります。今回は、コンピテンシー設計のベースとなる、3つのモデルをご紹介します。自社で取り組む際に、どのモデルで設計するのが適切か、検討してみてください。
理想型モデル
理想型モデルとは、実際に自社内にそうしたコンピテンシーを備えた人材がいるか否かにかかわらず「自社の求める理想的な人材像」を検討し、設計するものです。社内に理想とするハイパフォーマーが見当たらない際に有効です。企業が理想とする人材像の詳細を検討し、それに基づいて評価項目や採用基準を設けます。
実在型モデル
理想型モデルとは反対に、実際に在籍している「能力の高い人材」を参考にコンピテンシーモデルを設計するのが実在型モデルです。実際に模範となる人材が身近にいるので、理想型よりもコンピテンシーの設計が容易となります。
ただし、その模範となる人材が持っている行動特性が、後天的に身につけられないという場合もあるでしょう。そのような行動特性を、コンピテンシーとして取り入れると実現性に欠ける可能性があります。どのような行動特性をコンピテンシーとして採用するのか、注意深く検討する必要があります。
ハイブリッド型モデル
ハイブリッド型モデルは、理想型モデルと実在型モデルの折衷案です。実在型モデルだとコンピテンシーモデルをうまく設計しきれないことも多いため、「こうあってほしい」という理想も取り入れます。設計のしやすさと身につけるべき行動特性を含められるという2点を両立できるため、他の2つのモデルより優れているといえるかもしれません。
実際に人事制度へコンピテンシーを取り入れる際は、まず社内の模範となる人材にヒアリングをしたうえで、目指すべき行動特性を足し合わせるというプロセスを踏むのが一つの方法です。この方法については、後ほど詳しく説明します。
2. コンピテンシーを採用に活用するメリットと注意点
コンピテンシーは、採用活動にも活用できます。採用にコンピテンシーを活用する場合、メリットもありますが、一定の注意も必要です。ここでは活用する際のメリットと注意点をご紹介します。
2-1. コンピテンシーを採用に活用するメリット
採用選考において常に問題となるのは、採用基準の主観性です。現場が求めている人材であるにもかかわらず、担当した面接官の思い込みや主観的な判断によって選考を通過しない、なかなか現場にマッチした人材を採用できない、といったケースもあるでしょう。
このような場合も、評価項目としてコンピテンシーを定めることにより、候補者の評価が面接官の主観に左右されにくくなり、採用活動が円滑に進みます。
また、コンピテンシーモデルを取り入れることで、戦略的な採用や人材配置、育成・研修や処遇の決定につながります。各プロセスで一貫したコンピテンシーを基準とすることで、効果的な人事戦略の実践が可能です。
部署や職種などに応じて複数のコンピテンシーモデルを活用することもあります。そのような場合、複数のコンピテンシーモデルがそれぞれどれくらいの人数比を占めるべきか、理想とする構成比に基づいて、採用面接を実施する企業もあります。そうすることで、組織において望ましいと思われる能力・行動特性や人員比などのバランスをとることができ、より良い人事戦略を実践できると考えられます。
2-2. コンピテンシーを採用に活用する際の注意点
コンピテンシーを採用に活用することは、組織の成長における万能薬ではありません。自社のビジョンや戦略、社風などを踏まえたうえで、社内の複数の関係者が協議して慎重に設計する必要があります。
そうでないと、現場に納得感がないコンピテンシーが設計されたり、あまり現実味のないコンピテンシーになってしまったりと、採用に活用しきれない結果になる可能性があります。
そして何より、設計したコンピテンシーに近い行動特性を高めることが本当に適切なのか、常に検証しなければいけません。コンピテンシーはある種の仮説のため、設定された基準に合致している人材だからといって、必ず自社で活躍できるとは限らないのです。
コンピテンシーは自社の状況に応じて変化するものでもあり、永続的ではありません。したがってコンピテンシーを一度設計した後も、運用開始から1年~2年間で定期的に更新を図る必要があるでしょう。
3. コンピテンシーを採用に活用する方法
コンピテンシーを採用に活用するにあたっては、自社に合ったステップを踏むことが大切です。ここでは、具体的に、コンピテンシーを採用に活用する際のステップ例をご紹介します。
3-1. コンピテンシーを活用する目的を定める
コンピテンシーを採用に活用することで、社員および会社のあるべき姿の実現を目指せるため、活用方法の一つとしてコンピテンシーモデルを基にした目標管理なども可能でしょう。
しかしまずは、「何のためにコンピテンシーを活用するのか」目的を定めることが重要です。コンピテンシーを活用することによって目指す姿を具体化するとともに、将来的にどのような組織が、自社の理想とする組織なのかを検討しましょう。
たとえば、コンピテンシーをいくつ設計すべきか、あるいは理想型モデルにすべきか、実在型モデルにすべきか、実在型なら誰をハイパフォーマーとして参考にすべきかなどを検討する必要があります。
3-2. 社員にヒアリングする
現場の社員に意見を求めることで、現場の考え方や、現場で求められている行動特性と、コンピテンシーとの乖離(かいり)が発生することを防ぎます。インタビューやアンケートを実施することにより、ハイパフォーマーと思われる社員の行動や思考、スキルを把握できます。特に、職種ごとに複数の社員に対してヒアリングを実施することをおすすめします。
ヒアリングは、業務の質を高めるにはどんな能力・特性が必要なのか、現場の社員に改めて考えてもらう機会にもなります。ここでのコンピテンシーの活用目的は採用活動の強化にありますが、コンピテンシーの活用が既存社員の育成にもつながることを期待できます。
3-3. コンピテンシーを設計する
調査内容を基に、ハイパフォーマーの行動や考え方、業務に与える影響などを細かく分析し、具体的なコンピテンシーを設計しましょう。採用選考時に、面接でヒアリングした候補者の今までの行動内容が、コンピテンシー指標とどれくらい合致するかを測るためにも、採用基準とする際には5段階や7段階などレベル別にすると評価がしやすくなります。
4. コンピテンシーの活用で、社員が自ら伸びる組織に
コンピテンシーを明確に定めることで、人材の評価基準に客観性が出てきます。社内の各部署で「こういった人材を目指そう」という合意形成ができるため、採用はもちろん既存社員の成長の方向性も分かりやすくなります。コンピテンシーを設計し活用することは、社員の育成やモチベーション喚起にも役立つといえるでしょう。
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