産直ECサイト「食べチョク」を運営する株式会社ビビッドガーデン。2016年に創業し、2020年8月には6億円の資金調達を発表するなど、急成長中のベンチャー企業です。
同社はビズリーチなどを利用したダイレクトリクルーティングを実践し、ビジネス部門の幹部候補やエンジニアの採用を強化しています。ビズリーチにおけるスカウトの返信率は約20%と、平均を上回る数値。高いスカウト返信率の背景にはどのような取り組みがあるのでしょうか。
今回は、同社の事業や、中途採用およびダイレクトリクルーティングの取り組みについて、採用担当の佐藤薫様と、エンジニアの平野俊輔様にお話を伺いました。

取材対象者プロフィール佐藤 薫氏
株式会社ビビッドガーデン HR

取材対象者プロフィール平野 俊輔氏
株式会社ビビッドガーデン エンジニア・採用
生産者のこだわりが正当に評価される世界へ
ーーまずはビビッドガーデンの主力事業である「食べチョク」について教えてください。
平野様:私たちビビッドガーデンは「生産者のこだわりが正当に評価される世界へ」というビジョンを掲げて、事業を推進しています。運営しているのは産直ECサイト「食べチョク」です。こだわりを持って生産をしている農家や漁師の方々に対して、直接消費者に販売できるプラットフォームを提供し、持続可能な1次産業の構築を目指しています。
購入者からの目線では「ちょっといいもの」「こだわりを持った、おいしいもの」が購入できるサイトとして利用していただいています。
佐藤様:サービス開始のきっかけは、代表秋元の農業に対する強い思いにあります。
秋元は農家の娘として生まれましたが、もともと家族からは「農業は儲からないから継がなくていい」と言われて育ち、中学時代に実家の農業は廃業しています。その後新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、数年後に実家の畑を訪れたところ、担い手のいなかった畑は荒地となっていました。
「色とりどりの野菜が実っていた畑はなんでなくなってしまったんだろう」と考えた秋元は、日本全国で発生している同様の課題を解決したいと農業分野で起業することを決意。中小規模の生産者の販路の選択肢を増やすオンライン直売所「食べチョク」事業を始めました。食べチョクは、生産者にしっかりと利益が行き渡るようにという考えのもと生まれたサービスです。

ーーECプラットフォームというプロダクトの観点では、どのような特徴がありますか。
平野様:消費者と生産者がサイト上で直接コミュニケーションできる機能が特徴の一つです。
食べチョク上では、購入した商品が到着したら「届いたよ」とか「こんなふうに食べておいしかったです」というような投稿ができます。生産者の方からも「食べていただいてありがとうございます」などと返信ができます。「食べチョク」は商品を通じたコミュニケーションのプラットフォームになっているんです。
食べた人と作った人がコミュニケーションできる、感謝できる。そのような世界観をつくることで、生産者も消費者もハッピーな循環がつくれているのではないかなと考えています。

候補者ごとに選考をカスタマイズ。中途採用の取り組み
ーー直接消費者に買ってもらえる、いいものを直接購入できるというだけでない価値づくりをされているのですね。次に、「食べチョク」の成長を推進していくための仲間探しについて伺います。御社の中途採用の取り組みについて教えてください。
佐藤様:中途採用はビジネスサイドとエンジニアサイドの大きく2つに分かれています。私がビジネスサイドの採用を担当し、平野がエンジニアサイドの採用を担当しています。
弊社のエンジニア採用は、エンジニアである平野が全般的に関わっていることが特徴であり、一番の強みです。カジュアルな面談のなかでも技術的な話までできたり、エンジニア同士での会話が弾んだりすることが、その後の選考にポジティブに働いているのではないかと考えています。
平野様:そうですね。弊社は1次産業に関わっているとはいえ「IT企業」ですので、プロダクトドリブンの姿勢をしっかり伝えることが特に重要です。実際にプロダクトをつくっているエンジニア自身が候補者と接することで、プロダクト重視の姿勢をより具体的に伝えられると考えています。
ーー面談や面接のなかで、エンジニアだからこその会話ができるのは強みですね。母集団形成や、採用フローについても教えてください。
佐藤様:母集団形成に関しては、あらゆる採用チャネルをテストし、相性の良いサービスや媒体を選定しました。その結果、現在はビジネスSNSやビズリーチ、エンジニア採用に特化した複数の媒体を利用しています。ビジネスSNSからの自然流入でご応募いただくことも多いですね。
ビズリーチは、特にビジネスサイドにおける幹部候補の採用のために利用しています。私はこれまで複数社で採用に携わってきましたが、どのような採用手法が合うかは企業ごとに異なると感じています。
採用の大まかなフローは、カジュアルな面談から始まり、面接、体験入社などをへてオファー(内定通知)をする流れです。弊社の場合、採用フローの大まかな「枠」は決まっていますが、候補者それぞれに対し、個別具体的に対応することを意識しています。
ーー個別具体的な対応とは、例えばどのようなことですか。
佐藤様:候補者によって「誰と話してもらうか」「何を読んでもらうか」という部分をカスタマイズしているのです。例えば「20代のエンジニアで、これから多くのスキルを身につけていきたい」といった人であれば「ロールモデルになりそうな社内のこの人と話してもらおう」などと考えます。選考途中に読んでもらうもの(「note」の記事や会社説明資料など)も、「この人は、この記事を読むとより当社への理解が深まるだろう」と考えて送るようにしていますね。
エンジニアの候補者に対するカスタマイズは平野が担当。ATS(採用管理システム)に情報を登録して共有することで、候補者により適切な情報や機会を提供できています。
ーー御社は情報発信にも積極的な印象ですが、これも採用広報における戦略なのでしょうか。
佐藤様:採用広報のためにやっているというより、もともと弊社には「情報発信を大切にするカルチャー」がありました。ただ、情報発信によってサービス自体の認知が拡大したり、自社認知が広がっていったりすることもあるため、採用活動においても非常にポジティブな効果が出ていると感じています。
平野様:情報の公開は盛んな会社ですが、エンジニア視点でいうと「広報的な発信」がまだ足りていないと感じています。今後は「どのような技術を使っているのか」「どのような開発をしているのか」なども発信し、技術面への興味がきっかけで応募していただける方を増やしたいですね。
登録データから人材をイメージ。1to1でメッセージを伝える
ーービジネスSNS等からの自然な応募も多いとのことですが、ダイレクトリクルーティングの取り組みについてもう少し詳しく教えていただけますか。
佐藤様:弊社は2020年にビズリーチを導入し、ダイレクトリクルーティングも開始しました。ビズリーチ上では「どうしてもこの方にお会いしたい」という候補者にだけスカウトを送っていますね。
スカウトの良さは、その人だけに「刺さる」1to1のメッセージを伝えられる点。個人的には、テンプレート化されたメッセージを送ることは、あまり良い結果を生まないと考えています。
平野様:ビズリーチの利用に限った話ではないですが、私はダイレクトリクルーティングを通して、世のエンジニアから自社がどう見られているかを意識していますね。
例えば「シニアエンジニアを採用したい」となった場合、ダイレクトリクルーティング活動のなかで接点を持った方から、どのような反応が得られるか。候補者からの反応の有無や内容によって「シニアエンジニアを採用するためには、こういう情報公開が足りないのではないか」など、気づきを得ることができます。ここはダイレクトリクルーティングサービスを使うことで学びになっている点ですね。
ーー実際にビズリーチ上でスカウトを送る際には、候補者をどのように選ばれているのでしょうか。
佐藤様:私が採用活動のなかで大切にしている観点に「候補者にとって自社は『Will, Can, Must』がしっかり重なる場であるかどうか」があります。それが重なりそうな方にメッセージをお送りしています。
具体的には、現職の業界や職種、経験社名、ご本人の志向性などを見て判断。特にビジネスサイドの採用では、プラットフォームビジネスにおけるグロース経験がある方を採用したいと考えているため、まずは経験社名を確認します。
ビズリーチ上では候補者の希望、例えば「大企業かベンチャーか」「社会貢献性」「裁量について」などの情報も登録されています。弊社にマッチするかどうか、データの段階である程度イメージできるのは、非常に良い点だと思っています。
ーースカウトの文面は、どのように作成されていますか。
平野様:スカウトの冒頭でまずお伝えしているのは「あなたのどのような経験に魅力を感じているか」。続いて「現在自社が抱えている課題、その課題に対してこういう方向性で取り組んでいきたい」「だからあなたが持っている経験やスキルが必要なんです」といった流れで伝えています。
ーー最後に、今後の採用活動やダイレクトリクルーティングにおいて実施したいことを教えてください。
佐藤様:今後は面談の段階から「Will, Can, Must」をより意識して、採用活動を進めたいと考えています。スカウトでせっかく理想の人材に出会えても、カジュアルな面談でどうしても会社説明重視になってしまい、現状では「Will, Can, Must」の確認がその後に回ってしまっています。「Will, Can, Must」の重なり具合を早い段階から相互に確認し、面接では「近未来のWill」と「遠い未来のWill」をすり合わせていく。そうすることで中長期的によりマッチする人材の採用が行えると考えています。
このフレームワークを用いた採用活動は、現在私が主導していますが、他のメンバーでも再現できるよう指針をつくり、社内で広げていきたいですね。そうすることで限られたメンバーでも、採用活動を効果的に進めていけるのではないかと考えています。
執筆:佐藤 由佳、編集:立野 公彦(HRreview編集部)
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