『攻めの採用』こそ、効率的に」 ~年間100名の採用を実現する、鎌倉新書の採用とは~(第1回)

「『攻めの採用』こそ、効率的に」 ~年間80名の採用を実現する、鎌倉新書の採用とは~(第1回)


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「お墓」「仏壇」「葬儀」「相続・遺品整理」など終活全般におけるインターネットサービスを事業の中核として、ライフエンディング業界をリードする、株式会社鎌倉新書(以下、鎌倉新書)。超高齢化社会における「終活インフラ」企業を目指し、5~10年先を見据えて事業の刷新や開拓を積極的に展開するなかで、もっとも重要視してきたのが「人と人とのつながり」です。

会社は「人が成長し、充実した人生を送るための最良の場所」であるべき。その考えのもと、採用理念として、会社の成長と個人・仲間の幸福の結びつきを強く意識しています。

今回は、ダイレクトリクルーティングを通して「人材紹介会社頼みからの脱却」と「現場主導の採用」を実現した、人事総務部の中久保完治様にインタビュー。採用業務未経験でありながら、月200~400件のスカウトを送信し、年間80名の中途採用を成功させた秘訣についてうかがいました。

中久保 完治氏

取材対象者プロフィール中久保 完治氏

株式会社鎌倉新書 人事総務部

種子島出身。大学卒業後、2015年株式会社鎌倉新書に入社。書籍部門、Webディレクター、事業立ち上げ、営業、管理など、マルチタスクプレーヤーとして多方面で活躍。2017年に東証マザーズから東証1部への市場変更プロジェクトを担当。2018年に人事に配属され、採用チャネルの見極め、課題分析、採用プロセスの改善に注力。

未経験で始めた、採用プロセスの刷新

入社3年目、事業の立ち上げや管理経験を経て、採用担当に抜てき

私は、2015年に新卒で鎌倉新書に入社し、月刊「仏事」の記事制作や「いい葬儀」のWebディレクター、またお別れ会をプロデュースする「Story」という新しいサービスの立ち上げに従事するなど、さまざまな形で事業に携わってきました。2015年12月に経営管理部に配属されてからは、社内のルール整備やIR資料作成などを担当。約3年間、多角的にサービスと会社を見てきたということで、2018年2月に採用業務未経験ながら人事に配属され、総務や監査などの業務も兼任しながら、新卒・中途採用の業務全般を一貫して担当することになりました。

私が入社した2015年には50名前後の従業員規模だったのが、事業成長に伴って急速に増え、現在では160名規模にまで拡大。即戦力となる中途採用に特に力を入れていたこともあり、2017年の内定者数は40名、2018年には60名、2019年は100名と順調に推移してきました。

入社3年目、事業の立ち上げや管理経験を経て、採用担当に抜てき(中久保 完治 様 株式会社鎌倉新書)

未経験でゼロから模索。採用の課題は「効率化」と「採用コスト」

急速に成長を続けていましたが、前任の採用担当者が1カ月後に退職してしまうことが決まっていました。そのようななかで、選考プロセスの効率化や採用コストの見直しに向け「採用の在り方」を見直さなければなりませんでした。

現在は採用担当が一人増員されましたが、当時は未経験の私が採用に向けた戦略を立て、実行しなければならず、抜本的な改善が必要でした。

ダイレクトリクルーティングに軸足を置き、決定率を上げる

「人材紹介会社頼みから脱却」し、「オンリーワン」として候補者に向き合う

採用担当に着任した当時、採用チャネルのほとんどは人材紹介会社が占めていました。採用決定も一定の実績が出ていましたが、そんななかで、「人材紹介会社頼みからの脱却」を図ることにしました。採用コストの面もありますが、それ以上に課題感を持っていたのが、内定承諾までのスピード感と採用決定率だったのです。

人材紹介会社では選考過程で候補者との日程調整を行ってくれますが、その際、同時進行中の他社案件との兼ね合いを見て、面接などのスケジュールを調整することもあると思います。もちろん、人材紹介会社の担当者から紹介される人材は優秀な方ばかりですし、候補者の意向を第三者的にヒアリングしてくれるのは大きなメリットでした。しかし、選考過程で常に他社と比較ができる状況にあると、当社のように認知度がまだ高いとはいえない中小企業にとっては、給与などの待遇面などで後れを取ってしまうケースが多々ありました。

せっかく良い方に出会っても、選考過程の終盤で辞退されては、また振り出しに戻ってしまいます。そうした非効率的な採用プロセスを打開するためには、当社が主導権をもって直接候補者を探し、選考を進めていかなければならないと考えました。

2018年当初は、10社ほどの人材紹介会社から紹介を受けていましたが、翌2019年には厳選して数社にしぼり、ダイレクトリクルーティングへの方針転換を本格化。他社の選考状況と足並みをそろえられることがなくなり、候補者にとっての「オンリーワン」として向き合えるようになりました。選考スピードを速めることで、候補者の方の温度感が高い状態で内定承諾まで伴走できるようになったと感じています。

ダイレクトリクルーティングに軸足を置き、決定率を上げる(中久保 完治 様 株式会社鎌倉新書)
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「スカウト」と「面接」は現場主導にシフト

一人だけでは実現できない。だからこそ、「現場」を巻き込む

そしてもう一つ、採用プロセスの効率化を図るために重視したのが「現場主導の採用」へのシフトでした。というのも、前任の採用担当者は社歴が非常に長く、営業から事業開発、広報、役員まで幅広く経験し、どのポジションのことも深く理解した者だったため、どのポジションの候補者に対してもそれぞれに合った魅力を「語る」ことができていました。一方私は、採用経験もなく、社歴も経験も前任には及びません。私一人では同じようなアピールはできないと思ったのです。

そこで「現場を最も知っている現場の社員から、直接伝えてもらおう」と考えました。自分一人ですべてをやろうとするのではなく、「欲しい人材」を熟知し、候補者の疑問につぶさに対応できる現場の責任者に採用業務や権限を委譲していくことにしたのです。

とはいえ、現場主導に移行するのは試行錯誤の連続でした。例えば、当初は現場といっても、多忙な事業部長に配慮してマネージャー層に依頼していたのですが、マネージャーと部長の間で採用に関する意識のすり合わせが常にできているわけではなく、手戻りの発生につながっていました。そこで、多忙を承知で事業部長に直談判。いざ話してみると、経営層をはじめ、上層部のメンバーほど採用に対して前向きで、現場主導の方針は好意的に受け止めてもらいました。

現場へのこまめなフィードバックが、採用の「自分ごと化」を後押し

もちろん、現場は忙しいので、すべての工数をいっぺんに任せたわけではありません。基本的なスカウト文の作成や候補者からのスカウト返信対応、選考の日程調整、面接官の手配といったオペレーション業務は採用担当のほうで担い、現場には候補者の選定や実際のスカウト送信、面接での魅力付けなどをお願いするなど、任せられること、任せたほうがよいことを要素分解し、整理していきました。

また、現場社員に採用への取り組みを成功体験として受け止めてもらえるようにも意識。私の場合、1日のうちで数十分ほど「社内散歩の時間」を設け、採用に関わっている社員と5分ほど立ち話をするなど、こまめにコミュニケーションをとるようにしています。候補者の選定やスカウトに関する悩みをヒアリングするだけでなく、候補者からいい反応が返ってきている、選考が順調に進んでいるなどの進捗もフィードバック。その効果もあってか、現在では「スカウト」と「面接」に関しては人事が直接関わらずとも回るようになり、今では現場主導で動く採用が当たり前のものとなっています。

現場が採用の上流から関わることで、適切な意志決定や選考プロセスのスピードアップが実現できるようになったほか、人材データベースから求める人材をみつけることを通して、求める人材が市場にどれくらいいるのかを把握してもらえるようになりました。

現場へのこまめなフィードバックが、採用の「自分ごと化」を後押し(中久保 完治 様 株式会社鎌倉新書)

「採用体験」を重視し、月200~400件のスカウト送信を実現

スカウトに関しては、「量」と「スピード」をとても大切にしています。これは、多くの候補者と接点を持ちたいという意図もありますが、もう一つ、現場に「採用体験」を重ねてもらいたいという思いも込めています。スカウトを現場自らが送ることは、採用を「自分ごと化」し、採用に責任を持つという意識づけのきっかけにつながる。つまり、スカウトを自ら送信することで、「採用体験」の機会が増やせると考えています。

そのため、忙しい事業部長にスカウトを送る時間をどうつくってもらうか試行錯誤しました。事業部長を集め、全員で1時間集中してスカウトを送る時間をとるなどを試してみました。しかし、本来の業務が立て込んでいるときなどは参加ができないこともあり、検討した結果、個別にコミュニケーションをとるように切り替えました。

現在は、各事業部長に採用ニーズや意欲を定期的にヒアリングし、タイミングを見て声をかけるようにしています。場合によっては、ターゲットリストを見せたり、その場で人材データベースの検索を一緒に行ったりと、採用活動に対する意欲を高める工夫をして、スカウトの活性化につなげています。

スカウト型サービスの比率が採用チャネルのほぼ3~4割を占めるようになった2019年には、スカウト送信数は月平均200件ほど。多いときには400件にも上っています。これは、事業部長10名のうち、常時採用ニーズがある5~6名が1日10~20件スカウト送信をする計算ですが、募集ポジションが複数ある事業部長には、人事がサポートに入るため、さらに多くなる場合もあります。

また、業務の傍らでもスカウトを手軽かつスピーディーに送信できるよう、人事側でスカウト文のひな型を職能ごとに用意。「採用」を身近に感じ、積極的に取り組んでもらえるよう、「スカウト返信率」は重視せず、まずは数多くのスカウト送信経験をもってもらうことが狙いです。最近では、事業部長のなかには個々に文面をカスタマイズして送信する者も増えており、この思いが徐々に浸透していると感じています。

採用成功のカギは「ストーリー」と「スピード感」

選考終盤のスピード感を高め、内定承諾率85%を実現

そうしたなかで選考に進んでいただき、内定承諾率を高めるために必要だと感じたのは、「サクセスストーリーの提示」と「選考のスピード感」の2つでした。

1つ目に関しては、当社で働くことによる「サクセスストーリー」をきちんと設計し、候補者に示し、引きつけることが不可欠だということ。ビジネスでは、顧客に対してワクワクするような未来や魅力ある価値を提案できなければ、契約などにはつながらないものですが、採用もそれと同様だと思います。

これはひとえに採用広報、またIRに近い作業ともいえるかもしれません。というのも、当社が2019年にダイレクトリクルーティングへ採用活動をシフトできたのは、ちょうどその年に全社方針が明確になり、候補者に当社での「サクセスストーリー」を訴求しやすくなったためでもあります。

「5〜10年で『終活インフラ』企業を目指す」──。この確固たる意志が、経営トップから現場の隅々までいきわたったことで、採用選考においてもだれもが同じメッセージを発信できるようになり、面接における強い「くどき」の力となっています。

たとえば、終活インフラを目指すうえで、今後ユーザーのニーズに適するサービスラインアップを充実させるスピード感は非常に重要となってくる。そのために、候補者であるAさんのプラットフォームビジネスの経験をぜひとも生かしてほしい。ここで結果を出すことで、次のLTV最大化に向けた設計フェーズや他事業への展開など、キャリアの幅をグッと広げていける。このように期待値をドリルダウンして、会社のミッションと候補者のサクセスストーリーを適切に結びつけられるようになりました。

また、後者の「選考のスピード感」については、特に面接後のご連絡および次回面接日のセッティング、面接当日の内定通知といったところに注力しています。私が人事に配属された当初は、「Googleカレンダー」「Google スプレッドシート」「Chatwork」「メールワイズ」「キントーン」など、さまざまなシステムやツールを使っていましたが、トータルで管理するには複雑で、時間も工数も大きくかかっていました。

そこで現在は、「ビズリーチ・ダイレクト」との自動連携機能が備わった、採用管理システムのHRMOS採用を導入。面接後はすぐに面接官が評価を入力し、人事側ですぐに内容を確認できるようになったため、次回面接の設定や内定通知のご連絡が素早く対応できるようになりました。面接後、候補者の温度感が高い状態で、内定承諾まで圧倒的な速さで進められるようにしています。その結果、内定承諾率が85%まで向上し、候補者の方からも「こんなに早く選考が進むとは思わなかった」と驚かれたことが何度かあります。なかには、応募から2週間のなかで4回の面談を経て、業務を開始しているメンバーもいますね。

「ありがとう」の連鎖を生む、当社らしい採用を

ダイレクトリクルーティングに取り組むなかで面白いのは、人材データベースの活用やスカウト送信を重ねるなかで、当社に適した採用アプローチを模索できる点にあると思います。求める人材への理解が進むうちに、スカウト文だけでなく、求人のブラッシュアップやポジション自体の見直しが必要になる場合は往々にしてあります。そんなときでも、「今必要な人材」に対して「どうアプローチすべきか」、スピード感をもって現場と話し合い、改善できるようにしています。会社一丸となって「人」に向き合い、最善の道を考えられる採用の在り方は、まさに私たちの会社にマッチした手法だと感じています。

当社は、「私たちは、人と人とのつながりに『ありがとう』を感じる場面のお手伝いをすることで、豊かな社会づくりに貢献します」という理念を掲げていますが、これは人と人とのつながりを生む採用においても通じることだと思っています。現在はリファラル採用(リファーラル採用)も強化しており、今後も積極的に現場を巻き込みながら、社内外に「ありがとう」の連鎖を生む当社らしい採用を推進していきたいと思います。

選考終盤のスピード感を高め、内定承諾率85%を実現(中久保 完治 様 株式会社鎌倉新書)

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執筆:久保田 かおる、編集:辻井 悠里加(HRreview編集部)

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