採用面接の進め方には、事前に準備した質問に沿って進める方法もあれば、質問に対する候補者からの回答内容に合わせて質問を深掘りしていく方法もあります。後者のように臨機応変に質問を投げかける面接手法は「非構造化面接」とよばれ、さまざまな企業で取り入れられています。
しかし、非構造化面接にもメリット・デメリットがあり、面接手法を検討する際にはその特徴や強みを十分把握しておくことが重要です。
本記事では、構造化面接や半構造化面接との違いを説明し、非構造化面接のメリットとデメリットを詳しく解説しながら、どのような企業が取り入れるべきかどうかも紹介します。
あなたの面接にあてはまる「ダメ習慣」はありませんか?
ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
非構造化面接とは

非構造化面接とは、あらかじめ用意しておいた質問を投げかけるのではなく、候補者からの回答や反応に対して面接官が臨機応変に質問する形式の面接のことを指します。
面接官は質問の内容や順番を流れに応じて判断します。候補者を評価する基準も面接官の判断に委ねられることが特徴といえます。
非構造化面接に対し、構造化面接や半構造化面接とよばれる方法もありますが、これらとは何が違うのか詳しく解説しましょう。また、どのような場合に非構造化面接が適しているのかなど、面接手法を選択する際の注意点もあわせて紹介します。

構造化面接との違い
構造化面接とは、あらかじめ用意しておいた質問に沿って進める形式の面接のことで、非構造化面接とは反対の手法といえます。
自己紹介や志望動機など、設定した質問を決められた順番で尋ねていきます。質問項目をもとにした評価基準が設定されていることも構造化面接の大きな特徴であり、非構造化面接とは異なるポイントです。
半構造化面接との違い
半構造化面接とは、構造化面接のように決まった質問をした後、非構造化面接のように面接官が自由に質問をする形式の面接です。非構造化面接と構造化面接の両方を併せ持った面接手法といえるでしょう。
事前に用意した質問に加えて、候補者の返答を深掘りするような自由な質問もできることが特徴です。
非構造化面接と共通する部分としては、自由に質問する場面において評価基準が面接官の判断に委ねられることが挙げられます。一方で、決まった質問がある点や、その質問の返答に対してある程度同じ評価基準があるという点が非構造化面接と異なります。
面接手法を決めるうえでの注意点
上記で紹介した3つの面接手法は、どれがよい・悪いと一概に判断することはできません。
大手企業のなかには構造化面接を採用しているケースも少なくありませんが、だからといってすべての企業にとって構造化面接が適しているとは限らないでしょう。たとえば、構造化面接では評価基準が共通化され面接官の判断に委ねられることがないため、新卒採用などで一度に多くの候補者を比較しながら採用する場合には検討する価値のある面接手法といえます。
一方、中途採用などで即戦力人材を求める企業の場合、候補者の資質や人柄、スキルのレベルを判断するためには、面接官が自由に、深掘りした質問ができる非構造化面接のほうがマッチしているケースもあります。
また、新卒採用や大量採用の際にも候補者の人柄を個別に判断したい場合は、半構造化面接も含めて面接手法を検討することも重要です。
このように、面接手法を決定する際には、面接を行う人数やどのような候補者を採用したいのかなどを検討し状況や目的に応じて使い分ける必要があります。
ダメな面接官に共通する特徴をピックアップし、面接の質を向上させませんか?
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
非構造化面接を導入するメリット

非構造化面接を導入する場合、企業にとってはどういったメリットがあるのでしょうか。面接手法を検討する際に押さえておきたい2つのポイントを紹介します。
候補者の人間性を判断しやすい
非構造化面接では、面接官が自由に質問を投げかけることから、候補者と面接官がお互いにリラックスした雰囲気でコミュニケーションを図れます。あらかじめ決められた質問に沿って進められる構造化面接とは異なり、非構造化面接には企業と候補者が相互理解を深める面談に近いような雰囲気があります。
候補者はリラックスして自由に自分自身を表現できるケースが多いため、面接官は候補者の人間性や性格などをかいま見ることができるでしょう。
その結果、入社後に候補者が自社の社風に合うかなどの判断もしやすく、採用のミスマッチを避けやすいことが非構造化面接のメリットといえます。
自社の魅力をアピールし、入社の動機づけをしやすい
高度なスキルや実務経験をもった候補者や、自社の社風とマッチしそうな候補者がいた場合、非構造化面接であれば面接官が自社の魅力を自由にアピールしやすいことも大きなメリットとして挙げられます。
面接を通して候補者の理想の働き方やキャリアプランをヒアリングし、候補者の希望をかなえるための人事施策やキャリア支援などを紹介でき、入社するための動機づけや説得にもつなげられるでしょう。
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
非構造化面接を導入するデメリット

非構造化面接にはメリットばかりではなく、デメリットがあることも事実であり、両者を比較しながら採用手法として取り入れるかどうかを検討しなければなりません。面接手法を選ぶ際に押さえておきたい非構造化面接のデメリットを2つ紹介しましょう。
面接官の力量によって見極めが不十分になることがある
非構造化面接では、面接官が臨機応変に質問できることが大きな特徴ですが、裏を返せば面接官に高度な質問スキルが求められることになります。
たとえば、「志望動機」や「職務経験」などのように、表面的な質問に終始して深掘りできなかった場合、候補者の本質まで切り込めず見極めが不十分になる可能性もあります。
その結果、スキルや実務経験は十分であるものの、自社の社風にマッチしない人材を採用してしまうといったことも考えられるでしょう。また、即戦力となる専門人材を採用する場合には、面接官に専門分野の知見が不足していると候補者のスキルレベルが判断できず、自社が求める専門性を満たさない人材を採用してしまう可能性もあります。
候補者の評価にバイアスがかかることがある
非構造化面接では評価基準も面接官に左右されることから、適正な評価に結びつかない可能性もあります。
たとえば、候補者の学歴や、表面的な質問に対してスムーズに回答できていたなど、ひとつでもよい点が目立つと、ほかの点まで優秀であると評価に結びつけてしまう「ハロー効果」に陥ることもあるでしょう。
また、このようなバイアス(偏り)はハロー効果以外にも、自分自身と似ている候補者を評価する「類似性バイアス」や、直前に面接をした候補者と比較して優劣を判断する「対比誤差」などもあります。
評価基準が共通化されている構造化面接とは異なり、非構造化面接の場合はバイアスの影響を受けやすいためゆがんだ評価をしてしまうリスクがあるのです。
非構造化面接の進め方

非構造化面接では候補者からの回答や反応に対して面接官が臨機応変に質問を投げかけていくため、決められた進行方法はありませんが、最低限どのような順番で面接を進めていけばよいのか知っておきたいという方も多いでしょう。そこで、非構造化面接の進め方の一例を紹介します。
まず、面接に臨む前の準備として、面接を行う目的を確認し、候補者の経歴についても把握しておきましょう。たとえば、「◯◯のスキルをもった即戦力人材を採用する」「社風にマッチした人材を採用する」など、目的を明確化しておけば、それを確認するためにどういった質問をすべきかが見えやすくなります。
面接にあたっては構造化面接のように質問シートやマニュアルといったものは用意する必要はなく、候補者とのコミュニケーションに集中しながら質問を考えていきます。
ただし、最初の質問は面接官から投げかける必要があるため、事前に導入時の質問は考えておきましょう。たとえば、「これまでの経歴を教えていただけますか?」「自己紹介をお願いします」「当社を志望した理由を教えていただけますか?」などが代表的な質問例として挙げられるでしょう。
はじめのうちは臨機応変な質問ができず悩む面接官も多いですが、少しでも疑問に感じたことは深掘りしていくことを意識しましょう。
たとえば、志望動機のなかで「◯◯の業界に興味があった」という回答があった場合、何がきっかけで興味を抱くようになったのかを聞くのもひとつの方法です。
また、候補者がより自然体で話せるように、質問の仕方を工夫するのもおすすめです。一例として、「転職活動を始めた理由は何ですか?」といった質問ではなく、「転職をしてから成し遂げたいことや夢はありますか?」や「◯◯さんにとって理想的な会社とはどういったものですか?」などがあります。
非構造化面接に向いている企業

非構造化面接はどういった企業に向いているといえるのでしょうか。3つの特徴をもとに解説します。
候補者に対して自社へ入社する動機づけをしたい企業
高度なスキルをもった候補者や、自社の社風にマッチした候補者など、どうしても採用したいと考える候補者がいた場合、自社を選んでもらえるよう動機づけをする際に非構造化面接はおすすめの手法といえます。
非構造化面接は面接官から候補者へ質問を投げかけるだけでなく、自然体のコミュニケーションや自由な対話が生まれやすく、候補者に対して自社の魅力をアピールしやすいためです。
また、候補者が希望するキャリアや働き方などの本音を引き出し、それを自社でどのように実現していくかも非構造化面接のなかで相談でき、候補者との信頼関係を構築できる強みがあります。
スキルと経験が豊富な面接官がいる企業
非構造化面接には決められた質問や評価基準がないため、質問スキルの高い面接官が必須といえます。これまで数多くの面接を経験し、候補者の見極めに秀でた人材がいる企業にとっては有効な面接手法といえるでしょう。
表面的な質問に終始するのではなく、候補者の人柄や価値観など深いところまで見極めつつ、自社で働く動機づけやモチベーションを向上させられる面接官がいれば、優秀な候補者を採用できる可能性があります。
採用戦略が明確に定まっていない企業
スタートアップ企業など、事業の立ち上げからスタートしなければならない企業にとっても非構造化面接はおすすめです。
会社の立ち上げ段階では、ひとりの社員がさまざまな業務を担うことも多く、採用に関するノウハウも蓄積されていないことから、明確な採用戦略を立てることが難しいケースもあります。また、新たなビジネスモデルを構築し、短期間で事業を成長させることがスタートアップ企業の特徴のため、同じ価値観やビジョンを共有できる人材を採用することが求められます。
そのような候補者を見つけるためには、構造化面接のように決められた質問だけでなく、自由にコミュニケーションを図れる非構造化面接が適しているといえるでしょう。
非構造化面接に向いていない企業

上記とは反対に、非構造化面接には向いていない企業も存在します。具体的にどういった企業がそれにあたるのか、2つの特徴を紹介しましょう。
一度に多くの人材を採用しなければならない企業
非構造化面接では共通の質問項目がないため、評価基準を統一することが難しいという問題があります。
面接官によっても評価基準は変わってくるため、一度に数十人、数百人といった候補者を採用する際に非構造化面接を行ってしまうと、採用・不採用の判断にズレが生じ、ミスマッチが発生してしまうこともあるでしょう。
また、候補者に対して自由に質問するため話が脱線しやすい傾向があり、面談の時間も長くなりがちです。話題が広がることで候補者それぞれの人柄がみえるメリットがある一方、見極めが不十分になるケースも発生し、非効率的といえます。そのため新卒採用などで大量採用を行う場合には、構造化面接または半構造化面接も含めて検討する必要があります。
面接官のスキルに差がある企業
人事部門だけでは面接を回せず、ほかの部門に面接官を依頼しなければならない企業も少なくありません。面接官として任命された担当者のなかには、初めて面接を経験する人もいるでしょう。
このように、面接官としてのスキルに差がある状態で非構造化面接に臨んでしまうと、経験の浅い面接官は、質問を掘り下げられないまま面接を終えてしまったり、適正な評価ができないまま不採用としてしまったりするケースも考えられます。
そのため、面接官のスキルに差がある企業は、非構造化面接には向いていないといえるでしょう。
◎ダメ面接官から卒業するための解説資料をダウンロード⇒こちらから
面接官に求められるスキル

非構造化面接においては、面接官のスキルが重要なポイントとなります。具体的には、以下のようなスキルが代表例として挙げられます。
- 質問スキル
- 共感スキル
- プレゼンテーションスキル
- 採用におけるルール・法的知識の理解
それぞれのスキルの詳細について解説しましょう。
質問スキル
面接官にはコミュニケーションスキルが必須です。なかでも、候補者の本質を見極めるためには、質問を掘り下げる「質問スキル」が重要となります。
たとえば、志望動機を聞いただけで次の質問に移るのではなく、なぜこの業界に興味があるのか、他社ではなく自社を志望した理由など、できるだけ本音を引き出せるような質問を投げかけることで、候補者の人柄や特性が見えてくることがあります。
質問スキルが高い面接官は、面接を通じて候補者の本音に迫れるケースが多いため、候補者が入社後、自社の社風に合うかなどの判断もしやすいといえます。
共感スキル
共感スキルとは、候補者の話す内容に理解を示し共感するスキルのことです。
一方的に質問を投げかけるだけでは候補者に威圧的な雰囲気を与えてしまうこともあります。そこで、候補者の話す内容に理解を示し、目を合わせて相づちを打つなど共感する姿勢を見せることも面接官に求められます。
共感スキルを身につけることで、候補者は面接官に話しやすい印象を抱くため、本音を引き出しやすくなります。
プレゼンテーションスキル
プレセンスキルとは、聞き手のニーズをくみ取りつつ、伝えたいことを的確に伝える能力のことです。候補者が希望するキャリアや働き方をヒアリングしたうえで、それを実現するために自社ではどういったことができるのかを結びつけ理解してもらうことが、面接官には求められます。
採用面接は企業が候補者を選ぶと同時に、候補者が企業を選ぶ場でもあります。候補者に対して内定を出したとしても、自社の魅力が候補者に十分に伝わっていないと選考辞退や内定辞退に至ってしまうこともあるでしょう。
自社の採用力を高めるためにも、面接官は自社の顔であることを自覚し、面接のなかで自社の魅力を効果的にアピールするプレゼンテーションスキルが求められます。
採用におけるルール・法的知識の理解
採用面接においては、候補者の基本的人権を尊重するとともに適性・能力にもとづいて採用可否を判断することが前提となります。
厚生労働省では、これを順守するために「公正な採用選考の基本」として、採用選考時に配慮すべき事項を公開しています。たとえば、本籍・出生地に関することや、家族・住宅状況に関すること、宗教・支持政党に関することなど、就職差別につながる質問は投げかけるべきではありません。
【本人に責任のない事項の把握】
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
【本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握】
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 人生観、生活信条に関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 思想に関すること
- 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
候補者の人柄を判断するために、人生観や尊敬する人物、愛読書などに関する質問を投げかけたくなりますが、後になってトラブルに発展する可能性もあるため、特に注意が必要です。面接時、上記に該当する質問をしないように、採用選考における基本的なルールや法的知識を身につけておくことも面接官には求められます。
特に非構造化面接では、面接の場で自由に質問を投げかけられるため、配慮すべき事項の内容は頭に入れておく必要があります。
非構造化面接の特性を把握し、採用力強化に役立てよう

非構造化面接は、面接官が自由に質問を投げかけることで候補者の人間性を把握しやすいほか、自社のことを効果的にアピールしやすく、採用力アップにも貢献できるというメリットがあります。
候補者に対し自社への入社の動機づけをしたい企業や、採用戦略が明確に定まっていないスタートアップ企業などにとっては非構造化面接が有効な手法といえます。
その一方で、候補者からの回答内容や状況に応じて臨機応変に質問を投げかける必要があり、評価基準も共通ではないため、面接官のスキルに左右されやすいという課題も存在します。面接官のスキルアップも非構造化面接を行ううえでは重要なポイントです。
本記事で紹介した構造化面接や半構造化面接との違いなどを参考にして、自社にとってどの面接手法が適しているのかを見極め、採用力強化に役立てましょう。
「ダメ面接官」にならないためにできること

「ダメ面接官」が陥りがちな「NG行為」「思い込み」とは――。ダメ面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウを、人事コンサルタントの曽和利光氏が解説します。