2021年10月21日、株式会社ビズリーチは「激変する事業環境への挑戦 変革を起こし続ける丸紅の人財戦略」と題したWebセミナーを開催しました。
丸紅株式会社執行役員人事部長の鹿島浩二様にご登壇いただき、人財戦略におけるさまざまな取り組みについてお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチ取締役副社長で、ビズリーチ事業部事業部長の酒井哲也が務めました。

登壇者プロフィール鹿島 浩二氏
丸紅株式会社 執行役員 人事部長

モデレータープロフィール酒井 哲也氏
株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長
※所属・役職等は制作時点のものとなります
変革の必要性への危機感から、丸紅の在り姿を制定
丸紅グループは国内外に133拠点を有し、豊富な海外ネットワークを持ち、ライフスタイルから食料、エネルギーなどさまざまなBtoB事業を手掛けています。

時代のニーズに応じてビジネスの形を変えてきた丸紅にとって、「変革」は大事なキーワードでした。そのさらなる変化を求められたのが、2017~2018年でした。両年度では史上最高益を更新し、事業は非常に好調でした。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)に代表される事業環境の激変に、経営陣には強い危機感がありました。
2017年4月に人事部長になった際、「人事が変わらないと会社も変わらない」と社長から言われたのが印象に残っています。
また2018年4月の社内会議では次のような発言も出ました。「現状と同じやり方で、今やっていることをそのまま続けていると、当社は10年後おそらく生き延びられない。変化はチャンスというが、もはやそういった次元の話ではなく、今の変化に対応できるかどうか、(中略)できなければ存続できなくなる可能性があるという危機感を持っていただきたい」
そこで生まれた変革のキーワードが「既存の枠組みを超える」というものです。
そのためには
- 従来の縦割りを超えて事業を掛け合わせて創造していく発想
- 同質性の高い集団思考を脱して多様な見方や価値観を取り込んでいく姿勢
- 従業員一人一人が挑戦に積極的になるためのマインドセットの切り替え
が重要であり、その社内浸透のためにセッションも幾度となく行われました。
具体的には、部長職の計80人が10人ずつ研修センターで半日のディスカッションを実施。社長と膝詰めで状況や意見を共有し、社長には現場の課題が伝わり、部長陣には社長の危機感が伝わるいい機会になりました。
2018年には丸紅グループの在り姿として「Global crossvalue platform」を制定し、今後10年を見据えた目標を明文化しました。こちらは「パーパス」に近いものだと理解しています。

丸紅グループの中には、さまざまなビジネスがあります。何をどう掛け合わせるかというアイデアを大切にしながら、社内外のあらゆる強みや知をクロスさせて価値を創造することを目指しています。
既存の枠組みを超える施策とは
在り姿の実現には、人事制度にとどまらない幅広い施策が必要だと考え、経営企画部や広報部などさまざまな部署と議論を重ねました。
そこで、2018年度にはCDIO(Chief Digital Innovation Officer)という新しい役割を作り、2019年度には、CDIO傘下でイノベーションを創り出す「次世代事業開発本部」を新設しました。デジタル・イノベーション機能の発揮に加え、全社最適の観点から、新たなビジネスモデル創出を追求することが大切だと考えました。

もう一つの施策が、「人財」「仕掛け」「時間」の3つのカテゴリーでの新しい取り組みです。
「人財」カテゴリーの施策
人財領域においては、異なる価値観に触れ合う環境を創ることで「人財」の発想力を広げることが重要だと考え、次のような施策を進めています。
【丸紅アカデミア】
国内外の丸紅グループ全社員から約25名が参加する、イノベーションを体験させるセッションです。選抜メンバーのほかに、やる気がある社員の参加を促進しています。約10カ国から、さまざまな商品分野のバックグラウンドを持ったメンバーが集まり、1年間、年4回のセッションを通じて、新たなソリューション創出の発想力、リーダーシップを学びます。
参加メンバーには、イノベーションを伝達していくエバンジェリストとして、現場に戻って学びを還元することを期待しています。
【社外人財交流プログラム】
社外との人財交流を強化すべく、提携先企業での業務を経験したいメンバー(20~30代前半)を社内公募しました。手が挙がらないのではと懸念していましたが、想像以上に多くの応募があり、「今までと違う経験をしたい」「新しい環境で学びたい」というニーズの多さを実感しました。他社のいいところを学び、丸紅にも生かしたいと考える若手が増えており、社内活性化につながっています。
【トライアングルメンター】
新たなメンター制度では、組織も年代も違う3人の掛け合わせを意図的に作りました。異なる価値観に触れ、ほかの部署で何が起こっているかを意識できるようにしています。
【Self-Biz】
社員一人一人の価値観を尊重し、最適と思う服装を自由に選択できるようにしました。

「仕掛け」カテゴリーの施策
多様な人財のアイデアを喚起し、具現化する「仕掛け」として、次のような施策に取り組んでいます。
【ビジネスモデルキャンバス(BMC)】
丸紅グループには多様なビジネスモデルがあるため、社内にどんなビジネスがあるかを理解していない社員が多くいます。そこで、約300のビジネスモデルを同じフォーマットに落とし込み、各事業の資産、取引、人脈などを誰でも閲覧・アクセスできる仕組みを構築。事業理解を深めることで、ビジネスの新たな掛け合わせによるイノベーション創出を促したいと考えています。
【ビジネスプランコンテスト】
国内外の丸紅グループ全社員を対象とする、新事業企画を競い合うオープンコンテストを実施しています。社外から審査員に参加してもらい、優れたアイデアには資金や人財などのリソースを提供、スタートアップに挑戦できる権利を付与し、起業家としてのキャリアパスの機会を提供します。
2018年度は全世界から160件の応募があり、審査を経て4件が事業化への挑戦チケットを獲得。1件が実際の事業化につながっています。コンテストは2019年度以降も毎年継続しています。

「時間」カテゴリーの施策
新たな価値創造に取り組むためには「時間」の確保が必要です。そこで、次のような施策に取り組んでいます。
【15%ルール】
就業時間の15%をさまざまな事業創出に向けた活動のために充てられるというものです。
【どこでもワーク】
2018年度より在宅勤務、サテライトオフィス勤務を導入しています。2021年5月には新オフィスに移転しましたが、座席数は全社員数の7割ほど。100%オフィスには戻らない前提で、引き続き、リモートワークやサテライトオフィス活用も進めています。

経営戦略に基づいた人事制度改革
中期経営戦略「GC2021」では、2030年に向けた既存事業基盤の強化による持続的成長と、新たなビジネスモデル創出による爆発的成長を目指しています。
これまでは部分最適を見たパッチワーク的な人事制度の改定だったという反省から、2019年度には人事制度の抜本改革に着手しました。人財戦略という議題で行った経営会議は10回以上です。抜本的な人事制度の見直しには、迷ったときに立ち戻るコア概念が必要と考え、まずは人事制度改革のコアとなる概念を定めました。

「実力本位」、「チャレンジ」、全社一律から現場の個性重視へ、人事部ではなく現場が組織・人財マネジメントの最適化を主導するという「現場」、組織と人財は互いに選び合う関係であり、機会は自らつくり、つかみ取るものであるとする「オーナーシップ」、さらに、社内外の多様な人財が行き交い、組織を越えて連携・協力する「オープンコミュニティ」という5つの概念です。
具体的な人事制度改革は、「処遇」「タレントマネジメント」「働く環境」の3カテゴリーで進め、2021年7月にすべて導入しています。

ほかにも、この分野では誰にも負けないという強みを持った学生の強みを応募資格とする「No. 1採用」や、新卒と20代の既卒者を対象に、入社後の配属部署と仕事内容を明示して採用する「Career Vision(キャリアビジョン)採用」を導入しています。
また、新卒採用の女性総合職比率を3年以内に40~50%程度に引き上げるという目標も掲げています。キャリア採用は毎年30~50人の採用を継続しています。
多くの制度改定を同時に進めており、現時点で完璧にできているとは思っていません。人事制度に100%はないので、導入し、走らせながら直していくことが大切です。社内外からの反応をモニターしながら、経営戦略に応じてより良いものに変えていき、「経営戦略実行のための人事制度である」という視点を常に大切にしています。
Q&A
セミナーの後半には、視聴者から多数いただいた質問の中から抜粋してお答えいただきました。
最後に視聴者の皆様へメッセージをいただきました。
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